師匠に相談だ
とりあえず鎧と盾の作成はエドガンとヒガンに任せておけばいい。
前金で金も払ってあるから、あとは出来上がりを待つだけ。
幸太郎は、カース・ファントム騒動で尻切れトンボになってしまった、
森の中部の診療所を再開することにした。
実はついでに死霊術について、
バーバ・ヤーガに聞いてみたいこともあったのだ。
なにせ幸太郎は魔法についてはど素人。
基本的な構造すら知らない。
幸太郎は歩いてバーバ・ヤーガの店へ移動。
エドガンとヒガンの武器屋から、バーバ・ヤーガの店は近い。
モコたちは、もう一度ガンボア湖の市場へ遊びに行った。
というか、幸太郎から食料や鍋、壺、殺虫剤の材料の
購入などを頼まれた。持ちきれなくとも、シンリンやジュリアの
亜空間スペースに入れてもらえば問題ない。
あとで幸太郎が受け取ればいいだけ。
幸太郎は、バーバ・ヤーガの店の前で、中途半端になっていた
診療所を再開する。モーリーが付近の村へ宣伝したので、
すぐに人々が集まってきた。
すでに『荒野の聖者・新たなる伝説』が広まっており、
・・・とゆーか、ドライアードたちが『広めた』せいで、
涙を流しながら幸太郎に握手を求める人まで出る始末。
指の欠損や、歩けなくなった人、失明、耳が聞こえなくなった人も
全部きれいに治す。怪我だろうが病気だろうが、全快だ。
生まれつき目が見えない人すら美しい景色が見えるようになる。
『陽光の癒し』は無敵の魔法。
前回、ある程度人々の治療を行っていたせいで、
今日はそんなに忙しくない。そこで人の波がはけた所で、
幸太郎はバーバ・ヤーガに質問をしてみた。
「お師匠様、実は、これを見て欲しいのですが・・・」
幸太郎は『走るゾンビ』をバーバ・ヤーガに見せた。
「どうでしょう? こんなことってありますか?」
「いや・・・こんな走るゾンビなど、初めて見るわ・・・」
バーバ・ヤーガも驚いている。
「やっぱり通常では有り得ない現象ですか」
「有り得ないのう。何しろ、あたしが見る限り、
小僧が使っている術式自体は一切何も変わっておらん。
必要な魔力量も変更ないのじゃろう?」
「はい。自分でも確認しましたが、今までと何も
変わっていませんでした」
幸太郎は『ステータスウインドウ』でそれを確認している。
必要MPなどは全く変化なし。
自分の情報を客観的に見ることができる
『ステータスウインドウ』は、やはりチート級に便利だ。
その価値は計り知れない。
「うーむ。原因はわからぬが、小僧の魔力に何か根本的な
変化が起きたとしか思えんのう」
「そうですか・・・」
幸太郎は1つ思い当たることがある。というか、それ以外に
原因は無いだろう。
(これは・・・ネクロマンサーとしてのレベルが上がった
ことに起因するのではなく・・・。
やっぱり、ガイコツの森でムラサキさんに
魂の亀裂を治してもらった結果だな・・・。
治してもらった時に、何か、ムラサキさんの力が
俺の魂に混ざってしまったということか)
幸太郎は、まだ見てもらいたいことがあった。
「お師匠様、実はそれだけじゃなくて・・・。
これも見て下さい」
幸太郎はもう1つ、いや、2つの変化をバーバ・ヤーガに見せた。
これはさっきの走るゾンビ以上にバーバ・ヤーガを驚かせた。
「これは!? なんじゃと!?
こんなことが・・・有り得るのか!?
この目で見ても信じられんが・・・これは明らかに
小僧の魂の力によるものじゃろう。しかし、なんと珍しい。
無論、初めて見るわ。ちょっと動かしてみてくれ」
その動きにバーバ・ヤーガとモーリーも興味津々だ。
「ひゃっひゃ、これは面白い。術式などは全く変わっておらんのに、
こんな変化が起きるとは。村に帰ったら、他の者にも
見せてやるがええ。特にあのB級冒険者たちや
バスキーという男あたりは大喜びのはずじゃ」
「そうですね。時間ができたら見せてみます」
いったい、幸太郎にどんな変化が起きているのか?
それは後日起きる事件で明らかにしよう。
村に帰ると、ほぼ同時にモコたちが戻ってきた。
聞けば、バーバ・ヤーガの店に一度寄ったところ、
『すでに村へ帰った』と聞いてきたという。
モコたちは、すごい食材を買ってきていた。
『ガンボア・オオナマズ』だ。
「これ、船の漁師が1匹だけ捕ったそうです。
まだ2メートルほどの小型ですが、網にかかったのを
他の猟師と協力して引き揚げたとか」
「幸太郎サン、これ食べてみようよ!」
「滅多にとれないけど、とっても美味しいんだってさ」
「私は本で少し読んだことがあります。脂がのってて、
くちどけが良いとのことですわ」
幸太郎は初めて見るガンボア・オオナマズに開いた口が
塞がらない。なにしろ・・・でかい!
見た目は確かにナマズだが、ピラルクみたいな大きさだ。
しかも、これでまだ『小型』・・・。
「食べてみたいけど、これ、どうやって捌けばいいのかな。
残念ながら俺には捌けないよ・・・」
だが、クラリッサが胸を叩く。
「あたいに任せておきなって! あたいは肉でも魚でも
捌けるからさ」
「わ、私も手伝う、から」
アーデルハイドも胸を叩いた。
「幸太郎さん、私たちに任せて下さいね。
モコ、あなたも手伝いなさい」
「はい、お母さん」
クラリッサ、アーデルハイド、ポメラ、モコの4人で
2メートルくらいのオオナマズを捌くことになった。
(うむむ、でも、どうやって食べようかな?
確か、ナマズってウナギに味が似てるっていうけど、
なんか『泥臭い』って話も聞くよな・・・。
泥ぬき無しでもいいのかな?)




