次元に穴が空く
アステラは宇宙空間で太陽に向かって、何か球形のパネルを操作していた。
太陽神であるアステラには太陽は自分の本体であり、
また自分の道具のようなものでもあった。
突如、空間にゲートが開くと、
中からムラサキが転げるように叫びながら出てきた。
「アステラ様! 大変です! 幸太郎君が、冥界の門が・・・!」
「えっ?! 何? どうしたのよ」
「幸太郎君が『冥界門』を開こうとしています!!!」
アステラの顔が少し青くなった。慌てて太陽のパネルを『オート』にする。
急いでアステラは地上の様子を映し出した。
陰惨な光景が写し出された。
盗賊が幸太郎の両腕をめった刺しにして引きちぎる。そして幸太郎の腹に
剣を交互に突き刺し笑っていた。
アステラの顔に怒りの形相が浮かぶ。そのとたんアステラの全身から
黄金のオーラが爆発したように激しく吹き上がった。
「・・・盗賊どもがっ!!!・・・」
ムラサキが吹き飛ばされそうになる。
人間ならこれだけで木端微塵だっただろう。
「ア、・・・アステラ様っ・・・幸太郎君なら・・・」
「わかってるわよ! 『復活』で生き返るわよ! あ、あたしが
心配してるのは冥界の門のほうよ!」
アステラとムラサキには『視える』
幸太郎の体に向かって黄泉の力が、
冥界の力が凄まじい勢いで渦を巻いて集まりつつあることが。
「・・・次元に穴が空く、このままでは冥界の門が開いてあふれ出す・・・」
(C)雨男 2021/11/12 ALL RIGHTS RESERVED