死の間際に願う事
盗賊たちはさらに幸太郎へ拷問を加える。
盗賊は、今度は幸太郎の腕を踏んで固定すると、肘をめった突きした。
幸太郎の両腕は引きちぎられた。ブチブチと音がする。
幸太郎の悲鳴が響く。
「さ、あとはゆっくり楽しんでくれや。ぎゃははは!」
盗賊たちは幸太郎の腹を、剣で交互に突き刺し始めた。ゆっくりと。
ズブッ・・・ズブッ・・・ズブッ・・・ズブッ・・・
もう幸太郎は悲鳴をあげる余力も無くなっていた。両手と両足を失い、
腹を交互に突き刺され、致命傷なのだけは理解できた。
次第に意識が遠のき始めた。死がだんだん近づいてくる。
幸太郎は涙を流していた。
(あの少女を助けることができなかった・・・。
悔しい・・・俺はなんて非力なんだ
・・・俺はなんて弱いんだ・・・力が・・・ほしい・・・。
だれか・・・あの少女を・・・誰か・・・たすけ・・・て・・・)
幸太郎の視界が暗くなってきた。視界の端で少女が涙を流して
何かを叫んでいた。だが、もう幸太郎の耳にはよく聞き取れない。
(だれか・・・あの少女を・・・)
死が幸太郎を包みだした。
その時奇妙な音が鳴り響いた。
『ビーッ! ビーッ! ビーッ!』
やたら機械的な音だ。幸太郎の頭の中で鳴っているようだったが、
盗賊たちも驚いて周囲を見回していた。
仰向けの幸太郎の前に『ステータスウインドウ』が強制展開された。
いや、通常のウインドウの3倍はある。しかも、そこに書かれているのは
ステータスなんかではなかった。たったこれだけの文字だった。
『警告! 冥界門が開きます!!』
(C)雨男 2021/11/08 ALL RIGHTS RESERVED