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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 5
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番外編 嫁ーズ会議


 幸太郎の説明の後、人々は三々五々、樹木の家に戻っていった。



バーバ・ヤーガは中部の薬屋へ帰った。





だが、ここにモコ、エンリイ、ファル、エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイドが集まった家があった。








「まあ、あたしたちはさー。最初、幸太郎さんに奴隷から解放して


もらった時は、警戒してたの。


何か魂胆があるんじゃないかって。


それで『エリ』『ユラ』って偽名を名乗ってたのよ。


でも、それがぜーんぜん、幸太郎さんってなーーーんにも


要求もしないし、企んでもいないのよね。


なんか拍子抜けしたくらい。


それどころか、ダークエルフの村の人々を無償で治療し始めるし、


死産の赤子も命がけで生き返らせるし・・・。


石化したダークエルフの調査隊を、ものすごい汗をかきながら


必死に生き返らせようとしてるのをみてたらさ・・・


なんか警戒してた自分たちがバカみたいじゃんって思えて」





「でも、最初は『ダンジョンで死んじゃうんだろうなぁ』って


思ってたのよ。いや、ごめんて、モコ、エンリイ。


当時はそう思ってたってだけ。


ところが予想は見事に外れ!


ダンジョンを『神虹』で、文字通り吹っ飛ばして5人全員


無事に生還。うん、あれ、カーレからでも見えたわよ?


聞けば悪魔ナイトメアにドラゴンタートルまで


倒してきたっていうからさ。もう、逆に呆れたわ」





「その後のロイコークたちとの戦いとか、辺境伯家を


救った話とか、完全に自分たちの


遥か上の実力ってわかってからかな?


いつの間にか幸太郎さんのこと


好きになってたのに気が付いたのは」





「一番はっきり認識したのは・・・多分、あれだと思う。


ニコラたちと戦った時のこと。


ニコラたちがやった、残虐な行為を聞いた幸太郎さんが、


静かに泣いてたのを見て、


胸が締め付けられるような感じがしたの。


普通、男の人って、


人前で涙を流すのを恥ずかしいって思うじゃん?


でも、幸太郎さんって泣くのよね。・・・感動しちゃった。


大人の男が、誰かのために流す涙って、


こんなにキレイなんだ・・・って」





「でまあ、気が付いたら、あたしもユーライカも、


完全に幸太郎さんにメロメロだったってわけ。


もう絶対に他の男じゃ満足できないっての。あははは」





エーリッタとユーライカは明るくケロっと



『惚れた理由』を話している。








「あたいは、まあ、知っての通り、


コウタロウに命を救われたからね。


ハイジとの約束も守れず、こんなところで死ぬのは嫌だって


思ってたんだけど。全部ひっくり返すんだからな。


そりゃあ、もう、畏敬の念を抱かずにはいられなかったさ。


そして、あたいを生き返らせる行為がコウタロウにとって、


どれほど重いリスクなのかを知った時、


心から『完敗だな』って思ったぜ。


それと、あたいとハイジをちゃんと『女』として見てくれるし。


実はさ、あたいとハイジがドワーフの村を出た理由の半分は


『それ』なんだよ。


あたいたちの身長はドワーフの村では


『背が高すぎる』だよな。


どうしたってドワーフの好みからすれば順位は一番下。


嫌われてるってワケじゃないけどさ、理想からは遠すぎ。


村にいたら結婚相手なんて見つかりそうもない。


で、冒険者になったら、今度はあたいたちの肩幅や


腕の太さが『気持ち悪い』って言われる始末。


もう自信なくしちゃってさ。


もう、結婚なんて諦めようと思ってたところだったよ」





クラリッサは自分たちを過小評価している。とにかく



クラリッサとアーデルハイドがすごい美人であることに



異論のある男はいないだろう。



前にも述べたが、男の脳は、相手の女性が美人だと無条件に



『自分に対して好意を持っている』と



誤解する機能がデフォルトで搭載されているのだ。





しかし、この2人を口説きたいと思う男はいても、



はっきり言えば『取り付く島が無い』のである。





アーデルハイドが『人見知り』するからだ。





大好きな姉に近寄る男を『悪い虫』と睨むし、



自分に近寄る男は怖い。



アーデルハイドが怖がっていると、クラリッサは妹を守りたいから



男たちと距離を取ってしまう。



そして、自分たちよりも圧倒的に強そうな



クラリッサとアーデルハイドを恐れる男だって当然いる。



だから『肩幅が』とか『腕の太さが気持ち悪い』と



言ってしまうのだ。恐怖の裏返し。





もしかすると、幸太郎とアーデルハイドが出会ったケースは、



万に一つのラッキーパターンだったのかもしれない。



どちらにとって幸運だったか? どっちだろう?





「ところがさ、幸太郎はあたいの下着見て、


赤くなって照れてるんだよな。


思わず笑ってごまかしたけど、


本当は、こっちの方がドキドキしてたんだ。


そして、コウタロウはさ、銅貨一枚にもならないってのに、


誰かのために、ためらわずに自分の命を懸けるんだよな。


不思議な男だよ。


冒険者って言えばさ、普通、カネ・カネ・カネ・カネ・・・。


『金を出せよ、金を出すならやってもいいぞ』って


意地汚い連中ばっかりなのに、コウタロウは違うんだ。


デイブとデボラを助けに行くときの、


コウタロウの迷いの無いまっすぐな目を見て思ったよ。


『ああ、本当にカッコイイ男って、こういうヤツなんだな』って。


もう、完全に惚れてた。降参。負け。


単純な腕力なら、あたいはコウタロウの何倍も強いと思うけど、


もしコウタロウに押し倒されたら、


絶対、あたいは抵抗できないね。


体に力が入らなくて、言いなりになっちゃう。


もう心がとっくに降伏してるからさ。


コウタロウの代わりなんていらないよ」





「わ、私は、クララを生き返らせてくれたとき、思ったの。


この人は、きっと神様の御使い、なんだって。


わたしと、クララに、救いを与えるために、


はるか、空から、光と共に地上に降り立ったんだって。


本物の、本当の聖者様。


もう、コウタロウさん以外、考えられないもん。


ずっと、ずっと、クララと一緒に、死ぬまで、そばにいたい。


そして、コウタロウさんは、私の夢を、叶えてくれる人。


わ、私の、子供の頃からの、夢は、


お姉・・・クララが好きになった人に、


クララと一緒に、お嫁さんにしてもらう事、だったから・・・」





クラリッサとアーデルハイドの告白に、モコたち全員が



『うんうん』『わかるわかる』と、うなずいていた。








この樹木の家には幸太郎の嫁になる『予定』の7人の美女が



集まって会議していた。さしずめ『嫁ーズ』か。



ファルがこの部屋に『密室』の魔法をかけている。





幸太郎は『まったく! 知らない!』が、



すでに嫁の順番まで決まっていた。





ナンバー1   モコ


ナンバー2   エンリイ


ナンバー3   ファル


ナンバー4   エーリッタ


ナンバー5   ユーライカ


ナンバー6   クラリッサ


ナンバー7   アーデルハイド  





この世界では『夫は妻たちの共同所有物』という文化がある。



人の天敵が存在し、人が死にやすいからだ。





『自分の好きになった男が、来週も生きてるとは限らない』





だからこそ、この世界の女性は好きになった男を



簡単には『諦めない』のだ。



女性は誰だって、自分だけを愛して欲しいし、



自分を一番に愛して欲しい。



しかし、その結果、他の女性と壮絶な潰し合いをするくらいなら、



いっそ仲良くシェアしようという『知恵』が生まれただけ。



この妻の順位も、その『知恵』から生み出された。



あえて、予め順位をつけることによって、



無駄な争いを避けようというのだ。



上位の妻は、下位の妻を気遣い、



下位の妻は上位の妻に優先権を譲る。



もちろん、不満があるなら、いつでも妻から離脱すればいい。



生物学上の『男』なら、他にいくらでもいる。



男なら誰でもいいというのなら、特定の男に拘る必要は無い。



特に幸太郎なんかに拘るのは狂気の沙汰だ。








現在、『嫁ーズ』は大事なことを話し合っていた。



別にお金の話ではない。



幸か不幸か、幸太郎は経済力がある。



エルロー辺境伯の金庫室からドロボーしてきたものと、



ダンジョンのお宝を、一切合切回収してきたものがあるから。





議題は『これ以上、妻を増やさない方がいいのではないか?』だ。





提案したのはクラリッサ。






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