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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーとアルカ大森林 5
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魂に感染


 話はカース・ファントムの方に移った。モーリーが



バーバ・ヤーガを空間転移で連れてくる。



昨日の顛末には誰もが興味を持っていたのだ。





最初に幸太郎が断りを入れておく。





「これは、俺自身が説明を受けていないから、


左鬼さんと右鬼さんに意識が接続された結果


流れ込んできた情報を基に、


いくつかの憶測が含まれていることを忘れないでくれ」





「正確とは言い切れん部分があるということじゃな?


わかった。憶えておこう」





ギブルスが幸太郎の言う事を要約した。





「まず・・・。カース・ファントムの目的は、


ドライアード様たちに『感染』して、


『乗っ取る』ことだったんだ」





「感染んんんんん???」





「乗っ取る、じゃと? 我らをか!?」





ドライアードたちが思わず叫んだ。



もちろん、異世界の話の時から



幸太郎が『密室』をかけてあるので心配はない。





「はい。詳しい仕組みは不明です。


とにかく、ドライアード様たちが、


カース・ファントムに対し、何らかの力を使用すると、


その力に対して『感染』し、力を遡って


ドライアード様たちに侵入、同化、


魂を侵食して混ざるつもりだったようです。


ギブルスさん、イネスさんの『攻撃を待っている』という予測は


大正解でした。


まさに、ドライアード様たちの攻撃が来るのを


待っていたのです。


だから森を枯らし、挑発を繰り返していたわけです。


最初、ジャンジャックたちが黒死病に感染した時、


カース・ファントムは止めを刺さずに見逃しています。


これの理由は、ドライアード様たちに


目標を絞っているのと同時に、


逃げた人々が悲鳴を上げ、ドライアード様たちに


助けを求めることを期待していたのです。


助けを呼ぶ声に応え、ドライアード様たちがやってきて、


カース・ファントムに攻撃を開始することまでが


計算の内だったわけですね。


ドライアード様たちがカース・ファントムに攻撃すると


力と力の接触により、感染が始まります。


その瞬間に敗北が決定します。


魂が半分以上、カース・ファントムに上書きされると、


意識の主導権が奪われます。すると、


『ドライアードのままで中身がカース・ファントム』


という状態になるのです。


寄生虫が宿主を操るような状態でしょうか」





「な、なんて気味の悪い・・・」





「魂の寄生虫・・・?」





モコとエンリイが思わず、ぶるっと震えた。無理もない。



幸太郎とて、そんな事が出来るなどとは、



今まで一度も考えたことが無かった。





「それで、我らを乗っ取って、いったいカース・ファントムは


何をするつもりだったのじゃ?」





「それは、わかりません。いえ、本当にわからないのです。


それらについての情報は流れ込んできませんでした。


ただ、アルカ大森林の3人のドライアード様が


全てカース・ファントムになってしまったら、


森に住む全ての生物は、カース・ファントムの


オモチャ同然になるでしょう。生かすも、殺すも、


全て誰も抵抗できなくなると思います」





「森が地獄になってしまうのか・・・」





バーバ・ヤーガがつぶやいた。





「そうですね・・・それが目的なのかもしれません。


誰も森から出られず、命を弄ばれるだけ。


言われてみれば、


この森を地獄に変えることが、目的だったのかも・・・」





「幸太郎、あのカース・ファントムは、


ダンジョンにいた奴とは別の個体だよな? 


あれはどこから来たんだ?


他にもいるのか?」





ジャンジャックが質問した。





「もちろん、ダンジョンにいたのとは別の奴だよ。


断片的な情報しかないから、俺の推測で補完するが、


こんな感じの話らしい」





幸太郎はそう言って『いきさつ』を話し出した。








かつて、昔。どのくらい昔なのかは情報が無かった。



複数の悪魔が協力して、地獄の下層に『穴』をあけた。



日本人にわかりやすく言いかえるなら、



『地獄の釜の蓋が開く』というやつだろう。





地獄の裁判所で判決を受け、服役中の者は閻魔の管轄だが、



刑期が終わって自由になった後、



地獄の下層へ落ちてゆくのは個人の勝手である。



はっきり言えば、『個人の望み通り』であり、誰も強制していない。



昏く醜い魂だから、昏く汚い地獄の下層が居心地がいいのだ。



例え、毎日、毎秒、終わらない殺し合いが続くとしても、だ。



そしてそれは、『誰も管理していない魂』ということでもある。





その地獄の亡者たちが開いた『穴』から逃げ出した。





しかし、地獄の亡者が現世に逃げ出すなど、



現世に混乱を引き起こす以外に何ももたらさない。



事態に気づいた前鬼、後鬼が警報を発令。



即座に左鬼と右鬼も駆けつけ、



物質界へ逃げ出そうとする亡者たちを食い止めた。



赤鬼と青鬼も、金棒を振るい、勇敢に戦った。





奮戦の甲斐もあって、物質界へ逃げた亡者の数は少数に抑えられた。



そして、物質界へ逃げた亡者を前鬼と後鬼が追いかける。



『冥界門』から飛び出した前鬼と後鬼。



彼らは次々に地獄の亡者たちを捕らえ、冥界へ送還。





しかし、『捕まえられない亡者』も存在したのだ。





それは『生きてる人間と契約した亡者』だ。



例え、内容的には一方的な寄生だろうと、乗っ取りだろうと、



『生きてる人間がした選択』には手が出せない。



神や天使は基本的に、表立って物質界に手を出してはならないのだ。



地獄の亡者との契約など、『バカ』以外の何物でもないが、



それでもなお、生きてる人間の選択を



神は尊重しなくてはならない。



愚かの極みの選択でも、『気に入らないから』と



神や天使は覆すわけにはいかないのである。



物質界は勉強の場であり、最後の清算は



その人が死んでから行われるのだから。








「その時、生きてる人間を用意してたのが、ナイトメアであり、


今回のカース・ファントムを作った・・・『ロストラエル』だ」





「ロストラエル・・・? 誰だそりゃ?」





「ジャンジャック、すまないが、俺もわからない。


おそらく『大神オーガス』や『女神リーブラ』と


同じくらい強い力を持つ大悪魔なんだろう。


何しろ、今回のカース・ファントムとの契約を


喜んでするような人間の信者を大勢所有しているらしい。


信者というより『悪魔に魂を売った人間』と言い換えた方が正確かな。


ナイトメアなどは、悪魔になったばかりで信者がいないから、


自分の体の一部を埋め込んだ人間を依り代として


カース・ファントムを作ったようなんだ。


ロストラエルが何を目的として、こんな事を


したのかは全く不明だよ。多分・・・


他にもカース・ファントムはいると思う・・・」





「オーガスとリーブラ以外に、そんな悪魔がいるなんて・・・。


ボク、ちょっと怖くなってきたよ・・・」





エンリイが不安そうな顔をした。無理もない。





「エンリイの言う事はよくわかるよ。


人間では、全く太刀打ちできない悪魔だろう。


何しろ物質界と冥界の境目に、短時間とはいえ、


『穴』を空けてみせたんだからな。途轍もないパワーだ」





「しかし、それでも世界は滅んでおらん。


幸太郎、それは何故じゃ?」





「ギブルスさんの疑問は私も感じました。


正確なところはわかりません。


おそらくはオーガス、リーブラの時と同じく、


本気で世界を滅ぼすつもりなら、アステラ様やムラサキさんたち、


神々を相手に全面戦争になるからだと思われます。


ただし、いくら強力な悪魔でも、


太陽神には絶対に勝てません。パワーの桁が違いすぎます。


それに、どんな経過を辿ったとしても、


地上が滅んで人間がいなくなったら、面白くないのでしょう」





そして、幸太郎は苦しそうに、付け加えた。





「私の推測ですが・・・多分、地上を地獄にするのは、


『人間の手によって』でなくてはならないのでしょう・・・」






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