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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

極悪人。高岡勇気へのメッセージ

作者: ヒロモト

高岡勇気さんへ。


伝えたいことがあります。




あなたの名前を書くのもとても辛かった。

動揺しながら精神のお薬を飲んでゆっくりゆっくりこれを書いています。



だってあなたは飲酒運転で娘の千鶴を轢き殺した犯人ですからね。



もちろん私はあなたが憎いです。

死刑になって欲しいです。


でも無理でしょうね。


あなたは16才。


少年法か。


あなたはきっと数年で社会に出てくるのでしょうね。

高校へ戻りますか?

大学へ行きますか?

友達は出来ますか?恋人は出来ますか?好きな食べ物を食べてお酒を飲みますか?


ごめんね。質問ばっかりね。


『被害者を守る法律は日本にはない』


これはテレビのドキュメントで聞いたことはあったけど本当なのね。


本名を報道された私の家には連日マスコミが押し寄せて来ますし、多くの親戚にも迷惑をかけています。

一生私は『被害者遺族』なんですね。


ああ苦しい。


でもあなたは『少年A』と報道されたので社会に戻ったら殺人の過去を隠し、ごく普通の青年として生きていけるのでしょう。


憎い憎い憎い。


『事故』だと言ったそうですね?


酒は飲んでいなかったと言ったそうですね?


先輩にイジメられて無理やり車を運転させられたと言ったそうですね?


あなたのお父さんは警察のとっても偉い人なんですよね?


そんな暴論通らないわよと思っていましたが、世間はあなたを『加害者だが被害者でもある』と同情的です。


対する娘は『ホストと付き合っていた女』『真夜中に出歩くふしだらな女』『自殺じゃないのか?』。

とSNSで今も騒がれています。

『私があなたから金を獲ろうとしている。娘を使った当たり屋だ』なんて声もあるんですよ?


あーあーあー。


ええと。


落ち着きます。


乱れました。


頑張っていいます。

頑張ります。



『あなたを許します』



これしか私が救われる道はないと思いました。

信じますよ。

あなたも被害者だったんですね?

イジメ。辛かったでしょ?


ご存知でしょうが私の心は壊れています。


あなたを憎む事で私は私が自分でなくなる恐怖を感じています。


許さなければ私はあなたを殺してしまうかもしれない。


嫌ですよ。


殺人者になんか堕ちたくはない。

天国で娘に再会したいから。


若者はまだ出たばかりの芽なんだと思います。


あなたという枝は迷い、悩みながら伸びていき、時には

間違った方向に進む。


我々大人はあなたの様な枝が間違った方向に進んだら導いであげるのが仕事です。


きっとあなたは首を傾けているのでしょう。


あなたが大人になったらわかるわよ。



※でも娘の命日だけはあなたが罪の意識で苦しんでくれるのを望んでいます。


一年に一回ぐらいわね?








などと好き放題書いてくれましたね?

記憶力いいでしょ?僕。

あの手紙はムカついたなー。


あっ、どうもどうも。


あなたの娘を殺した井畑雄大と申しますぅ。


はじめましてですね。


『高岡勇気』さん。


いやー。やっとみつけたー。


僕を『許します』?


何を上から!


あなたのせいで僕の貴重な10代の数年が失われたんですよ!?


僕はあなたを許していないですからね。


娘が一人死んだぐらいでワーキャーと……。


僕を信じるって?


爆笑だなぁ。


全部嘘なのに。


『酔った僕が車を運転して馬鹿な女を轢き殺した』


それだけです。


金と権力があればこんな事も出来るんです。


一つ賢くなりましたね。



……真似できないか。庶民には。



枝がどーのこーの言ってたね?

うるさいよ。


例えでもあなたが人間で僕が植物というのが大変気に入らない。


謝ってください。


こらこら『千鶴』。ここは病院だよ? 静かになさい。


あっ、紹介します。


娘の千鶴です。


あなたの娘さんから名前を頂きました!

きっとあなたが傷つくと思って……どうすか?


僕は今結婚してこうして娘もいます。


あなたの娘が掴めなかった幸せって奴ですよ。


他はえっと。


あっ、毎年あなたの娘の命日は僕の家ではパーティーをします。

クルーザーを借りて海に出て仲間たちと騒ぐ。

とても楽しいです!


記念日をくれたってのは少しだけあなたたち親子には感謝かな?


ん?千鶴お腹が減った?そうか。

じゃあそろそろ帰ろうね。


また『お見舞い』に来ます。




高岡勇気は病院のベッドにいた。

既に麻薬で意識のほとんどない状態で。


台所で頭痛を感じ倒れ、そこからの記憶がない。


(さっきだれかがきていたような……?)


男と……小さな女の子。


聞き覚えがあるような無いような?


(女の子の声……子供の時の千鶴の声に似ていた……ような?)


「またきてくへるといいは」


勇気はそう呟いて目を閉じた。









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