09話.[好かれているか]
「美咲ー」
「もう、愛海に怒られても知らないからね?」
あれからというもの、なにかと引っ付いてくるようになった。
しかも愛海がいないタイミングを狙ってわざとらしく、なかなかに計算高い人間のようだ。
「ユウ」
「はーい」
「愛海にこのことを言っておいて」
「わかりました」
実体がないというのはこういうときに便利かもしれない。
もう1度あのときのような感じになりたいとは思えないが。
「酷いな」
「ルナちゃんに会いに行きたいから離れて」
「わたしには?」
「ルナちゃんに会うんだよ? 結局同じ空間にいることになるんだから無意味なことでしょ」
相変わらず彼女の部屋は温かった。
ルナちゃんのために考えられた最高とは言えなくても最適な部屋。
ルナちゃんは呼ばなくてもわざわざこちらに来てくれて、今日も肩に座していた。
「好き、キスしたいぐらい」
「さすがにそれは無理だよ」
やはりいまでも自分が何故好かれているのかがわからないままだ。
愛海と違って可愛げもないのに、誰かの恋人だからこそ魅力的に見えるということなのだろうか?
そういう状態で奪うことに快感を抱いているとか? ないか、瑠奈に限ってそれはない。
「さてと、そろそろ帰ろ、んっ」
「これは内緒ね、愛海に嫌われないためにもその方がいいでしょ?」
ちゃんと言おうと決めた。
さすがになにも言わずにおかないでいるのはできないから。