俺の女神が、幼女ってホンマでっか?!
ある日突然、異世界へと跳ばされた悠真の目の前にいたのは···幼女?!
「ん? ここは?」
目を開けると天井にはズッシリとしたシャンデリアが有り、それを囲む様に小さなシャンデリアが釣らされていた。
寝ていたのは、ベッドなのだが、これがまたかなりの柔らかさで悠真が使ってるフランスベッド製のマットなんかよりも良かった。
右を見ても、左を見ても誰も居らず、シーンとしていた。
「っと···」
起き上がろうとしても、余りの柔らかさに動けず、転がる様にして床へと降り立った。と言うか、落ちた。
悠真は、立ち上がり周りを見渡すと、やはりベッド以外にも置かれている家具も見たことのない形でさも高級感が漂っていた。
「確かあん時···」と頭に手をやってる自身の姿を見て、ふと思った。
(なんで俺、裸?)
着ていた服は、ベッドの側にある椅子に綺麗に畳まれて置かれてあったから、誰かこない内にと素早く着替えた。
パリッパリのノリの効いたシャツには、シワもシミもなかった。大学の学食でシャツにケチャップをつけてしまったが、それすらも無く、履いていた紺のパンツもまた然り。シワもヨレも無く、履いた時に爽快感すら感じた程だった。
「さて、どうしようか?」とこのただっ広い部屋に一人で居るのも困るし、かといって誰かがやってくる気配もなく···
手近にあったソファへと腰掛けるもまた、身体が沈んでしまうくらいの柔らかさ。
「そだ! 携帯!」
服と一緒に置かれていた鞄の中を探り、携帯を手にすると···
「─んだこれ! 圏外じゃん!」
携帯の電波は、圏外になっているわ、ズラズラとおかしな文字は並んでるわ···。収められてる写真やメモ、スケジュールはそのままではあるが、いかんせん文字と言うのか、記号と言うのか?読めない悠真である。
「ったく、ここどこだよぉ! あーっ!」
頭を手で掻き乱し叫ぶ悠真だったが、急にドアを叩く音がし身体が固まる。
「誰? いませんよ、ここ···」
ソファに渦もるように隠れ、小さな声で返す悠真。
「─さま? 入ります」とドアの外から入ってきたのは、黒服に真っ白なエプロン、頭に白いリボンをつけた、所謂メイド?
「あら? 確か、リアン様はこちらで···」とそのメイドが、中に入り、隠れていた悠真を見つけ、安堵の溜息を付いた。
「コスギユウマ、様ですね?」
黒服のメイドは、笑ってそう言った。
「うん。そうだけど。あの···ここは?」と悠真が聞くと、メイドは、
「私は、ここレミホルム国リアム·レミホルム·クルガ家メイドをしておりますセシャトと言います」
セシャトと言うメイドは、深々とお辞儀をし、こちらを見た。
「あ、ども。小杉悠真です。で、あの···」
「では、こちらへ。ルミナ様がお待ちです」と悠真の問いに答える事は無く、ドアへと向う。
「さ、コスギユウマ様、こちらへ」
セシャトさんが、手を伸ばすので、悠真は訳がわからずもそのルミナ様がなにか教えてくれるだろうと思い、後をついていく事にした。
「······。」
ハァッ···ゼェッ···
なにやら息遣いの荒くなる悠真だが、決してやましい事をしている訳ではない。断じて!
悠真の目の前を歩くセシャトさんは、息一つ乱れていないというのに···
「あ、あの。セシャトさん?」
名を呼び、まだですか?と聞くつもりだった悠真。
「こちらです」とセシャトさんが、立ち止まったのは家一軒入りそうな大きく伸びた扉!をセシャトさんは、ついていた鉄製のリングで何度か叩き、扉を開けた。
「さ、コスギユウマ様。ルミナ様がお待ちです」
「はぁ···」
大きな扉の中に足を一歩一歩踏み入れる悠真は、さらに中に置かれてる調度品に目を奪われた。
(高そぉ! 幾らすんだ?)
「ルミナ様? コスギユウマ様をお連れしました」とだけいい、セシャトさんはその場を去り、大きな空間に謎のルミナ様と悠真が···。
「あの···すみません。俺···」
「誰も居ない?」
背もたれが大きく上に伸びた椅子から、そんな声が聞こえ、悠真は、短くはいと答えた。
「本当に?」
「はい。お、俺しかいませんけど」
辺りを見渡しても、この部屋には悠真と椅子に座っているであろうルミナ様しかいない。
「っと···」
小さな声がして、大きな机のある所から···
「おにいちゃぁぁぁんっ!」と可愛らしい女の子が、トテトテと小走りで悠真に抱きついてきて、そのまま倒れた。
「っだ!」
年の頃は、小学生?幼稚園児?みたいに小さく、顔も幼いが、どことなくフランス人形みたいなふわふわなウエーブの掛かった金髪に薄い緑の目、ぷっくりとした唇をして、倒れた悠真を見下ろして笑っていた。
「······。」
(え? 誰?)
初めて見る可愛らしい女の子に、悠真は見覚えすらなく戸惑う。
「おにいちゃぁんっ! 会いたかったぁ!」と女の子は、悠真の頬をグリグリ撫でながら嬉しそうに言う。
「ご、ごめん。誰かな? 俺···」
なんとか悠真は、女の子を自分の身体から退かし、その場に座らせたが···
「えーっと、誰? ここにルミナ様っている?」
小さな子供が苦手な悠真は、泣かれないように優しく聞いた。
「うん。いるよっ!」
女の子は、ニコニコしながら笑って頷く。
(いるのか。近くで遊んでたのかな?)
「ルミナ様は? どこ?」
「ここだよ」
「ここ? どこかな? この部屋の何処かにいるのかな?」
「ここだよ!」
何度聞いてもこことしか言わない女の子に、悠真は少しイラついて、
「あのね。俺、そのルミナ様に用があるの。どこにいるの?!」と少しだけキツめに言った顔が怖かったのか、
「ふぇぇぇぇん! ここにいるのぉ!」と床に寝転がり泣きじゃくってしまった。
(うるさい。だから、ガキは嫌いなんだよ)
「ね、きみ。知ってるんなら、教えて? ルミナ様に···」
悠真は、痛む頭を抑えながらも言った。
「どこ?」
「ここ〜!」
(拉致があかん)
「だからさ···」
泣きじゃくる女の子を前に、泣きたくなる悠真。
「ね?」
「ここ〜っ! ここルミちゃんのお部屋なの〜っ!」
デパートのおもちゃ売り場でよく見かける子供の駄々こね。
「ここにいるの〜。ルミちゃん〜〜っ」
泣きじゃくってクルクル回る女の子。
「······。」
(こんな小さな女の子が? この国の? 嘘だろ?)
悠真は、自分の頬を抓ると痛かった。
(夢じゃない)
「まいったな」
悠真には、弟も妹もいないし、小さな子供が苦手だった。だから、こうしてないてるのをみても、うるさいなと思う程度で、泣き止まし方がわからない。
パンッパンッ···
「いけませんね。レディーを泣かしては···」
燕尾服を来た銀髪で長身、丸い眼鏡を掛けた男性が、扉の前に立ってこちらを見ていた。
「誰?」
「私ですか? 私は、リアンと申します。ここリアム·レミホルム·グラン家の執事をしております。よろしいのですか? ルミナ様が、泣いておられますが?」
銀縁眼鏡越しに冷たく光る瞳に、悠真は軽く身震いを覚えた。
「でも···。ど、どうしたらいいか···」
途方にくれる悠真に、リアンは小さく笑って、
「ルミナ様? 悠真様が困っておられますよ?」と澄んだ声で床で泣きじゃくって回ってるルミナ様に言うと、
「そうね。私としたことが···」
「······。」
スパッと立ち上がると、自分の身なりを整え出し、
「初めまして! じゃないよね? おにいちゃん!」
悠真は、ポカンとした顔で自分の目の前で喋ってる女の子を、いや、幼女を見た。
「これならわかるかな?」
ポンッと出てきた小さくて黄色の花束をジッと見た悠真は、無言で頷いた。
「ようこそ、レミホルム国へ!」と可愛らしく頭を下げて笑ったのである。
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レミホルム国
大きさ/467550平方メートル(およそ東京ドーム10個分)
東西南北に4つの街があり、その中央に聳えて建つ城が、ルミナが住むリアム·レミホルム·グランである。それでも、名古屋ドーム1個分はある面積。
人口/およそ200000人
国王は、ご存知の通りルミナの父·リアム·グランである。レミ·レミホルムは、王妃の名で、ルミナにとっては母にあたる。
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「······。」
「でも、私にも何故コスギ様が、こちらにいらしたのかはわかりません。リアンは?」
「私もです」
(おかしいな。さっきは、幼女だったよな?なんで、大人なの?)
悠真は、自分が見ているものが、夢なのか?現実なのか?わからなくなっていた。ほんの数分前までは、自分の前でギャン泣きしていた小さな女の子が、たった一瞬で大人な体型に!!
「これって、もしかして異世界転生とか?」
悠真が、好んで読んでいるラノベ小説で一番多いジャンルである。
「なんですか? イセカイ?」
ルミナは、リアンを見るが、リアンも知らなかったと見えて、首を振るだけだった。
「でも、原因がわからなければ、打つ手もありませんね」
「はぁ···」
(俺って現実の世界じゃ、死んだの?)
「どうですか? ユウマ。暫く屋敷に滞在しませんか? もちろん、原因がわかるまでで結構ですから。リアン、よろしくて?」
ルミナが、リアンを見ると、リアンは眼鏡を掛け直し、頭を下げた。
かくして、悠真は女神·ルミナの住むリアム·レミホルム·グラン城に住むことになったのだが···
翌日、再度気を失った。王家のペットであるミリュウを見て!
登場人物紹介
小杉 悠真
身長/180cm 体重/54kg
頭/普通(だと思ってる)
容姿/普通(だと思ってる)
彼女/いない