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第92話 目覚めのキッス

小休止小休止。

「おはようございます。相変わらずラブラブで」

「……ヘタレさん?」


 この人何やってるんだろうととりあえず僕はそう思った。

 何で僕はリルちゃんを抱きしめながらヘタレさんに抱きしめられてるんだろうと思った。

 何でヘタレさんは無意味に楽しそうなんだろうと思った。

 つーかむしろ何でヘタレさんは幸せそうなんだろうと思った。



 結論。変態だから。



「……変態は撲滅された方がいいですよー、ヘタレさん」

「ヘルグですってば。ていうか、開口一番それですか」

「死ね変態ー」

「あの、寝惚けてます?」

「うん。寝惚けてます」

「……確信犯ですね?」


 そんなことないですよーと僕は底抜けに明るい声で言いながら、ヘタレさんを思いっ切り蹴った。渾身の力で。……あ、落ちた。

 さて、おはようございます、皆さん。朝ですね。今日も爽やかな一日が始まりそうです、起き抜けにヘタレさんに出会ってしまったことは差し引いても!


「ちょっ……痛いですよコメットさん……あ、それとも勇者さんって言った方がいいですか」

「どっちも嫌です」

「え、いやあの」

「呼ぶな変態。死ね」


 すっぱりそう言い切ると、まだ眠り続けるリルちゃんの方にぽふりと倒れてふうと一息ついた。

 ああ幸せだ。ヘタレさんはいるけど幸せだ。ヘタレさんがいなくなればもっと幸せなのになー。早く消えろ馬鹿。


「……勇者さん、最近ひどいですよね……最初の頃なんてあんなに可愛かったのに」

「死ね変態。つーか可愛かったって」

「あ、今も勿論可愛いですよ? けれど天然ボクっ子だったあの頃を思い出すと――」

「何を思い出してんだド変態! この世からすっぱり浄化してやろうか!?」

「嫌ですねえ。だから今のツンデレ勇者さんも好きだって言ってるじゃないですかー」

「だ、れ、が、ツ、ン、デ、レ、だ!」

「勇者さんです」

「死ね!」


 ぼふりと枕を投げる。――あ、リルちゃんの枕投げちゃった。ごめんね。変態によって今君の枕は汚されてしまった。本当にごめん。

 心の中で冷静に謝っていると、ヘタレさんは受け止めた枕をこっちに放ってくすくす笑った。ちなみに僕は枕を普通に回避。


「え、何で避けるんですか」

「触れたくないからです」

「とことんひどいですねー……可愛いですけど」


 死ね。僕は目でそう伝えると、リルちゃんの顔の上に見事落下した枕を拾い上げた。本当は触りたくない。変態がうつる。

 だけどあれだ、リルちゃんに変態がうつるのはもっと大変だ。そんなの許されない。


「……勇者さん、今ものすごく失礼なこと考えてましたよね」

「え? そうですか? 変態がうつると思っただけですけど」

「それが失礼なんですけど……」


 失礼で結構。僕は呟く。もう一回寝ようかな、爽やかさが全部この人の馬鹿さ加減に持って行かれた。

 ヘタレさんのいない所で目覚めれば嫌でも爽やかな朝になるもんな、そうだ、二度寝しよう。


「――って何を寝ようとしてるんですか」

「二度寝最高じゃないですか。次はヘタレさんのいないところで目覚めたいですね」

「……人をそうやって変態扱いして」

「だって毎朝いるんだもん。十分変態じゃないですか」


 ヘタレさんは否定しなかった。事実だからだ!


「さー、出て行って下さい。私今から魔王様といちゃいちゃするんです」

「……私といちゃいちゃするのは嫌がるくせにですか」

「格が違いますから。魔王様とならどこまでもー」

「……勇者さんも十分変態ですよね……?」


 勇者は否定しなかった。というか出来なかった。事実だからだ!

 だけどヘタレさんにだけは言われたくないというか。こんな奴に変態呼ばわりされてたまるかというか。どうでもいいけど早くどっか行けばいいのに。

 思いながらもベッドの上に転がる。どなたかそこの変態を追い出して下さい。


「ゆーしゃさん?」

「伸ばさないで下さい」


 ふいに上から落ちてくる声。

 長音だと突然薄っぺらい感じになるよね。とまあそれはいいんだけれども。


 ……うん、何だろうねこの人。


 ――いや、本当に何?


「……顔近いんですけど」

「キスしてもいいですか?」

「そのまま舌噛み千切ってやろうか」


 ヘタレさんは何故か、僕に覆いかぶさるようにしてベッドに手をついている。上から覗き込まれるままに。

 むしろこれは、事前に察知し回避できなかった自分が恨めしい。

 ……いや、ていうかね、何でこんな体勢なんだろうね。どうしてこんなに危ない体勢なのかしら。

 どう考えたって非は僕じゃなくヘタレさんの方にあるよね。


「勇者さんが可愛いから悪いんですよ?」

「ちっ、気持ちの悪いことを。ていうかさりげに人の心読んだな外道」

「最初の頃はこんなことを言ったら真っ赤になって反論してたのにー。段々反応が捻くれたものになってますよ勇者さん」

「何であんたが悲しそうな顔をする。切実に気持ち悪いのでやめて下さい」


 ていうか避けろ。視線で訴えてもヘタレさんは華麗に笑ってスルーする。……こいつ気付いてるのに無視してやがる。

 頭の横には、手。ぎしりと歪むベッド、逃げようにも逃げられない。昔の僕だったら――どうしただろうか。

 ……喚いてたな。やめて下さいとか叫んでたな。いや今も言ってるけど。あくまでドライに。


「あー、あの、隣に魔王様がいるのでやめて下さい。寝てるとはいえ。教育に悪いです」

「魔王様も子供じゃないので大丈夫ですよ。ていうか、魔王様がいなければいいんですか?」

「固くお断りさせて頂きます。死ねばいいのに」


 死ねと連呼する。分かってますよ。リルちゃんが起きたら止められることくらい。

 だってリルちゃんはその言葉を嫌う。たとえセクハラされていても! いや大抵リルちゃんはそれをセクハラと認識しないのだけれど。

 と、いうか、リルちゃんにこんなところ見られたくない。というか見せたくない。むしろヘタレさんにモザイクを掛けて一生封印してやりたい。

 けれどヘタレさんは、僕のそんな願いを普通に無視する。分かった上で多分無視しているのだ。

 そのことを肯定するように、ヘタレさんはそっと顔を近付けてきて呟いた。


「好きですよ勇者さん。ツンデレなところが特に」

「別にツンツンしてるわけじゃないですから。本気で嫌がってますやめて下さい訴えますよ」


 耳元で囁かれるぞっとするような告白に、その通り背筋が寒くなる。ていうかデレがないじゃん。

 そういう問題でもないのかと睨んでいると、ヘタレさんは目を細めてくすりと笑った。笑えば綺麗だけど――何だかあくどい。


「あ、ちなみに言っておきますけど、魔王様寝てないですよ」


 ヘタレさんは、笑ったまま――と、いうか。


「……は?」


 え、……何?


 一瞬言葉の意味がつかめずぽかんとしたが、――それも一秒。

 ゆっくりと言葉を咀嚼すると、僕はぎこちない動きで、首を隣の方へと動かした。

 そこで、一番この状況を見られたくなかった人と――目が合う。


「おはよう。コメット」


 おはようじゃないんですけどー!






 どがーんどがどがっ、ばきっ。

 そんなありがちな効果音が響き渡った午前6時。今日もいい天気ですね。


 ちなみに殴られたのは、……誰だか分かりますよね?




小休止小休(しつこい)……今日も今日とてこんにちは。白邪です。ところで勇者くん魔王さんヘタレさん、そこに正座しようか。こら、そこ肩を抱くな。


今回は素敵にラ☆ブ☆コ☆メを目指してやってみました。後悔はしていない。

しかしヘタレさんを出す予定なんて全くなかったのに勝手に出てきたという恐ろしい展開だったり)^o^(

次回こそアレスとキナです。普通に放っておかれてる彼らの心境やいかに!

……早く更新出来るように心がけます。はい。


というか……あの、えーと。ここで少々皆様に御礼を。

見ないうちにお気に入り登録が80件を超していました。あああ夢じゃなかろうか……。と言いつつもう10回以上チラ見してます。ここまで行くと変態でしょうか。

だって最近お気に入り登録が30件を下回るという夢を見たばかりなのに!

何にせよ、読者の皆様にはいつも助けられております。

たとえ本当にお気に入り登録が30件を下回ろうと、一人でも読み続けて下さる読者様がいるならば頑張って書き続けていきますので!

そして出来れば多くの人に楽しんで頂けるよう、これからも精進して参ります。


ありがとうございました! これからも宜しくお願い致します^^

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