*一周年記念 後編*
遅くなりました、申し訳御座いません!
一周年記念企画後編です。どうぞ。
えとっ、こんにちは。
前回に引き続き一周年記念企画ということで七不思議の解明に励んでおりますエルナです。
今回も司会を務めさせて頂きますね、不束者ですがどうぞよろしくお願い致します。
さて、早速ですが――
コメット様が半狂乱です。
「やってられるかあ! こんな七不思議やってられるかーっ!」
どうやらやってられないみたいです。
やってられっかと叫び散らすその姿は、今日解雇されたばかりの元サラリーマンの酔っぱらった成れの果てのようですね。
「えっ、ちょっ!? エルナ!?」
あ、正気に戻られました。酔いが醒めたのですか? というか何に酔ってらっしゃったのでしょうか。酔っ払い様。
「いやいやいや! 違うから! 酔っ払いじゃないから! ていうかこの世界でサラリーマンとかそういうワード出さないでね!? 世界観が崩れるから!」
そう言いながら44話で警察官うんたらと言っていたのはどちら様でしょう。
「ちょっ、エルナー! 戻ってきて、キャラが崩壊してるー!」
……はっ。
あ、え、え、あ……こ、コメット様?
え、あたし、今……
「戻って来たか……よかった。うん、じゃあ、一周年記念続けようか……」
す、すみません……。
……ところであの、その……コメット様は大丈夫なのですか?
「え? あ……ああ、まあ……もう何か暴れる気も失くすほど疲れたからいいよ。もう最後までやろう」
な、何てお優しい……! 疲れているというのに……!
素敵です、憧れます!
このエルナ、一生貴女についていきますわ!
「え、あ……うん……何か複雑なんだけど」
「コメットさん慕われるような高等な人じゃあないですもんね」
「黙ってろカス」
◇七不思議 四つ目◇
「四つ目は『開かずの間』、ですね」
ヘルグ様はファイル片手に、そう告げられました。
「ようやくまともそうなの来たー! 神様ありがとう!」
それを聞いて、コメット様が飛び上がって喜びます。どうやら相当嬉しかったようですね。
コメット様が嬉しそうであたしも嬉しいです……。あたし、この不思議の解明に命をも懸けるつもりで挑みますわ!
「え、いや、別にそんな大げさな……! やめて! エルナ、目が本気なんだけど! ストップ!」
え、でもコメット様のためならあたし命も惜しみません!
どうか止めないで下さい!
「いやいやいや! 止めないわけにいかないから! いいの、そこまで気張らないで! 楽に行こう、楽に!」
コメット様……。
何てお優しいのでしょう、涙が出そうです……。
そんな優しいコメット様にエルナはいつまでもついていきますわー!
「う、うん……エルナ、何かこのやり取りもういいかな。いいよね。とりあえずヘタレさん、その開かずの間ってどこですか? まともですか? まともな謎ですか? まともなら何でもいいです」
「コメットさんも大分疲れてますよね……」
「半分以上ヘタレさんのせいですけどね」
コメット様は疲れていると言いつつも、しっかりと七不思議の解明に取り組もうと懸命です。
ああ、あたしも頑張らなきゃ……!
「えーと、開かずの間は……ん、とりあえず実際に行って見た方がいいですね。じゃあ、行きましょうか!」
ヘルグ様はそう言って、一人でぴゅーっと駆けていってしまいました。
「えー……いいじゃん。実際に見なくても……」
ぶつくさと文句を言いながらも、コメット様はそのあとに続き、あたしもそのあと、最後に続きます。
開かずの間、とは何なのでしょうか。あたしも聞いたことはあるけれど、何なのかはよく知りません。
あたしはちょっぴりわくわくしながら、ヘルグ様の背中を追いかけたのでした。
「……で、これが『開かずの間』ですか」
コメット様はため息をついて、そう聞かれました。
「えぇ。そういうことになってますね」
反対ににこにこしたまま答えるヘルグ様。まるで正反対です。
さて今あたしたちの前にあるのは、えと……魔王様のお部屋、私室というやつですね。
――確かに、とあたしは思いました。
魔王様のお部屋だとは言いますけれども、あたし、出てくるところも入るところも見たことがありませんもの。開かずの間、確かに相応しいとは思います。
「え。エルナ、中見たことないの?」
はい。あたしだけではなく、他の人もほとんど見たことがないと思いますよ。……コメット様は、あるのですか?
「うん。……月に30回くらい」
それって、ほぼ毎日ですよね。
それにしてもすごいですわ! いくら婚約者だとはいえ、このお部屋の中に入れてもらえるだなんて……。
やっぱり尊敬しちゃいます、コメット様!
「いや、尊敬されるようなことじゃあないと思うけど……ねえ、ヘタレさん」
「ふっふー、私は一日に30回入ってますからね」
「貴方の場合ただの不法侵入ですけどねー」
軽口を叩き合うお二人。その背中に、ご、後光が見えます。
すごいですわ……。あたしみたいな位の低い者はともかく、身分の高い王家に近い血族の方だって入ったことがないというのに。
さすがヘルグ様とコメット様ですわ。位がまるで違いますものね!
「それじゃ、開かずの間は不思議にすらならない、と。解明終了」
あ、そうですよね……。
入ったことがあるのなら開かずの間ではありませんものね。
「いや、そもそも魔王様が入ってる時点で違うけどね。……もしかしてエルナ、中見たかった?」
はい。少しだけ。
不謹慎ですけれど……。
「いいよ。はい」
! あ、開けてしまいました……!
いいのですかコメット様、ノックもなしに!?
「あーうん、いいんだよ多分。リルちゃん優しいから」
リルちゃん……?
「あ、ごめん、何でもない。うん、とにかく大丈夫。ヘタレさんが一日に30回不法侵入しても大丈夫だからエルナだったら秒に100回入っても大丈夫」
そ、そんなに入れません。
「比喩ね、比喩」
コメット様は明るく笑ってほら、と扉の向こうを指差します。
……ま、真っ暗。
真っ暗で何も見えません。ただ……、黒で統一された部屋だということしか。
「だよね……。うんまあこれで、解明終了ってことで。次行こ次」
そうですね。
魔王様のお部屋も拝見させて頂きましたし!
次も張り切って参りましょう!
◇七不思議 五つ目◇
「次は……、『何故ブラコンシスコンが多いのか』ですね」
「だからそんなこと知るかって言ってんだろーが!」
コメット様はヘルグ様をファイルごとお殴りになられました。……ご乱心ですか?
でも格好良いです。コメット様、ばきゃっていう些か不気味な音は聞こえましたが、格好良いですわ!
「はっ、いけない……、つい。落ち着かないと」
コメット様は正気に戻られたようで、ふうとため息をつきました。
ヘルグ様は……、いいんでしょうか。言葉にならないくらい悲惨なことになっているんですが。
「ブラコンシスコンはどうしようもないよね。確かに多さは異常だけど……よし、次行こう」
最早解明ですらありませんね。
それでコメット様、何度も差し出がましいようですが、ヘルグ様はいいのでしょうか。
「……あっ」
あっ?
「……まあいいよね。ヘタレさんだし」
若干よくないかと思いますが……、コメット様がいいならあたしもいいですわ。
「だよね! よし、次行こう」
次……って、ヘルグ様が起きないことには知りようもありませんわ、コメット様。
「あ、そっか……どうしよう」
起こしてみてはどうでしょう。
……起きれるかどうかは分かりませんが。見たところ、骨と脳とが危ないですよね。
「脳はもともと危ないから万事OK。問題ない」
……そう、でしょうか……。
でもまあコメット様が言うのなら。
「じゃあ起こしてみようか。……ヘタレさん、ヘタレさーん」
つんつんと人差し指でヘルグ様をつつくコメット様。
何だか扱いが森で見つけた珍しい蛇のようになってますが、……いいのでしょうか?
「ん、起きない……」
確かにヘルグ様はぴくりともしません。死んでいるのでしょうか。
「……仕方ないね」
仕方ない……ですか?
コメット様、あきらめるのですか?
「ううん」
ばきっ。
……あ、いい音がしました。
でもヘルグ様は起きませんね。むしろ死に一歩近づいたような。
「おかしいなあ……」
おかしくはないと思いますわ。
むしろそれが人としての正常な反応かと。
◇七不思議 六つ目◇
「……何故この城の人は精神年齢が低いのか、ということです」
些か不機嫌そうに、ヘルグ様は呟かれました。
「精神年齢……? 何故とか聞かれても困るんだけど」
コメット様は結構清々しいですね。十二発も打ち込めば当然でしょうが……。
「ていうかヘタレさん、何で不機嫌そうなんですか」
「貴女のせいですよ、貴女の」
「え、私の?」
まさか、コメット様は気付いていなかったのでしょうか。
顔面にあんな強烈な十二発打ち込まれて不機嫌にならない方が、というか三途の川とお花畑が見えない方がおかしいでしょうに。
「そういう乱暴な子は嫌いですよー」
「……いや別に私、貴方に嫌われてもいいので」
「ツンデレですか? なら好きです」
「うぜえええええ!」
あ、でもヘルグ様も調子を取り戻してきたみたいですね。
コメット様もいつも通りですし。よかったです。
「よくないよ!? よくないけどね!」
よかったです。
「じゃあ文字数がそろそろ危ないので次行きますか」
「……最早七不思議の解明じゃなくて七不思議の紹介になってません?」
「はあ。元々私は作者が用意した企画に則る気なんてさらさらありませんよ?」
「うわあ……つくづく作者の期待を裏切る人ですよね……」
横目でヘルグ様を見るコメット様と、それをさも面白そうに笑うヘルグ様。
本当にお似合いのコンビですよね。さすがに読者様人気NO.1コンビというか。
「えっ、ちょ、エルナ、今何て!?」
本当にお似合いのコンビですよね。さすがに読者様人気NO.1コンビというか。
「……綺麗に言い直さなくても……っていうか、NO.1とか……嘘でしょ?」
本当のことですわ。
二番目が多分コメット様と魔王様で、三番目がヘルグ様と魔王様ですね。
「……うわ……ありえない……」
「いいじゃないですかー。私は嬉しいですよ?」
「さりげにすり寄ってくるな気持ち悪い!」
「えー?」
楽しそうで何よりですわ。
そろそろ文字数も本当に危ういので、次へ参りましょうか。
いよいよ最後ですし。
「いや、楽しそうじゃないからー!」
楽しそうで何よりですわ。
そろそろ文字数も本当に危ういので、次へ参りましょうか。
いよいよ最後ですし。
「ちょっ、エルナ……!」
◇七不思議 七つ目◇
「もうここは読者様人気NO.1コンビが何故私たちなのかということでよくありません?」
「あ、いいですね。二人で名前を残しましょうか♪」
「……ごめんなさいやっぱり前言撤回します。とっとと失せろ変態」
コメット様、照れていらっしゃるのでしょうか。何にせよ楽しそうで何よりですわ。
「何か……さ、エルナ、さっきから同じ言葉しか発してないんだけど。壊れた?」
心配して下さっていたのですか? お優しいですコメット様……。
安心して下さい、あたしは楽しそうなお二人を見ているだけで満足――
「だから! 楽しそうじゃないよ!? 楽しくもないし!」
そうでしょうか……。
主にヘルグ様が楽しそうなのですが。
「そりゃあこの人はサドだから……、ドのつくサディストだから……」
愛情表現ではないでしょうか。
「愛……ッ!? ないないない! 気持ち悪いから!」
「ひどいですね、コメットさんってば」
「くっつくな! 死ね! 消えろ!」
またまた照れてらっしゃいます、コメット様。本当に初々しいです……。
あたしがうっとりとして眺めていると、コメット様は困ったように眉を下げました。
「いや……、ていうかもう終わろうよ。最後でしょ?」
それもそうですよね。小説外ならもっとコメット様もいちゃいちゃできますものね。
「いちゃ……!? 待って、何そんな愉快な話を作ってるの!?」
愉快ですか。
「いや、むしろ不愉快だけどね! 変な事実を捏造するんじゃない! 読者様が誤解しちゃうでしょうがー!」
そうでしょうか……?
いちゃいちゃ、しているようにあたしには見えたのですが。
「してないから! とっ、とにかくヘタレさん、最後は!?」
「えーと……最後の、七つ目は――」
ヘルグ様はそう言って、少しだけばつが悪そうな顔をしました。……何でしょう?
「――ないんですよね」
……え?
「……な、い?」
「ええ。ないんですよ」
今度は、にっこりと微笑むヘルグ様。
あたしは一瞬ぽかんとしながらも、頭のどこかでその言葉をゆっくりと咀嚼しました。
……ああ、道理で……!
道理で『七つ目』、知らないと思いました。本当は知らないんじゃなくて、そもそもなかったんですね!
「……じゃあ、何のためにここまで引っ張ったんですか」
「何となくじゃあないですか」
そんな、と落ち込むコメット様。
あ、そ、そんな……! 落ち込まないで下さい、コメット様!
「七不思議じゃなくて六不思議じゃないですか……」
「そこがまたこの七不思議の不思議なところというか」
「いりませんから! 何ですかそれ!」
「ていうか、多分作った人が思いつかなかったんですよねーあはは」
「誰だ! 絶対ぶん殴ってやるー!」
ちょっ、ちょっと待って下さい! あの、ヘルグ様、コメット様……!
お願いですっ、あたしを置いていかないで下さいー!
……あ、何だか釈然としないままですが……これで一周年記念企画を終わります!
ここまで付き合って下さった読者様、ありがとうございました!
それでは、また会える日が来ることを願って!
(本当は七不思議の七つ目があるなんて……言えないですもんね?)
あああ、本当に更新遅れて申し訳御座いませんでした……!
しかも遅れた上にこのクオリティーの低さ。本当にすみません……。
終わり方すら曖昧ですし。……まあ、結構どうでもいいことなんですけど。本編にはほとんど無関係ですし。
とりあえず、『魔王の恋と勇者の愛』も一周年です!
更新も不定期ですし、何せ主人公の性別も曖昧というかむしろ主人公誰? って雰囲気になっているような物語ですが、ここまで付き合って下さった読者様、ありがとうございました!
まだまだ本編は続きます。よろしかったら、これからもお付き合い下さいませ。
というわけでちょっといつもより丁寧にお礼を。
まず、評価を下さった皆様。
ありがとうございます! いつも参考にさせて頂いてます、的確な指摘をして頂きすごく助かっています^^
たくさんの評価を頂き、感無量です!
それから、感想・メッセージを下さった皆様。
一番の力になります……!
感想、メッセージを見るとやる気が出ます! 更新が5倍速くなります!(笑)
温かい言葉、いつも励まされています。こんなグダグダな作者ですが、続けられているのは皆様のおかげです。
最後に、『魔王の恋と勇者の愛』を読んで下さっている読者の皆様。
本当に、本当にありがとうございます!
駄目な作者を支えて下さっているのは皆様です! アクセス解析していつもにやにやしてます! 気持ち悪くてすみません!
こっそりお気に入り登録なんかして下さっている方、いつも欠かさず読んで下さっている方、皆様に最高級の感謝を。
最近お気に入り登録も50件を超え、もう感謝感謝です!
ここまでやってこられたのは読者の皆様のおかげです、ありがとうございます!
これからも駄目な奴の書く駄目なお話という肩書は変わらないでしょうが、それでも更新を待って下さっている皆様のために頑張って行きたいと思っています。
ですから、宜しければこれからも続く『魔王の恋と勇者の愛』に末永くお付き合い下さいませ!