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*一周年記念 前編*

こんばんは、白邪です。

一周年記念、一応番外編ということで本編のシリアスな雰囲気を無視してコメディーに走っております。

読まなくても支障はありません。

 皆様お久しぶりです、こんにちは。

 あたしはコメット様専属のメイド、エルナと申します!

 今日は何故か司会を任されました。初めてですし至らない点も多々あるとは思いますが、どうぞよろしくお願い致しますね。


 さて、今日はどうやら、『一周年記念』だということなので――


「特別企画をするそうですよ」


 きゃあ!


 ……び、びっくりしました……。ごめんなさい。

 こんにちは、ヘルグ様。

 一体どこからいらっしゃったのでしょうか?


「ふふ、ちょーっと話を小耳に挟みまして。何だか楽しそうでしたので、私もご一緒させて頂けないかなーと」


 そういうことでしたか。正確には質問に答えていらっしゃいませんけど。

 でも、そういうことでしたら喜んで!

 ……実際、よく分からない企画ですし、一人では心細かったんです。

 ですがヘルグ様がいらっしゃって二人なら、デートみたいで楽しそうですよね!


「……デート……ですか」


 どうかなさいましたか?


「いえ……その。……貴方が女だとは私とてももごもご」


 ? 何でしょうか?

 よく聞こえなかったのですが……。


「いえ、何でもありません。全っ然何でもないですから!」


 ……そうですか? 焦ってらっしゃるようですけど、大丈夫でしょうか。

 きょとんと首を傾げていると、ヘルグ様は苦笑して。


「まあ、気にしないで下さい。それよりも、今回の企画についてですが――」





 ◇





「七不思議の解明?」


 コメット様は目を丸くして、そう呟かれました。

 ドアから顔だけを覗かせるコメット様は、まだ朝も早いのに、もう身支度を済ませているようです。さすがコメット様です。


「おはようございます、コメットさん。今日はツインテールですか……。個人的にはポニーテールが好きですが、それはそれで」

「死ね」


 明らかに不機嫌そうなコメット様の蹴りが、爽やかな笑顔のヘルグ様に直撃しました。すごく痛そうです……。

 それにしてもコメット様、何故『死ね』だなんて――もしかして、照れていらっしゃるのでしょうか!

 初々しいですわ、コメット様……。


「は、はい? 初々……?」


 コメット様は焦り顔であたしを見ています。

 あぁ、初々しい……。


「……そ、それより……七不思議、って、何の話?」


 どういうことだ、と言いたげなコメット様に、ヘルグ様は微笑んで仰りました。


「前お話しませんでしたっけ? 七不思議の話」

「え、いや、あの……私……エルナ、の話しか」


 ? あたしの話……ですか?

 何でしょう。

 そういえばあたしも、七不思議は五つしか知らないのですが……。


「あ、いや、何でもないの! 別にエルナの性別なんてもごもご」


 ……?

 どうしたんでしょうか。

 ヘルグ様がコメット様の口をふさいでいます。

 ……あ、もしかして……。


 新種のプレイですか?


「違ああああああう!」


 ……思い切り否定されてしまいました。


「っていうかエルナ、今の一瞬で何を連想したの!?」


 え、あの、ですから――


「言わなくていい! もう言わなくていいから!」


 コメット様は、慌ててあたしを止めました。

 ……質問されたのは、コメット様ですのに……。複雑な事情というやつでしょうか。


「とっ、とりあえず、七不思議の解明でも何でもいいから行こう! レッツゴー!」


 は、はい……?


 背中を押され、あたしは困ってヘルグ様の方をちらりと振り返りました。

 けれどヘルグ様は、何だかとても楽しそうです。

 ……何が楽しいのかは、あたしには理解できませんでしたが……。


 とにかくあたしたちは、こうして、七不思議の解明に乗り出したのです。






◇七不思議 一つ目◇



「……は、スルーしまして」

「スルーすんのかいっ!?」


 爽やかな笑顔のヘルグ様に、コメット様の鋭い突っ込みが入ります。

 強烈な一撃です。……ちょっぴり憧れちゃいますね。


「そこ、キラキラした目を向けなーい! ヘタレさん、スルーってどういうことですか!? しかも一つ目から!」

「えー、だって」

「だっても何もない! 子供かあんたは!」


 わいわいと言い合うお二人は、すごく仲がよろしいです。

 見ていて微笑ましいくらいです。


「微笑ま……っ!? 何言ってんのエルナ!?」


 お二人は見ていて微笑ましいほど仲がよろしいです。


「丁寧に言い直すんじゃなーい!」


 えぇ、でも、そんな。

 何を言っているかとあたしに問われたのは、コメット様の方ですのに。


「……。……もう、いいや」


 コメット様はさじを投げられてしまいました。


「……。それで、何でスルーすんですか。しかも一つ目から。やる気削がれるんですけど」

「えぇ、あー……と、それはですね。一つ目が彼女? の性別についてでしてごにょごにょ」

「……あー……うん、あー……。……うん、スルーしようか」


 え、そんな、コメット様!

 何故そんな簡単にあきらめてしまわれるのでしょう!

 そんなに解明の難しい『不思議』なのでしょうか!?


「あー……うん、まあ。ていうか、解明できなくていいや……知りたくないから」


 ……知りたくない、のですか?

 コメット様はもう、何だかあきらめ顔です。

 意志の強いはずのコメット様を挫けさせるほどの不思議……。一つ目の不思議とは、一体何なんでしょうか。


 ちょっとだけ、気になっちゃいますね。






◇七不思議 二つ目◇



「風呂場のマーライオンです」

「……。……は?」


 やはり爽やかな笑顔で告げるヘルグ様に、やはりコメット様は強烈な睨みをくれてやります。ピシャーン。

 あぁ、格好良いですコメット様! あたし、惚れちゃいますよっ!


「いや……、……風呂場のマーライオンて何?」


 あたしに何か言いたげな視線を向けるも、コメット様はすぐにヘルグ様の方に視線を戻しました。

 ちょっと残念だったり。


 ……なんて、言っている場合ではありませんね。

 コメット様、その不思議ならばあたしも存じております。

 共同で使われている大浴場に在ります、ライオンの形をかたどった置き物のことですよね。口からお湯を出す。


「ライオン……? いやっ、てか、大浴場って何!?」


 コメット様は知らないのも無理はありませんね。

 大浴場は男女混浴のお風呂です。高い位の方はお部屋にもかなり広いお風呂がありますから、あまり使われないんです。


「男女……混浴……っ!? しっ、知らなかった……っ」


 ショックを受けた様子のコメット様。


 ですから、コメット様は知らなくても無理はありませんわ。気になさらないで下さい。

 あたしもさすがに恥ずかしくて部屋のお風呂を使っちゃいますし、アリセルナ様も使ったことがないと仰ってました。

 身分が高い方で使われているのなんて、ヘルグ様くらいですわ。


「何だ、よかった……ってヘタレさん使ってんの!?」

「えぇ、お恥ずかしいですが」

「本当に恥ずかしいわ! この変態が!」


 コメット様は、お顔を赤らめて叫びます。……あたし、いけないことを言ったでしょうか。


「変態だなんてひどいですね。ただ輝ける人材を探しに行っているだけなのに」

「そ、れ、を、世、間、は、ヘ、ン、タ、イ、というんだよぉぉぉおおお!」


 見事なアッパーが飛び出しました。クリーンヒットです。上手く決まりすぎていて、何だか綺麗ですね。

 それよりも、マーライオンのことはどうなったのでしょう。

 七不思議の話だったと思うのですが……。


「はっ、いけないいけない。すっかりヘタレさんのペースに……。えーと、それで何だっけ?」


 マーライオンのお話だったかと。


「あ、そうそう。……それで? マーライオンって、その、……何」


 えーと、その大浴場にある、ライオンの形を模った口からお湯を出す置き物のことです。命名はヘルグ様と聞きますけれど。


「いや……、そこじゃなくて。命名については気になるけど。それは分かったけど、そのマーライオンがどうしたの? って」


 ですから……。


「マーライオンが何故そこにあるかという話ですね」


 まあ、ヘルグ様。

 先程アッパーが綺麗に決まったばかりですが、無事だったのですか?


「無事……ではないですが。まあそういうわけでコメットさん、七不思議の二つ目は『風呂場のマーライオンの存在意義』です」

「…………」


 コメット様はとても複雑そうなお顔をされました。

 どうしたのでしょう。


「……それが、不思議ですか」

「ええ」


 むっすりとするコメット様と、にっこりとするヘルグ様。


「……次行こう、エルナ」


 え、ええ!? コメット様、マーライオンは……。


「だってマーライオンって、インテリアじゃん。それ以上の解明なんて必要ないと思うんだけど」


 それはそうですが……。

 一応、七不思議の一つですし。


「そうですね、それでは、次行きましょうか」


 ええっ、ヘルグ様まで!

 そんな……。七不思議なのに、適当にあしらわれていく……。


 まあ、仕方ないです。あたしはコメット様のメイドですので、コメット様に従うだけですわ。






◇七不思議 三つ目◇



「次は……っと」


 ヘルグ様は、ぺらりとファイルのページをめくります。

 あ、やっぱりメモしていたんですね。覚え切れませんものね。


「三つ目……は、ええと――」


 ファイルのページを目で追うヘルグ様。

 次は何が来るかと、コメット様は少し緊張なさっているようです。


「――『魔王城には何故美人が多いのか』」

「ただの自慢じゃねえかっ!」


 ですがヘルグ様の言葉にコメット様は、ファイルごとヘルグ様を殴りました。

 あ、ばきって良い音がしました。ばきって。


「いたた……、怒らないで下さいよ……。七不思議を作ったのは別に、私じゃあありませんし」

「あ、すみません。つい……」


 コメット様はしゅんと申し訳なさそうに謝ります。

 そうですよね、そういえば七不思議を作ったのって誰なんでしょう……?


「そんなに前のことではないと聞きますが。だからこそそういう個人的な、具体的なことを指定できたわけですし」

「確かに……。……でもヘタレさん、何でエルナだけ個人指名で」

「さあ、だから私に聞かないで下さいって。……でも多分、それほど不思議だったんじゃないでしょうか」

「……まあ、確かに」


 ぼそぼそと二人は小さな声で何かを話し合っています。何でしょうか……。

 あたしには聞こえないくらいの声で話し合っているので、全然分かりません。


「まあ、美人が多いのは解明しようもないので次行きましょう。次」


 コメット様は、自分が美人だということも棚に上げたようにそう言います。

 ……でも確かに、解明はしようないですよね……。

 七不思議って、つくづく不思議です。だから『七不思議』なのでしょうが。


「……でも、この調子だと……」


 ? どうしました、コメット様?


「――最後まで、ロクなものが出ないような……」


 ……確かにあたしが知っている七不思議も、おかしなものばかりですが……。

 コメット様は嫌な顔をされました。

 いかにも面倒事に巻き込まれた、ような。


「……私、やめていいですか?」

「駄目ですよー」


 ヘルグ様にあっさりと断られ、コメット様はがっくりと落ち込みました。

 あ、涙が光っています。そこまで嫌なんでしょうか……。


「……ていうか、何なのこの企画……?」

「いやあそれは勿論、6話で用済みになった七不思議をわざわざ掘り起こしちゃう馬鹿な企画ですよ」

「最低じゃねえか!」


 コメット様の口も、どんどん悪くなっていきますし。


「そこ!? エルナ、突っ込むところそこなの!?」


 ああ……いいのでしょうか。

 確かに、行く先不安です……。




長かったので、前編後編に分けました。

後編は明日更新予定です。


……ていうか、本当にカオス。推敲が一回だけなのでひどいと思います、すみません……!

もし誤字脱字間違い等ありましたら、こっそり教えて頂けると嬉しいです。

なくても感想下さると嬉しいです(照れ←)

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