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第42話 不吉な平穏

今回はとても短いです><

「―――彼等は……放っておいてよろしいのですか? 御主人様マスター


 亜麻色の長い髪をかきあげ、その女は尋ねた。


「ああ、構わない。泳がせておけ」

「感づいている者もいるようですが……」

「計算済みだ。別に、お前が心配することではない」


 女の問いに、彼女の後ろに立つ男は興味がなさそうに答えた。

 ゆらりと黒いローブをまとった、その身体が女の方に一歩二歩と近付く。


「は。私如きが出過ぎたことを、すみません」


 女が何の感情もこもらない声で謝ると、男は頭二つ分くらい低い彼女を見下ろして言った。


「構わん。お前の言いたいことはよく分かる」


 そして、彼女に目線が合うように屈むと、優しく微笑んだ。

 見る者を恐怖させるような、上辺だけの優しさ。


「それより……、例の計画は準備できているな?」

「はっ」


 女が顔を上げると、男は不敵に微笑む。

 綺麗に整った顔だが、どこか作り物めいた雰囲気を漂わせていた。

 冷たい美しさ。そこに感情は、見られない。


「よろしい。では、行くがいい」

了解ラジャー


 風を切る音とともに、女が消える。

 彼女がいたという痕跡も、もうそこにはない。

 暗闇に一人残された男は、ただ妖しく微笑わらっていた。




 ◇




 ――あれから、数日が経った。


 特に何事もなく、僕は日々を過ごしている。

 ただ――


「暇すぎる……」


 ――そう、本当に何もないのだ。

 暇すぎる。

 僕はその言葉を繰り返し呟く。

 何もないのだ。

 どっかの誰かが愛を叫んだり、毒吐いたり、不法侵入してきたり、引っ付いてきたり、殴ったり、蹴ったり……。


 何も、ない。


 それは、普通。

 普通だと……呼べるはずのもの。

 普通。


 普通なら、誰かが愛を叫んだり……はもしかしたらあるかもしれないけど、毒を吐いたり不法侵入してきたり、引っ付いてきたり殴ったり蹴ったりしないよね。うん、普通は。


 だからこれは、普通。

 ただ――魔王城ここでは、普通それはちょっとおかしいかなって程度。


「――って、どれだけ異常なんだよここの人」


 思わず突っ込んだ。


 ――普通じゃなさすぎる。

 それは、もうとっくに分かっていたことだけど。

 誰もおかしな騒ぎを起こさないことが変だなんて、何てところなんだろう。

 僕、今までよく生きてこれたなぁ。これからも頑張ろう。



 ……っていや、ふざけてる場合じゃないんだけど。



 本気の本気で、何もない。

 一番の変人――ヘタレさんはある意味で相変わらずだけど、不法侵入も変態発言も、ない。

 おかしい。おかしすぎる。あの人変態なところだけが取り柄なのに。……あれ? おかしい?

 いや、でも、だってね。

 朝ご飯のときだって害虫さんが怖いほどに静かだし、ルーダさんなんて廊下ですれ違う度に目映いほどの笑顔を向けてくるんだ。何だあれ? いや……、無害っちゃ無害だからいいけどさ。いいけど。


 何で?


 自問自答――いや、答えは返ってこなかったからただの自問か?

 首を傾げても答えが分かるわけじゃない。

 ただ、謎が深まっていくだけだ。


 あれ以来、あの時から――何かが、変わってしまった。

 どうしてだろう……。

 答えはやっぱり、返ってこないけれど。


「何でだろう……?」


 それでも呟く。

 答えのない問いを、永遠に繰り返す気なのか。


 ……むぅ。

 自分の心に聞いて答えが出ないなら、人に聞いてみるしかないな。

 何事も挑戦だ。


 僕はそんなことを思いながら立ち上がり、部屋を出る。

 驚くほど静かな、朝の魔王城。でも、その静寂を怪しむほど僕は思考を持て余していない。



 さて、最初はどこへ行こうか。

 そうだな――最も安全そうな、ディーゼルのところに行こう。




そういえば、今日実はコメットの誕生日です(笑)

確か2話あたりで某側近さんが言ってたような……。


魔王城では特に何もありませんが、よろしければ祝ってやって下さい。

本編にはほとんど出られないコメットが喜んであなたの家にお邪魔します、プレゼント取り立てに(何

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