第135話 善と悪
「やべっ、あいつ、幽霊みてーに青白い顔してあんなに速いのかよっ」
俺は後ろから追い掛けてくるこの城の主を振り返って、引きつった笑みを頬に浮かべる。
いつもの穏やかさからは考えられないようなスピードだ。ちっ、面倒くせえ、部屋に引きこもってばっかりいるから脚力も衰えてるものと思ってたんだけどな。
――いや、或いは、そこまでして勇者を始末したいのか? なるほど、いつもよりはよっぽど好戦的だが、胸糞悪くなるくらいの善人っぷりは変わってないってわけか。いや、この場合は、仲間思いと言うべきか。……どっちにしろ腸が煮えくり返るほど腹立つことには変わりねえけどな。
「おい、勇者! てめーも世話かかる奴だな、ええ? 俺がいつまでもお前を引っ張ってやってると思っちゃ大間違いだぜ」
それとはまるで反対に、今や普段の魔王サマと同じくらい――いやそれ以上に蒼白な勇者サマは、相変わらず俺に腕を引っ張られたままだ。下手したら踊ってんじゃねーかと思うほどよろける足で、一応、何とか走ってはいるようだが。
ったく、俺までお人好しやってる場合じゃねーんだが? 誰のがうつったか。……まあ、だからといって、今の魔王サマが腕を封じられた俺に殺せるほどのもんとも思えないけどな。それが何とも悩めるところなのよ。
「っていう俺の言葉をてめーは聞いてんのか、勇者サマよお? とりあえず今魔王サマが狙ってんのはてめーなんだから、腰が抜けてますなんて情けないことのたまうんなら今この場に捨て置いてやってもいいんだぜ?」
「……な」
「あん?」
「……何で、助けたの」
震える真っ青な唇で紡いだ、第一声はとりあえずそれ。
……面倒くせえ奴だな。意図せず顔をしかめる。俺にもよく分かんねえような理由を語らなきゃいけないってか。
「理由がなきゃ助けたらいけねーってか? 何なら今から見殺しにしてやろうか」
「だって……、あんた、魔族なのに」
「魔族の誰もが魔王サマに忠誠を誓ってるわけじゃねーって、後生にそう伝えとけ。もし無事に帰れたらな」
そんな無駄口を叩く間に、ようやく勇者の足取りが確かになってくる。
これなら俺が支えてやらなくてもちゃんと走れるかね。……こいつの脚力がどれくらいかは知ったことじゃないが。そこまでは面倒見てられねえし。
ま、全力で走って魔王に追いつかれるようなら、どうせ俺が助けてもそれまでってことだ。
「俺は無知で愚かで平和ボケした凡愚もとい人間どもも嫌いだが、それ以上にあの善人ぶった王様が大っ嫌いでね。正直吐き気がするほどな」
「……そんな……」
「人間っつーのは本当に何も知らねえんだな。まさか、全ての魔物が魔王の命令で動いてるとでも思ってんのか? そりゃ便利な能力だ」
それじゃまるで洗脳だろうが、と俺は笑う。
しかしそんな俺とは対照的に、勇者はむっつりと口を噤んだ。……おいおい、本気かよ。王族だからか、それとも人間っつーのはみんなこんなんなのか? 後者だったら笑っちまうね。夢見がちもいいところだ。頭の中がとことん平和なんだな。平和ボケっつーのは自分で言った科白だが。
「――っと、余裕こいて話してる場合じゃなかったな」
後ろから迫ってくる大きさを増す足音を聞いて、俺は表情を引き締め前に向き直る。ジャストタイミングと言うべきか、前方には右と左との別れ道が見えてきた。
「どうするよ、勇者さん? ここで別れればどっちかは助かるぜ?」
「……どうせあいつが追ってくるのは俺の方でしょ」
「よく分かっていらっしゃるようで。じゃあま、道連れになってやろうか。どっちがいい?」
「どっちって……」
「確か、俺の記憶が正しければどっちかが行き止まりだったと思うんですけどね。それがどっちだったかよく覚えてねーのよ」
「なっ……」
「言っとくけど、冗談じゃないぜ? 生きるか死ぬかの瀬戸際でジョークを飛ばせるほど俺の神経は図太くないんでね」
にたにたと笑いながら言う。あんまり信憑性のない科白だとは、自分でも弁えているがね。
しかし、残念ながらそれは嘘ではない。今回ばかりは。腕がまともに使えたら――そして追い掛けてきてるのがあんな風に豹変した魔王サマじゃなかったら、似たような冗談の一つも飛ばしたかもしれないが。……しかしそんなことは現状じゃどうでもいい。さて、どっちだったかな。右か? 左か?
「少なくともどっちもコメットの部屋へ続く道じゃあなかったのは確かだな。この城は似たような道が多くてね、19年住んでて自分の部屋に帰れなかったこともあるくらいだ」
「……何か……、……そういうもん……?」
「そういうもんだろ」
あっさり答える。さて、そんなことを言ってる場合じゃないんだが。
もうそろそろ、俺たちの運命の別れ道に辿り着く。
「ほら! どっちだ、王子サマ?」
「……み……っ、右!」
勇者が叫ぶのとほぼ同時に、俺たちは右の通路に転がるように飛び込んだ。――行き止まりか、否か。
これで俺たちの運命が決まる、と、祈り半ばに覚悟を決めて目を上げた。
「……どうやら、ここで心中……らしいな」
深い深い嘆息。それでは済まないような絶望が、肩に重くのしかかってくる。
――道の先は、行き止まり。
無情に鎮座する壁をいっそぶっ壊してやりたいような衝動にも駆られた。が、壊したところでここは4階。……さすがに飛び降りて生きていられるような気はしねえものな。壁だってそんなに脆くはないわけだし。むしろその衝撃で城全体が壊れたらどうする? ――いや、俺としては万々歳だがね。多分俺が望むような展開は待ってはいないだろう。
かといって、今から引き返して左の道に逃げ込むような時間は残されていない。死神との距離は、それほどまでに詰められていた。
「どうするよ? いっそ二人で切腹してみるか」
「な、に言って……」
「どっちにしろどうせお陀仏だぜ。今の魔王サマに慈悲なんて欠片もねえみたいだからな」
「……それでもあんたは、この城の人間でしょ?」
「脱獄囚だけどな。死刑待ちの」
「…………」
ほら、この手錠が見えねえのかと目の前で振ってやると、勇者はそれきり沈黙した。――何だ、勇者として来た割に度胸のねえ奴。
まあ、そんなもんかね。勇者なんてどいつもこいつもそんなもんだ。魔王討伐なんてありがたい名誉を掲げておいて、魔王に傷一つ付けることすらできない。人を期待させといて勝手な話だ。
「ほら、来た来た」
と、言っている間にも。
今じゃ馬鹿みたいにでかく見える魔王サマが、狩りを楽しむ狩人のように、ゆっくりと近付いてくる。――趣味の悪い奴。
その気味の悪い紅い目はどこか嬉々としていて、最早『城に住む仲間のため』なんつーのはただの口実にしか聞こえない。せめてそれが本当なら、苦痛のないように一瞬で終わらせて欲しいもんだがね。……ああ、今のあいつに言っても無理か。
さて、どうせ苦痛を味わって死ぬなら、せめてもの抵抗として憎っくき魔王サマに何か置き土産をしていってやりたいもんだが。……どうするかね? 今の状態で、何かできるかどうか。歴代の勇者が奴に傷一つ付けられないのは、勇者が弱いというそれだけの理由じゃあないわけだしな。
ちなみに『止める方法』を頼んだコメットには、どうせ期待していない。あんなのを止められる可能性を持っているのは、同じく化け物じみている側近さんくらいだろうな。その唯一の希望は、今はどこへやら。いわゆる――万事休す。ま、こんな恥をかかされといて、今さら助けてほしいと縋ろうとは思わねえがな。
「さて、最期に祈っておく神はいるかよ? 勇者さん」
「……ミーシャ」
「あん? ――そりゃ、女神さまか」
「いや」
思わず眉をひそめて振り返る。まさか、本当に何か答えが返ってくるとは思っていなかった。ま、神仏に祈りを捧げていてもおかしくないひ弱な野郎だとは思ったが。
しかし、口にしてからふと気付く。それはたしかさっき聞いた名だ。何だったか……、そう、勇者一行の一人だと思った奴だっけ。それなら恋人か何かか。が。
「……妹、なんだ」
妹?
――笑っちまうね。まさか、最期の最後で思い出すのが妹とは。何とも家族思いでおめでたい奴だ。
まあでも最期なんだ。絶望させるようなことは言わないでおいてやろう。それが俺に出来るせめてもの、魔王に一矢報いようとやって来た同胞への餞だ。
「まあ、あきらめな。妹さんっつったらつまりお姫サマだろ? それじゃ、それなりに幸せに暮らすんじゃねえの――」
「違う。ミーシャは、ここに来てる」
「ああ?」
何だって? 俺は思わず聞き返す。――そんな場合じゃねえのに、俺こそ笑い者だな。ある種の現実逃避かもしれない、と気付いて、俺は自分を嘲り笑った。
しかしそりゃあどういうことか。思わず首を捻ってしまう。
「ミーシャは……ミーシャの婚約者は、勇者だった。ミーシャはその男を愛していた……から、ミーシャから勇者を奪った魔王が許せないんだ」
「ほーう、なーるほどねえ」
俺は頷く。説明どうもご苦労さんよ。こんな時だっつーのに。
つまりその妹が大好きなお前は、同じく魔王が許せなくて、妹とともに勇者としてこの城にやってきた、と。
……馬鹿じゃねえの、って、俺は思うけどな。
その妹とやらも、兄と同じく頭が足りないらしい。魔王が許せないってのは、まあ、人間からしたら一般論なのかもしれないが。
奪った? 馬鹿を言え。先に勝手に討伐だの何だの言って攻撃を仕掛けてきたのは、そっちの方だろうが。魔王を庇う気なんざ、さらさらねえけどよ。
「――デュレイ」
と、そこですっかり忘れていた――いや、違うな。無視しようとしていた、というべきか――魔王が、呼吸一つ乱さずに足並みを揃え優雅に歩み寄ってきて、そうして俺の名前を呼んだ。……何だ、この期に及んで今さら何か用でもあるっつーのか? まあいいけどよ。
「よお、魔王サマ」
「……笑っている場合か」
じゃあ泣けってか? そりゃあ勝手な話だ。
けれどそんな暴論はとりあえず俺のありがたい心の広さでスルーしてやって、それよりもその用件とやらを促す。
「私には時間がない。大人しくその男を差し出せば、今はとりあえずお前のことは目をつむろう」
「おー、立派な悪役の科白だな。あと寸分しかない命が惜しけりゃ身代わりを差し出せってか」
また笑う。実際、こんな状況だったら笑うしかない。
全く、こりゃ誤解されるわな。これじゃ俺と勇者が可哀想な羊で、魔王サマが腹ペコの狼にしか見えない。――いや、今の魔王サマには、もっと含まれた悪意があるんだろうけどな。だからこそ余計に性質が悪い。
「しかしよ、魔王サマ。俺があんたの言うことをそう簡単に聞くと思うか?」
「思わないな」
「そんなら、話が早い」
俺はにたりと笑い、右手で懐からナイフを抜き放つ。
――勝てるなんて、思ってない。前回挑んだ時に、もうそれは実感している。しかもこんな腕で、だ。けどまあ、こんな相手に屈するのは癪だからな。
優しくて、賢くて、その上強い。――そんな王様は所詮、ある一点から覗き見た虚像でしかない。そんな奴、本当にいてたまるかよ。誰がこいつを肯定しようと。
「生憎、俺は、あんたのことが大っ嫌いなんでね」
勿論腑抜けの勇者サマも嫌いだが、それ以上に吐き気がする。
だから、最期まで反逆を貫くのが、俺なりの正義ってもんだろ?
たとえ誰に馬鹿だと嘲笑われようが、俺の生き方は俺で決める。こんな奴に屈するくらいなら、光に焦がれて狂った地底の王様に服従した方がまだマシだね。だからこそ、ものすっげえ陰険な奴だと思いつつも、わざわざ協力してやったんだが。
まあ、何にしろ最後まであいつに着いていく気はしなかったし――たとえ奴が魔王サマに打ち勝ったとして、どうせ待っているのは抗いようもない国の滅亡だろう――それがどんな聖人君子だったとしても、俺は、誰かの飼い犬に成り下がる気はさらさらない。
「……馬鹿だな」
「馬鹿だ」
しかし、それを貫いてこそ誇りって呼ぶんじゃねえのか。
後ろの腑抜けも後々死ぬとして、俺は、犬死になんて思わない。――正直勇者はどうでもいいんでね。あいつを守り切れたかどうかが、俺の勝敗じゃあねえだろ? 恋人でも友人でもましてや情を移すような相手でもねえんだし、気持ち悪い。
ただな、言ってやりたいことがまだ、ある。笑みを形作り、俺は、臆することなく魔王サマを見据えた。
「ただ、あんたも馬鹿だな、魔王サマ? 今のあんたの心に響くかどうかは知らんが、こんなこと、多分あんたの婚約者が悲しむぜ」
「―――」
別に相手の決心を鈍らせようとして言ったわけではなかった。
が、俺の予想を裏切り、魔王サマの足がぴたりとそこで止まる。止まった? 一瞬目を丸くして、すぐに状況を呑み込んだ俺は思わず拍子抜けした。……何だ。完全に別人、ってわけじゃないらしいな。コメットの名前にはまだ反応する。未練がましく。
……まあ、奴からコメットを奪えなかったのは、心残りと言えば心残りか。
しかしこいつも今の状態じゃあ、コメットと結ばれるには程遠いだろう。たとえ二人が望んで結婚なんかしたとしてもな。それを思えば、少しは気が晴れるってもんか。そう思って俺は、降参するようにひょいとつながれた両手を上げる。
「おっと、悪いな、惑わせちまって。言っておくが、命乞いをする気もねえぜ? 可愛い婚約者がどうだろうが、あんたは俺たちを殺せばいい。それが一国の王の決断ってもんだろうが、なあ?」
「…………」
しかし、魔王サマは再び歩き出そうとはしない。
――つまんねえ奴。結局こいつも腑抜けか。……別人、なんて、コメットは怯えてたようだが、結局のところ芯は同じだ。見かけ倒しでしかない。
がっかりだ。まさかここまで下らない奴だったとは。争う価値もない。たとえ抵抗の一つもできないような力で殺されたとしても、こいつは結局本質的に俺には勝てないのだ。
「……彼女には、悪いと思っている」
聞き取れるか聞き取れないかほどの声で、魔王サマは呟いた。――悪いと思ってる?
なら、何でやめないのかね。もう戻れないんだとか何とか、また言い訳でもするつもりか。下らない。
「ただの言い訳だな、魔王サマ」
「…………」
「どっちつかずは結局どっちも失うことになるぜ? 王としての立場か、それともてめえ自身のわがままか。どっちかを最後まで貫いてみせろよ」
まあ、あんたみたいな優柔不断な奴に期待はしてないがね。そう言って笑うと、魔王サマがようやく顔をしかめた。
そう、立ち止まってる時間なんてないだろ。コメットに期待はしてない、とさっき言ったが、もしここで自分の意思なんて関係なく奴が止められちまったら、それが一番格好悪い。せめて自分の意思で決めてほしいもんだね。
「……デュレイ」
「あん?」
魔王サマが、どこか寂しげな微笑を湛えて俺の目をようやくまっすぐ見据える。そんなことは、初めてかもしれなかった。――だからなのか。その眸の紅さが、少し、薄れているような気がした。
「――私は少し、お前が、羨ましいよ」
――何だよ、それ。
しかし反論する暇もなく、奴は素早く右手を上げる。
それを合図に、俺は言葉の意味を反駁する時間さえ与えられないまま宙へと吊り上げられた。
ああ、魔法か、とそんな簡単なことに気付くまでには、驚くほど時間がかかった。
喉を締め上げる、見えない手。握りしめていたナイフも、笑えるほど簡単に取り落とした。詠唱もなしにこれか、と俺は思う。
無詠唱なんてずるいんじゃねえの、と、笑って言ってやれもしなかった。
「ぁ、ぐ、――っ」
「嫌われてしまうのも無理はない、と、思うがな……」
苦笑。余裕かましてる場合じゃねえっつーの、白く厚く塗り潰されていく頭の片隅には最期までそんな強気な言葉が浮かぶ。ああ、あの腑抜け勇者もさっきはこんな気分だったのか。段々何かが抜けていく、頭の中。床を打つ乾いた音が聞こえるようだった。
せめて、せめて気を逸らす何か――何でもいい――を感じていたいのに、それ以上魔王サマは何も言わない。まるで嫌がらせみてえに。けれどそれを指摘するような余裕さえ俺にはない。
燃えるように、頭が熱い。なのに、身体が嘘みたいに冷たい。
何だ。何だ、これ。変な感覚だ。けれど、それをおかしいと思ってる思考すら打ち寄せる波に奪われていくような。
ただ、白く、清く、薄れていく苦しみの中。
何だ。なんだ、これ。おれは、しぬ、のか――
「魔王様っ!」
――しかし。
ただ唯一鮮明な聴覚に、何だか聞き覚えのある胸糞悪い声が届いた。喉に食い込む冷たい幻の指が、少しだけ力を緩める。
「……ヘルグ」
空っぽにされた肺に酸素が吹き込んできて、俺は思わず咳き込んだ。何だって? ヘルグ?
ああ、そりゃあなるほど、胸糞悪いわけだ。あの側近の声なら耳障りに決まってる。
「やっぱり……ようやく起きたと思えば、貴方はまた《神降ろし》なんてっ……!」
「……やれやれ、今日はやけに邪魔が多いな」
ぼやけた視界の中で、ちらりと、魔王サマの目が紅さを取り戻しているのを見た。さっきまでの色の薄さは、もうまるでない。同様に……さっきまでの、寂しそうな口調も。
今じゃ側近にさえも敵意を示すのかよ。なるほど、手を付けられないわけだ。
俺は小さく笑うと、もう一度咳き込んだ。――絞めねえなら魔法を解けよ、この野郎。
「その馬鹿を下ろして下さい、魔王様」
「お前に命令される道理はない」
「子供のわがままですか! 全く……少々手荒になりますよ」
ヘルグが、ざっと一歩右足を踏み出す。――マジか、こいつも主人に攻撃するつもりかよ。正気じゃねえな、こいつら。
けれど、対する魔王サマも臆する様子はない。感情の浮かばない目でヘルグを見下すと、俺へと向けた手とは逆の手を奴の方へと向けた。
やれやれ、俺のはあくまで解かない気かい。側近さんも舐められたもんだな。二つ以上の魔法を同時に発動しようなんて。
けれどヘルグは怒るどころか小さく笑うと、目を細めて魔王サマの双眸を軽く睨んだ。
「――ああ。でもそうですね、今の貴方の中身は魔王様じゃないんでした――とっととそこから出て行ってもらいましょうか。魔王様の身体を汚さないで下さい」
「…………」
あん? なに、何だって……? 中身が魔王サマじゃない、だと?
宙に吊り上げられながらも、俺は何とかヘルグの顔を凝視する。
どういうことだ。本当に別人ってことかよ――いや、でも、そしたらさっき俺の言葉で足を止めた理由は何だ。さっきの、意味深な科白は? 働かない頭を回転させて考えてみるが、俺に分かるはずもなく。
ただ、ヘルグがそう言い放った瞬間、魔王サマの双眸の紅さが濃さを増したことだけは俺にも分かった。
書くにつれて段々デュレイのキャラが変わっていく……でもデュレイは書きやすいので割と好きです(*´∇`)うん。
新勇者もそれなりに楽しかったり。力持ちですから←
次回更新は明日です(´∀`)
その後は未定ですが。
何だか変な方向に物語が転がっていきそうな……、予感。
でもその前に復活記念祭をやりたい←