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第119話 愛ゆえの衝突

 前回のあらすじ。シアン化水素対変態腹黒。

 ストーカーたちの熾烈というかむしろ卑劣な戦いが今、目の前で繰り広げられています。いや、そんなの僕はもうどうでもいいんだよ? 僕が好きなのはリルちゃんだからね!


 ……とまあ、脳内で堂々と告白してみたところで伝わるわけもないし伝わって欲しいわけでもないしそもそもこの状況が打破できるわけでも何でもない。つまるところ無意味ってわけだ。

 本音を言うと、どうでもよくなんかない。僕は相応しいとか相応しくない云々以前にこんな人たちとは結ばれたくない。結ばれる予定なんて永遠にないけど。

 ――ああ、でももう勝手に火花が散っちゃってるんだ。現在進行形で。何この逆ハー? ハーレムはあっても逆は永遠に体験することなんてないと思ってたよ。当たり前ですね。まさか殺されたと思えば美少女になって逆ハーレムなんか体験するとは。人生ってこれ以上なく理不尽だと思う。畜生神様。


「……ちょっと、光。聞いてる?」

「現在進行形で聞いてません。ついでに言うなら未来形でも聞かない」

「いや、現実逃避してるところ悪いんだけどさ……実際問題、どうする? あいつ、ストーカーだし頭おかしいし近寄りたくはないけど実力者であるのは確かだよ。一応罪状はストーカー規制法違反罪じゃなくて反逆罪だから」

「……嘘、本当に?」


 影の薄っぺらい声を聞きつつ、僕は未だ何かを言い争っているヘタレさんと例の赤毛のストーカーの方へと目を移す。ああ、憂鬱だ。わざと見ないようにしてたのに。あれストーカー以外の何者でもないだろ。

 けれど影はそれどころではないらしく、何か考えあぐねたように眉をひそめる。


「だってさ、考えてもみてよ。おかしくない? ストーカーに気付かなかったなんて。僕もさ、見たことある顔だなあとは思ったけど、ストーカーなんて言われるまで分からなかったよ」

「……あ」


 それも、そうだ。僕は思わず零した。

 何て迂闊だったんだろう。性格が過激すぎて……何だか、逆に危険視なんてできなかった。

 ただのストーカーならば、気配くらい読める。少なくとも何だか怪しいなくらいは感じたはずだ。でも僕は、ストーカーされてたことにさえ気付かなかった。気付けなかった。


「……もしかして、その……まずい?」

「まずいね。側近さんとどっちが強いかとかそういうのは置いといても……サタンの手に落ちたら危ないよ? どれだけ凶悪になって帰ってくることか」

「え、落ちるって……もう落ちてるから捕まってるんじゃないの?」

「完全に落ちてたらあんなんじゃ済まなかったと思うね」


 う、と顔をしかめてしまう。それはそうかもしれない……。僕をストーカーなんてやってられるあたりまだ正常なのかも。どちらにしろ、異常なことには変わりないが。

 でも一体僕にどうしろと? 気配も読めないなんて、そんなの僕にはどうしようもない。だからといってヘタレさん一人に任せるわけにも……。ストーカー騒ぎで大地を揺るがす大戦が勃発したりしたら堪ったもんじゃない。ちらりと僕は二人の方を一瞥する。


「死に晒して下さいシアン化水素。肉塊と化した貴方の身体の一片たりともコメットさんの視界には入れません」

「それをそっくりそのままお前に返してやんよ、側近さんよお! 泣いて謝ったって許してやんねーからな? 俺のコメットに触れやがって!」


 ああああ、もう何か始まってるし! 僕に触れただけで肉塊にされてしまうならかなりの人数が御臨終ですよね! やめてよ本当そういうこと! 僕はお前の運命でも何でもないっつーの!

 なんて胸中で叫んでいても止まるはずがない。ああ、僕が止めなきゃ。あの好戦的なヘタレさんが自分からやめるはずがないんだから。ううう、そうだよ僕が止めなきゃ……うううううう。


「や、やめてよ!」


 僕はなけなしの勇気を振り絞り、二人に向かって叫んだ。

 二人は途端に口論をぴたりとやめ、僕の方を見る。……こ、こんなあっさり止まっても気味が悪いんですけど。こえー。こっち見るな。うう、でもここで引くわけにはいかない。


「あの……その、二人とも仲良くしよう? えと、そちらの方……」

「デュレイだ」

「デュレイ……さんは、魔王城の方、ですよね?」

「ああ。ほら、その……コメットに毎日会えるだろ? 何だ、口に出すと恥ずかしいな。照れる」


 いや誰もそんなこと聞いてませんけど。華麗にスルー。


「その……同郷のよしみというか、えと、とにかく仲良くしません? そんないがみ合っててもいいことないですし、ね」

「だけどコメット、こいつは俺のコメットを」

「仲良くしませんか?」


 誰がいつてめえのものになったと蹴り飛ばしてやりたかったが、そうするとまた事態がややこしくなるので笑顔で流す。ああ僕頑張った。よく頑張ったよ。

 ヘタレさんも何か言いたげだとかは見えない。認めない。お前は黙っとけ。

 でもデュレイさんはまだ納得していないご様子。ええい仕方がない、この際恥もプライドもかなぐり捨ててやるよ。


「……ていうか、その……仲良くして欲しい、な?」

「ああああ! 側近さん、いやヘルグ君! 是非仲良くしよう!」

「……私の名前なんてよく知ってましたね」

「そりゃ勿論恋の障害物としてブラックリス――ああ、いや、そんな過去のことはどうでもいい。世界は一つなんだ、仲良くしようじゃあないかっ!」


 首を傾げてお願いしたらこの反応。恐るべしコメットちゃんの顔面凶器。言葉の使い方間違ってる? うん、気にすんな。

 でもやっぱりヘタレさんはさすがに騙されないらしく、というか単にデュレイさんが気に入らないだけなのかものすごく嫌そうな顔をしている。うわああの人今思いっ切り顔しかめたよ。


「……コメットさん、分かってると思いますけどこいつは貴方のストーカーですよ? ましてや罪人なんですよ? 私のコメットさんをストーカーしつつ私の魔王様に大して謀反を企てた大馬鹿者ですよ? 死ねばいいじゃないですか」

「何だかややこしいですね。とりあえず私のとか言い切っちゃう貴方が死ねばいいと思います」


 悪い人に見えない、だなんて言ったら危機感がないんだろうけど。

 でも、何だか、こういう変態とは付き合い慣れているせいで、何だか憎めないのだ。だって、ね?


「多分私がちゃんとお付き合いしていけば分かってくれると思うし、魔王様に反逆なんて馬鹿なことはきっとしないと思うので――」

「いや、魔王サマは殺すけど」

「ほら分かってくれ――……って、は?」


 僕がヘタレさんを諭そうと紡ぐ言葉に、遮る形でデュレイさんの科白が重なる。

 けれどそれは決して僕が求めていた同意の言葉では、なく。


「…………今、何て?」

「魔王サマは殺す。それがサタンとの約束だからな」


 約束?

 僕はくるくると目を回す。意味が分からずに。だってまさか、そんな言葉が出てくるだなんて思ってなかった。

 信じたくない、今ならまだ間に合う。そう叫ぶ声が心の内から響く、けれど。

 デュレイさんはその先を紡いだ。その口で。


「そうすれば、コメットは俺にくれるって」


 …………何だか、どこかで、何かが切れる音がした気がした。

 僕だけじゃない。もう、一つ、かな。


「――っざけんじゃないですよ、シアン化水素にも劣る単細胞生物が。原核生物ですか? 原生生物ですか? それともむしろ菌類ですか」


 ああ、予想通り。だけど不思議と申し訳ない気持ちになったりはしない。――理由は明白だ。何故なら僕も、怒っているから。

 ヘタレさんの言ってる意味は正直よく分からないし単細胞生物も生きてるのにそういうこと言っていいのかどうかは分からないけれど、とりあえず、このストーカー野郎はリルちゃんを殺すと言ったのだ。

 ふざけている。実に腹立たしいと、笑いながら、思う。


「……ヘタレさんはちょっと言葉悪いですけど、そうですね、私も賛成です」


 穏やかに、穏やかに。最初はあえて、あくまで穏やかな口調で。


「――てめえ、僕のリルちゃんを殺すなんつって生きて帰れると思うなよ」


 そして、爆発させる。

 言葉遣い? 今はそんな問題じゃないのです。こいつは本気だ。本気のことを、冗談のように言う。

 本気でリルちゃんを殺そうとしていて――それを軽く言いやがる、から。


 僕も許せない。


「へえ、怒った顔も可愛いな。さすが俺の彼女」


 けれどデュレイはへらりと笑う。彼女? ふざけんな。踏み潰してやろうか。


「本当は女の子を傷付けるのは趣味じゃないし、それがコメットなら尚更なんだが……まあいいさ。俺が強いって分かったら、お前も惚れてくれるだろ?」


 笑みを歪なものへと変え、それでもなお明るく笑い続けるデュレイ。

 惚れるなんて言語道断。誰がお前なんか。でもそんな野暮なこと、口に出したりはしない。

 それを満足そうに眺めたデュレイは、さらに、笑みを深めて。


「――来いよ。二人とも、まとめて相手にしてやる」


 かくして僕は、変態同士のケンカを止めるはずが、自ら戦いの火蓋を切ってしまったのだった――。




 一方。




「あーあ。始まっちゃった、始まっちゃった……三人とも単純だし馬鹿なんだから」


 火花を散らす三人から離れ、地下と地上をつなぐ階段をするすると上り始めている“影”があった。


「僕は知ーらないっと」


 肩を竦めて、影は実体を消したまま魔王の間へと向かう――。




注*単細胞生物だって生きています。あんまり馬鹿にしちゃいけませんよ!


というわけでこんばんは、お久しぶりです? タイトルふざけてません、決してふざけてませんよ白邪です!

ていうかあの二人どんだけ魔王様好きなんだって考えたら少しおぞましかったです。ひいいむしろ本人がドン引きだよ。

とりあえずストーカーは駆逐されるべきだと思います。


というか、私はとりあえず勉強するべきだと思う(´・ω・`)←


学力テストの点数ひどかったんです。人生初の赤点って奴です☆←

畜生何だあの理科教師。禿げてしま(ry

違いました。もう禿げてました←


あーええと全国の理科教師さま並びに髪の毛の薄い方すみませんでした。

違うんです、風向と風力書き込んで天気書き込むの忘れてたのは私が悪いんです(´・ω・`)←

ごめんなさい、更新もっとできるように頑張ります。あと受験勉強も。

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