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第105話 お隣さんの甘党事情

『☆』などの記号を若干含みます。

苦手な方は見なかったふり……すみません。温かい目でスルーしてやって下さい。

「さてさて皆様、こんにちは! 今日もお元気ですかあ? 誰が元気だろうと元気じゃなかろうと、今日も太陽は昇って沈むそうですが! それなら楽しくいきましょう!」


 新品スピーカーから漏れ出す、心地のいいノイズと鈴を転がしたような愛くるしい声。

 何かの歌のようにすら聴こえる、鼓膜を打つ高音が染み込むように響く。

 瞼を閉じて音に身を委ねれば、それほど気持ちいいものもない。――そう、瞼を閉じれば。


「さ、お疲れ気味の皆様に朗報です! 今日のゲストは何と、魔王城一のアイドル! コメット=ルージュさんですっ!」


 無邪気に笑いながら、彼女は言う。

 僕はついに名前を呼ばれ、覚悟をして目を開ける――そして。


「み――皆様、おはようございます! コメットです、今日は一日どうぞよろしくお願いします!」


 目の前の巨体・・を出来るだけ直視しないようにして、無理に明るい声を紡ぎ出した。






 やあやあこんにちは皆様。今日も元気に低血圧です、勇者です。コメットって言ったそこの奴、ちょっとおねーさんとお話ししようか?

 ただいま僕は、最近新しく出来た『放送室』という部屋にいます――どこの学校だよおい。何だかそう突っ込みたくなる名称ですよね。


「さあて今日のお天気でーす。まだまだ外は寒いですが、今日は久しぶりに晴れるみたいですよ? 皆様もブルーなことは忘れてアホみたいに明るくいきましょう!」


 思わず聞き惚れてしまうになるほどの、綺麗なソプラノ。

 現在僕の前にいるのは、最近マイク等々の拡声器を通すと性格がちょっと過激になっちゃうことが密かに判明したエルナさんでした。

 一見しただけなら、魔王城屈指の剛腕戦士にも見えます。ていうかそうとしか見えません。

 けれど、声を聞けば誰もが天使も裸足で逃げ出すような美少女を想像するでしょう。何つーギャップ。


「まあだけど外は寒いので浮かれて風邪なんか引かないように! 引いたらそれこそただのアホです、低血圧気味に引きこもって風邪菌も部屋に入ってこられなくするような奴はドアホですけどね!」


 ――そしてこれは、最近始まったラジオ『甘党宣言』の放送である(名付け親はヘタレさん、らしい。文句があるならあの人に言ってくれ)。


 偶然に偶然が重なって、些細なきっかけから最近整えられた放送設備のテストのような形で放送している。が、案外好調らしい。そりゃあ、DJが天下のエルナ様なんだから当然だけど。

 ただし城のほとんどの人はこれがエルナだとは知らない。――まあ、ここまで性格が過激になれば、よっぽど親しい人じゃなきゃ分からないんだろうが。

 エルナもあえて自分の名前を出さず『グレーテル』なんて名乗っているので(何だかんだで甘党に乗ってる気が)、リルちゃんやヘタレさん、放送関係に携わっている人、それからゲストに呼ばれた人しか知らないらしい。そしてまた、それを知っている人たちは面白がって、わざと隠してる節があるんだよなあ……。


「そ、れ、よ、り、もっ! コメットさん、バレンタインまで一ヶ月を切りましたけれど、誰かにあげる予定はあるんですか? やっぱり魔王様? それとも最近親しいヘルグさんなんかにあげちゃったりするのかなあっ?」

「後者はありません。……えーと、そうですね……去年は何だか、波に乗り遅れた感があるので……」


 きぱ。ていうか去年は忘れてたんだけど。


「お菓子作るのも好きなので、誰かにあげようかなとは考えてるんですよね」

「きゃ! みんなのアイドルコメットさん、何と誰かにあげる予定があるそうですよ!? 男性陣の皆様、あんまり期待はせずに待ちましょうね! 裏切られた時が悲しいですからっ!」


 そんなことを言いつつ、声だけならばエルナに期待する人だって多いだろう。

 何せ声が可憐な乙女なので、最近始まったラジオのDJに憧れを寄せる人も少なくない。

 憧れどころか変な好意まで抱いている輩もいるらしい。……まあ、声だけなら僕だってイチコロだ。確かに、聞くだけで惚れてしまいそうなほど。

 ――と、エルナがふいに話題を転換する。


「それじゃあここらへんで、今日の一曲目いってみましょうか! 本日の一曲目は、サリー=グリミアさんで『生意気なあの』です!」


 ……何か聞き覚えのある名前でさらには内容が想像できて怖いけど、うんまあとりあえずスルーしよう。

 そう決めた僕の耳に、無情にも一筋のメロディーが流れ始めた。

 ドラムの音がテンポよく響いて、やっぱり聞き覚えのある声が歌を歌い出す。


『私はあの子がとても憎い』


 え、ちょ、最初からそれですか!? 憎い!? 出オチ!?

 音楽をかけるのはラジオの趣旨だしそれ自体はいいんだけどさ……! 何でこんな曲をかけるのかな!? 最初っから『あの子が憎い』だよ!?


『愛しの人に気に入られる金髪のあの子が』


 ちょ、明らか恨まれてるんですけどおおおお!

 いや……落ち着け僕っ。金髪の人なんてこの城だけでもたくさんいる。それは僕とは限らないわけで、ほら、人違いかもしれないじゃない! 確かに憎むのは相手がだれであろうといいこととは言えないけれど、ほら、僕にはそもそもそんな憎まれるほどの覚えは――


『私はコメットが憎い!』


 名指しですかっ!?

 いいのそういう歌!? 許されるの!? これがラブソングだったら可愛いものだなで終わりだけど、よりにもよってこういう歌で名前を出すの!?

 別人のコメットさんとかいませんよね……! 残念だけど確かコメットなんて印象的な名前の人他にはいなかった――つーか身に覚えがあるし! すいません! 覚えがありますリルちゃんの誕生日パーティーの時とか誕生日パーティーの時とか誕生日パーティーの時とか!

 いたよねサリーさん! いたよね怖い顔のお姉さん! でもあの人歌なんか歌うんだ……いや、問題はそこじゃないんだけど!


『姫だからって王子の手を取れると思ってんじゃないわよ』


 最早これ歌じゃないんですけど……! ただの僕に対する呪詛の言葉だよね!?

 最終的に『死ね』とか『消えろ』とかに発展してそうで怖いんですが! これ放送していいの!? ねえどうなの!? ていうか選曲……! エルナ何でわざわざこの曲を選んだの!?


「さ、それじゃあ続けましょうか」


 そこ続けるんだ!


 確かに沈黙が続くのも辛いけど……っ、そんな冷めた顔で言います!?

 笑顔。さらりと流す笑顔!

 あっさりすぎません!? 何、僕への当てつけか!?


「コメットさん……ええと、最近誰かに恨まれるようなことは?」


 え、聞くの!? そこ聞くの!?


「え、べ、別に……人様に恨まれるようなことは、やっていないと思いますけれど……」

『冗談じゃないわよいい子ぶって』


 僕の言葉を批判するように歌が重なる。

 ちょ、サリーさんどこかで聞いてない!? 仕掛人どこ!?

 思わず本気で見回してしまった。


「まあ、そうですよねー。コメットさんは誰にでも好かれる人ですもの、魔王様を巡ってファンクラブの方と衝突なんてそんなことは」


 分かってて言ってるよこの人!


「あ、あはは、別にそんなっ……」

『ごまかそうたってもう逃げられないんだから』


 おいこら仕掛にィィィィん!


「まあまあそれでコメットさん、今正直言って魔王様とどこまで行ってるんですか? それとも本命はヘルグさん? キス? キスはしました?」


 とか言いながら、目を輝かせて身体を乗り出してくるエルナ。

 いやっ……、き、キスはしたけど……! ――て、いうか思いっ切り私事だし!

 何!? 誰かラジオでこんなこと聞いて楽しいの!? 誰かわざわざ聞こうっていう酔狂がいるのか!?


「え、い、いえ、そんなことは……!」

『どうせあの人の何も知らないくせに!』


 うわ、本気で怒りがこもってきましたBGMのこの方!

 何も知らないってそんなことないもん! というかこれから知っていくからそんなことはどうでもよかったりするしそもそもお前にはリルちゃんの一欠けらもあげねーよって言って――


「はい! それじゃあ2曲目行きまーすっ」


 僕らが本格的にる気になってきたのを分かってか、ぶつとエルナは音楽を止めた。

 ……あ、何かサリーさんの断末魔みたいな声が聞こえた。うわ何か、……何だこれ……何てコメントしていいのか全く分からん。


「えーさて今日の2曲目は、魔王側近(匿名希望)さんで『ツンデレストイック』です」


 ちょ、あいつううううううう!

 おいおいちょっと待てやこら! おま、ストイックの意味分かってる!? 分かった上であえてそうしてるのか!?

 ていうか匿名希望って! 匿名も何も魔王側近ってその時点でバレてんじゃねーか!

 と、ぶつりと聞き覚えのある声がくぐもった音のまま響く。


『や、コメットさん。聞こえてますか?』

「普通にしゃべってんじゃねーよお前は!」

『今日も一段と口が悪いですねー……最近会えない日々が続いてるので寂しかったりとか』

「貴方がいないとかそんな毎日が愛おしくて仕方ない☆……っていうかストイックならストイックらしく部屋にでも引きこもってろ変態」

『いえ、引きこもってますけど……何せ傷が癒えていないもので。メテオぶつけられるとさすがに痛いですねー』

「そのまま死ねばよかったんじゃないですか?」


 リルちゃんの正当防衛(と言い張る)のお陰でただいま絶賛療養中のヘタレさんは、どうやら部屋から声を流しているらしい。仕掛人……本人だろうな。多分。

 でも知らない内にここまで元気になっているとは……ちっ。もう少し痛めつけておけばよかったか。って、メテオぶつけたのはリルちゃんだけど……。だけどあれで生きているヘタレさんはやっぱりゴキブリか雑草かのどっちかだと思う。


「まーそれじゃあヘルグさんとコメットさんが微笑ましく会話してる間に、報われない野郎どもは空に向かって叫びましょう! 明日もラジオが恋人だと! 勿論叫べますよねえ?」


 ちょ、ところでそれは脅しじゃないですかエルナさん……!

 お願いだからそんな悲しいこと言わないで! それだとラジオを聞いてる人がみんな独りみたいだから!


「覚悟は決まりました? じゃ、部屋にいる野郎は窓を開けて、大広間の放送を聞いている野郎は肩を組んで! さーん、にーい、いちーっ!」


 エルナのりのり! 嬉しそうだし! ていうか、こんなの本当に叫ぶ人なんているわけ――



「明日もラジオが恋人だああ――っ!」



 地響き、にも似た雄叫び。

 防音設備が整えられているはずの室内にまで轟いてきた叫喚に、僕は思わず固まってしまった。

 ――え、嘘、いるの? いや確かにこの城の人はみんなノリがいいけど……!

 まさかそんなこと。何故か焦った。


「こ、こ、恋人って……! そんな寂しいこと」

「あらあらコメットさん、それじゃあその寂しい野郎どもの恋人になってみます? 多分諸手を挙げて喜びますよ?」


 そ、それは勘弁だけど。だって今の聞く限りいっぱいいるし……。知らない人も多分いる。

 それに僕には既にリルちゃんというお嫁さんが! こればっかりは譲れないのだ!


『あ、それは無理です。私がもらいますので』

「お前はそろそろ黙れ。あのー、そろそろ2曲目終了しちゃって下さいグレーテルさん」

「了解でーす」


 ぶつ。

 ……よし、鬱陶しいゴキブリが消えた。これで安心して放送できるね!


「じゃあそろそろ今日はこの辺で! 私が満たされたので終わります!」

「え!?」


 エルナ突然の告白。

 何そこ自分の気分で終わっちゃうの!? ようやくGが消えたと思ったのに! まあ……確かに続けててもロクなものは出てこないだろうけどさ……!


「それじゃあ今日はコメットさん、ありがとうございました!」

「え、あ、はあ……せいぜい30分くらいでしたけど。こちらこそありがとうございました」

「またラジオの恋人になりたい時は来て下さいね!」

「いや、そもそも私今日そのつもりで来てませんから!」


 ラジオの恋人って。もしかして僕はそれ目当てで来たと思われてたのか!?

 心外な、僕の恋人はただ一人リルちゃ――げふげふ! ああ、すみませんちょっと自重します。


「皆様今日も元気にお過ごし下さいねっ! 明日はサリーさんをゲストにお呼びして、恋のライバルというテーマを中心に一日語り明かしたいと思いまーす!」

「やっぱり私への当てつけでですよねそれ!?」

「さあ、何のことでしょうかー? 野郎ども、明日もレッツラジオ中毒!」


 そんな締めの言葉を愛らしい声が放つと、おおおっとまたも雄叫びが地面を揺るがした気がした。

 ……侮れん。早くしてラジオ廃の連中め。

 むむと唇を結ぶと、マイクから離れたことによっていつもの調子に戻ったエルナが無邪気な笑みを浮かべて歩み寄ってきた。……いや、無邪気……とは言い難いけれど。


「今日はお疲れ様でした、コメット様!」

「あ、ああ……うん……何だか、意味もなく疲れた気がする……」


 本音をため息とともに吐き出すと、エルナが不安そうな顔で僕を見下げる。――見下げる。そう、ここが重要。見上げてきたんじゃないよ上目遣いじゃないよ。

 何かときょとんと見上げていると、両手の指を組み合わせ、エルナは小さな声で告げた。


「コメット様……あの、ええと……また、ゲストとしてお呼びしても、よろしいでしょうか……?」


 謙虚で、思わず笑ってしまいそうな言葉。だけど本人は真剣で。

 僕が疲れた、なんて言うから不安になったのだろう。――でも反響もあるようだし、僕もこういうことは新鮮で楽しいというのはある。ヘタレさんはマンネリなので是非土にでも還って頂きたいが。

 だから僕は大きく頷いて、笑みを閃かせた。


「うん、ていうか疲れたけど今日は楽しかったし。また誘ってね?」

「本当ですか!?」


 僕の言葉を受けた途端、ぱっと嬉しそうに顔を輝かせるエルナ。

 ……おっさんじゃなければなー。そんな僕の失礼な思考など知らず、エルナははしゃいで僕の手を取る。


「それでは明日、サリーさんと御一緒にお呼びしますね!」

「うん」


 うん。…………。






 ………………あれ?




とりあえず今回の話で勇者の思考に一度でも卑猥な響きを感じた人は作者と握手。


タイトルは割と関係ありません。でも仮小説タイトルが『マイクを通すと性格が変わっちゃう人のry』だったから仕方がないと思うんだ。

ネタを詰め込んだらこうなったという話です。出すつもりがなかったのに割り込んできたヘタレさんとか(´・ω・)


ヘルグ「作者の期待をとことん裏切るのが私ですから!」


誇らしげに言うんじゃねえよ。



えーと、それからお知らせなのですが……何と2月15日、16日に学年末テストがあるそうです\(^o^)/

……だから何だって話ですね。えーとそろそろ本気で勉強しないと受験とか受験とか受験とか(中略)まずいので、テスト前1週間は真面目に勉強しようと思ったわけなのです。


と、いうわけで、2/8~2/16の間、パソコンに触れません!


……あ、バレンタインだけは先に執筆しておいて14日に投稿しちゃおうと思います。そこは親に許しをもらったのでマイマイ←

ですがそれ以外はタブーです。ゲームも封印しました。お絵描きは封印されたら泣く。

ですからその間小説の執筆はおろか感想、メッセージの返信もできません……! すみません!

あ、だからといって『感想送るのやめた』とか言わないで下さい! テスト後に全力で愛を込めて(←)返信いたしますので、どうか感想メッセージたくさんください!\(^o^)/←


そういうお知らせでした。2月8日まであと一回更新出来るかどうか……が、がんがります。

ですがテストが終わったら普通に戻りますので、どうぞそれまで宜しくお願いいたしますー!

る、留守は頼んだんだぜ!←

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