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文化祭どころじゃない 9


 「あした」とタダが言った。「ササキとかと文化祭回んの?」

「…どうかな…店番もあるでしょ?それにユマちゃんはヒロちゃんと回るかもしれないし…。あ、『ヒロちゃん』ってユマちゃんの彼氏のヒロちゃんの事だけど」

「言わなくてもそれわかってる」

「…ハハ」とちょっと笑って見せてから言う。「なんかまぎらわしいよね。ユマちゃんの彼氏もヒロちゃんて」

「…」無言でじいっと私を見つめるタダ。

 

 「じゃあ」とタダが言った。「ちょっといっしょに周ってみよ。せっかくだし」

 せっかくだし?

 せっかくってせっかく文化祭だからって意味?付き合ったりはしないって言ってたのに?とまた思ってしまう。

「タダは…タダはホンダとかと回んなくていいの?」

「…」また無言でじいっと私を見つめるタダ。「なんかそういうとこ、大島は変わんねえよな」

「何が?」

「まあいいけど」


 タダと一緒に回るの?二人で?ハタナカさんに何言われるだろ…ハタナカさんだけじゃない。女子のみなさんたちの注目を集めてしまう。

「なんかさ…目立つと思うんだよね」と言ってみる。「タダと一緒だと女子が見るよ」

「どうせどこもザワザワしてるから目立ちはしないと思う」

「そんな事ないよ。ていうか!あんた誕生日だから回ってる途中でみんな次々に何か渡してくるかもよ」

「ハハハ」とタダは笑った。「それはないわ」

「あるよ」とハタナカさんとのやり取りを思い出す。


 ほんとは…ほんとは私誰からももらって欲しくないかも…シャーペンとかでももらって欲しくないかも。だってタダは私のシャーペン使ってんのに。

 タダを好きな子がタダにどうしても誕生日プレゼントを渡したいって思う気持ちはわかる。タダがそれを断れなくてもらってしまっても仕方がない。でも目の前で渡されて受け取ったりしたら、やっぱり嫌だ。

「そんな事より!」自分の気持ちを隠すようにタダにきっぱりと促す。「欲しいものはっきり言って欲しいんだけど」

「…」

「言わないなら、私がなんか勝手に用意するけどさ、文句言ったりしちゃダメだからね」

「…」


 どうしたんだタダ、『…』が多いな。なんか…私みたいじゃん。そう思ってちょっと弱気になる。

「いや、あのね、あんま期待できないかもしれないけど、でもやっぱケーキ焼いて、うちにまで呼んでくれたから私もどうしてもあげたいっていうか…」

 でもこれはなんか…やたらタダに誕生日プレゼントをもらって欲しがってるっていう感じが自分でも恥ずかしい。

「なあ」とタダが言う。

 あれ?なんかタダ、ちょっと赤くなってない?


 「なあ、ヒロトにはなんか言われた?」

「ヒロちゃんに?何を?」

「オレの誕生日の事?」

「何も言われてないよ。だってさっき言ったじゃん。タダの誕生日の事聞こうかって思ったけど聞かなかったって」

「あ~~うん。…あのな、もしヒロトがなんか言って来ても知らんぶりしとけばいいから」

「なに?どういう事?」

「いやいい」

「なにそれ…ヒロちゃんが何言ってくんの?すごい気になるんだけど何?」

「…」

 もう何!さっさと言えばいいのに。



 「…ヒロトがな」言いにくそうに言うタダ。

「ヒロトが、オレが…チュウして欲しがってるって大島に言っとくって言うから。ヒロトはそういう時、冗談じゃなくてほんとに言うじゃん。昨日止めたけど、ヒロトならやっぱオレがいくら止めても最終的に言うんだろうなって思うけどほっといていいから」

溜息をつくように言ってしまう。「バカだなぁヒロちゃん」

相変わらずほんとにもう。

「だからさっき大島が欲しいもの言ってみろって言った時にそれ思い出してちょっと…」

そこでまた言い淀むタダ。

「なに?そこでなに?」

「ついニヤついてしまった」

そう言ったタダを凝視してしまう。何言ってんだこいつ…

「いやヒロトがオレの誕生日シチュエーションで大島の役をやってふざけてたんだけど、この前の休みな。あの文化祭の後の」

「…どういう事?」

「ヒロトが大島になり切って『ねえ、誕生日何欲しい?』ってオレに言ってくるやつ」

…バカだなぁ…

「そいで」と続けるタダ。「『じゃあ』って言ってオレに『ちょっとだけ目をつぶって?』って言ってくるやつ」

「マジでバカ」

男子ってバカだよね。

「ハハハハ」と笑うタダ。「まあな。『今日だけだよ』とか可愛い感じ出して言ってたし」

「え、ちょっと待って」慌てて聞く。「その時他にも誰かいたの?」

「いやヒロトと二人」

良かった~~。

「あと」と続けるタダ。「ヒロトがオレの役やってオレが大島って事にして、『なあオレ、今日誕生日なんだけど欲しいもんあるから』ってはじめて…」

「いやもういいからその話。私が関係してなかったらすごい面白いけど、ヒロちゃんが私の役やるとかほんとビミョー」

 私がずっとヒロちゃんの事好きだったの知ってんのにそんな事するってほんと酷い話だけど、ヒロちゃんだったら許せちゃうから困るよね。「まあな」って言ったタダもすごく嬉しそうに笑ってるけど、コイツもほんと相変わらずヒロちゃんの事大好きだよね…



 「それでな」とタダが言う。「そういう事ヒロトがやって来たから、その後何回も想像して」

「?」

「大島がほんとにそんな風に言ってくるとこ想像してしまったっていう話」

「は?え?」

「それでさっき大島があんな感じで言ってくるから勝手にニヤけた」

「…」

 恥ずかし過ぎて何も返せない。『バカじゃないの?』も言えないって本当に意識し過ぎ!

 なんで今二人きりの時に普通にそういう事言ってくんのこの人。それなのに学校では別に付き合う気は無い、みたいな事言ってたよね?しかもハタナカさんの前で。

 

 「それでな」とタダ。「ヒロトが大島の事をそういう感じで好きじゃなくて良かったなってやっぱ思ったわ」

「…」

「ヒロトが大島の事好きだったらかなわないもんな、どうやったって」

「…」

「大島のまねしてオレの相手するヒロト見て、あ~良かったなって思ってたっていう話」


 いやものすごく赤くなってるから私。

 その私を見てタダがまた優しく笑ったから私は完全にそっぽを向いてしまった。

 ドキドキする!なんでこんな恥ずかしい事を二人の時に言ってくんの!?赤い顔が恥ずかしい。

 


 「オオガキとラインとかしてんの?」

「え?」

急に話を変えたので赤い顔のまま思い切りタダを見てしまうと、その私の顔をまじまじと見るタダ。パッとまた目を反らしてしまう。

「やっぱしてんの?」とタダ。

「してないよ!」

「今日写真の事とか話してたじゃん」

「あれはだからハタナカさんが勝手に送って来たんだよ。体育祭とかの前の話」

「でもササキも言ってたけど前」とタダが言う。

ユマちゃんが??「何を?」

「オオガキからいろいろ大島の事聞かれるって体育祭の前後」

「それはオオガキ君が私とペアだったからでしょ。ていうかそれ、ユマちゃんがタダに言ったの?」

うなずくタダ。「もっと心配したら?って言われた」

ユマちゃんめ~~~。



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