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ふわあああ。ここは、ベッドの上か?それにしても何時の間に眠ったんだろ。うーーん。確か、父さんと母さんと話してて・・・。
あっ・・・。うーーわ。
あの時の俺何言ってんだよ。しかもあんなに泣いてクッソ恥ずかしい。あんなにつっかかった言い方する予定とかなかったのに。うわあああああああああ。
先ほどまでの事を思い出しながら、ベッドの上でゴロゴロと転げまわった。
「マティアス様。おはようございます。よく眠ってらっしゃいましたね」
その声を聞いた瞬間、俺はピタッと転げまわるのをやめた。
「あ、ああ。おはよう。いべりす。ちなみにいつからいたの?」
「いつからと申しますと。マティアス様が目を覚まされて何やらゴロゴロしてらしたところですかね?」
うっわ。最初からじゃん。最初から見られてたじゃん。何で起きた時すぐに周りを確認しなかったんだよ。何のためにエコロケーション覚えたんだよ。こういう時に使わないと意味ないじゃん。過去の自分を殴りたい。
「難しい顔をしながら転がっている様子は、とても可愛らしかったですよ」
ぐはっ・・・。止めてくれ。ただでさえ、父さんたちにみっともなく当たってたのを思い出したのに、それ以上俺の精神を削らないでくれ。既に俺のライフは、0なんだからこれ以上の追撃をされたら恥ずかしさのあまり悶えて死んでしまう。
(ああ、そんな悶えているマティアス様も可愛いわーー。マティアス様で遊ぶのはこのぐらいにしてご飯の時間だと伝えましょうかね)
「そうでした。マティアス様。そろそろ夕食の時間になりますので食堂に行きましょうか」
「も、もう、そんなじかんなのか。ありがとう。それじゃあ案内してくれない?」
「かしこまりました」
あれ以上やられてたら本気で危なかった。1週間は、部屋から出ないでおこうとも考えたぞ。それにしても、最近のイベリスはどうも様子がおかしい気がする。たまに息遣いが荒いんだよな。特に二人きりの時なんて何か知らんが背中がゾクゾクする感覚に陥る時があるんだよな。
「マティアス様。着きましたよ」
「んあっ。ああ。ありがとう」
「これで、全員そろったなでは、食事をいただこうとするか」
「「「豊穣の神アルステンよ。命を育む神アリアーデよ。我らが今日も生を全うできていることに感謝を」」」
うん。相変わらず我が家の料理は美味いな。だが、米を食べたい。丼物を思いっきりかきこみたい。海鮮丼もいいな。この辺は、海に近いのだろうか?だが、魚の生食ってのは嫌われてないかな。魚を生で食べるってのは、異世界じゃ定番だからなー。その前に俺、この国の名前も何も知らないや。てか、家から出たことないし。辛うじて庭を散歩するぐらいしかしてない。行動範囲狭いなー。3歳だし目が見えないししょうがないか。だが、そろそろお出かけしたい。うーーーん。そう考えたらやりたいことだらけだな。時間はいっぱいあるし、のんびりやっていくか。
食事が終わった頃父さんが話し始めた。
「さて、昼間にマティアスが音を頼りに周りの事を把握出来ると伝えたが、実際に見てみらんことには理解しにくいだろうから今からしてもらうとする。よいか?マティアス。」
「お父様。どういうことですか?」
エリーシア姉さんは聞かされてないのか。となると、フェルナン兄さんもまだ聞いてないかな。
「まあ、こればっかりは見てもらった方が早いからな。頼むマティアス」
「はい。」
俺は椅子から降りて机を一周してエリーシア姉さんの元へ行きそのまま抱き着いた。
「えへへ。えりーしあねえさん。すごいでしょ」
「えっ?えっ?えっ?マティアス見えるようになったの!?」
「みえないけどみえるのー」
また、テーブルの周りを一周回ってフェルナン兄さんに抱き着いた。
「ふぇるなんにいさんびっくりした?」
「あ、ああ。驚いた。マティアスは見えていないんだよね?」
「そうだよー。みえてないよー」
「だ、だが、今見えてるように動かなかったか?」
「みえていないけどどこになにがあるかわかるのー。ちっちっちってぼくが、おとをならしてたのはわかった?」
「うん。それは聞こえていた。でも、それとどういう関係がある?」
「うーんとね。おとをならすとそのおとがはねかえってくるの。それをかんじてどこになにがあるのかわかるの。エミリッサ」
「はい。なんでしょうか」
「ぼくのまえにひざのたかさになるようになにかものを3かしょにおいて。あいだをすこしあけてね。」
「わかりました」
「マティアス様。用意が出来ました」
「それじゃ、みんな見ててね」
エコーロケーションしながら置かれた物の間を縫うように歩いた。3か所目を回ってもう一度縫うように歩き元の位置へと戻ってきた。
「どーお?すごいでしょ。これで、一人でも歩けるよ」
「エミリッサ。スゴイ顔してるわよ」
「イレーネ様。驚くなという方が無理ですよ。マティアス様は、本当に見えてないのですよね」
「ええ。エミリッサ本当よ。話できくより見た方が分かりやすかったでしょ」
「昼に聞いていましたが、実際にみると何とも言えないですね」
「マティアス。すごいすごい。どーやってやるの?」
最近、大人しくなってきたと思ってたのに、このままじゃまた思いっきり抱き着いてくるな。だが、以前のようにやられないのだよ。エコーロケーションをマスターした俺には不意打ちは効かんよ。
ちっちっちと音を鳴らし、エリーシア姉さんからの突撃を回避する。
「ふおおおお。すごい。避けた」
えっちょっと待って。何回突撃してくるの?そろそろやめてほしいんだけど。何だか、闘牛士にでもなってきた気分なんだが。
「確かにすごいな」
フェルナン兄さん。冷静に分析していないで、あなたのお姉さんを止めてもらえないですかね?さすがにまだ、長い時間はできないのですよ?こうも連続で来られると・・・
「エリーシア。その辺にしなさい。立派なレディーならその辺で止めなさい」
母さん。もう少し早い段階で止めること出来たんじゃないの?
「はーい」
「これで、マティアスが一人で行動できることがみなにも理解できたと思う。これまで以上にしっかりとマティアスの事を見守るように。物が把握できているだけで見えないって事には変わりないのだからな」
「「「かしこまりました」」」
あれっ?つまり今まで以上に監視が厳しくなるってことか?見えないのにあっちこっち動き回るようになるから当たり前っちゃ当たり前なんだけど・・・。何か腑に落ちないな。