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 3歳になりました。無事にエコーロケーションを習得することができた。これで、物の位置とか把握できるようになったのはかなり助かる。走ったりしても何かにぶつかるかもという恐怖心から解放された。自分で認識できるってかなり安心できるんだ気づかされた。見えないってことが、こんなにも大変だったなんて改めて思い知ったよ。母さんたちには、今のところエコーロケーションによって物の位置が把握できてるってことを知られてないはずだと思いたい。クリック音を鳴らす変な子とは思われてそうだが。


 しかし、これで母さんたちを驚かせられる。見えないはずなのに物を把握できているんだからな。それに伴い一つ懸念がある。何故、そんなことが出来ると知っていたかだ。前世の記憶があるってことを話すか迷う。

 話して不気味に思われたりするかもしれない。そうじゃないかもしれない。自分がその立場になることで良くわかるな。他人事だと思っていた事柄が実際に自分が体験してしまうと何ともいえない。


 普通に俺の目が見えていたら別に言わなくてもいいとは思うんだが。俺は、目が見えない。一筋の明かりさえ見えない。だが、前世の記憶があり、そこから補完してある程度の事を把握することは出来る。出来てしまう。生まれつき全盲の人は、眩しいという事が分からない。しかし、俺は知っている。今後の事を考えるなら、やはり両親には知ってもらいたいな。安心させるためにも。一人立ちできるってことの証明をするためにも。そうと決まれば、行動開始だ。思い立ったが吉日の精神で行こう。やらないで後悔するよりもやって後悔した方がいいと何かで言ってたしな。


 今傍にいるメイドは、イベリスか。イベリスは、何か母さんに似た雰囲気を感じるんだよな。つい、甘えたくなる何かがあるんだよなあ。近所の優しいお姉さんって感じだな。


「イベリス。」


「なんでしょうか。マティアス様。」


「とうさんとかあさんは、いまどこにいる?」


「ガードルフ様は、おそらく執務室にイレーネ様は、広間にいらっしゃるとおもわれます。」


「ありがとう。まずは、かあさんのところにあんないしてくれる?それと、とうさんのところにいってぼくがはなしをしたがってるってつたえてくてくれる?


「わかりました。カトレア。」


「は、はい。そう言う訳だから、ガードルフ様の所に行って伝えてきてくれるかしら。」


「は、はい。今すぐに。」


「あいかわらず、カトレアってそそっかしいよね。」


「そうですね。それよりも、そそっかしいって言葉どこで覚えたんですか?」


 やばっ。こういうとこは地味に鋭いんだよな。


「そ、それよりも、かあさんのとこまであるいていくからあんないしてくれない?」


「案内いたしますから私の手を握っててくださいね。」


「わかった。」


 コンコンコン

「イレーネ様。マティアス様をお連れしました。入ってもよろしいでしょうか。」


「ええ。いいわよ。」


「失礼します。」


「マティアス。いらっしゃい。会いに来てくれるなんて嬉しいわ。どうしたのかしら?一緒に遊んでほしいのかしら?」


「ちがうの。」


「そうなのね、残念だわ。」


「おかあさまとおとうさまにおはなししたいことがありますので、いっしょにおとうさまのしつむしつまできてくださいますか。」


「あなたが、そんなことをいうなんて初めてね。ええ。いいわ。一緒に行きましょうか。」


「おとうさまには、かとれあにつたえにいってもらっています。


「あらあら。もう、そんなことが出来るようになったのね。でもね、マティアス。あなたは、まだ子供なのだからそんなに気を使わなくてもいいのよ。子供たちのお願いなら忙しくても時間を作るから、大丈夫よ。」


「で、でも・・・」


「もう少し、大きくなってからでいいのよ。子供は、子供らしく元気でいることが一番よ。」


「うう。わかりました。」

 母さんには、勝てないな。子供らしくか。精神は、40のおっさんだから中々難しい注文だな。


「お父さんの所へ行きましょうか。」


「あい。あるいていくから、てをにぎっててください。」


「あらあら。これでいいかしら?」


「あい。」


 コンコンコン。


「イレーネ様とマティアス様を連れて参りました。入ってよろしいですか?」


「おう。入っていいぞ。」


「失礼します。」


「イレーネにマティアスよく来たな。セバス。紅茶の用意を頼む。」


「もう、ご用意はできております。」


「さすがだな。」


「いえ、これぐらいは、執事としては普通でございます。」


 すげよ。セバスすげえよ。何時から紅茶用意してたんだ?動いた気配を感じなかったぞ。これが、一流の執事ってやつか。何があっても『執事ですから』の一言で片づけられそうだな。是非、カトレアにも見習ってもらいたい。しかし、ポンコツなのもいいんだよなあ。成長してもらいたいとも思うしそのままポンコツでいてもらいたいとも思う。これは、難しい問題だな。永遠に解けない気がするな。


「それで、一体どうしたんだい?何か話したいことがあるとは聞いていたんだが。」


 そうだったそうだった。今は、変なこと考えてる暇なかったわ。


「あの・・その・・・おとうさまとおかあさまのふたりだけにはなしたいのです・・・。」


「そうか。では、他の者は席を外してくれ。」


「「かしこまりました。」」


「みんな出て行ってここには、私と母さんの二人だけだぞ。」


 よし。言うぞ。今からいうぞ。簡単だ。前世の記憶がありますって言うだけなんだから。

「えっと・・・その・・・」

 おい。どうした俺。簡単だろ?一言で済むんだから。

「そのね・・・あのね・・・ひっく。ひっく。」

 何で泣いてるんだ俺。


「マティアス。焦らなくてもいいわ。私たちは、どこにも行かないんだから。言いにくいならまた、今度でもいいのよ?」


「そうだぞ。無理に話さなくてもいいぞ。時間は、何時でもとれるからな。」


 ああ。父さんたちは、優しいな。でもな。でもな。ここで二人の優しさに甘えてしまったらダメなんだ。逃げたらダメなんだ。確かに、また、時間を取ってもらえばいいかもしれない。

 だが、本当のことを伝えたい時に、伝える相手がいなくなってしまっていたらずっと死ぬまで後悔するだろう。ここは、地球よりも命の価値が低い。今日は大丈夫でも、明日は、魔物に襲われるかもしれない。野盗にでも襲われるかもしれない。それは、嫌だ。絶対に嫌だ。

 こんな事で引いてしまえば、男が廃るってもんよ。


「ううん。ひくっ・・だいじょうぶ。みてね・・ひっく・・もらったほうがはやいの。」

 

 ぱちんっ。

 

 気合いを入れるために俺は、両ほっぺを自分でたたいた。

 ああ。うん。痛いな。だが、おかげで、目が覚めた。もう迷わない。弱気にならない。


「ぼくのまえに、かんかくをあけてものをおいてほしいの。ぼくのひざぐらいまでのたかさのを3つぐらい、おいてほしいの。おいたらおしえて。」


「ああ、わかった。」


 あーー。少し混乱してるかな。でもしょうがないよね。こればっかりは、実際に見てもらった方が早いから。普通に考えたら意味が分からないよね。


「マティアス置いたぞ。それからどうするんだ?」


「ありがとう。もう、何もしなくてもいいよ。後は、見ててね。」

 

 ちっちっちっちっちっちっと音を鳴らしながら俺は、置かれた本の間を縫って歩いていく。


「ここに一つめがおいてある。ここが、二つめ。これが、さいご。どう?すごいでしょ。」


「あ・・ああ、確かにすごいな。も、もしかして・・見えるようになってたのか?」


 めっちゃ驚いて動揺しているな。しょうがないかな。見えないはずなのに見えているように歩いたんだからな。


「ううん。ちがうの。みえるようになんてなってないの。いろも、ひかりもなにもみえないの。でもね・・・。ちっちっちってぼくがおとをならしてたのわかった?」


「ああ、確かに鳴らしてたな。それがどうしたんだ?」


「そのね、おとがはねかえってきたのをかんじとってどこになにがあるのかわかるの。だからね・・・。」


「おとうさんとおかあさんがどこにいるのか、みえなくてもわかるようになったの。」

 そういいながら俺は、初め母さんの元まで走り抱き着きその後父さんの所まで走って抱き着いた。


「こっちはおかあさん。ふふふん。」

「こっちがおとうさん。」


「えへへへ。あってたでしょ。おとがはねかえってきたのをかんじとって、はあくするのを『エコーロケーション』っていうんだよ。でもね、ふしぎにおもうでしょ。”なんでそんなことをしっているのか”。ふつうならば、しっているはずがないいだよね。でもね、ぼくはしってるの。それをつたえたかったの。」


 ああ、手が震えるな。しかし、ここまで言ったからもう最後まで言うしかないんだけどな。


「じつはね・・・ぼくには・・ぼくにはね・・・。」

 くそっ。震えるな。最後まで言うんだ。伝えるんだ。自分で決めたことだろ。


「前世の記憶があるんだ。」


「ぜ、前世の記憶?」


 そりゃーいきなり言われても分からないか。


「うん。マティアス=アンファングとしてうまれるまえのきおく。そこでは、40さいのときにしんだんだ。そして、きづいたときにはマティアス=アンファングとしてのせいがはじまってたの。だから、赤がどんないろかいわれたら、ちのいろってこたえられるし、そらは、なにいろってきかれたらあおいろってこたえられる。これがね、ぼくなんだ。しょうじきぶきみだよね・・ひっく・・っ・・こわいよね・・ひっく・・きみがわるいよね・・っ・・・ひっく・・こんなこどもにうまれてきてごめんめ。っ・・うっ・・ごめんなさい。」


 全部言ったぞ。言ってやったぞ。

 あーー。だめだ。涙が止まらん。不気味に思ってるかな。気味が悪いって思ってるかな。家を追い出されちゃうかな。たった、3年間だったけど楽しかったな。みんな優しかったし。みんなありがとう。言いたいことは、言ったから、後は全部任せるしかないな。どうなっても後悔はない。ただ、もう少し大きくなるまでは、家に居させてほしいかな。離れでもどこでもいいから。そしたら、家を出て生きていくから。


 そう、思っていると急に抱きしめられた。

 えっ?だれ?母さん?なんで抱きしめてるの?気味が悪くないの?


「ごめんね。マティアス。・・っ・・ごめんね。」


 何で母さんは、謝ってるんだ?母さんは、何も悪くないのに。


「だからあなたは大人しかったのね。母さんね不思議だったの。エリーシアとフェルナンが生まれたときは、もっと大変だったのよ。だから、ほとんど手のかからなかったマティアスがね心配だったの。目が見えないのに、他にもどこか悪いんじゃないかって。でもね、あなたが1歳になったときに言ってくれた言葉が嬉しかったの。あまりの嬉しさにね、その日の夜は、みんなでお酒を飲んでいたのよ。」


 そんなに、嬉しかったのか。まさか、夜にそんなことになっていたとは。


「その後は、一人で歩くことが出来たでしょ?目は見えないけど何も心配いらなかったんだ。ちゃんと元気に育ってたんだって思えたの。生まれてきてありがとうって心の底から思えたもの。そしたら、前世の記憶があるって言うからかなり驚いたわ。それと同時に納得したの。だからこの子は、こんなにも大人しかったんだってね。」


「っ・・・ひっく・・・ねえ、ぼくのこと、こわくないの?きみがわるいっておもわないの?だって、40さいまでいきてたきおくがあるんだよ。おかあさんたちよりもながくいきてたきおくがぼくにはあるんだよ。・・ひっく・・・。なんで、そんなにおちついていられるんだよ。」


 あーーだめだ。こんなこと言うつもりなかったのに。そんなこと言われたら、俺は・・俺は・・・


「落ち着いてないわよ。今でもね。心臓がドクドク言ってるわ。でもね、マティアス。あなたは、私とあなたのお父さんの子よ。それ以上でもないし、それ以下でもない。私達の大事な・・大事な子供よ。それだけで、十分よ。前世の記憶なんて関係ないわ。今は、マティアスって名前の可愛い私達の子供なんだから。」


「ひっく・・・ひっく・・うわあああああああん。」


「言わなくても良かったことをあなたは、私達にそれを伝えた。怖かったわよね。不安だったわよね。私達から拒絶されるかもしれない。家から追い出されるかもしれない。それなのに、あなたは私達に教えてくれた。伝えてくれた。だからね、マティアス。母さんはね今とっても嬉しいの。それに、見えなくても周りの事が分かるんでしょ。スゴイじゃない。喜ぶことはあっても、拒否したり、嫌いになんてならないわよ。それがね、親ってことなの。」


 そんな風に思っててくれたんだ。そんな風に感じてたんだ。そこまで言われてしまったら、何にも言えないじゃん。ははっ。くそー。涙全く止まらないし。卑怯だよ。そんなこと言うなんて。こっちは、拒絶される覚悟だったんだぞ。それなのに・・・それなのに・・・。くそっ。


「そうだぞ、マティアス。私の言いたいことも全部母さんが言ってくれたから私からは、ほとんど何も言うことがないぞ。だが、これだけは、言っておくぞ。”マティアス。私達のもとに生まれてきてありがとう。可愛い私達の子愛してるぞ。」


 父さんもかよ。愛してるなんて卑怯だぞ。あああ。この家に生まれてきてよかった父さんと母さんの子で良かった。

 なんだ。なにも心配する必要なかったじゃん。不安に思うことなかったじゃん。


「おとうさん。おかあさん。ぼくもあいしてる。みんなのことだいすき。とうさんとかあさんのこでよかった。」


「「私達もだよマティアス。愛しているわ(ぞ)。」

 



「ふふふふ。何だかお腹が空いてきたわね。アザレア達を呼んでおやつにしましょうか。」


「そうだな。紅茶も冷めてしまったし。新しく入れてもらうとするか。」


「とうさんとかあさんがみんなにも、つたえるべきだとおもったらつたえてね。ぼくは、もうだいじょうぶだから。」


「ああ。そうだな。イレーネよ後でこの事について話し合おう。」


「ええ。わかったわ。」


 言うべきことを言ったからか、それとも思いっきり泣いたからか、急に眠気が襲ってきて。気づけば夢の世界へと旅立っていった


「あらあら。マティアスは、眠っちゃったわね。ベッドに寝かせてくるから、その後話し合いましょ。」


「そうだな。」


 そう言って父さんは、ドアを開け外に待機していた。セバス達を呼んだ。


「この後、イレーネと二人で話し合うことがあるから、マティアスを部屋まで連れて寝かしてきてくれ。」


「かしこまりました。それにしても、ずいぶん嬉しそうな顔で寝てらっしゃいますな。」


「確かに。セバスの言うとおりだな。また後で、呼ぶからそれまでは、いつも通りに仕事をしていてくれ。」


「「「わかりました。」」」


ホント、親ってのは、偉大ですね。

思った以上にイレーネ母さんが饒舌に話してくれました。


読んでくださってありがとうございます。

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