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 翌日


 それにしても、昨日のみんなの反応が思ったよりもすごくて驚いたな。それにまさか、俺の家族がかなり強いってことも予想外だったな。後は、権力を笠に着た馬鹿な家族じゃない事を祈ろうか。まっその確率は、かなり低そうだけどな。さて、目も覚めたしエコーロケーションの訓練を始めますか。

 10分後。はぁはぁ。ちょっと疲れてきたな。少し休憩するか。しかし、問題点が出てきたな。まず、一つ目、赤ちゃんだから体力がない。これだけで少し疲れる。二つ目。周りに変な子だと思われてしまう。始めてすぐにメイドのアザレアにどうしたのか聞かれたが、『訓練』としか答えられなかったからな。詳しく説明しようにも何故、そんな事を知っているのか疑問に思われてしまうしな。もう少し成長したらきちんと答えようかな。それよりも三つ目の問題点がかなりの問題だ。何が、そんなに問題なのかって?クリック音が上手くできないんだよおおおおお。舌足らずなおかげで、まともに訓練できない。だが、ここで諦めたら試合終了だ。気合い入れていくぜええええ。


 1ヶ月後


 少しは、クリック音を上手く出せるようになってきたな。だが、相変わらず疲れる。地味に口が疲れるんだよなー。クリック音なんて端から見られたら、ただの舌打ちにしか見えないからなぁ。

 幼児プラスの訓練という言葉で、周りからは生暖かい目で見られているような気がするんだが気にしないでおこう。どんな目で見られているのか分からないからこんな時は盲目で良かったなあ(棒)


 そういえば、最近は父さんが出かけることが少なくなっていたな。しょっちゅう俺のとこに来ては、ほっぺをすりすりしてくる。いくら親でも、男からされるのはどうしても嫌悪感が出てくるのだが抱きかかえられているから回避できない。この間は、体感時間にして30分ほどは、されてた気がする。エミリッサが怒った声で言ってくれなかったらあの悪夢がまだ続いていたとするとゾクゾクってするな。

 それに、微妙にいい匂いなのがちょっとムカつく。汗臭い匂いよりはマシなんだけど、複雑な気分だ。


 しっかし、明かりが分からないから今がどのくらいの時間なのか全く分からんな。ご飯の時間を基準にするしか今のところないんだよな。まっ、今は時間を知ることはあんまり考えなくていいか。時間を知ったところで何も変わらないしな。

 さて、このぐらいでクリック音の今日の練習は終わりにするか。

 


 3ヶ月後


 クリック音出すのもいい感じだな。もう少したら、音の違いを確認する作業にするか。クリック音とハイハイの練習しかすることがなくて暇だな。文字を覚えようにも見えないからなあ。筆を持てるようになったら文字の木枠でも作ってもらうかな。読めなくても書けるようにはならないと話にならないしな。


 さて、今日は俺の中で重大なイベントがあるのだ。そう。それは、歩くことだ。つかまり立ちが出来たのをかなり喜んでくれてたから、歩く姿でも見せようと思う。

 かなりの騒動に発展することは想定済みだ。母さんの所までハイハイで行くとしようか。


「あら、マティアス様どこに行かれるのですか?」


「おかあさまのとこ」


「頑張って行きましょうか」


「あい」

 手を叩いて誘導してくれるのは、ほんとありがたいな。前と後ろにメイドがついてくるから布陣も完璧だしさ。いずれは、一人で移動して驚かせる計画もあるし楽しみだ。


「おかあさま」


「マティアス。よく来たわね。そうよそのまま真っすぐハイハイしてくるのよ」

 

「あーーい」


「よく頑張ったわね。偉いわ」


 俺を抱きかかえて母さんはいつも優しく撫でてくれるんだよな。母親に抱っこされるのは、かなり落ち着くなあ。ポンポンってするのを力加減が丁度よくてねむく・・・なって・・くる・・・・。

 はっ。いかんいかん。危うく寝るところだった。歩く姿を見てもらうためにきたのに、意味がなくなるとこだった。


「おろちてえー」


「どうしたの?降ろすわよ」


「おかあしゃま。少し後ろに下がってみててね」


「わかったわ」


 よし、まずは立ってと。第一段階クリア。第二段階歩行へと移行する。

 歩行開始。


 一歩・・二歩・・三歩・・四歩・・っと。あわあわ。あいた。尻もち着いてしまった。このぐらいが今の限界か。もう少し行けると思ったんだがな。


「おかあしゃん。みてた?しゅごい?」


「エミリッサ。見てた?歩いたわ。マティアスが歩いたわ。ええ、とってもすごいわ」


「ちゃんと見てましたよ。さすが、マティアス様ですね」


「えへへへ」

 ちょっ。母さん、嬉しいからっていきなり抱きかかえるのはやめてくれ。急に浮遊感があるから怖いだよな。しかも、抱きかかえるのが早い。もう少しゆっくりしてもらいたい。


「イレーネ様。急にマティアス様を抱きかかえては、ダメだと言いましたわよね。見えないのだからもう少し配慮しないとこのままだとマティアス様を抱くのを我慢してもらわないといけないかもしれませんね。」


「あああああ。マティアス、ごめんなさい。怖かったわよね。よしよし」


「全く」


 さすが、エミリッサ。よくわかってらっしゃる。さすエミだな。

「しゅこし、こわかった」


「ごめんなさいね。次から気を付けるわね」


「あい」

 とりあえず、大成功かな。

 

「マティアス。あなたのお父さんにも歩く姿を見せに行きましょうか」


「あーーい」

 父さんか。おそらく、母さんと同じような行動に出るに違いないな。それと、絶対頬をすりすりされる。

 せめて、すりすりされる時間が短いことを祈ろう。


 こんこんこん。


「あなた。入るわよ」


「ああ。いいぞ」


「イレーネよ。マティアスを連れてきてどうしたんだ?なにかあったのか?」


「ふふふ。ちょっとあなたにも見てもらいたくてね。マティアス。お父さんにも見せてあげて」


「あい」

 よし、立てた。さっきは、四歩しか歩けなかったから今回は、もう少し歩きたいな。

 一歩・・二歩・・三歩・・四歩・・五歩・・六歩・・な・な・・ほっと。あう。二歩多く歩けたとするから良しとするか。


「おおおおおお。マティアスがマティアスが歩いたぞ」


 やばい。スゴイ勢いで近づいてきてる。


「ガードルフ様」


「な、なんだエミリッサ」


「そんなに早く近づいて、どうするおつもりです?まさか、その勢いのまま抱き上げたりしませんよね?マティアス様は、目が見えないってことを忘れていませんよね?見えない状態で急に抱きかかえられたらどの様に感じると思いますか?この間、一歳を迎えたばかりなんですよ。もう少し子供の事を考えて行動していただくようにしないといけませんね。イレーネ様もですよ。笑っている場合ではありません。先ほど、急に抱えたことを忘れたとは言わせませんよ。この後お二方には、再教育しないといけませんわね」


 こええええよ。俺のために色々考えたりしてくれてるんだろうけど。なに、今のプレッシャー。思わず、ちびるところだった。エミリッサだけは、怒らせたらダメだ。怖すぎる。最後なんか笑ってたよな?これじゃ、父さんたちもエミリッサに勝てないわけだ。


「おかあしゃん。あるくれんしゅうしたい」


「わかったわ。広間で練習しましょうか」


「あい」


「イレーネ様。分かってますよね」


「ええ・・分かっているわ」


「さあ行きましょう。あなたは、お仕事頑張ってね」


「もう、行くのか?もう少しここでゆっくりしててもいいんだぞ」


「旦那さま。処理していただきたい事案が多数ありますのでこれ以上は、看過できませんぞ」


「ああ、分かっている。くそっ。親父の事恨むぞ」


「では、あなた。お仕事頑張ってね」


「ああ」


 エミリッサのおかげで、助かったわー。すりすり地獄を遭わずに済んだからな。やはり、領主の仕事って大変そうだな。フェルナン兄さんがいるから継ぐ心配はないけど、将来どんな仕事に就けるんだろうか。文字を読めないから文官の仕事は、無理だな。軍には、入りたくないしなー。あれ?ニートまっしぐら?いやいやいや。大丈夫。時間は、まだたっぷりあるそのうち見つかるだろ。


「マティアス。着いたわよ。今から降ろすわね。周りには、何もないから歩いて大丈夫よ」


「あい。」

 今日中にせめて、十歩は歩けるようになりたいな。

 よし、一歩・・二歩・・三歩・・四歩・・

 こ、この声は、エリーシア姉さん。頼む、このまま去ってくれ。嫌な予感しかしない。


「あーーー。まてぃあすがあるいてるーーー」


 うーーーわ。見つかったよ。そのまま、何もしないでくれよ・・・・。

 えっ・・走ってきてないか。おいおい嘘だろ。大丈夫。近くで止まってくれる。止まってくれよ。


「まてぃあすすごーい」


 ああ。これ、止まらないな。なんてたって父さんと母さんの子供だからな。

 そう思った瞬間に横からものすごい衝撃が襲ってきてそのまま激しく倒れた。


 いってええええええええええ。

 

 来ると分かっててもこちとら歩き始めたばかりだから避けられないし。受け身なんてもっと無理だろ。その結果、手をつくことが出来ずに頭から床にぶつかってしまった。


「うわああああああああん」

 うん。これは、しょうがない。痛みには、敏感だし。体は、正直だ。つい泣いてしまった。ああ、エリーシア姉さん困ってるな。倒して泣かせるなんて思わなかっただろうし。さて、どうなるか。


「えっ。えっ・・」


「エリーシア。ダメじゃない。急に抱き着いたりして。マティアスは、まだ小さいのにあなたが、抱き着いていいわけないでしょ。それに、目が見えないのよ」


「ご、ごめんなざーーい」


「よしよし、マティアス痛かったわね。でも大丈夫よ。すぐに痛くなくなるからね」


「彼のものを癒したまえ。ヒール」


 おおおおお。温かい感じのものに包まれる感覚がする。これが、治癒魔法か。おおおすごいな。もう頭の痛みが引いてきた。さすが、ファンタジーな世界だな。


「マティアス。もう治ったわよ。痛くないでしょ」


「うん。いたくない」


「うえええええええん。まてぃあ゛ずごめ゛んなざーい。ひっく。ひっく」


「えりーしあねえさん。だいじょうぶ。もういたくない」


「エリーシアも嬉しくて抱き着いて悪気はなかったのよね」


「う゛ん」


「よしよし。もう泣かなくていいわ。反省したんでしょ。お母さんもねさっき、エミリッサに怒られたのよ。k\いきなり抱きしめちゃってね。これからは、一緒に気を付けましょ。お母さんと一緒に目隠ししてマティアスがどんな風に見えているのか勉強しましょうね」


「う゛ん。いっじょにがんばる」


 これで、エリーシア姉さんが少しは、大人しくなってくれたらいいな。






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