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一晩経ち、朝食を食べた後は長めに時間を空けて泊まっていた宿を出発した。昨日よりもマシにはなっていたが、そこまで余裕があるわけでもなく馬車の中では魔力循環することもなく横になった状態で俺は過ごしていた。
旅路は俺の体調が悪くなっている以外は、特に問題なく3日目、4日目と特に問題なく行程は順調だった。
「今夜はここで野営だ」
「野営するんだ。魔物とか襲ってこないの?」
「魔除け香と言う魔物除けの道具があるんだよ。これで、ある程度の魔物の襲撃は防げるんだが、
野営の時もあったが、魔除け香と言うアイテムがあり、魔物が嫌いな臭いを出すんだそうな。それによってほとんどの魔物が寄ってこなくなるんだと。
野営も父さんと一緒に行う事になった。俺と父さん、兄さんとセバス、母さんと姉さん。と言う順番に決まった。ディエゴとダストンの二人は御者をやっているので見張りにはしないそうだ。
食事も終わり、父さんと見張りをやることになった。
「父さん、見張りの時って気をつける事あるの?」
「そうだなあ。魔除け香を焚いているからよっぽの事がない限りは問題ないんだが。それでも、たまに寄ってくるやつらがいるんだよな。そういう時は皆をすぐに起こすことだな。無理に一人で対処しないことだな。魔除け香を持ってない時は、常に周りを気にしていないと、いつ襲われるか分からないからな。それと魔除け香を使っていない時は、出来るだけ追い払うだけに留めておくことだな。血が出ないように殺せたらいいんだが、殺してしまうと血の匂いに誘われて魔物が寄ってくるからすぐに場所の移動をしないといけないんだよ。その分疲労がたまって、次の日に影響が出たりするからね」
「なるほど。ただ、倒したらいいってわけじゃないんだね」
「そう言う事だ。今回は、父さんもいるから楽にしてていいぞ。その内野営の練習をさせるからな」
「ん。わかった」
まあ、個人的にはむやみやたらと魔物を殺したくはないんだよね。前世でもそうだったけども、人間の都合によって生き物の命を奪うってのが好きじゃなかったんだよね。でも例えば、意思疎通が可能な肉食獣が人間を襲ったら地球ではどんな扱いを受けることになるのか気になる。まあほとんど不可能に近いんだけどね。
集落を襲ってくるとか、追い払うようにしても向かってくるのはしょうがないと割り切って殺してしまうかもしれないけども。
色々考えてはいるけども、未だに童貞なんだよね。俺に魔物を殺すことが出来るのだろうか。
いい防具が欲しいから、武器が欲しいから。何かの理由で積極的に魔物を狩るような事はたぶんしないと思うな。完全に人間側のエゴだから。
甘っちょろいとは自分でも思ってるんだけどね。
しかし、人間ほど強欲で罪深い生き物って存在しないと思うんだよね。俺は、人間と言う生き物がこの世で一番怖いな。
さてさて、考えるのはこの辺にして周囲の索敵を念のために行いますか。
ふーーーん。確かに何もいないな。動いている生物の反応が返ってこないな。
「確かに父さんの言って通り何もいないね」
「魔力波を広範囲に使ったのか」
「うん。便利だからね。でも、この魔除け香って風が強い日にはあんまり意味ないよね」
「ふふっ。その通りだな。風邪で流れてしまうからな。だが、逆に言えば、襲ってくる方角がある程度絞れるって事だ。風によって臭いが流されるから風上の方を基本気を付けていたらいいからな」
「ああそっか。そういう考えにつながるのか」
「そう言う事だ。この調子じゃ、今日は何もなく夜を明かせそうだな」
「父さん・・・。それフラグだよ」
「フラグ??なんだそれは?」
ああそっか。フラグって言っても伝わんないか。
「えっとねえー。決まり文句とかそんな感じかな。その言った言葉に対して逆の出来事が起きてしまうって事かな」
「ふむ。それも前世の記憶にあるやつか?」
「そうだよ。とは言っても大半は、物語の話しに使う場合が多いんだけどね」
「前世の世界では、魔物や魔法はなかったって言ってたな。その代りにカガクと言うものが発達してたんだろ?」
「そうだよ。人間の脅威と呼べるような生物は存在していなかったね。唯一脅威と呼べる存在は、同じ人間だよ。僕が生きてた世界では、その科学って言うのがかなり発展していて、この国の王都にいながら隣の国の王都を破壊できるような技術が存在していたからね」
「うーーむ。俄かには信じ難いな」
「まあ、信じられないのも無理はないと思うよ。個人の見解を言わせてもらえるなら戦争をするやつらって馬鹿だと思うんだよね。戦争でなくすものは多いけども得るものってあるのかいつも思うんだよね。テロも同様にね。戦争やテロをするのって子供が癇癪起こして構ってもらいたいのと同じだと思うんだよ。それぐらいくだらないことだと僕は思うね。でも、やられたらやり返す分はありだよ。」
「くっくっく。そんな事を考えているのか。端から見たら6歳児とは思われないとおもうな。安心しなさい。戦争なんて今の所起きる気配がないからさ」
「そうなんだ。それならいいんだけどね」
父さんと他愛もない話をしながら見張りの時間は過ぎて行った。
「そろそこ交代の時間だな」
「もうそんなに時間経ったんだ」
「セバスとフェルナンを起こしに行くか」
「うん」
「フェルナン、セバス。交代の時間だ」
「かしこまりました」
「ううーん」
「兄さん起きて。見張りの時間だよ」
「んーー。ふああああ。もう?早いなあ。わかったよ」
「セバスは、先に起きて行ったぞ」
「わかった」
それにしても、セバス起きるの早いな。本当に寝てたんだろうか。父さんが名前を呼ぶ前あたりから起きたような感じがしたんだけども。そして起きてからの行動が早かった。眠気を感じさせないような動きぶりだったから驚いたぞ。これが一流の執事ってやつなのか。
見張りも交代してそのまま眠りについた。
朝になったけども、何もなかった。うん。本当に何も起きなかった。魔除け香の実力を思おう存分堪能した。
「魔除け香ってすごね父さん」
「だろ?これを作った人は本当に大したもんだよ」
今日も食事の前にトレーニングを行った。家にいる時ほど激しい物じゃないけども、そこそこ体を動かした。もちろん、砂も持参してきているので貫手の練習も行っていますよ。旅に出ているからと言ってトレーニングをしない理由にはならないんだとさ。
「さっ。出発するぞ」
残りの旅路もこれと言って何も起きなかった。たまに魔物が出てきたけども、全部セバスが追い払っていた。
セバス曰く、殺して街に持って行ってお金に換金してもいいが、死体の処理とかの手間などを考えたら時間の無駄になってしまうので殺さずに追い払うだけに留めているそうな。
この間の野営の時の俺の話しでも聞いていたからなのかと勘ぐってしまった。
今回の旅では、俺や兄さんにそういう役割を一切与えてくれなかった。
実践は、別の機会にやるんだと。兄さんは、既に何回か領軍と一緒に見回りに出て実践を経験しているって言っていたな。
俺の場合は、動きが読めなくて当てそうだと思ってしまった。殺してしまった時の罪悪感にいなまれそうなんだよね。
とうとう明日には、ベネット伯爵の家に着くみたいだ。何回か街を通ってきたけども、帰りにも同じ道を通るからほとんど見て回ってこなかった。お土産とか買っても荷物になっちゃうから妥当な判断だなと思った。俺の場合は、形しか分からないからそこまで楽しくはないんだよね。
それにしても、温泉とかかなり楽しみだな。出来る事なら、ハーレム作って混浴をしに来たいな。んで、そのままお風呂場で致したりね。お風呂に浸かりながらお酒を飲むのもよさそうだな。
いやああ、夢が広がりますな。
その前に彼女が出来るのか不安になってくる。土属性しかなく、全盲の俺の事を好きになってくれる人なんて現れるんだろうか。
何か、娼館に入りびたりになりそうだな。いや、娼館に入れるのかすら危ういぞ。全盲だからとか、病気を持ってるだとか、難癖付けられて入れなかったらどうしよ。童貞のまま死ぬなんて嫌だよ?
考えたら萎えてきた。世知辛い世の中だな。
今日は、野営ではなく先ほどついた町の宿に泊まるらしい。この町にも少なくない温泉があるんだと。と言う訳で、早速入ってこよう。
ああ、いい湯だった。お風呂シーン?野郎のお風呂シーンなんて誰得なんだよ。母さんや姉さんのお風呂シーンもないからな。誰が好き好んで家族のお風呂シーンを見せるか。
「母さん、姉さん。お風呂どうだった?」
「気持ちよかったわね。やっぱり温泉っていいわよね。老後は、ここに住みたいぐらいだわ」
「お母様のいう通りね。私も将来は、温泉がある領地に嫁いでもいいかもって思ったわ」
「母さんは、そこまで気に入ってるんだ。うちでも温泉が出たらいいのにね」
「姉さん・・・。それは、あんまりじゃないかな」
姉さんの発言に兄さんがちょっと引いたような感じがした。少なくとも苦笑いしているような顔をしていると予想した。
温泉のために来られても相手方も困るよね。
「明日には、伯爵の家に着く予定だから早く寝なさい」
「「「はーい」」」
7日と言う旅路を経てベネット伯爵の家に着いた。長かったような短かったような感覚だ。7日で着くならご近所さんと言っても問題ないのかな?
無事にベネット伯爵の家に着いたマティアス君。伯爵の家で何が待ち構えているのでしょうか。
何があっても不思議ではない。
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