21
長かった旅ももう終わりか。数刻もしたら家に着くって言っていたな。
魔法の制御と維持も帰りの道中で少しは、慣れてきたからな。後は、継続してもっと繊細に出来るようにしないといけないな。魔法に関しては、無属性のシールドとライト、身体強化の魔法も教わった。身体強化は、便利だわ。疲れにくいし、思ってた以上の力が出せる。でも気を付けないと反動で体が軋む。あれは、さすがにいかんかった。行程に支障が出るところだった。
ゴスタさんに治癒魔法を掛けてもらわなかったら、大分遅れていたかもしれん。父さんたちが止めなかったのも悪いんだがな。
しかし、治癒魔法ってほんと便利だよな。ケガしてもすぐに直せるし。ゴスタさんは、部位欠損は治せないって言っていたけど。でも、魔法薬には部位欠損を治してしまうってものもあるらしい。その分かなり高価みたいだけど。さすが、ファンタジーって感じだよな。
部位欠損を治すってどんな仕組みなのか気になる。何故、そんなことが可能なのか。研究したい。魔法について色々研究したい。その為には、学園に行くべきなんだよなー。俺には、金も機器も知識もない。それに、研究しても自分の目で見る事が出来ない。やはり、学園かあ。
でもなあ。王都の教会での出来事を忘れてくれていたら問題ないんだけどなあ。明らかに入学したら何かひと騒動ありそうなんだよなあ。拳で解決出来るのならいいんだが、それ以外だと面倒くさすぎて萎える。
兎にも角にも俺が力をつけて真っ向から叩き潰せばいいか。その為に鍛錬しないといけないって事だな。
「マティアス。もうすぐで我が家に着くぞ。魔法の練習もその辺にしときなさい」
「はーい」
「それにしても、この数日で大分、制御と維持が上達したな。父さんがそのくらいに達するのにどのくらいの時間が掛かったことか」
「まあ、前提が違うからね。それは、しょうがないよ。でも、父さんは、4属性使えるから羨ましいよ。僕もそのぐらいあれば、どれだけ日常生活が便利に過ごせるか。寒いときは、火を出して暖を取り、暑い時は氷で涼んで、火と水を合わせて毎日温かいお風呂に入れるんだよ。最高じゃないか。なのに、土属性だけって・・・。旅の時に家を作るぐらいしか役に立てないじゃん。後は、浴槽を作ったり、畑を耕したり、地面を舗装したり・・・」
「いや、それも出来たら十分すごいと思うが」
「だめだよ全然。楽に生活できるようになると思ったのに」
「それなら、魔道具でも作ればいいんじゃないか?」
「それも考えたけど、自分で作りたいものを作れるか分かんないから保留してるんだ」
「そうか」
「ガードルフ様。マティアス様。到着いたしました」
「セバスご苦労だった。さて、降りるぞマティアス」
「うん」
「「「おかえりなさいませ」」」
馬車から降りたら、母さん、姉さん、兄さんにクリスタ、メイドのみんなが出迎えてくれていた。
「ただいま」
「今帰ったぞ。私が留守の間何もなかったか?」
「ええ。特に何もなかったわよ。その・・一つ聞きたいんだけど。マティアスのかぶってるお面はどうしたの?」
「ああ。これか。教会で色々あってな。詳しくは、後で話すよ」
「そう。分かったわ。無事に帰ってきてくれて嬉しいわ」
「おかえりマティアス」
そう言って、母さんが僕を抱きしめてくれた。ああ、こんなにも愛せれてるんだなと感慨深く思いこれからの鍛錬もこの家族のために頑張れそうだと思った。
「ただいま。母さん」
「マティアス後で、色々聞かせてくれるかな」
「勿論だよ。兄さん」
「お土産期待しているわよ」
「姉さんに似合うのを買ってきたから楽しみにしててね」
「ここで、長話をするのもあれだし。中に入ろうか」
「ええ。そうね」
「ドラゴンテイルの皆さん。道中ありがとうございました」
「いえいえ。そんな風に言われると嬉しいですな」
「ガードルフ様また、何かある時は手伝いますからね」
「おう。すまなかったな。今回も助かった。次何かあった時も頼りにさせてもらうからな」
「はい。それでは、失礼します」
ドラゴンテイルの人達もなかなか面白い人たちだったな。父さんの昔なじみって点でもいい人達だったな。俺もこんな風に仲良くできる人が欲しいものだ。現実問題としては、貴族連中だと無理っぽいけどな。
リビングへと移動してきて、家族全員がそろってソファーでくつろいでいる。俺と父さんが隣同士に座って、前に姉さんと兄さん。右側に母さんと妹のクリスタが座っている。エミリッサ以外は、買ってきた荷物の運搬を行っていた。
「それで、マティアス。お話しを聞かせてくれるかしら?」
「うん。それじゃ、最初に泊まった街で父さんが飲み過ぎて行程が少し遅れた話からね」
「・・・あなた。後でお話しする必要がありますね」
「マティアスよ。余計なことを・・・」
「あっ!ごめんね父さん。つい。属性測定の前日にした筋トレのおかげで次の日まで響いてまともに歩けなかったのを恨んでいたわけではないよ」
「ふううん。もう少しその事聞かせてくれるかしら?あなたには、お仕置きが必要みたいね」
「ひいいいいい。すまなかった」
「謝っても遅いわよ。その事は、後でゆっくりとね」
「マティアス。父さんを売るなんて・・・」
「父さんの自業自得だから仕方ないよ。筋トレに関しては、僕も悪かったから少しは、口添えしてあげるよ父さん」
「一体。誰に似てこんなやりとりを覚えたのやら」
「まずは、マティアスがしているそのお面について話を聞いてもいい?」
「いいよ。実はね・・・」
「そう・・・。そんなことがあったのね。だから、そんな物を着けていたのね。私たちは、それが当たり前と思っていたから、その事には私も気が回らなかったわ。辛い思いをさせてごめんねマティアス」
こう、母さんに抱きしめられると安心してしまうのはなんでだろうな。これが、母親ってやつか。
「その第4王子ってやつは生意気ね。何も知らないくせして。私が一言言ってあげるから安心しなさい」
「いいよ姉さん。そんなことしなくても。その気持ちだけで十分嬉しいよ」
「ああ。僕も姉さんに賛成だな。僕達の弟を悲しませてくれたんだから相応の事をしないとね。これは、鍛えなおさないといけないかな。そこそこなんて言ってる場合じゃないね」
「兄さんも気にしなくていいよ。これ以上大事にしたくないんだよ」
「マティアスがそこまで言うなら今回の事は、水に流してあげるけど次同じようなことがあったら任せなさい」
「そうだよ。マティアス。僕たちは、家族なんだから。こんなことで遠慮なんかしなくていいからね」
なんか、大変なことになってしまった。教会で起こったことをありのまま話したのがまずかったのか?しかし、誤魔化そうにも追及されそうだったし。それに兄さんのやる気スイッチが入ったみたいだ。今までは、そこそこでいいって言ってたのに強くなることを決意するなんて。
ホントこの家に生まれてきて良かった。この家の子で良かった。
「姉さん。兄さん。僕も強くなりたいから一緒に訓練してくれない?」
「勿論よマティアス。私の治癒魔法に訓練にもなるから丁度いいわ」
「僕もだよマティアス。一緒に強くなって、見返してあげないとね」
「ふふふ。みんな優しいわね。頑張るのよ」
「はい。お母様」「僕に任せて、母さん」
一緒に訓練することになったけど、何か不安だ。心強いんだけど、学園に通ったらどんな風になってしまうのやら。カーストの上位に居座ってボスのように二人とも君臨してそうな勢いなんですけど。
そうならないことを祈りたい。俺が学園に入ったら何かがありそうで怖い。
「それはそうと、マティアスの属性はどうだったの?」
「属性ね・・・」
「測定する前は、あんなにはしゃいでいたのに何だか元気がないわね。あんまり良くなかったの?」
「良くなかったって言うか、何というか・・・。聞いても驚かないでね?」
「そんなになのかい?希望通り全属性だったってことかい?でも、それだともっと嬉しそうにしても良さそうなんだけどな」
「実は・・・・。土属性の一つだけだった」
「「「・・・・・・」」」
「・・・マティアス本当なのかい?」
「残念ながら本当だよ。兄さん」
「それは、何というか・・・」
「姉さんも気にしなくてもいいよ。土属性だけって分かった時は正直凹んだよ。神を自分の運命を呪ってしまったね。ふふふっ。でも、どうしようもないからね。属性が増えるわけでもないし。こうなったら土属性を極めていこうかと思ってね。それに、無属性魔法もあるからこの2つを上手く利用していけば強くはなれるからね」
「マティアスの言うとおりね。今更どうしたって増えないんだから。それならそれを極めていくってのもありね」
「だから、兄さんも僕の事を気にしないでいいから。むしろ、5つも属性あるんだからそれの対処方法を僕に経験させてよ。土属性だけってのはいずればれるんだろうし、その時に手札は多い方が色々対処しやすいからね」
「分かった。マティアス。明日からビシビシいくからな」
「うん。と言う訳だから、父さんと母さんも協力してね。母さんも気にしたらダメだよ。誰も悪くないんだから。自分を責めるぐらいなら姉さんに治癒魔法をしっかりおぼえさせてよね」
「・・・ふふっ。・・っすっ。ごめんねマティアス。それとありがとう。あなたのいう通りね。さすが、私達の子供だわ」
ああ。やっぱり母さんは、気にしていたか。全盲なうえに土属性しかないなんて、堪えるよな。自分に責任を感じてもおかしくないからな。これは、後で父さんにフォローしてもらっとかないといけないな。
今は、大丈夫そうだけど後で、どうなるかわかったもんじゃないからな。
(父さん。母さんのフォロー任せたよ)
(ああ。分かっている。父さんに任せておけ)
これで、父さんが何とかしてくれるだろ。
そういえば、姉さんと兄さんには、俺が前世の記憶を持ってるって知らなかったよな。言うには、今が一番いいんじゃないのか?
エミリッサしかここにはいないし。エミリッサは、全部知っているから問題ないもんな。
「父さん、母さん。あの事を姉さんと兄さんに言ってもいい?」
「あの事?ああ、あれか。今は、エミリッサしかいないから問題ないと思うな。イレーネはどうだ?」
「そうね。エミリッサに誰も近づかないように見張っててもらえばいいかもしれないわね」
「あの事ってなんなの?お父様達は知っているみたいなんだけど」
「今から話すことは、絶対に誰にも話したらいけないからな。マティアスに関することだ」
「「マティアスに?」」
「すまんがエミリッサ。誰も近づかないように見張っててくれないか?」
「畏まりました」
「お前たち二人には、知っててもらいたい事だな。これが漏れれば少なくとも戦争に発展する可能性があると最初に言っておく」
「戦争に・・・」
「そんなこと僕たちが聞いてもいいの?」
「家族だからこそ隠し事はしたくないんだ。だから、姉さんと兄さんにも知っててもらいたいの。僕の大事な秘密を」
このタイミングで前世の事を姉と兄に話すことを決めたマティアス君。二人の姉兄は、どのような反応を示すのでしょうか。
兄のフェルナンは、王都での出来事を聞いて強くなろうと決めましたが、最初の構想の段階では、魔物から襲われるところをマティアスに庇われて決心するはずだったんですけどねー。何故、こうなってしまったのでしょうか。
この子たちはどのような行動に出るのか作者の私ですら把握できていないです。
今年もあと少しとなりましたね。私は、年始年末仕事なわけですが、休みの人が羨ましいですね。
隣の芝生ほど青く見えるのは何ででしょうかね。
さてさて、いつも読んでくださってありがとうございます。
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