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昼飯を食べた後は、ひたすら筋トレだった。槍の使い方とか、剣の使い方を教えてもらえるとばかり思ってたけど全然違った。腹筋、背筋、腕立て、スクワット、etc・・・。全身の筋肉を使った気がする。このままじゃ、間違いなく筋肉という心理の扉を開いてしまう。ガチムチになってしまう。俺の僧帽筋どうだい?とか、君の腹斜筋素晴らしいねとか言いそう。
そんな未来の俺が想像できてしまう。怖いわっ。
ガチムチルートだけは、回避せねば。
ってか、体ばっきばきなんだけども、明日の属性測定に響くんじゃね?間違いなく明日筋肉痛になるよね?
楽しくなってきてつい、調子に乗ってしまった俺が憎い。出来ることなら筋トレを開始する前に戻りたい。
ってか、父さんもセバスも何で止めてくれなかったんだよ。忘れてたって落ちはないよね?
風呂にも入った。夕食も食べた。もう、今日することは何もないな。明日に備えて寝るだけだな。
全属性持ちって事で教会の人や父さんが驚く姿が目に浮かんでくるぜ。ぐへへへへ。
帰ったら、母さんやエリーシア姉さん、フェルナン兄さんも驚くだろうなあ。ぐふふふふ。
学園に入学したら、桁違いの魔法に周りが驚いて、規格外のレッテル張られたり。俺の強さに惚れたり、窮地を救って惚れられたりしてのハーレム展開。
おいおいおい。最高だな。まさしく、このために俺は、二度目の人生を歩んでいるんだな。チート最高。ハーレム最高。
朝か?いつの間にか眠ってしまっていたみたいだな。いよいよ、俺が、伝説になるための一歩が踏み出される日か。5年間長かったようで短かったな。
さて、起き上がるかっ・・・・・。
いってえええええええええええ。
くそったれ。思いっきり筋肉痛になってるし。どーしよ。完全に忘れてた。やばい。マジでどうしよ。まともに歩ける気がしないんだが。
特に内腿の筋肉痛が酷い。内腿なんて普段そんなに使ってないから、ここぞとばかりに鍛えてしまった自分が憎い。
あれっ?今日の属性測定って、朝から教会で行う予定だったよね。ってことは、この状態で行くって事になるわけだ。
さいっあくだ。端から見たらただの変な5歳児に見えてしまう。これ、詰んだわ。
明日にしてもらうとかできないよね?ねっ?セバスに聞こう。そろそろ来るだろ。
コンコンコン。
「マティアス様。起きられましたか?」
毎回思うが、俺が起きてからほとんど時間を空けずに俺の部屋に来るんだが、どういう事なんだよ。何で、俺が起きたって分かるの?なんなの?エスパーなの?
「起きてるよ。入ってきていいよ」
「失礼します。いよいよ属性測定の日になりましたが、体調は問題ないですか?ゆっくり休まれましたか?」
「うん。その事なんだけどね。昨日の筋トレのおかげで、筋肉痛が酷くて、変な歩き方になってしまうんだよね。だから明日にする事って出来ない?」
「残念ながらそれは、出来ません」
「マジで?それ本気で言ってるの?」
「本当です。他の貴族の子供たちの顔合わせの意味合いもあるので、こればっかりは、余程の重病でないと欠席できません」
はい、終わったあ。記念すべき日と黒歴史が同時にやってきたよ。こんなに嬉しくないことはないぞ。
この状態での出席とかいい笑いものじゃないか。萎える。
「マティアス様、諦めてください。それよりも、もうすぐで朝食となりますので、食堂に参りますよ。」
「はあ・・・。分かったよ。でも、体が痛いから歩くの手伝ってくれない?」
「畏まりました」
「そういえば、セバスは筋肉痛ないの?」
「問題ありません」
ん?問題ありません?あるか、ないかって聞いたのに問題ない?
「筋肉痛は、なかったの?」
「問題ないですよ」
「そっか。あっごめんセバス」
「・・・っ。いえ、このぐらい問題ないので参りましょうか」
ああ。セバスも筋肉痛になってたのか。倒れるふりをして、太ももに抱き着いて確認してみたんだけど、やせ我慢してたのね。ごめんねセバス。
「セバス。ごめんね」
「何の事ですか?怪我がなくて良かったです」
頑なに、筋肉痛の存在を認めようとしないのか。執事としての矜持かな?御見それしました。
セバスが、筋肉痛になっているぐらいだから父さんも確実になっているっぽいな。
『こいつは、効くなあ』って言って、調子に乗ってたもんな。俺の場合は、健康体が素晴らしくて調子に乗ったんだけどな。
「父さん、おはよう」
「マティアスか。おはよう。その調子じゃ、大分体にきているみたいだな」
「もう、今日行くの止めたいぐらいだよ。父さんは、どうもないの?」
「ああ。父さんは、体鍛えているからな」
「さすがだね。おっとっと」
「・・・・っう。大丈夫かマティアス?」
「大丈夫だよ。ごめんね父さん。痛みで上手く歩けないんだ」
「それならしょうがないさ。さっ、ご飯にしようか」
父さんよ。声が漏れていたぞ。やっぱり、筋肉痛がきてるんだね。父親としての威厳をみせたかったのかな?元から威厳なんてあんまりなかったから父さんよ。問題ないぞ。
「「豊穣の神アルステンよ。命を育む神アリアーデよ。
我らが今日も生を全うできていることに感謝を」」
うん。美味い。程々にしておかないと腹いっぱいになり過ぎたら更に支障をきたしてしまう。
ふうううう。くった。くった。ご馳走様でした。
「そういえば、何時ごろに家を出るの?」
「後、1刻ほどで、でるからそのつもりでな」
「わかった」
まだ、時間があるな。それまでに痛みを緩和せさせる為にストレッチでも行うか。
「マティアス。そろそろ行くぞ」
「分かったあ」
あいたたたた。微妙に痛みが引いたか?いや、ほぼ変わらんな。
はあああ。行くか。
「マティアス。着いたぞ。ここが、王都の教会だ」
「ずいぶん大きいね。そういえば、今まで聞かなかったけど、ここの教会って誰を崇めてるの?」
「おお。そうか。マティアスには、言ってなかったか。主神のオールドライラック様だよ」
「ふーーん。まあ、あんまり興味がないんだけど、名前ぐらいは知っておかないと不味いからさ」
「くっくっくっ。教会の関係者や信者がいるところでは、そんなこと言うなよ」
「勿論だよ。神を信仰するのも自由だし。それに確実に面倒なことになるから絶対そんな事はしないよ」
「そうであればいいのだがなあ」
誰が、好き好んでそんな状況を引き起こすことをするのやら。俺は、ドMじゃないからな。
「さっ。教会の中に入るぞ。父さんは、別の部屋で待機していないといけないから一人で頑張るんだぞ。属性を調べる時には、一緒になるからな。他の子供たちを仲良くな」
ふぁっ!?ここから一人なの?そんなこと一言も聞いていないんだけど。今初めて聞いたんですけど。
「えっ。父さん。一人とか聞いてないんだけど」
「おっ?言ってなかったか。すまん。すまん。まあ何とか出来るだろ。じゃあ頑張れよ」
あんのクソ親父いいいいいいいい!!何とかできるわけないだろ。
貴族のガキ共と仲良くなれだと。そんなミッションは不可能に決まってる。こうなったら、なるべく話しかけられないように大人しくしていよう。無用な争いは控えないと。でも、全員5歳児なんだよなあ。まあ、絡まれても無難に過ごそう。
取りあえず、どうしたらいいんだ?どこか座る所は。
「おい。そこのお前」
言葉遣い悪いなあ。誰に言ってるのか知らんが、貴族なんだからもう少し何とかならんのか?
それよりもどこに座るか。目立たない場所は。あの隅っこの方でいいかな。
「お前。僕の事を無視するな。聞こえてるんだろ」
やっかましかなあ。
「そこの、きょろきょろしてるお前だよ。いい度胸してるな」
えっ?もしかして、俺の事?ないない。こんな初っ端から絡まれるわけないじゃん。でも・・・・。
いや、ないだろ。わざわざ、俺に何のために声をかけるんだよ。
「いい加減僕の事を無視するな」
はい、俺でしたあ。まさか、掴みかかってくるとは。まあ普通に避けられなかったけどね。避けようとしたんだよ。でもね、筋肉痛のおかげで回避が出来なかった。こんな状態で避けるとかムリゲーだよ。
あれか。筋肉痛で変な歩き方になってたから絡んできたのかな。
「僕のこと?」
「お前以外に誰がいる。よくも僕の事を無視してくれたな。まさか、僕の事を知らないっていうのか?」
いや、普通に知らないんですけど。なんせ、こちとら家を出たのすら今回が初めてですからね。箱入り娘ならぬ、箱入り息子ですよ。
「すみません。知らないです」
「・・・っ!?ぼ・僕の事を知らないなんて、とんだ田舎者だな。ふんっ」
田舎ものなんですから、その手を放して絡まないでくれますかね。
「僕は、この国の第4王子のアラン=オルブライトだぞ。王族の俺を無視してただで済むと思うなよ」
うわあああああ。まさかの王族。俺が一番関わり合いになりたくなかった種族だ。厄介ごとの匂いしかしねえ。ここを上手く回避しないと今後更に厄介なことに巻き込まれたらシャレにならんからな。振り向いてすぐに頭を下げるか。
「これは、申し訳ありませんでした。何分、田舎者でして。王族の方を目にする機会なんてほとんどなかったものですから。王族の方とは知らず、とんだご無礼を。誠に申し訳ありませんでした。洗練されたそのような振る舞いが出来るのは、さすがとしか言いようがありません」
「これだから、田舎者は困る。今回だけは、許してやる。頭を上げろ」
「ははっ。ありがとうございます」
ふううう。これで、回避できたかな?一時は、どうなるかと思ったけど無事にやり過ごせようだな。
「何だお前のその目。全部白いなんて気持ち悪いな。変な病気持ってるんじゃないだろうな」
「えっ??白い?」
「それにさっきから、舌打ちばかりして生意気だぞ」
「いやっ・・・。それは・・・」
「なになに。どうしたの?」 「何があったんですか?」
「こいつの目を見てみろ。全部白いなんてありえん。変な病気でも移されたら困る」
「うわああ。ほんとですね。何その目」 「全部白いなんて気色悪いですわね。化け物ですわね」 「なに。その目。不気味。近寄らないでくれます?」 「それにこいつ、さっきから舌打ちばっかりしてやがるし、生意気だぞ」 「ここから出て化け物」 「化け物」
「アラン様。変な病気をうつされでもしたら大変ですので向こうへ参りましょう」 「そうですよ。ただでさえ、田舎者なんですから。ささ、こちらへ」
ちょっと待って。
えっ??俺の目って全部白かったの?それに舌打ちじゃなくて見えないからで。
病気とかうつらないから。化け物でもないから。
「そうだな。こんなに気色悪いやつは初めて見た。向こうへ行くぞ」 「ははっ」
いや。ちょっと・・・。
あああ。これは、完全に終わった。もうこれさ、俺の人生も終わったんじゃね。
そうか・・・・・。そうだよな。みんな目の色は、言ってこなかったからてっきり普通の目だけど見えないんだと思ってたな。白目だけだったのかあ。端から見たらホント化け物だよな。笑えてくるわ。
何が、全属性持ちになって、俺TUEEEしたいだよ。ハーレム展開目指すんだよ。こんな気色悪い目をした奴なんか、好きになってくれるわけないじゃん。
普通に考えたら黒目がないって異常だよな。なんで、その事に気が付かなかったかなあ。
みんなも気色悪いって、不気味って思ってたりするのかな。するんだろうなあ。みんな言わないだけで・・・・。心の中では、化け物って思ってるんだろうな。父さんも母さんもみんなみんな・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ。
もう、属性測定とかいいや。そんなの知ってどうするんだよ。何が、二度目の人生だよ。ふざけんなよ。もう、帰りたいな。
いや、帰れないな。化け物のような目をしてるんだぞ。帰る場所なんてないじゃん。
「マティアス=アンファング」 「マティアス=アンファング」 「返事をしなさい。マティアス=アンファング」
誰だよ。俺の名前を呼んでいる奴は。そっとしといてくれよ。
「マティアス=アンファング。君の番だから早くしなさい」
「はい・・・。すみません・・・」
もう、どうでもいいや。何にもする気おきないや。こんな化け物みたいな容姿してるんだから死んだが、マシなんじゃね。こんな不気味な子供がいるなんて親からしても貴族としても無理だろ。
ああ。もう、ずっと引き籠っていたいな・・・・。
なかなか、負の感情を書くのって難しいですね。
マティアス君絶望するな。まだ5歳だぞ。きっといい人に出会えるはず。
まあ、ヒロインはまだ何も決まってないんですがね。
マティアス君の属性は、次回判明します。
このまま、引き籠りになられたら物語が終わってしまうのでどうにか持ち直してもらいたいですね。
今回も読んでくださってありがとうございます。