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(ああ、何だか暖かいな。何も考えられない。すごく落ち着く)


そしてまた、意識が遠のいた。


 どこか狭いところをくぐり抜けたと思ったら、急に浮遊感が。

 

(えっ・・なにこれ。えっ、ちょっ、どうなってんだよおおおお)


 ナニカに抱えられたまま体は思うように動かないし、目も開かない。おまけに声も変な泣き声しかでないし意味がわからん。


 それから2週間が経過した。


 どうやら俺は、転生したようだ。まさか本当に異世界転生ができるとは。しかも、記憶を持ったままだぞ。この時ほどヲタクで良かったと思ったことはない。地球があるから他の世界もあるだろうとは、思っていたが実際に体験すると異世界は本当にあったんだと声を大にして叫びたい。未だにあーとかうーしか言えないけどな。

 しかし、一つだけ不安なことがある。未だに何も見えないのだ。眼は開くが、何も見えない。新生児だからってことで納得しておくことにしよう。もう少し成長したら見えるようになるはずだ。見えるようになるよね。


 更に半年が経過した。言葉もかなりわかるようになってきた事でこの家のこともほとんど把握できた。

どうやら俺の名前は、マティアスといいうらしい。母親は、イレーネという名前みたいだ。父親らしき人の声は未だに聞いていない。俺が生まれた日には、駆け付けたみたいだが、またすぐにどこかへと出かけたみたいだ。

どうも我が家の父親は、忙しいみたいだ。最近、魔物が活発化してきており住民の安全のために色々と頑張っているみたいだ。半年も帰ってないみたいだから戻ってきたら、単身赴任の父親を労わってあげよう。


 それよりも一番重要なことが発覚した。前から目が見えないと思っていたが、どうやら本格的に俺の目は見えないみたいだ。嘘だろと叫びたい。一度叫んだ時、ぎゃん泣きしてしまい家族に迷惑をかけてしまったので今は、無意味に叫ぶのを控えている。

 

それにどうも、俺の目が見えないことについて全員知っているようだ。

この間、医者っぽい人が来て何やら検査をしていったからな。医者から目が見えないと聞いた時、母親が泣いていたな。大丈夫だと伝えたかったが、まだ喋れなかったので、あーとかうーになってしまい喋れないもどかしさに俺も泣いてしまい非常に混沌とした状況だったな。

 今となっては若気の至りだな。


 ふっ。


 地球ならば、目が見えなくとも環境が整っているから、安心して暮らせるんだが、ここは異世界っぽいし魔物と呼ばれる存在もいるのに厳しいだろ。どうやって生きろと。


 誰かが、言っていたな。神は死んだと。まさしくその通りだと思う。

 こういう時のテンプレでは、神様が特典とかチート能力くれるんじゃないの?ねえ。


 声を大にして言いたい。クソゲーだと。


 だが、幸いなことにうちは、貴族みたいだ。辺境伯みたいな事をメイドが話していたのを聞いた。

 メイドだぞ。リアルメイドだ。だが、残念なことに俺の瞳は何も映してくれない。目の前にいるのにだぞ。それにこの世界には、エルフや獣っ娘がいるみたい。

この情報を聞いたときは、血の涙を流したほどだ。目の前にいるのに見れないのだぞ。


 視覚情報がない事がこんなにも悲しい事だと前世では、思いもしなかったな。

しかし、俺には前世の記憶がある。この一点については、僥倖だったな。だからこそ俺は、見えなくてもそこまで悲観的になれないのかもしれないな。


 

 さて、そろそろお腹が空いてきたしおっぱいの要求でもするか。見えなとわかってからは、誰かしらが常に傍にいるようになったからだ。寝返りも打てるようになり目が見えないという事でケガをさせないようにする為に敏感になっているみたいだ。体を動かしてアピールすることで、わざわざ泣かなくてもいいのだ。


 体をうねうね動かしていると


「うーん。おむつでは、ないみたいね。となると、お腹が空いたのかしらね。アザレア」


「はい」


「マティアス様は、お腹が空いたみたいだから。イレーネ様を呼んできて頂戴」


「はい。今すぐ呼んできます」


 今、俺を抱いて母さんを呼んでくるように指示を出したのは、メイド長のエミリッサだな。前世では、声豚でもあったからすぐにわかるな。声だけで、厳しいって感じがひしひしと伝わってくる。


見えないからか音には、非常に敏感になってしまったんだよな。一声聞けば忘れないし、話し方の特徴も分かるから、なりすましてても騙されにくいな。


 貴族は普通、乳母を雇って自分ではミルクを飲ませないみたいだが、うちの母親は自分で自分のミルクをあげたいらしい。最初は恥ずかしかったが、こういうプレイだと思えば慣れてくるものだ。目が見えないから尚更だな。


 たったったっと軽快な足音が聞こえてくる。 

 

 むむむ。この足音は、姉上と兄上だな。


「まてぃあすー」


「ねえさん、まってよー」


 長女のエリーシア姉さんと長男のフェルナン兄さんだ。

エリーシア姉さんは4歳で、フェルナン兄さんは2歳だったかな。

エリーシア姉さんは、いつも撫でてくれるんだが、こう雑なんだよな。わしわしって感じで頭を撫でてくるので若干うっとうしい。しかし、フェルナン兄さんは、なでなでと優しくしてくれるので気持ちがいい。是非、姉さんにも見習ってもらいたいものだ。


 おっ。この優雅な足音は、母さんかな?


「エリーシア、フェルナン。マティアスはまだ小さいから、騒いだらだめよ。」

「それとエリーシア。撫でるのならもう少し優しくしてあげないとマティアスから嫌われるわよ。」


「うーー。わかったぁ」


 いいぞ母さん。もっと言ってやってくれ。



 抱き上げたとき顔をぺたぺた触っているからこの感じだと母さんは、痩せているみたいだ。きれいな人だと思いたい。


 「マティアス。おっぱいがほしいのね。今からあげますからね」


 「ささ、エリーシア様とフェルナン様は、今からおやつにしますから広間に行きましょうか」


 「「はーい」」



 ああ、お腹いっぱいになってきて眠くなってきたな。赤ん坊の体ってのは、欲求に正直だからな。

 

 げぷっ。


 だめだ。おやすみなさい。


 

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