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 ふあああああ。眠い。だが、起きなければ。でも今日は、セバスと父さんに稽古をつけてもらう予定だからな頑張って起きないと。


 コンコンコン。


「マティアス様。起きられましたか?」


「セバス?今起きたよ。入ってきて着替えを用意してくれない?」


「畏まりました。こちらが着替えとなります」


「ありがとう。父さんはもう準備してるの?」


「はい。すでに待っておられます。朝の鍛錬が終わってから朝食となっております」


「ありがとうセバス。それじゃ、父さんの所に行こうか」


「はい」



「父さんおはよう」


「マティアスおはよう。さっ。まずは、走り込みだ」


「まさか、いきなり全力で走るんじゃないよね?」


「全力で走らないでどうするんだ?」


 ああ。やっぱりか。


「いきなり全力で走らないでまずは、体を温めないと。温まってきてからが本番なんだからね」


「ふむ。ならば、その通りにしてみようか。セバスもそれでよいか?」


「問題ありません」


「そういえば、どこを走るの??」


「あーーー。そうだな。とりあえず、家の周りにしとくか」


「わかった」


 地面は、石畳か。思っていたよりも凸凹していないんだな。これならこけることなく走れそうだな。


 ふっふっふっふっふっ。


 何周したんだろうか。10周ぐらいか?おかげで大分、体が温まってきたな。そろそろペース上げてもいいかな。

「父さん。体が温まってきたからそろそろペース上げてもいいよ」


「そうか。なら、ペースを上げるから紐をしっかり握っていろよ」


「うん」


 走ることに意識を向けたいからエコーロケーションはしない。してもいいんだけど、呼吸が乱れてきついんだよな。

 はっはっはっ。はっはっはっ・・・。


「マティアス。大分息が上がっているぞ。まだ、走れるか?」


「う・・・ん。はあっ。はあっ。だい・・じょうぶ」


「そうか。なら、もう少しだけ早くするぞ」


「うんっ」


 ああ、きつい。こんなに走るのって前世では、高校以来だな。特に就職してからは、運動という運動は全くしてこなかったもんな。


「もう・・・むり・・・」


 呟いた瞬間俺は、そのまま紐を手放し。顔面からダイブした。

 

「・・・いったああああ」


 顔いっってえええええええええええ

 はあっ・・・顔が・・・はあっ・・・はあっ・・・痛い・・・。

 はあはあ・・マジ痛い。はあ・・超・・痛い。痛すぎて泣けてきた。


 思いっきり顔面からダイブして鼻打った。絶対鼻が削れた。1センチは削れた。

 もう無理。痛すぎて無理。


「マティアス。大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃ・・はあっ・・ないっ・・・。・・・っぐす。鼻が削れた。・・ひっく。・・はあっ・・」


「どれどれ。・・・擦り傷だけだから大丈夫だ。鼻も削れてないし。傷薬つけてれば治るからこのぐらいで泣くな」


「う゛んっ」


 確かにこのぐらいの痛みで泣いてちゃ話にならないけど痛いものは痛い。鼻って急所だから泣きたくなくても涙が出てくる。


「強い子だ。少し、休憩するか。セバスに傷薬を持ってきてもらうからな」


「う゛ん」


「既に、用意できております」


「さすがだな」


「マティアス様。少ししみますが我慢してくださいね」


「・・・っ。・・・・・・うぐっ」


 はあ・・ぐすっ・・・。はあ・・・はあ・・・ひっく・・。

 少し・・・どころじゃ・・ない・・はあ・・・。

 

「よく我慢できたな」


 はあ・・はあ・・はあ。


 少し呼吸は、落ち着いてきたけど鼻が痛い。水で洗い流して傷薬塗ってもらったけども痛い。

 ヘルニアよりも痛い。絶対鼻削れたと思ってたのに擦り傷程度なのかよ。痛みからの傷の具合は、相変わらず分からん。自己判断は厳しいなあ。一生かかっても分かる気がしないな。


 前世では、ヘルニア持ちだったんだよなあ。今世では、なりたくないなあ。椎間板が飛び出して、神経を圧迫しているんだよな。前世では、手術して切ったんだけども・・・。でも、ヘルニアって治癒魔法で治せるんだろうか?どうなんだ?治せたらヘルニアは怖くないんだが。


 うーーーむ。検証したい。治癒魔法がどこまで可能なのか。母さんに頼んで実験してもらうか?協力してもらえるかな?痛風も検証したい。どこまでが可能でどこまでが不可能なのか。


 あーーー。何で、実家にいる時に思いつかなかったかなあ。帰ったらやりたい事と知りたいことが多すぎるな。覚えきれるんだろうか。さすがに一度には、無理だな。記録しても自分で読めないから点字を作らないと。点字って存在してなさそうだな。


 まずは、文字を覚えてそこから点字を作る作業からしないといけないのか。ちょっと萎えるな。点字があるのなら覚えればいいだけだけど、一から作るってなるとなあ。前世でも小学か中学生の時に勉強したぐらいでほとんど覚えてないから参考にすら出来ないし。


 やることが多すぎて泣けてくる。これまで、一日一日を無駄に過ごし過ぎたな。



「そろそろ、次に移るぞ」


「んん?ああ。次って何するの?」


「次は、短い距離の走り込みだ。体力が一番大事だからな」


 次は、短距離走か。何本走るんだろう。


「私が、良しという距離まで走れよ」


 短距離走って地味に怖いんだよな。ぶつからないって分かってても不安になるんだよなあ。実家なら慣れたから問題ないけど、知らないところってちょっと怖い。ぶつかる心配がないって分かってても真っすぐ走れてるのか分からないんだよな。


「庭で走るの?」


「ああ。そうだぞ。ぶつかる心配はないから、思いっきり走るんだぞ」


「うん」


 すーーーはーーー。すーーーはーーー。


 よし。




 はあ・・・・・・・・・はあ・・・・・・・・はあ・・・・・・・・・・・。

 もう・・・・・走れん。


「よし、これで終わりにしてご飯にするか」


 やっと・・はあ・・・終わったあああ・・・・。

 まじで・・・はあ・・・しんどい・・はあ・・・。

 ちょっとさあ・・・実家の時より・・はあ・・厳しく・・はあ・・なってね・・。


 すううう・・・ふうううう・・・・。すううう・・・ふうううう・・・・。


 どんだけ、走ったんだろ。走り過ぎて足ががくがくする。5歳児に少し厳しくね?厳しくって言ったのは俺だけどもさあ。思っていたのよりもしんどい。


「ガードルフ様。朝食の用意が整いました」


「そうか。マティアス。しっかりと食べるんだぞ」


 ああ。食べるのも鍛錬の一つだったな。でも、走り過ぎて気持ち悪い。そんなに食べられない。


「そんなに食べられそうにないかも」


「だが、食べろ」


「・・・食べます・・・・・」


 食べ終わるまで、部屋に帰れないってやつか。食うしか選択肢は残っていないってわけか。

 食べてやろうじゃないかああああ。



 うっぷ・・・・・。だめ。はきそう・・・・・。5歳児になんて量を食べさせるんだよ。鬼畜過ぎる。

 だめだ・・・・・・。うっぷ。


「戻すなよ。この後は、迎えに来るまでしばらく部屋で休みなさい。」


「うん・・・・。うっぷ・・・」


 


 はあああああああ。やっと休める。・・・・・っう。まだ、気を抜いたら戻しそう。

 でも、こうしていると学生の頃が懐かしいな。くたくたになるまで、練習して。家に帰ったらご飯ドンぶりで2杯は食べてたもんな。弁当だけじゃ足りなかったからおにぎりを別で持っていってたもんなあ。部活前に食べたりして。弁当も、タッパーの二段だったからなあ。ホント母ちゃんには、感謝しかないな。


 でも、その感謝ももう伝えることが出来ないのか。こんな事になるのならもう少し、ちゃんと親孝行するんだったな。『ありがとう』って言うのが恥ずかしくってまともに言ったことがないんだよな。


 実感するのが遅すぎたか。


 でも、俺は一度死んでここで生きている。今世では勇気を振り絞って感謝の気持ちを伝えないとな。前世では、恥ずかしくて『ありがとう』たった5文字の言葉が言えなかった。


 実際に、言えないって分かった状態にならないと理解できないんだな。

 はああ・・・・。


 

 何とも言えない気分になってきたな。

 でも、二度目の人生なんだ。後悔だけは、しないような生き方をしたいな。

 『わが生涯に、一片の悔いなし』って言えるような生き方をしたいな。

 その為には、やれることはやらないと。やらないで後悔するよりもやって後悔した方がいいって何かで言ってたし。感傷に浸っている場合じゃないな。


 



 コンコンコン。

「マティアス。起きているか?入るぞ」

「マティアス。寝ているのか?少し、厳しくし過ぎたか?気持ちよさそうな寝顔をしよって。昼ごはんまで寝かせてやるか。その分、しごくけどな。ふははっ」


 んーーー。はっ。いつの間にか寝てたのか?今何時だ?

 ん?何か音が聞こえるような。


「ガードルフ様。まだまだ、動きが甘いですねっ」


「くっ・・・。はあ・・はあ・・・はあ。セバスよ舐めるなよっ」


「おっと。今のは良かったですよ」


「それは光栄だな。だが、そんなに余裕で避けられると全く説得力がないけどなっ」



 父さんとセバスが戦っているのか?音が鈍いから木剣とかかな?

 父さんが軽くあしらわれている感じだ。外に出てみるか。



「これで、どうだ」


「ふんっ。爪が甘かったですね」


「くそっ。負けだ。はあああ。セバスよ。強すぎないか?全く勝てる気がしないんだが」


「そう簡単に追い抜かれるわけにはいきませんからね。おや、マティアス様。起きられたのですね」


「うん。寝過ごしちゃったかな?」


「いえいえ。問題ないですよ。その分お昼から厳しくしますから」


「うげえ。だよね。父さんは、セバスと模擬線してたんだ」


「ああ。父さんも強くなりたくてな。時間がある時は、手合わせを頼んでいるんだが、全く勝てる気がしないんだなこれが。ははは」


 さすが、セバス。どんだけ強いんだ。父さんが一方的にやられるなんて、ドラゴンを追い返す力を持ってるだけあるな。


「いえいえ。最近では、冷やりとすることが多くなってきましたよ」


「それでも、一太刀も浴びせれないんだから私は、まだまだだよ」


「ふぉっふぉっふぉっふぉ。その時を楽しみにしていますよ。ガードルフ様」


「ああ。近いうちに一太刀浴びせて見せるからな。さて、マティアスも起きたことだし、昼ご飯にしよう。」


「そうでございますね。そろそろ準備が終わる頃です」


「ガードルフ様。ご飯の用意が整いましたが、その前にお風呂に行って汗を流してきてください」


「そうだな。ダリア。風呂の用意は、出来ているか?」


「全て、整ってございます」


「助かる。マティアスよ。先に食堂で待っててくれ。すぐに風呂に入って戻ってくるから」


「父さん。わかったよ」


「セバスも一緒に入ってきたら?」


「それはいいな。セバスお前もこい」


「はあ。しょうがありませんね。断っても無駄なようですね」


「分かってるじゃないか」


「こんな所だけは、頑固なんですから」


 腐った方々が大好きそうな展開になってしまった。この世界にも存在しているんだろうか。どこまで腐海は広まっているのか。もしくは、広まっていないのか。



今更ながら後書きを書いていこうかと思いまして。

親に感謝の気持ちを伝えるのってなんだか恥ずかしいですよね。

私も、なかなか言えない性質なんですがね。

『ありがとう』この五文字が言えるようになりたいですねえ。


いつも読んでくださってありがとうございます。

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