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あの後、道中で普通に魔物出てきたんだけど、セバスが強かったってしか分からなかった。ドラゴンテイルの人達の出番なかったもんな。発見したと思ったらすでに戦闘終わってたって状況だからな。魔物の声が聞こえたと思ったら途中で声が消えるんだもん。瞬殺以外の何物でもないじゃん。セバス強すぎでしょ。
二日目の夜は、さすがに誰もお酒を飲んでなかった。セバスが勧めても全員拒否したもんな。その後からは、ドラゴンテイルの人達が、頑張って魔物を倒していったんだよな。
「マティアス。王都が見えてきたぞ」
「ああ。やっと着くんだね父さん。もう馬車の旅はこりごりだよ。せめてもう少しゆっくりと来たかったな」
「ははは」
「笑い事じゃないよ。こんな事になったのも父さんたちのせいだからね。初日の遅れの分を取り戻すためにペースを少し上げたんだから。馬もかわいそうだよ」
「それは、すまなかった。着いたら好きなものを買ってあげるから母さん達には黙っててくれないか?」
「僕は、いいんだけどセバスから報告が入るんじゃないの?」
「ああ。そうだな。父さん、帰りたくなくなった」
「帰らないとダメでしょ。しかっり怒られてね」
「はああ。お土産で誤魔化すか」
お土産で誤魔化すって・・・。無理じゃないかな。火に油を注ぎそうな感じだな。俺には、関係ないから黙っていよっと。王都の城門に着くまで父さんと何気ない会話を続けた。
「父さん何で、入り口に向かわないの?」
「ああ。そうか。今マティアスが感じ取っている場所は、商人とか平民が使う入り口なんだよ。貴族は、別の入り口を使うんだよ。そこなら、ほとんど並ばなくていいからね」
「ふーーん。それにしてもここの壁って高いね。こんなに高いものなの?」
「いや。この王都の外壁が国で一番高いな。仮にも王都だしな。このぐらいの高さは、普通だよ」
ホント高いな。15~20mはありそうだな。対魔物用とか戦争時に攻められた時の対策だろうな。この国は、自分たちから他国に対して戦争を起こしていないから今のところは平和って父さんは言ってたな。戦争かあ。このまま平和に暮らしたいもんだよな。
「ここが、貴族専用の王都への入り口だよ」
「すみません。身分証のご呈示をお願いします」
「ほい。これでいいかな」
「はっ。これは、アンファング卿。どうぞ。お通り下さい」
「ありがとう」
「父さん。王都に入ったの?」
「ああ。王都に入ったぞ。このまま王都にある我が家に向かうからな。領地の家程は大きくないからな」
領地の家程って言うけど大体このパターンは、大きいってやつなんだよな。分かってるって。
うん。大きくなかった。普通の家よりも少し大きいかなって感じだった。庭は、そこそこあるんだけど。
「確かに、そんなに大きくないね」
「王都にそんなにこないから大きくても管理するのが面倒でな。だから、少し大きいぐらいにしといたんだよ。広いと移動も面倒だしな。正直領地の家も少し小さくしたいとこなんだが、やはり、みえって言うのは重要みたいでな。他の貴族から舐められないようにあの大きさなんだよなあ」
父さんも、もう少し小さくていいと思っているのか。大きくても部屋を持て余すもんなあ。掃除も大変そうだもんな。
そういえば。
「セバス。予定では、今日の何時ごろに着く予定だったの?」
「本来ならば、お昼頃に着く予定でした。もう少し遅れていたなら今日中に王都に入れなかったと思います。数刻遅れましたので、マティアス様への貸し一つとワイン一本でいいかと考えなおしました。お小遣いの半額は、2月にしましょうかね。ドラゴンテイルの方々は、1割減らしましょうか」
「良かったね。父さん」
「一割か。良かったな。リーダー」
「う、うむ。アイモよ、帰りも頼むぞ」
「問題ないぞ。三日後でいいか?」
「ああ。それまでは、王都でゆっくりしていてくれ」
「りょーかい。みんな行くぞ」
「それじゃマティアス。家に入るぞ」
「おかえりなさいませ。旦那様。お部屋の用意は、全て整っています。夕食もいつでも食べられるとのことです。あなたが、マティアス様ですね?初めまして。ここの管理をしているダリアと申します」
「マティアス=アンファングです。王都にいる間は、よろしくお願いします」
「ダリアは、セバスの娘だぞ」
「えっ。そうなの。セバスって結婚していたんだ」
まさかのセバスが既婚者だと判明してしまった。そりゃ相応の年っぽいし結婚しててもおかしくはないよな。奥さんはどうしたんだろ。
「じゃあ、セバスの奥さんは今どうしているの?」
「母さんは・・・。今は・・・」
セバスは黙っちゃうし、ダリアさんは、悲痛な感じで母さんって言ってるんですけど。これってもしかして聞いたらダメだったやつ?亡くなっちゃったってことなの?
「今、行方不明なんですよね」
「えっ。行方不明って大変じゃん。捜しに行かないとダメじゃん」
「大丈夫ですよマティアス様」
「大丈夫なわけないじゃん。セバスってそんなに薄情だったの?奥さん捜さないとか」
「いいえ。違うんですよマティアス様。行方不明になるのが特技なんですよ」
はっ?そんな特技は、あるわけないじゃん。なんなのその特技。行方不明になる特技の意味が分からん。
「くっくっくっ。マティアスよ。セバスの言う通りそう心配しなくてもいいんだぞ」
「父さんまで笑ってなんなのさ」
「ああ。すまんすまん。慌ててるお前が珍しくてな」
「珍しいも何もセバスのが奥さんが行方不明なら捜すのが普通じゃん。いつもお世話になってるんだし。セバスの主として父さん失格だよ」
「くっくっ。失格か」
「ガードルフ様その辺でいいのではないのでしょうか」
なんなの?なんでそんなに笑ってられるの?父さんたちおかしいだろ。人の命をなんだと思ってるんだよ。こんな世界だから尚更だろ。
「あーー。マティアスよ。セバスの奥さんはな、重度の方向音痴なんだよ」
んあっ????今重度の方向音痴????さすがにそれはないでしょ。いくら何でも家に帰ってこれないって。見知らぬ土地ならまだしも。
この時の俺は、よっぽどアホな顔をしてたんだと思う。だって、父さんが今まで聞いたことないくらいに笑ってるから。父さんは許さん。幼気な子供の心を弄んで。帰ったら母さんとエミリッサにしこたま怒られてしまえ。
「マティアス様。それは、本当の事なんですよ。一緒に歩いていても気づいたらいなくなってしまうことが多くてですね」
なに、その能力。そんな能力持った人って実際にいるんだ。二次元だけかと思ってた。音○さんの奥さん並みの能力じゃないか。
「もう、半年ほどになりますかね。買い物に行ってくるって言ってそのまま帰ってきてないんですよ」
「そっか。そういうことなんだね。それと、父さん笑い過ぎ。僕怒ったから。父さんが隠してるワインの場所母さん達に教えるから」
「なっ。マティアスそれだけは、勘弁してくれ。あれだけは、ダメだ」
「やっぱり、隠してたんだ」
「なああっ。鎌をかけたってのか。はあああ。わかった。さっきのはさすがに笑い過ぎたな。すまなかった。何でも言う事聞くからその事だけは、黙っててくれないか?」
「何でもって言ったね。今更変更できないからね。覚悟しててね父さん」
「くっ。なんでもは、さすがに言い過ぎたか。だが、しょうがないか。ああ。父さんに二言はない。何でも言ってくれ」
「まだ思いつかないから、思いついたら言うね」
「わかった。あんまり無茶なのは、やめてくれよ」
「まっ。それは、わかんないから諦めてね。それよりもお腹空いたから食事にしない?」
「はあ。全く誰に似たんだか。そうだな。ダリアよ。夕食の準備をしてもらっていいか?」
「畏まりました」
「そういえば、父さん。明日の予定って何かあるの?」
「明日は、特に予定入れてないぞ。どこか行きたいか?」
「うーーーん。止めとく。家で稽古したいから父さんも一緒にしてくれない?」
道中では、筋トレぐらいしかまともに出来なかったからな。
「そうか。いいぞ」
「ガードルフ様。マティアス様。食事の用意が整いました」
「それじゃ、ご飯にするか」
「うん」
あーーー。美味かった。美味かった。余は満足じゃ。ここの食事も美味かったな。家のと大差なかった気がするな。父さんに聞いてみるか。
「ねえ。父さん。ここの食事も美味しかったんだけど、王都じゃこのぐらいが普通なの?」
「ああ。ここの食事は、ジュディウスが鍛えたからな。おかげで、王都に来ても美味しい食事にありつけるってわけだ」
ああ。やっぱり、普通じゃなかったんだ。ジュディウスさんってすごいな。父さんの弟って聞いたからなんて呼べばいいのか分からないんだよな。関係としては、叔父にあたるんだからジュディウス叔父さんか?
うーーーん。帰ってからでいいか。
「父さん、寝るまでまだ時間あるんだよね?」
「そうだな。まだ寝るには早いかな」
「そしたら、僕とリバーシで勝負しない?」
「おお、いいな。だが、負けないぞ」
「僕もだよ」
結局馬車では、しなかったんだよな。すっかり忘れたてたからな。道中では、特に何もしてなかったんだよな。だから、かなり暇だったんだよな。
「ガードルフ様。マティアス様。そろそろ眠る時間です」
「もうそんな時間か。今回は、ここまでだ、マティアス」
「くっ・・・。また、相手をしてもらいますからね」
「いつでも受けて立つよ」
があああああああ。悔しい。一回しか勝てなかった。思ったよりも見えない状態でやるのって難しい。どこがどうひっくり返されたのか分からなくなってくる。でも、こういうのは慣れだな。慣れたら普通にできるようになるだろ。
個人的には、将棋を普及させたいんだよな。将棋って作られてるんだろうか。チェスよりも将棋派なんだよな。でも、チェックメイトって言葉は好きだ。こう、カッコいいじゃん。囲碁は、五目並べしかしたことないからルールがよくわからん。
明日にでも父さんに聞いてみるか。なかったら作ってもらおう。ダメだと言われても今回の何でも約束を聞くのを使ってもいいしな。
まあ、このぐらいなら普通に作ってくれそうなんだけどね。