15
うああああ。体が少し痛い。なんでだ?馬車の中では普通に座ってただけだったから・・・。あーーー、そうだった。そうだった。眠れなかったから筋トレしてたんだった。筋トレってすごいな。変な想像ばかりで眠れる気がしなかったんだが、筋トレしたら寝れてしまった・・・。
そうか、筋トレ。即ち、筋肉を鍛える行為は、無の境地に達せられるのか。筋トレを行うって事は、筋肉を得る代わりに筋肉の痛みを得る。筋肉こそ、この世の全てなのか。筋肉こそ俺が求めていた心理だったって事か・・・。
って。違う違う違う。誰がいつ心理を求めていたんだよ。確かに筋トレは、等価交換で成り立っているけど、ムキムキの錬金術師もいたけども、何変な方向に突っ走ってるんだよ。危うく、筋肉教に入信するところだったわ。筋肉は欲しいけど、ムキムキになるまでいらない。普通より少しあるぐらいでいいんだよ。筋肉魔法の使い手ではあるまいし。
俺は、そういう担当じゃない。俺は、ロリ担当だ。幼女のために生きて幼女のために死ぬ。
いや、死んだらダメだろ。死んだら幼女に会えないじゃないか。
はああ。長命種に生まれ変わりたかった。そうしたら何千年も幼女と戯れられたのに。まあでもその分、死別に慣れないとやってけないからなあ。知り合いが老いて死んでいくってのを何十回も何百回も経験することになるからな。何百いや、何千人の幼女が少女になり淑女になり熟女になって老いて死んでいくんだから耐えられなかった時は、下手したら死ぬまで引き籠りになりそうなんだよな。
ってか、寝起きから一体俺は、何を考えてるんだ。そもそも今何時ごろなんだ?お腹の空き具合からそろそろ朝食の時間になる頃なのか?
父さんは、起きて・・・ないってか、いない?夕べから戻ってきていないのか?朝まで飲んでたとしても部屋にいないっていう状況はおかしくないか?
だけど、夕べ飲んでてそのままアイモさん達と一緒の部屋で寝てるってパターンならこの部屋にいないっていう状況にも納得できるな。
そうなると、セバスが止めれなかったって事は、考えられないんだよな。だって、俺がセバスに飲み過ぎないようにしてって頼んだんだから。でも、セバスは父さんの執事。息子である俺のいう事が聞けないって事はありえるのか・・・?無茶なことを言ったわけじゃないんだけどなあ。
うーーーーん。わからん。貴族って存在が俺の中では特異過ぎて分からんって事しか分からん。
セバスが来たら聞いてみるか。まだ、起こしに来ないって事は俺が起きるのが早かったって事になるのかな。こういう時は少し不便だな。明かるさが分からんから今の時間帯の予測が付けられん。部屋から出るにしてもなあ。勝手知ったる我が家じゃないから何が起こるのか分からんし、このまま部屋にいるかな。お腹の空き具合が限界になりそうな時に行動に移すとするか。
それにしても、俺もセバスみたいな従者とかほしいな。もしくは、専属のメイドとか。日常生活をサポートしてくれるような存在が必要だな。家にいる時は、誰かしらいるから特に何とも思っていなかったけど、このままじゃ不便すぎて泣ける。
それか、盲導犬みたいなポジションのペット。所謂、従魔ってところか。モフモフの魔物しか選択肢にないけどな。狼系か狐系もいいな。後は、猫系もいいな。他には・・・あーー。グリフォンみたいなのも体モフモフの翼がフカフカな感じっぽいからそれもありだな。
体格を自由に変えられる存在とかいたら、普段はちっちゃい状態で、移動時には通常サイズに戻り上に乗って移動とか憧れるわあ。幼女に人化する能力とか持ってたら文句なしなんだけどな。まあでも、その前にそんな存在がいるのか知らないんだけどね。
コンコンコン。
「マティアス様。起きていらっしゃいますか?」
コンコンコン。
「マティアス様。起きていらっしゃいますか?」
おおう。考え事してたからどのくらい時間が経ったのか分からんな。取りあえず、セバスが起こしに来たって事は朝ごはんの時間かな。
「セバス?起きてるよ。朝食の時間になったの?」
「はい。ですので、お迎えに上がりました」
「わかった。入ってきていいよ」
「失礼します」
「セバス。父さんがいないみたいだけど、夕べの事教えてくれる?」
「はい。昨夜やまり、羽目を外してかなりの量を飲もうとされていました。マティアス様から釘を刺されていたのもお酒が入ったことによって忘れられていました。私も頼まれましたので量を控えるように伝えたんですけど。止めることなくそのまま飲み続けられ、これ以上は看過できないって量を飲まれた時思ったのです」
ああ。やっぱり、飲み続けてたんだ。お酒は飲んでも呑まれるなって言うのに。俺も前世では、かなり呑まれていたけどな。
「こうなったら、しこたま飲ませようとふと、思ったのです。二日酔いになっても移動は予定通りに進めるって事を書面に残してサインして頂きました。予定に支障をきたした場合はマティアス様に貸し三つって事も書面に残してサインしてもらいました」
まじか・・・。親子で貸しがある状況って何とも言えんな。
「何で僕に貸し三つにしたの?セバスでも良かったのに」
「私の分は、別で書面を用意しましたので」
セバスって腹黒いな。こんな一面あったんだ。
「ちなみに、セバスの分はなんて書いてサインしてもらったの?」
「まず、ガードルフ様のお小遣いを半額にする。私が好きなワインを自腹で3本用意していただく。って内容です。私が好きなワインは、少し高いんですよね。自腹ですので当然ガードルフ様のお小遣いからとなります。そうですねえ。半年は、お小遣いなしの状況になると思いますね。まあ、当然の処置ですね。マティアス様の属性測定がメインなんですからこのぐらいして当然ですね」
うーーーわ。思ってたよりもセバスが更に黒かった。そして、父さんよ。お小遣い制なのか。今日予定通りに進まなかったら半年は、お小遣いないって事なのか。今の所持金で私用に使う分を賄うとか憐れとしか言いようがないな。そして、家に帰ったら確実にエミリッサから怒られるな。母さんからも怒られるんじゃね?更に何かの罰が待っているとしか思えん。くわばら、くわばら。
「ドラゴンテイルのパーティーの皆さんには、今回の依頼料を半額にする事を書面に残してリーダーのアイモさんにサインを頂きました」
あっ。護衛のドラゴンテイルの人達にもサインしてもらったのね。半額かあ。まあ妥当なところなんじゃないかな。
それにしても、お酒が入っている状態で、書類にサインさせるんだから怖いよな。俺だったらまともに読まずにサインしてそう。
「ふふふふ。セバスってえげつないね」
「おや?そうですか?アンファング家には長年仕えていますからこのぐらいは普通ですよ。それでは、食事に参りましょうか」
「うん。案内頼むよ」
呻き声が聞こえてくるな。父さんたちか。先に起こしていたのか。だから、俺の所に来るのが遅かったのか?来るの遅かったのか?判断できないな。まあいいか。
「父さん。おはようございます。ドラゴンテイルのみなさんもおはようございます」
「ああ。マティアスか。おはよう。よく眠れたか?」
「うん。父さんは・・・そうでもなさそうだね。お酒臭い。一緒の馬車に乗りたくない」
なかなか、酒臭いな。朝方まで飲んでたんじゃないのか。これは、父さんに対して貸しができるんじゃね。
「ううう。そんなに酒臭いか。うああ。頭が痛い。セバス水を貰えないか」
「どうぞ。食事の後は、すぐに出発しますよ」
「もう少ししてからに出来ないか?」
「いいですけど、貸しとワインの本数が増えても構わないなら。それとドラゴンテイルの方々の護衛料も減っていきますがそれでもいいのでしたら」
「くっ。これ以上減らされたらたまらん。こうなったのもリーダーのせいですよ」
「ほんとですよ」「俺も今回のお金で買ってほしいものがあるって嫁さんに言われてるんですからね」
「ゴスタ。お前のせいでもあるんだから俺だけに押し付けるなよ。それにお前ら全員一緒だ。俺だけのせいにすんじゃない。ああ。大きな声を出させるな」
ドラゴンテイルの人達大概だな。ほとんど引退してるからってこれは酷くないか?ほぼ、引退してたとしても飲み過ぎだぞ。父さんと久々に飲めるって事で調子に乗ってしまったってことか。魔物が出てきたら対処できるのか?
「ねえセバス。途中で魔物出てきても大丈夫なのかな?」
「問題ないですよ。いざという時は私がでますから」
「セバスって戦えたの?」
「ボチボチですよ」
「マティアス。セバスはボチボチって程じゃないぞ。なんてったって、父さんよりも強いからな。ランクで言うならカーニバルに届くぐらいあるぞ」
まじかよ。カーニバルって言ったら最高ランクじゃないか。そんなに強かったのかよ。まさかのこんな身近にカーニバルに近い人物がいるとは思わなかった。
「冒険者の登録はしていないのでカーニバルではないですけど、でもそのぐらいはあるかもしれませんね。ただ、ドラゴンなんかが出てきたらさすがに追い返すだけで精一杯ですけどね。」
いやいやいや。ドラゴン来ても追い返せるってだけですごいぞ。普通なら全滅の目にあってもおかしくない存在だからね。聞いた話だけど。
「追い返せるんだ。セバスってすごいね。ねえ。セバス。帰ったら空いてる時間に僕に稽古つけてくれない?」
「稽古ですか?構いませんよ」
「マ・マティアスよ、父さんがしてもいいんだぞ」
「セバスがいい。どうせなら強い人に稽古してもらいたい。父さんが強かったらよかったんだけど。だからセバスお願い。それと厳しくしていいから」
あっ。父さん凹んだぽい?でも、しょうがない。だって、セバスが強いんだから。父さんが強くなれば問題ない。
「厳しくですか?いいのですか?」
「うん。お願い。決めたんだ。何もできずに終わる事がでてくるのが嫌なの。只でさえ見えないっていうハンデを背負ってるんだから生半可に鍛えたんじゃ何かあった時に対応できないのが嫌なの。誰かを守れる力がほしい」
「そうですか。そこまでのお覚悟があるのでしたら、任せてください。強くしてさしあげますよ」
これで、今までもよりも厳しくなったな。でも、これは必要だからな。頑張れ俺。頑張るしかないんだけどな。
「それでは、みなさんの食事も終わりましたので出発いたしますよ」
「ぐっ・・・。もうか。はああ。わかった」
「分かりました。セバスさん。お前ら行くぞ」
「「「「ういーーー」」」」
ホントに大丈夫なんだろうか。不安しかないな。