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8.お誘い

次回、修羅場(?)なWデート編

王宮に滞在して2日目。


つまりは凱旋パレードまで後2日というわけだが、いかんせんそれまでやることがなくて暇だ。


村にいたころなら3時間だけ外に出て農作業をした後は本を読むなり昼寝をするなり掃除なりをすればいくらでも時間を潰せる。


しかしここは王宮。


部屋に本とか暇つぶし道具は置いてないし、かといって誰かに「俺の暇が潰せる道具持ってこいや!」と命ずる勇気もない。


というかボロが出そうだからあまり人と接触をしたくないというのが本音だ。


エリオットは城の兵士に剣術の指導中。


リンネもエリオットと同じく宮廷魔導士に魔法の指導をしている。


マリンは王都の教会に挨拶に行くらしいので3人共俺の近くにはいない。


それで肝心のリリーナだが、なんでも恩がある魔法の師匠とやらに呼び出されたらしく3人と同じく俺の傍にいない。


リリーナは極力俺の傍を離れたくなかったようだが、師匠の話があの夜に説明された俺の虚弱体質に関する話なので聞かない訳にはいかないらしい。


という訳でやることがなく知人がいない俺は部屋にこもっているしか身の置き所がないという訳だ。


今朝リリーナから「万が一私がハンクの傍にいられない時のために」と変なペンダントを渡された。


リリーナ曰く、持ち主をありとあらゆる攻撃から3回だけ守ってくれる効果を持つ世界にひとつしかない超貴重品らしい。


昨日の夜に自力で作ったとか言っていたが、まあそれはリリーナの冗談だろう。


リリーナからこのペンダントに値段をつけるとしたら小さな国の国家予算に匹敵すると聞いた時は真剣に売り払うことを考えたが、金よりは命だと思いなおし何とか自制した。


それにしても暇だ。暇すぎるあまり髪の毛の本数を数えちゃうレベル。前髪を591本目まで数えた時、ノックの音が聞こえてきた。


「はい?誰ですか?」


「アルフォンスです。少しお時間よろしいですか?」


げっ、王子様!?おいおいこんな時に来てんじゃねえーよ!!


リリーナがいないんだぞ!?どうすればいいんだ!?やばいやばいやばい!!


この人俺のこと疑ってんだよな。リリーナ無しで誤魔化せる自信がないぞ!?


「あの、トマソンさん?入っていいですか?」


「え?え、ええ。ど、どうぞ」


「失礼します」


部屋に入ってくる王子様。


昨日も思ったが、やっぱりこの人の容姿は気持ち悪いほど整っている。


もうね、すっごい綺麗だよね。本当に俺と同じ生物なんだろうか?


っていうかこの人なにしに来たんだろう?


もしかして処刑宣告とか?王族に嘘をついた罪で逮捕……短い人生だった。


「あの、トマソンさん?何でこの世の終わりみたいな顔をしているんですか?」


「あ、ああ、いや、何でもないんです。あの、それでアルフォンス王子様は俺に何の用ですか?」


処刑は嫌だ。逮捕も嫌だ。何の用か知らないけどお願いだから処刑だけは止めて!!


「実はこれからお忍びで王都の商店街に行くつもりなんです。よかったらトマソンさんもご一緒しませんか?」


「え!?処刑じゃないの!?」


「は?処刑とは?」


「あ、何でもないです。全部問題はないです!むしろ処刑なんて言葉は一言も言ってないんです!!」


「はぁ……」


んだよ!処刑宣告じゃないのかよ!!


っつだよな~、ビビらせんなよ!!良かった!!


いや~、焦った焦った。もう!俺をこんなにビビらすなんて王子様のお茶目さん!!


「あの、トマソンさん?どうでしょうか?やることがないようでしたら僕と一緒に商店街に行って見ませんか?護衛を1人つけますので安全面は最大限配慮させていただきますが?」


商店街か。


昨日も行ったけど、緊張でゆっくり見れなかったんだよな。


暇を持て余していたし、行けることなら是非行きたい。


だけどな~、王子様とってーのがなあ。リリーナがいないと色々まずいよな。


……よし、断ろう。


「申し訳ないがリリーナが帰ってくるまでこの部屋で待たなければいけないんです。ありがたい誘いですが今回は遠慮しておきます」


「それならリリーナさんが帰ってくるまで僕も一緒に待ちましょう!リリーナさんが帰ってきたら、僕と護衛とトマソンさんとリリーナさんの4人で商店街に行くのはどうですか?」


ええ~!?何この人!?俺はっきりと断ったじゃん!!そんなに俺と商店街に行きたいの!?……でもリリーナと一緒か。……それなら別に行ってもいいかな?


「それなら別にいいですよ。もっとも、リリーナが商店街にいくことを了承すればですが」


「そうですか。それは良かったです。では僕も一緒にここでリリーナさんを待ちましょう」


ええ~!?ここで待つのかよ!!


おい、平然と椅子に座ってんじゃねえよ!!そして流れる無言の気まずい空気!!


ええ~どうしよう。スッゴい気まずいんだけど。


この人には昨日右手を思いっきり握られたりと嫌がらせされたんだよな。


いじめっ子と二人きりにさせられた気分だわ。


うぁ~、何話していいか全然わからねえ。


と言うか、うかつに口を開けばボロが出そうだから出来れば無言を貫きたい。


でもこの無言の空気が嫌すぎる!!


ああ!俺はいったいどうすればいいんだ!?リリーナヘルプ!!


俺が心の中でパニックに陥っていると、意外なことに王子様から話しかけてきてくれた。


「あの、不躾な質問になりますがトマソンさんは胸が大きい女性と小さい女性のどちらが好きですか?」


「は?えっと、スイマセン。もう一度言ってもらえませんか?」


俺の聞き間違いだよな。王子様がおっぱいの話をするわけないもんな。


「ですからトマソンさんは巨乳と貧乳のどちらが好きですかと聞いているのです!!」


聞き間違いじゃなかったー!!


何なのこの人!?無言からの会話の切り出しがおっぱいの話ですか!?


この国の行く末が不安になってきた!!


というか王子様も自分で質問しといて照れてんじゃねえよ!!顔真っ赤だよ!?照れるぐらいなら何でそんなこと俺に聞いたの!?


っていかんいかん。いくら猥談とはいえ相手は王族。ここは真面目に答えなければ!!


「胸はあった方がいいとは思いますけど、大きすぎるのも嫌ですね。掌におさまるぐらいがちょうどいいんじゃないですかね?」


ヤバイ!真面目に答えすぎて俺も照れてきた!ベットがある部屋に顔を真っ赤にした男が2人。見る人が見ればよだれを垂らしかねない光景だ。


「そうですか。ではトマソンが好きな女性の髪形は?」


「まあ……髪は長い方が好きですね」


「ではセクシー系と清楚系はどちらが好みで?」


その後も王子様は延々と俺の好みのタイプを聞いてきた。


つり目とたれ目ではどちらが好きか、攻めるのと攻められるのはどちらが好きか、年上と年下どちらが好きか、どんな性癖を持っているか.etc


もうなんなのこの人!?


普通初対面に近い男に異性関係の話を根掘り葉掘り聞く!?そんなこと聞いてどうするんだよ!?


場を持たせるためのどうでもいい会話だとしてもいきなり猥談はないだろ!!


俺が王子様の好みのタイプを聞いても教えてくれないし!!性癖まで話してしまった俺は王子様の顔をまともに見れないよ!!


「ではトマソンさんは、胸は掌におさまるぐらいで長髪、年下で背はトマソンさんより少し低いぐらいでたれ目気味。清楚な雰囲気を持ちながらどことなくエロスを醸し出し、小動物のように庇護欲を誘う。だけどいざ性行為になったら積極的になりトマソンをリードしてくれる攻めるのが得意な大人し目の足が綺麗な女性が好みなんですね?」


「ま、まあそうなんじゃないですかね?」


誰か俺を殺してー!!もう嫌ー!!


リリーナにも話したことがなかった好みのタイプをよく知りもしない男の前で話すことになるなんて!!顔から火が出そうだよ!!


「トマソンの好みのタイプがよくわかりました。少々やることが出来ましたので僕はこれで失礼します。商店街に行くのはお昼を食べた後にしましょう。その頃にはリリーナさんも帰ってきているでしょうね」


ええ~!?


この部屋で一緒にリリーナを待つって自分が言ったんじゃん!!


この人俺の性癖を聞くだけ聞いて放置しやがった!!


もう何なの!?王子様は何がしたかったの!?俺にはあの人の行動が何一つわからないよ!!


あー、恥ずか死にしそうだわ。うん?待てよ?出掛けるなら何か王子様に言うべきことがあったような……あ、そうだ。


「あの、アルフォンス王子様。俺は体が弱くて長時間外に出て歩くと体調が悪くなるんです。まあ休憩を挟めば大丈夫なんですけどね。だから長時間商店街廻りをすることは出来ませんよ?」


「は?体が弱い?魔王を倒した伝説の暗殺者なのに?」


早速ボロ出しちゃった!!王子様めっちゃ疑いの目で俺を見ているよ!!もう俺の馬鹿!!何とか誤魔化しを……そうだ!これだ!!


「実は魔王との戦闘で傷を負っていましてね。その後遺症です。うっ!右手の古傷が疼く!!」


どうかこれで誤魔化されてください。そんな疑惑に満ちた目で俺を凝視しないで!!頼むからどっか行ってくれ。


「……そうですか。それはお気の毒に。ご安心下さい。僕にも王子としての仕事がありますから長時間城を空けるつもりはありませんよ。では僕はこれで失礼します」


あん?あっさりと出ていってくれたぞ?


あの人は何で俺の部屋に来て俺の好みの女性のタイプを聞いてすぐに部屋から出ていったのだろう?


偉い人の考えることはよくわからん。


俺が王子様の行動について悩んでいると、リリーナが俺の部屋に帰ってきた。


「お待たせハンク。何か危険なことはなかった?」


「おう、お帰り。リリーナが心配するようなことは何にもなかったぞ」


良かったと心底安堵した表情をするリリーナ。何でか知らんけど朝起きたら俺の側を極力離れようとしないし、異様に俺のことを心配する。本当に何なんだろう?……もしかして生理か?


「……ハンク。今失礼なこと考えなかった?」


「え!?や、やだなー!!俺がリリーナに対してそんなことを考えるわけないじゃないかー。あはははは!!」


やっべ。マジ鋭い。俺の奥さん鋭すぎる!!


「あ、そうだ。なあ、リリーナ。王子様から昼食の後、一緒に商店街に行かないかって誘われてんだけど行かないか?」


「……アルが?」


「おう。ついさっき王子様がやってきてな。俺とリリーナ、王子様とその護衛の4人で商店街に行かないかって誘われたんだ。どうする?行ってみるか?」


「私としては出来れば行って欲しくない。……ハンクは行きたいの?」


「まあ、そりゃな。ほら、昨日はゆっくり見れなかったし。何より王宮って息がつまるからなあ。外の空気を吸いたいとは思っているよ」


「ハンクがそれを望むなら私も一緒に行く。だけど約束して。絶対に私の側から離れないって」


「ああ。わかったよ」


何でリリーナはこんなに真剣なんだ?子供を守る野生動物並に警戒心がMAXなんだが。


「アルの用はそれだけ?他に変なことはされなかった?」


「おう。後は好みのタイプとか性癖をこと細かく聞かれたぐらいだよ」


「……ハンクの好みのタイプと性癖?私にも詳しく教えて欲しいな」


「え?ちょ、ちょっとリリーナさん?目が濁りかけてとっても怖いんですけど!?か、肩をそんな力で掴まないで!!」


「いいからさっさと喋る!!」


その後再び性癖を話すことになりました。とっても死にたくなりました。どうか俺を殺して下さい。


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