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4.俺と剣王。いや、そんな話をされても困るよ

スットクがなくなった。これからは亀更新になります。投稿間隔はそれなりに空くと思っておいてください。書けたら投稿します。


PV5000


ユニークアクセス1000を突破しました。


読者の皆様&お気に入り登録をしてくれた方々に感謝を。ありがとうございます。

「いらっしゃい!いらっしゃい!!安いよ~!!どうぞ見てってね~!!!」

「あの勇者が使っていたという伝説の剣のレプリカがたった5銀貨!!お土産にちょうどいいですよー!!」

「勇者パーティの凱旋パレードが一番良い席で見れる特別チケットだ!!早いもの勝ちだよ!!」



今現在、俺は住み慣れた村と家を離れて王都にいる。


俺の視界に入ってくるのは辺り一面の人・人・人。お前らはアリンコか!?と突っ込みたくなる。


リリーナの説得の時に一度だけ王都に来たことがあるとはいえ、基本的に俺は人口50人未満の村から出たことがない田舎者。


王都の人の多さには威圧感すら感じて圧倒されてしまう。最初に見たときは祭でもやっているのかと思ったが、リリーナが言うにはこれがデフォルトらしい。


都会ハンパねぇ!!


俺達が王都にいる理由は凱旋パレードの前に仲間達、つまりは勇者パーティの連中と顔合わせするためと王様に魔王討伐の報告をするためだ。


これから俺は"真影"として世界中の人間を騙すことになる。その前に勇者パーティの連中に俺がただの農民だとバレてしまったら全て終わりだ。最悪、英雄の名前を勝手に名乗ったとして処刑もあり得る。


そう考えたら膝がガクブルしてしまう。


「ハンク、膝が震えている。大丈夫?」


「大丈夫じゃないよ!!ねえ、やっぱ止めない!?俺、ただの農民だよ!?勇者パーティとか騙せないと思うんだよね!それにこの人の多さ!!これがデフォってことは凱旋パレードの時はもっと人が来るんでしょ!?絶対無理だって!!あ、具合悪くなってきた……。帰りたい……」


「往生際が悪い。大丈夫。エリオット達は完全に真影の存在を信じている。そのための準備は色々とした。ハンクは堂々としていればいい」


リリーナは勇者パーティの連中に"真影"の存在をより信じこませるために色々と工作をしたそうだ。


真影は姿を隠す魔法の代償で言葉を話せないということにして、勇者パーティに真影の名前で手紙を送ったり、プレゼントを用意したりして疑う余地を無くしたらしい。


そういう用意周到な点は我が嫁ながら呆れを通り越して尊敬してしまう。


「というかさ、何でパレードの前に王都にいるんだ?凱旋パレードってぐらいなんだから勇者が王都に来た時に行われるもんじゃないのか?」


「いつ帰ってくるかわからない勇者の帰還のタイミングでパレードを開くのは不可能。こういうのは王家から御触れという形でパレードを開く日時が民衆に伝わる。それからようやくパレードが開かれる。だから凱旋パレードが開かれるのは、王様に報告してからだいだい3日後ぐらい」


「へぇー、そういうもんなのか。というか何でそんなことをリリーナが知っているんだ?パレードなんか初めてだろ」


「国単位では初めてだけど、町単位や村単位のパレードなら魔王討伐の旅の途中でやったことがある」


「え?魔王を倒す前にパレードをやったってことか?何でだよ?」


「一種の村おこし。私達が滞在すれば多くの人間が勇者を見物にやって来る。そうなれば村の財政が潤うことになる。だからウチの村や町に勇者がいますよって周囲の人達に宣伝するためにパレードはよく開かれていた」


なるほどね。しかし人間が滅ぶかどうかの瀬戸際なのに、勇者ですら金稼ぎの道具にするのか。たくましいというかなんというか……。世知辛い世の中だねぇ。


そんなことを考えていると、俺達の方に向かって手を振りながら近付いてくる背の高い男が目に入った。


男の容姿は遠目から見ても非常に整っていることがわかる。骨格やガタイがしっかりしている野性的なかっこよさだ。何だか自然と『兄貴』と呼びたくなるような、そんな頼もしさが感じられる。


「なあ、リリーナ。あれはお前の知り合いか?こっちに近付いてくるぞ」


「どれ?……あ、エリオットだ。相変わらず大きい」


「え!?エリオットってまさか"剣王"か!?」


ヤバイヤバイ!!まだ心の準備とか出来てねえよ!!やばいむっちゃ焦る!!


え、演技しなきゃ!!でも暗殺者の演技ってどうすればいいんだ!?そんなの見たことねえよ!!


頼む、俺から離れていって!!せめて後30分頂戴!!そうしたらもう少し落ち着けるから!!


しかし俺の願いはかなわず"剣王"は真っ直ぐに俺達の方に近付いてくる。


「おう、リリーナじゃないか!!お前ももう王都に来ていたのか。里帰りで旅の疲れはもう癒えたのか?」


「久し振り、エリオット。疲れは元々感じていない。あの程度の旅は楽勝」


「あっはっはっは!さすがは勇者様ってところか?相変わらずリリーナは自信満々だなあ」


「ここにいるのはエリオットだけ?リンネとマリンはどこ?」


「あの2人はもう少ししたら到着するってよ。ところでリリーナよ、隣にいる男は誰だ?恋人か?オレの記憶が確かならお前さんは結婚していたと思うが?」


「恋人じゃなくて旦那様。それに誰だと聞くのは失礼。彼のことはエリオットもよく知っている。なにせこの1年ずっと一緒にいたのだから」


「何!?ってことはこいつが!?」


「そう。彼の名前はハンク・トマソン。"真影"の称号を持つ私達の頼れる仲間」


き、キター!!ど、どうしよう……。どんなキャラで行けばいいんだ!?


ええい、あのまま2人で話しておけばいいものを!!


と、とりあえずここは挨拶だよな。落ちついて、落ちついて。……よしっ!


「久し振「ハンク~~~!!」」


って、剣王に抱きつかれた!?


「お前そんな顔していたんだな!!戦友のオレ達にも顔を見せないんだもんな!!オレはずっとお前の顔を見たかったんだぜ!!それにその声!初めて聞いたぜ~~!! 魔法の代償だから仕方ないってのもわかるんだけどよ、オレ達にすら声も姿も教えないなんて水臭いじゃねえかこの野郎!!」


テ、テンションが高い!まあ、しょうがねえか。こいつにとってはずっと一緒にいた仲間の顔を初めて見れるんだもんな。


それにこのテンションなら多少のことは誤魔化せる可能性が高い。


「なあ、覚えているか!?オレがピンチになった時にお前が助けてくれた時のこと!!あの時はオレのミスで100体の魔物に囲まれてよ~!もうやばいって時にお前が魔法で助けてくれたんだよな!!あの時のことをオレはずっと感謝しているんだぜ!!」


いきなり知らないエピソードキター!!!100体の魔物って何だよ!?おまえとんでもないミスするな!もうそれミスってレベルじゃねえぞ!?パーティから外されても文句は言えないレベル。


ええと、どう返答すればいいんだ!?ええい!とりあえず頷いておこう。


「ああ、もちろん覚えているとも。感謝する必要はない。仲間を助けるのは当然のことだ」


いや、全く覚えがないけどね。そもそも魔物に会ったことないし。だってずっと家にいましたから。それと魔法なんて俺は使えませんよ?


「それにさ~、オレとリンネが喧嘩したことあったじゃん?あの時はお前の仲裁には本当に助かった。オレとリンネの枕元に手紙を置いてくれたんだよな。オレ、あの時の手紙は大切に保管しているよ」


「仲間同士が喧嘩することは悲しいことだからな」


俺はあなたに手紙なんて一度も書いたことないけどね。それと君が保管している手紙を書いたのはそこにいるリリーナだよ。


「やっぱり一番印象深いのはあれだよな!!オレとの戦闘訓練!オレはお前の気配すら感じられなかったのに、お前は一撃でオレを気絶させたんだよな。オレは剣王なんて呼ばれているけどよ、お前にはまだまだ勝てねえよ」


「あの時は俺も苦戦した」


いやいやいや。俺とあなたが戦ったら1秒で俺の負けだからね。戦いにすらならないと思うよ。


「エリオット、ハンク。つもる話があるのはわかるけどその辺にしておくべき。ここは道の真ん中。さっきから通行人の迷惑になっている」


「おお、そうだな。だったらオレが泊まっている宿屋で続きを話すとしよう!ほら、2人とも付いてこい!!」


そう言うとひとりでドンドン進んいくエリオット。エリオットとある程度の距離が離れるとリリーナが俺に話しかけてきた。


「ナイス演技。さすがはハンク。どこからどう見ても真影にしか見えなかった。これで仲間達とのコミュニケーションはバッチリ」


「いやいやいや!まともな会話すらしていないからね!?これで真影に見えたお前の目は節穴だよ!!」


「そんなことない。その証拠にエリオットは微塵も疑ってない」


「あれは相手がテンションが上がっていて一方的に喋ってたから何とかなっただけだって!!なあ、この作戦は本当に大丈夫か?思い出話とかされたら俺はまったくついていけないぞ?」


「その辺りは私がフォローする。問題は皆無。オールオッケー」


オールオッケーじゃねえよ!俺には問題しか見えねえよ!!


「お~い、2人とも何コソコソ話しているんだ?早く来ないと置いていくぞ!!」


「「すぐ行くよ」」


「とにかく問題は何も生じていない。もし不安なら出来るだけ私から離れないで。それと聞き役に徹して。そうすれば勝手に向こうが話してくれる。ハンクは適当に相づちを打っていればいい。もし細かいことを聞かれたら魔法の影響で一部記憶が無くなっているとでも言えばいい」


「何その後付け設定!?俺には不安しか感じられない!!」


「大丈夫大丈夫。もしバレても私が何とかするからハンクは心配しなくていい。いざとなったらエリオット達を私が消す。レッツポジティブシンキング」


「ポジティブシンキングじゃねえよ!!それとお前のジェノサイド思考はなんなの!?その考え方は勇者じゃなくて魔王だよね!?」


やばいよやばいよ!剣王ひとり騙すのにも焦りまくっているのにそのうえ"魔女王"に"聖女"、更には王様や民衆まで騙さなきゃいけないんだろ!?


絶対無理だって!!俺の心はもうボロボロだよ!


それにしてもリリーナの根拠のない自信は何なんだよ!?


はぁ~、どうしよう。この10分で一気に歳を取った気分だ。白髪とか増えてないかなあ?


……もしばれたら『ドッキリでした!テヘ!!』じゃ済まないだろうなあ。……最悪処刑、か。処刑の前に心労で死にそうだよ。

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