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1.俺の最愛の妻は世界最強の勇者です。

新連載始めました。最強ファンタジーものだと思います。亀更新&不定期です。それこそ数ヶ月単位で間隔はあくかも。スットク分は投稿しますけど。

やあ!みんな元気かな?俺の名前はハンク・トマソン。虚弱体質のピッチピチの18歳。ラレンヌ王国の辺境も辺境、ぶっちゃけていうならクソ田舎に住んでるただの農民だ。


うん、本当の本気で俺は農民なんだ。魔法だって使えないし、剣なんか握ったことすらないし、殴り合いの喧嘩だってしたことない。多分、俺の戦闘能力は人類全体でもかなり低い方だろう。下から数えた方が早いと思う。少し鍛えている子供になら負ける自信すらある。


さて、話は変わるが俺には同い年の嫁さんがいる。彼女の名前はリリーナ・トマソン(旧姓リリーナ・エリクシール)。全てが平均以下の俺とは違い、容姿・知力・能力共に超一流の実力を持つ物理的にも精神的にも最強の美少女だ。


なんで俺がそんな美少女と結婚できたのかって?


その答えは簡単。彼女と俺は幼馴染なんだ。リリーナは幼い頃から超一級の美少女で子供達の間でよく苛められていた。今思えば男の苛めはリリーナの気を惹きたい一心で、女の苛めはリリーナに対する嫉妬だったんだろう。


そんな中、幼馴染ということもあり俺は子供達の苛めからよくリリーナを守ってやっていた。まあ守るといっても当時から虚弱体質で弱い俺が苛めっ子達にかなうはずもなく、リリーナの代わりに苛められてただけなんだけどね。


閑話休題。そんなこともあり幼い頃からリリーナは俺に懐いていた。懐いて懐いて懐きまくること山の如し。ついには俺と結婚するに至ったってわけだ。


そんな彼女と結婚してもう6年になる。え?結婚年月が間違ってないかって?いや、これであってる。


王国法によると12歳になれば誰でも結婚できることになっているが、大抵はみんな18歳以降に結婚する。


早い奴でも結婚するのは16歳ぐらい、俺みたいに12歳で結婚するやつはまずいないだろう。


俺だって12歳で結婚はいくらなんでも早すぎると思ったさ。でもさ、嫁さんに首に剣を突き立てられて「今すぐ結婚しなければあなたを殺して私も死ぬ」と濁った目で逆プロポーズされたらYESと言わざるをえないと思うんだ。


俺にとっては不幸なことに、リリーナにとっては幸運なことに俺達は二人とも孤児で両親はいない。このプロポーズの後そのままリリーナと同棲して夫婦生活を送ることになった。


周囲の大人達は俺達の早すぎる結婚に当然のごとく反対した。主に村長とか孤児院の先生とか俺とかね。


だけどリリーナが「ちょっと説得してくる」と言って俺たちの結婚に反対する人達に会いにいった翌日には俺達の結婚を応援する立場に変わった――この時何をしたのかとリリーナに聞いても決して答えてくれなかった。


とまあ、そんなわけで俺達は12歳の時に結婚することになったんだ。誤解しないで欲しいんだが俺だってリリーナのことは好きだ。リリーナさえ受け入れてくれれば俺が18歳になってリリーナを養えるだけ収入を得られたら俺からプロポーズするつもりだった。だから12歳で結婚は予定が早まっただけと何とか自分を納得させ、まあ俺なりにリリーナと結婚出来たことを喜んだよ。


ところがそんな結婚生活も長くは続かなかった。


夫婦になった俺達は自宅(村にあった空き家を村長の許可を得て俺達夫婦の家にした。もちろん、交渉はリリーナが行った)の庭で野菜や果物を作り(俺は虚弱体質で3時間以上直射日光に当たると具合が悪くなるので主に働いていたのはリリーナだが)貧しいながらも幸せに暮らしていた。


ところがある日、村にたまたま来た王宮魔術師団とやらのお偉いさんにリリーナは魔法の才能を認められ『王都に来て魔法使いにならないか』と勧誘されたのだ。勧誘とあるがこれは実質強制徴収のようなもの。


王都のお偉いさんに一介の農民ごときが逆らえるはずもなく――リリーナは断固拒否の姿勢をとったが――俺の説得により王都に行くことになった。リリーナと離れるのは悲しいが俺はリリーナが王都に行く事になって良かったと思っている。


なにせリリーナは勉強も魔法も剣術も何でも出来る。こんなクソ田舎で一生を過ごすよりは、王都にいって一流の環境でその才能を伸ばした方がリリーナのためになると常々思っていたからだ。


リリーナが王都に行く日の前日、直前まで俺と離れたくないと泣きじゃくるリリーナを何とか説得しつつ、濁った目で俺に剣を突きつけるリリーナと幾つかの約束をした。


まあ細かい内容は省くが、その内容を要約すると①俺が浮気をしたら俺を殺して自分も死ぬ(浮気相手は拷問にかける)。②毎日手紙を書く事(一回でも忘れたら浮気とみなしやはり殺す)の2つ。さすがに貧乏農民の俺に毎日手紙を王都に送るのは金銭的に無理なので手紙は週1回に妥協してもらったが絶対に守るようリリーナにお願いという名前の脅迫をされた。


これが結婚生活3年目、俺達が15歳の時のこと。


リリーナが王都に行って1年。俺の方はリリーナが手紙と共に送ってくれるお金と俺が稼ぐ僅かなお金で以前と変わりなく暮らしていたがリリーナの方はそうはいかなかった。


村にまで情報は入って来なかったが、手紙によるとリリーナは王都で"魔法の天才"としてかなりの有名人になったらしい。


わずか1か月で上級魔法を全てマスター(通常は上級魔法ひとつ習得するのに5年はかかる)し、それ以降は俺達と同い年の次期王様、つまりは王子様の魔法の専属教師をやっていたらしい――魔法を修めたリリーナは一刻も早く俺の元に帰りたかったそうだがリリーナの魔法の師匠や王様が帰りたがるリリーナに王子の魔法教師を土下座してまで頼み込み嫌々ながらも引き受けることにしたそうだ。


そんな生活が更に1年。リリーナと俺が17歳になった時。王子様の勉強も終わり、いよいよ村に帰れることになったリリーナが帰宅の準備をしている時にそれは起きた。


なんと驚くことに魔王が復活して人間を滅ぼさんと攻めてきたのだ。


俺が住んでた村にはそこまで影響はなかったが、王都や大都市ではかなりの騒ぎになったらしい。


更に驚くことに、城にいる巫女の神託により『勇者』にリリーナが選ばれることになったのだ。全ての人間は名高いリリーナが勇者として魔王を倒してくれると確信していた。


ところが、リリーナは勇者として魔王と戦うことを断固拒否した。リリーナ曰く、『勇者や世界なんてどうでもいい。私は一刻も早くハンクの元に帰りたい』だそうだ。


王都のリリーナの友達・魔法の師匠・王族など多くの人間がリリーナを説得したがリリーナは決して首を縦に振らなかった。そんなリリーナに困った王族達はついに対リリーナ最終兵器を使うことを決めた。


そう、つまり夫である俺にリリーナを説得するよう頼みにきたのだ。リリーナが魔王と戦わなければ人間は滅ぶ事になると聞かされた俺は二つ返事でその依頼を承諾。その日の内に王都に出向きリリーナを説得することになった。


2年ぶりに会うリリーナは別人のように綺麗になっていた。元々美しかった美貌にはますます磨きがかかり、リリーナの顔を見慣れているはずの俺でも見惚れてしまったぐらいだ。


リリーナも俺との再会をとても喜んでくれた。俺との再会を心から喜ぶリリーナに魔王と戦うように説得するのは心が痛んだが、俺は人類全体の為に心を鬼にしてリリーナを説得することにした。


リリーナは最初は俺の説得に耳を貸してくれなかった。曰く、『ハンクとこれ以上会えなくなるのは嫌だ』『ハンク以外の人間などどうでもいい』だそうだ。


さて、またまた話は変わるがリリーナと結婚して5年経つのに俺は未だに童貞だ。体が成熟していない状態で妊娠することはとても危険なこと。結婚した当初から俺との性行為を望むリリーナに未熟な体で行う性行為と妊娠の危険性を何度も説明し、なんだかんだと性行為を先延ばしにしてきたのだ。


再び話は元に戻る。このままではリリーナの説得が不可能だと悟った俺はリリーナにアメを用意することにした。


俺は『魔王と人類全体が戦争になったら虚弱体質の俺は真っ先に死ぬ可能性が非常に高い』ことと『魔王を倒して帰ってきたらリリーナとの子供が欲しい』ということを強調しながら根気を持ってリリーナを説得した。最初は魔王と戦うことを断固拒否したリリーナだが、俺の言葉を聴いて渋々魔王を倒すことを承諾してくれた。


リリーナの説得に成功してすぐ俺は村に帰されたから詳しくは知らないのだが、風の噂によるとリリーナは4人の頼もしい仲間達と共に魔王討伐に旅立ってわずか1年で魔王を倒して世界に平和をもたらした。


1人目の仲間は頼れる男剣士。"その剣技で切れぬ物はなし"といわれるほどの世界一の剣士で"剣王"とも称される大剣豪だ。


2人目の仲間は魔術を極めたと言われる天才魔女。リリーナに勝るとも劣らない美貌と魔法の実力を持ち、"魔女王"とも称されることもある。


3人目の仲間は神の祝福を受けた大僧侶。ありとあらゆる傷を全て癒し、死者すらも復活させることが出来るという"聖女"の称号が相応しい女僧侶だ。


最後の仲間は"真影"と称される伝説の暗殺者。魔法・剣技共に勇者に勝るとも劣らない実力を持つパーティ内最強の男らしい。


他の3人についてはクソ田舎に住む俺でもよく知っているが、この"真影"については俺は良く知らない。というより、リリーナ以外は誰も知らないそうだ。なんでもリリーナ以外には決してその姿を見せず、リリーナしかその姿を見ていないとか。しかしパーティのピンチには姿を見せないままその魔法と剣技で魔物達を一掃し、仲間内で一番頼りにされている男だそうだ。


この4人に勇者であるリリーナを加えた5人が近々魔王討伐の報告をするために王都に帰ってくる。


だけど俺は少々複雑な心境だ。もちろん、リリーナが無事であることや魔王が倒されたことは喜ばしいことだ。リリーナが無事で魔王討伐の報を聞いた時は心の底から安堵した。


しかし、しかしだ。このまま行けば俺とリリーナは100%別れさせられることになる。


なにせリリーナは世界的に超重要人物な上に"勇者"だ。本人の意思に関係なく周りの人間が"勇者"と"農民"の結婚を許さない。


現にリリーナが勇者に認定されてからは何度も王宮からリリーナと離婚するよう俺に要請が来ている。


歴史を紐解くと過去にも何人か魔王を倒した勇者はいるが、そのいずれも王族と結婚することになったとある。


はるか昔からラレンヌ王国は勇者を血族として取り入れることで繁栄してきたのだ。ラレンヌ王国の王子はリリーナと同い年の上リリーナと面識もある。多分、高確率でリリーナは俺と離婚して王子様と結婚することになるのだろう。


もし俺がリリーナと離婚しなかったら即逮捕、最悪罪のでっちあげで処刑もありえる。


もちろん俺だってリリ-ナとずっと一緒にいたいしリリーナと別れたくなんてない。


だけどかたや一介の貧乏農民。かたや一国の王子様。その上この王子様は容姿端麗で心優しいと評判もかなりいい。


リリーナのためを思えば俺が身を引いたほうがいいのではないか。魔王討伐の報を聞いてからは常に俺はそのことで頭を悩ませている。


今夜も夕食を食べながらそのことで頭を悩ませているとノックの音が聞こえた。


リリーナがいない我が家に人が訪ねてくることは滅多にない。俺は元々友達が皆無のぼっちだし、12歳で結婚したせいか村の中ではほとんどの人間に無視されている。だから家に来るのは孤児院の院長先生か村長ぐらいのもの。それだって日が落ちてから訪ねてきたことなんて1度もない。


もしかして押し込み強盗か!?と思ったが、我が家に金目のものはないし俺が抵抗したところで100%負けることは目に見えているので素直に扉をあけることにした。


「はい?誰ですか?家に金目のものは一切ありませんから強盗しても無駄ですよ。お隣の家は小金もちですから、お隣に強盗に入ったほうが効率がいいですよ」


そう言いながらも扉を開けるといきなり抱きつかれた。


おいおい、強盗じゃなくて体目的の強姦魔かよ!!しかも男狙いの!妻にも抱かれたことはなかったのに見ず知らずの人間に抱かれることになるとは。リリーナ、スマン。俺だって初体験はリリーナが良かった。


そう思いながら大人しくしていても一向に強姦魔が抱きつく以上のことをしてくる様子はない。それどころか俺の胸に顔をうずめてグスグスと泣いている。


もしかして知り合い?と思い強姦魔を体から引き剥がして顔を確認するとそれは驚くべき人物だった。


「ハンク、ハンク!グス……会いたかった。ずっと……ずっと会いたかった!!もう二度と離さない!!ああ、私の私だけのハンク。もうずっと一緒だからね!!」


俺の奥さんにして世界最強の勇者であるリリーナが満面の笑みで泣きながら俺に抱きついていた。

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