第六話 夢で会えたら
「直人いつも私の胸見てるでしょう」
赤いフレームの眼鏡をかけた恐山響子は僕に馬乗りになっている。
彼女は僕の下腹部にまたがり、眼鏡の奥の細い目で見つめている。
にちゃりとした人殺しの笑みを浮かべている。
僕は自室のベッドで寝ていた。
何故か、突然に恐山響子があらわれて僕に馬乗りになっている。彼女は友ノ浦高校の制服を着ている。はちきれんばかりにブレザーが盛り上がっている。それは恐山響子がとんでもない巨乳だからだ。
「そんなに私の胸が好きなの。じゃあ好きにしていいよ」
恐山響子はブレザーを脱ぎ捨て、ブラウスのボタンを一つ一つ外していく。
にちゃりとした笑みのまま、ブラウスも脱ぎ捨てた。
そこにあらわれたのは花柄のブラジャーにつつまれた西瓜のようなおっぱいだ。とんでもない深い胸の谷間を見た僕はごくりと生唾を飲み込む。
恐山響子の言葉を信じるなら目の前にそびえ立つ柔らかそうな二つの山を自由にしていいのか。
恐山響子はただでさえ豊かでおおきい胸を両手で下から持ち上げる。
「ほら直人、これを好きにしていいんだよ。買い物をつきあってくれたお礼だよ」
眼鏡を掛けた恐山響子の顔が近づく。鼻先がふれ、ミントのかおりの吐息が頬にかかる。
突如、下半身に衝撃を受ける。
僕は目を覚ました。
やはり夢だった。
夢オチに僕は安堵し、続いて下半身に冷たい不快感を覚える。不快なのに気持ちいいという不思議な感覚だ。
布団をめくるとスウェットのズボンがべっとり濡れている。
はあっまたやってしまった。健康な男子ならよくある生理現象だ。
まあそれは仕方がないとはいえ、なんで夢に恐山響子が出てくるのか。
前に聞いたことがあるが夢は深層心理が表に出るものだったかな。ということはあの学校一怖い顔の恐山響子を僕は気にしているということなのか。
僕は壁掛けのデジタル時計を見る。月曜日の午前五時三十分だ。学校にいくにはまだかなりの時間がある。とりあえず不快感をどうにかしないといけないので、シャワーを浴びることにした。
熱いシャワーを浴びてさっぱりした僕は制服に着替えてキッチンに向かう。
母親の美咲がスーツ姿でトーストを食べていた。
四十二歳になる母親だが、まったくそうは見えない。いわゆる美魔女というやつでスーツがビシッとよく似合う。母親に似たら僕はイケメンだったのに残念だ。
「あら早いのね」
トーストをかじり、母さんはアイスコーヒーを飲む。
「まあね」
エッチな夢を見たから早く起きてたとはさすがに言えない。
「お弁当、冷蔵庫にいれといたからもって行きなさないね」
朝食を食べ終わった母さんはマンションを出た。
僕は学校には自転車で通っている。
電車でも良いんだけど朝の南海電車はけっこう混むんだよね。
学校につき、自転車置き場に向かう途中に恐山響子と遭遇した。
そう言えば放課後以外で恐山響子に会うのは初めてかも知れないな。
彼女はあの赤いフレームの眼鏡をかけていた。
恐山響子の眼鏡のおかげで怖さがややおさまった顔をみる。視線が合うと恐山響子はあのにちゃりとした笑いを浮かべる。
あんな夢を見てしまったせいで何故か胸が痛いほど高鳴る。
「お、おはよう」
体が勝手に熱くなるのを隠しながら僕は挨拶する。夢で見た下着姿の恐山響子がフラッシュバックのように頭をよぎる。
「おはよう直人。どうした顔が赤いよ。熱でもあるのか」
ぐいぐいと顔を近づけ、恐山響子は僕の額に触れる。彼女の手は冷たくて火照った体に気持ちいい。
「ちょっと熱いね。大丈夫?」
恐山響子は至近距離で僕に話しかける。
眼鏡をかけて近くで見なくてもいいのにどうしてこいつはこんなに近いのだ。
「な、なんでもないよ」
僕は体を熱くしたまま自転車の鍵を抜き、早足でその場を去った。
※※※※
ロメアさん、こんにちは。突然のDМしてしまいすいません。ミミメメです。
ロメアさんのアドバイス通りに話しかけてみたんですけど残念ながらうまくいきませんでした。
それどころか私の好きな男の子があの女の子と買い物していたのを見てしまったんです。
すごく仲良さそうにミスドに並んでいました。
これってやっぱりデートなんですかね。
私、諦めた方がいいんでしょうか。
クラスメイトにきいたらその男の子には彼女がいないっていうんですけど。
私、どうしたらいいんでしょうか。
でも諦めたくないんです。良かったらロメアさんのアドバイスが欲しいです。
ミミメメさんDМありがとうございます。
心のドアをノックしよう。感情ぶつけちゃってください。あなたの心のお友だちロメアです。
うーん、そうかそうなのね。男子って難しいよね。
私も最近ミスド行ってきたのよね。オールドファッションっていいよね。シンプルイズベストって感じで。おっと話が逸れちゃいましたね。
ミミメメさん、その男の子にちゃんと聞いてみたかな。ちゃんと聞いてたしかめた方がいいよ。
確認するまで事象は確定しないの。シュレディンガーの猫なのよ。
だからちゃんと聞いてみたらどうでしょうか。
それとミミメメさん。その男の子ともっと同じ時間を共有したらどうかな。
時間って大事だよ。
同じ時間を過ごしたらそれだけ距離がちぢまるからね。あなたの心のお友だちロメアより。




