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学校一怖い顔の恐山響子はなぜか僕にだけなついている。  作者: 白鷺雨月


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第五話 恐山響子は眼鏡をかける

 四月下旬の土曜日に僕は鉄砲町のイオンモールにむかった。

 鉄砲町のイオンモールは湊駅から普通電車で二駅の七道駅前にある。例のごとく恐山響子は七道駅の改札出口を待ち合わせに指定した。 

 大阪市天王寺区に住む恐山響子からしたら、まあまあの距離があるのにご苦労なことだ。

 それにしても高校二年生になってから毎週のように恐山響子に会っているな。まだ二度目だけどね。

 毎週末に女子と会うなんて言葉だけみたらまるでリア充だ。でもその相手は友ノ浦高校一顔の怖い恐山響子だから、それはノーカウントだろう。


 待ち合わせは十二時で、電車の時間の関係で三分ほどまわってしまった。一応ほんの少しだけ送れるとラインで連絡してある。

  家族以外、しかも女子とラインでやりとりする日が僕にくるとは。いや、でも相手はあの怖い顔の恐山響子だしな。これもノーカウントで良いだろう。


 僕が改札を出ると背の高い女子が険しい顔で立っていた。僕のことを見つけると恐山響子は手を大きくふる。人を一人殺してきたような、にちゃりとした笑みを浮かべていた。 

 やっぱり怖い。何度みてもこの顔は怖すぎる。

 僕は意を決して彼女に歩み寄る。ここで帰ったら学校で何をされるかわからない。下手したら命が危うい。

 

 この日の恐山響子はジャージ生地の黒いワンピースに紫色のロングカーディガンという服装だ。ワンピースはぴったりとしたデザインで恐山響子の大きな胸の形がよくわかる。

 こいつ顔は無茶苦茶怖いけど良いおっぱいをしている。悔しいが恐山響子のスタイルの良さはみとめざるおえない。ブロンドの髪は首の後ろでゆるくまとめられたいる。左側の刈り上げが目立たなくなってきている。ではあるがヤンキー感丸出しの金髪は怖い。

 陰キャオタクの僕にとって恐山響子は怖いの役満である。


「やあお待たせ」

 僕が恐山響子にそう声をかけるとまたあの殺人鬼の笑みを浮かべる。こいつはきっとバイトでヒットマンをしているに違いない。

「ちょっとまったわ。今日はね、眼鏡買うっていったらママに一万円もらったのよ」  

 恐山響子の口からママという優しげな言葉が出るのは驚きだ。


 僕たちはイオンモール内にあるZoffに向かう。

 店内には多種多様な眼鏡のフレームが置かれている。土曜日というだけあって店内は結構な人だ。

「恐山って目が悪いのか?」

 買い物に誘われてから気になっていたことを訊いてみた。だから眼鏡屋さんにきているのだと言われたらそれまでだ。

「そうね。一年のときの健康診断で0.3だったのよね。近視らしいの。パソコンで作業しすぎたのが原因かもね」

 棚にある眼鏡のフレームを選びながら恐山響子は言う。だからいつもあんなに目を細めているのか。人の顔を近くで見るのも近視だからか。

 怖い顔を近づけられるのは正直勘弁願いたい。

 でもその時胸があたるのはおおいに許す。

「ねえ直人これとこれどっちがいい?」

 恐山響子は左手に黒縁眼鏡、右手に赤いフレームの眼鏡をもっていた。黒縁眼鏡のほうはなんだかピアノを弾き語りアーティストのようだ。

 赤いフレームは赤い彗星を連想させた。


「そうだな。こっちかな」

 僕は通常の三倍で動けそうな赤いフレームの眼鏡を指さす。もしかしてこれは女子特有のどっちが良い問題か。

 当てられない男はセンス無しとして切られるというあれなのか。

 まあ相手が恐山響子なら切られたところでダメーは少ない。

 いや待てよ、恐山響子なら物理的に切ることを考えるかも知れない。そう思うと背中に冷たい汗が流れる。

 僕の答えを聞いて恐山響子はまたあのにちゃりとした笑顔を浮かべる。笑顔が怖い女子って何だよ。

「直人が選んでくれたからこれにする」

 なんだか嬉しいことを恐山響子は言う。

 その言葉には可愛げがあるが顔は怖い。


 恐山響子は通りかかった店員に声をかける。

 彼女が視力を図っている間、僕は所在なげに過ごす。視力を図るための仮の眼鏡をかけている姿は面白かった。

 レンズを決めた恐山響子は僕のもとに帰ってくる。

「三十分でできるって」

 恐山響子は何故かはしゃいでいる。少しだけ声が高い。

「ミスド行こう」

 恐山響子の提案で眼鏡が出来上がるまでミスドで時間を潰すことにした。

 お昼ご飯がまだなのでちょうどいい。

 僕たちはフードコートのミスドに向かう。

「眼鏡選んでくれたお礼にドーナツおごるよ」

 その瞬間、恐山響子が女神に見えた。

 僕は遠慮なく奢ってもらうことにした。どうやら眼鏡を購入するのに母親からもらったお金が余ったからだということだ。

 僕は湯麺とポン・デ・リング、コーラを注文した。恐山響子は照り焼きチキンパイとエンゼルクリーム、アイスカフェオレを頼んだ。

 土曜日ということでフードコートは家族連れで混んでいた。たまたま空いていた二人掛けの席に向かいあって座る。

 むっテーブルに恐山響子のおっぱいが乗っている。

 これが伝説の乳休めというやつか。

 こいつ顔は無茶苦茶怖いのに体はエロすぎる。

 乳休めを見れただけでついてきて良かった。


「私、ミスドでエンゼルクリームが一番好きなんだよね。この甘すぎるのがいいんだよね」

 恐山響子はエンゼルクリームに犬歯を突き立てる。獲物を貪る肉食獣に見える。

「直人は何が好き?」

 恐山響子は訊く。

「オールドファッションかな。シンプルイズベストだよ」

 僕が答えると恐山響子は喉の奥を鳴らす奇妙な咲い方をする。

「ポン・デ・リング頼んでるし」

 どこが壺だったのか恐山響子はずっと笑っていた。笑顔の恐山響子の顔はほんの少しだけ恐くない。


 気がつけば眼鏡を取りに行く時間をとっくに過ぎていた。恐山響子と時間を忘れるほど話していた事に驚く。内容はアニメや漫画、ライトノベルなどオタクなものだ。恐山響子もかなりのオタクだったことに二重に驚く。どうやら彼女はVTuber界隈に詳しいようだ。

 

 僕たちは眼鏡をZoffに取りに行く。

 店員が顔の形に合わせて微調整する。

 恐山響子は眼鏡をかけたまま会計して僕のところに戻ってきた。

「どうかな?」

 店を出てすぐのところで恐山響子に訊かれた。

 赤いフレームの眼鏡は良く似合っている。細い目がレンズのおかげで少し大きく見える。それにフレームのおかげで無い眉毛が気にならない。

 ちょっと可愛くなっている気がしないでもない。

「ちょっと可愛い」

 あっ思わず心の声の一部が口から出た。

 恐山響子はにちゃりと笑い、顔を眼鏡のフレームと同じ色にしていた。

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