出航
翌朝は冬日和という感じで、暖かな日差しはあるものの空気は凍てついており、凍て晴れと言っても良いような、そんな天気であった。
宿では昨日の親方さんの奥さんが厨房におり、昨日の前夜祭に違わぬ量の朝食に目を向いていた。
曰く海の男は朝食わないとやってけないそうで豪勢に朝食は出た。俺は乗ってる客なんだけどなと思ったがその気持ちが嬉しく黙ってることにして、たらふくご馳走になるのだった。
我々が乗る船は中型船と言った大きくもなく小さくもない、そんな船であった。乗員は約100名くらい乗れるくらいの船でしっかりとした船であり安心感を感じる。
ちなみにここの滞在費と船代に関しては無料になっていて、その代わり魔石を提供することにした。
見合わないからもっと払うと言っていたが、その分奥さんを楽にさせてやってくれと言ったら照れ照れしていた。おっさんのデレは見てて痛いわと思うのだった。
屈強な男達が荷物を運び込む。
あの鯱の人昨日ナナミンと色々あった人だ。その横ではナナミンがあーでもないこーでもないと指示を出してるっぽくしているが明らかに邪魔になっている。
近づき首根っこを掴んで排除してやると鯱の人はホッとした顔をしていた。
「にゃにするにゃ!あいつはあたしの騎士としての誇りを汚したにゃ!あたしは悪くにゃいにゃ!」
「いいか!あの人お酒飲めるのか?って心配して言っただけなのにお前が勘違いして突っかかっていったんじゃないか!話も聞いてたけどあの人悪くないから!」
「にゃにゃ!?でもあたしの騎士の誇りが…」
「騎士の誇りなんてビビってしょんべん漏らした時に無くなってるだろ!」
「にゃにゃ!?あれは汗にゃ!大量の汗にゃ!失礼な男にゃ、叩っ斬ってやるにゃ!」
「あーごめんごめん」
「心がこもってにゃいにゃ!」
「あーわかったわかった。ごめんなさいナナミンさん、この愚かで頭の悪い俺を許してください」
「わかればいいにゃ、今後改めるようににゃ!もう一度言うにゃ、あれは…」
「汗」
「そうにゃ!まったく、勘違いも腹立たしいにゃ」
そんなこんなで準備は進む。ここ数年で持っていけなかった物も詰め込み出航となる。
「はい、これお弁当!無事な航海を祈ってるよ。あんた!恩人を絶対死なせるな!無事に帰ってこい!」
「わかった!母ちゃん!出航準備!」
おう!
パタパタと船員さんが船内を走り回る。
船から街を見ると様々な魚人がこちらを見つめ出航を待つ。
「親方、準備完了!」そうして親方が船内を見て回る。そして、
「出航だーーーーっ!!」
その声に併せゆっくりゆっくり船は動き出す。
初めは出ていなかった歓声も動けば動くほど大きくなり、離れれば離れるほど小さくなる。
そうして船は離岸し大海原へと旅立つのだった。




