戦闘
その集落はひっそりと森の中に佇んでいた。棟数で言うと6軒くらいだろうか。
各家の見た目が同じで屋根、窓の位置、壁の色に至るまで全て同じように見え、日の明かりが落ちた時分も手伝い異様な雰囲気を醸し出していた。
また、家の上部はモヤのような霞がかかっており、重苦しい空気感となり周りを包み込んでいた。
俺ら一行は先ほどごんぞうと共に訪れた草の影に隠れ周囲を伺う。
「タケル殿、やはりここはおかしい。こんなところに集落なぞなかったはずだ…」うんと首を振る。
なんだ、この空気の重さは…そう、まるで重力が増したかのように空気が重くこの草の影より前には出ることすらも許されなかった。
「タケル殿、状況確認が必要だ。幸いこれより中以外は動くことは出来る。ビビ殿をお借りしても良いか?」と聞くとビビはビクッとする。
ビビを見ると震えておりこの状態では無理だと判断する。
「ビビは無理だ。すまん」と言うとメルシーさんはビビに話しかける。
「ビビ殿本当にいいのか?ここからは偵察だ。つまり斥候の役割となる。怖いのは重々承知ではあるがここで逃げればどんな場面でも動くことは叶わんぞ」
そう言われるとビビは一度下を向きブツブツと話し始める。どうやらメイドさんに習ったことを復唱しているようだ。
今ひと時経ち、顔を上げたビビは前を向き戦士の顔をしていた。
「よし。私が右、ビビ殿は左だ。空気の重い場所には触れるな。出たら3分程経ったら戻ること。タケル殿、ごんぞう殿はこちらに待機、よろしいか?」
おう、との一言で両名が走り始める。
ビビの音もなく走る様はまさに疾風と思わしい動きをしており、懸命に力になろうという意志を感じるのだった。
約束の時間となり待つとまずはビビが帰還した。
「どうだった?うん、ここから北に200メトル行った先に石作りの建造物があったです。それ以外は特にないが人の雰囲気はしないです」
わかったと頷くと同時にメルシーさんも帰還する。
メルシーさんは同じく石作りの建造物を見たが人影を見たと言った。
「なるほど。つまりこの集落の少し離れた先に建造物、何かあるならその建造物っぽいな」
「ああ、そちらに移動しよう」と言うと動き出す。
ビビ、俺、メルシーさん、ごんぞうの順番で向かう。
集落を離れるとなんとなく空気の軽さを感じた。
ごんぞうが「なんか空気が軽くなったな手を入れても問題ない、なんかあっちと違い内側に入れそうだ、入ってみよう」とごんぞうが言うので入ってみる。
周囲の警戒をしつつその建造物に向かって歩くとその建造物に着く。そこは紛うことなき神殿であった。
「ここは…神殿じゃないか…こんなとこにあるのか…」
「ああ、タケル殿ここは見る限りは火と水の神殿だ。あそこに紋章が刻まれている」
見ると燃え盛る火と水が飛び出た絵の紋章があった。
すると後ろから声が掛かる。
「これはこれはよくぞいらっしゃいました」
全員前方に意識がいってきたため驚き、剣を構える。
「おやおやあぶないですよ。そんな物騒なものは仕舞ってくださいな」
この人物は話ぶりが非常に穏やかで話を聞く限り好々爺も言う雰囲気を醸し出していた。
「ここは…、ここはどこなんですか?」タケルはそう聞くと、
「はて、どことはどこなんですかね?」
「あなた達はそちらにお住まいなんですか?」
「はて、お住まいなんですかね?」
「今は何してるんですか?」
「はて、何してるんですかね?」
…何言ってるんだこいつは…言ってる意味がわからん!
「一体ここはなんだ!」と一喝すると、その人物は動き出す。
「こちらへどうぞ」と言われるとごんぞうが歩き出しついて行く。
神殿内に向かっているようだ。
階段を登りそして中央であろう場所まで来た時にクルリと向き直りニヤーーーーッと笑ったと思えば、
ドダーーーーンと音が響き後ろを見ると出口が塞がっているのがわかった。
閉じ込められた!と思い振り返ると先程の人物はすでにおらず、中央に設置された祭壇が目に入る。
「こ、これ、人だ…」祭壇には人間の様々な部位が陳列されており、神を奉るように置いてある。
その中心には、顔はズタズタに切り刻まれ無惨にも切られた生首がおいてあった。
「ブ、ブライアン…!」吐き気を催し吐くも動揺が隠しきれない。
そんな中周囲を警戒する。
動物の声が神殿内に響き渡ると攻撃が始まった。
俺はビビを守りつつ剣でいなし続ける。メルシーさんも背負った盾を使用し応戦、ごんぞうも同じだ。
その細かい攻撃の合間にその人物は斬撃を放ちそして姿を消すを繰り返している。
10分程打ち合っただろうか、タケルが大声で指示を出す。
「このままだとジリ貧だ、集まって倒すぞ」と言うとジリジリと向かい始める。
4人が集まり背中を預ける。
「ごんぞう殿も背中を頼むぞ!」
「あぁメルシーさん背中は俺が見るから大丈夫だ」
「感謝する!」
「任せてくれ。俺がしっかりと見とくからな」
そう言うと剣が目の前を走る。
タケルがごんぞうを切りつけた!
「何をする!」その瞬間タケルがごんぞうの首を叩っ切る!
それと同時にごんぞうが消え、首が刎ねられたキツネ型のモンスターが目の前に姿を現す。
それを見てか動きが雑になったその人物も飛び込んでくるも一瞬で首を刎ね攻撃は止まることとなった。
「タ、タケル殿…」
「あぁ、このごんぞうは偽物だった」
「よくわかったな…私にはわからなかった」
「先ほどこの神殿に行こうと言ったのはごんぞうだった。更にあの人物が神殿内に入ろうとするのも真っ先に歩き出した。モンスターとの戦闘であいつは攻撃を受けていなかった。まぁ巧妙に隠していたようだが…
ヘイト管理がしっかりしてるはずなのに皆攻撃を受けているのに疑問を感じたので攻撃を受けてる途中考えてみた。来る途中に何かなかったかと…
あいつ1番後ろに居たとわかった時は入れ替わってるのではと疑問を感じた。
ただ間違えるわけにはいかないので集まりメルシーさんを近づけたのが決め手かな」
「私を…?」
「あいつ動揺してなかったからさ。戦闘中とは言え落ち着きすぎ、残念な男じゃなかった。まぁ賭けではあったけど、相手がモンスターで良かったよ!」と笑った。
「あぁ…タケル殿とごんぞう殿との信頼を感じて少し妬けるな」フフッ!
「あいつに言ってやってくださいよその言葉…」と神殿にいたと思うと煙に包まれ晴れるとボロボロの神殿となっていたのだった。
周りを警戒するも誰もいない。
ただ…中央の祭壇はひっそりと姿を残し、残骸となった人を映し出したのだった。




