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異世界はバーゲンブルグから・・・  作者: J.Plum
第四章
111/113

99階層

「皆準備はいいか?」

 見渡すと問題はなさそうだ。


 黙って歩き出すと後から皆が付いてくる。圧倒的な力に対し戦いを挑もうという、その気持ちが後押しをする。


 階段を降りると99階層扉が目の前にある。

 この扉を開ければ後戻りは出来ない。


 再度見渡すと臆するものなど1人もいない。

 一度息を吐くと扉に手を掛け、開け放つ。


 少しずつ歩を進めると中には身体が大きく、圧倒的威圧感を持ったドラゴンが中央に鎮座していた。


 散会!そう伝えると皆バラバラと散らばり戦闘体制となった。


 封印はもう解けているはず。

 どんな攻撃にも耐える気持ちを持ち剣を構える。


 ドラゴンは動かない。力を溜め咆哮を繰り出すか?

 それともブレスで近づかないようにするか?


 更に警戒し剣を構える。


 ドラゴンは動かない。


「タケル。なんか動きがないな」

「ああ、間違いなくこちらの機を伺っている」


「そうか?なんか…威圧感とか感じるか?」

「えっ?!まぁ今はそんなんでもないが…」


 …

 …

 …


 まだ動かないの?


 ドラゴンが動く。


「警戒!」


「誰かそこにいるのか?…誰か…いないのか?」


「タケル!」「あ…ああ、いるぞここに!」


「そうか…わしを殺しにきたのか?」

「殺し?いや倒しにきた」


「そうか…良かった。では頼む」

「は?…頼むって?」


「わしを倒すのだろう?倒せばいい」

「えっ?いや…」


「なんだ?倒すとは殺すことだろう。違うのか?」

「なんか変よ?あなたは戦わないのかしら?」


「わしはもういい…」

「な、なんで?なんでだよ…」


「少し昔話をしよう…

 エンシェントドラゴンとしてわしは鋭意に取り組んでいた。

 それこそヒューマン種を殺すことを。


 モンスターはわしに跪き、ヒューマンは涙を流しながら怯え、延命を懇願しつつ死んでいく様が堪らなく楽しかったんだ。


 そんな時あるヒューマン種に言われた。

 そのような風体で人ばかり殺していたら誰からも見向きされなくなるぞと…


 初めは延命したいだけの策だろうと噛み殺した。

 そんな時、あるヒューマン種に対峙した際特大の魔術陣がひかれわしは動くことも出来なくなった。


 当時生まれたばかり、といってもヒューマン種からすれば一年ってとこか…我が子を目の前で殺された。


 わしは動くことも出来ず其奴らを呪った。


 刻々と刻まれるときの中、魔術に囚われたわしは機会を待った。


 あやつら殺す機会をだな。だが以降誰一人としてここを訪れるものはいなかった。


 魔術に囚われ眠ることすら出来ず、何故こうなったのかと考え始めた。


 そして一つの結論に至った。


 わしはやり過ぎたんだ。

 感情なんて持つべきじゃなかったんだ。


 そう思うとあの時あるヒューマン種から言われた誰からも見向きされなくなるというのも納得がいった。


 わしは疲れた。

 眠ることは許されないが眠気は無いわけでは無いのだ。


 食べることは叶わないが腹は減るのだ。

 動けないのに動きたいのだ。


 そんな数々の欲を長い間抑え続けられた場合、ヒューマン種ならどうなる?


 おそらく死にたいと言うだろう。


 同じなんだ。


 わしはもう生きる意味を感じない…だから、殺してくれ」


 タケルは聞くと考え始めた。

 このドラゴンのことを。

 話を聞く限りはただの可哀想なドラゴンだ。

 回復でもさせれば…いや策なのかもしれない…


 そうしてドラゴンの前に立つ。


「話は聞いた。俺の名前はタケル。召喚者だ」


「おお、召喚者か…珍しいな。事情は話した通りだ。頼む」

「わかった」そう言い剣を構える。


 く…


「頼む」


 …く…


「すまん…今の話を聞いてさ、俺には出来ないよ…」

「なぜだ!頼む」


「カナ、頼む」

「ええ、パーフェクトヒール!!」


 ドラゴンの周りを神々しい光が包み込む。


「おお、おおお、力が力が戻ってくる!」

「そして、ビビ!店長が作った飯残ってるの全部出せ!」

「はいです!」「食え!!」


「なんだこれは!美味い美味いぞ!これは美味い!」

「美味いだろ!俺らの仲間の作った絶品料理だ!」


「こんな美味いものが世の中にはあったのか?!あったのか…ウッウッウッ…」


 そうして泣き始め、そして笑った。


「なぁ、ドラゴン、俺にはお前を殺せないよ。

 2,000年前はわかんないが俺らには倒す理由がない。

 だから申し訳ない。


 ただ、出来るのであればもう殺すのとかはやめて欲しい」


「ああ、わかった。もう、殺したりはしない」


「うん。それと俺たち帰るためのダンジョンコアが必要なんだ。だから通してほしい…」


「わかった。なるほど、ダンジョンコアを持って行くのであればわしもでなければならないな。

 よし、タケル殿についていこう!」


「いや、デカすぎて無理です!」

「うむぅ…では!」そう言うと身体が縮まり人型の形になる。


「これならばよかろう!」

「あはっ!いいな!ではコア取りに行くぞ!」


 そうして中央を突き抜け裏手に回ると階段があった。


「あれ…ここって99階が最深部じゃないのか?」

「ああ、100階層。つまりコアルームがある」


 階下に降りて行く。

 すると森のような場所に到着する。


 ダンジョンの最深部、太陽の日が届かないにも関わらず木々は脈々と力をつけ、真っ直ぐと伸びている。


「すげーなこれ。なんでこんな最深部に森が…」

「これはコアの光を利用してるんだ。あの光が太陽の代わりになっている」


 とても綺麗だった。生涯これよりも綺麗なものを見ることはないだろうと思える圧倒的なものだった。


「タケル、コア!」「ああ、悪い…」


 脇には魔術陣が張られており、出る時のルートなんだろうと思った。


「タケル殿、ここを真っ直ぐ行くと中心地にコアがある。わしはコアを壊さないようにと近づけなくなっているんだ。だからここで待つ」


 そうして5人で歩き始め中心地まで行くとコアがあった。大きさは直径1メートル程で球形であった。


「これがコア、ビビこれポーチに入るか?」「やってみるです」そう言ってポーチを翳すと吸い込まれていく。


「さて、帰るか!ああ、皆待ってる!」


 そう言うと歩き出す。あと少しすればダンジョンとしての機能も失われるだろう。


 そうして俺たちはダンジョンを後にした。

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