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異世界はバーゲンブルグから・・・  作者: J.Plum
第四章
106/113

斥候とは

 26階層からはこの世界では見たこともないモンスターが続く。


 ゲームで見たことあるので言えばトロールやオーガといった大型モンスターである。


 大型モンスターの主たる攻撃は突進からの体当たりか武器を使用しての振り下ろしである。


 遭遇してからは何度もその攻撃は続けられる。


 ただ、ごんぞうは崩れない。

 鍛えた身体は嘘をつかないというのは本当だと確信できる。

 

 モンスターの攻撃を受けては流し受けては流しを繰り返しつつ、ブライアンの打ち込みやアヤのアローを撃ち殲滅していく。

 そうして階下に向かって歩き続ける。


 時間にすると夕方過ぎくらいだろうか、50階層ボス部屋前にたどり着いた。


 他の冒険者もなく、今は扉の前で待機している状態だ。

 このまま行くか一度休憩を挟むか?


 タケルが言う。

「皆の意見を聞きたい。一度休み入れるかそのまま行くか」


「そのまま行っちゃえばいいんじゃねーの?ここまで楽勝だったしよ」

「どうだろ、ここって二階層ごとの休憩スペースがないから少し怖いと感じるのはあたしだけかな?」


「実はそれ俺も思っていた。

 ここまで順調に来すぎている。罠も多くあったが致命的なものはなく全てビビに看破されている。ビビの熟練度が高いといえばそれまでだがダンジョンは生きてると王様は言った。


 これがダンジョンの意思だとするとおかしいと感じている。

 そもそもこの階層に来るまでに冒険者とはすれ違いも何もしてないんだ。

 おかしいと思わないか?」


「確かにそうだな…一組二組はすれ違ってもいいと思うが…」


「出来れば一度1階層戻り休憩してから明日アタックしたい。俺はそう思う。どうだろうか?」


 …場が静まるとごんぞうが話し出す。


「戻ろう。冷静になろう。

 急いでいないわけではないが急いては事を仕損じる」


「ありがとう。他も良ければ戻るぞ」


 そうして48階層に戻り休憩を取ることにし、明日朝からボスアタックとなるのだった。


「ブライアン、入り口にあれ頼めるか?」

「オッケーだ!アースウォール、…ウォール!これで良し!」

「ありがとう。少し気が休まるな!」


各々が装備の確認や湯浴みなどをし時間を過ごす。


「ちょっとこっち見ないでくれる?!」

「見てねーし。見るって言うのはこう…」

「キャーーッスケベ!最低!」

「えへへへっ!」

「ブライアンはいいな。自由で」

「なっ、俺もそれ思っていた」


 夜も更け、と言ってもダンジョン内だから更けるもないのだが、皆が寝静まった頃、来訪者があった。


「おいっ、おいっ。誰かいるんだろ?!おいっ!」

ふと、タケルは聞いたことのない声に気付き目が覚める。


テントから顔を出すとアースウォールの隙間から出した相手と目が合う。


「あー、良かった…入れてくれ。頼む」

「いや、流石に初対面では…」


「頼む!俺はべーと言う。冒険者だ!」

そう言い銀色の冒険者証を俺に見せてくる。


「ちょっと仲間と相談していいか?」

「早くしてくれ!頼む」


「ごんぞう、なんか冒険者だ」

「なに?相手は1人か?」

「ああ、ベーという奴だ」


「ベーか?!俺知ってるぞ!」

「そうなのか?変な奴じゃないのか?」

「あいつはいうことは適当だが悪い奴ではない。入れてやってくれ」


「だそうだ。ブライアン頼むよ」

「めんどくせーな〜わかったよ…」


 そうして入り口に向かいアースウォールを一度解除して中に入れ込むとベーはゴロンと転がり安堵した顔を見せた。


「助かった助かった!良かった良かった!」

「一体なんなんだ?」


「おーわりぃ本当に助かった。俺はベーという。

 兄さんとは酒場で一度飲んだな」

「そうだな。あの時の金はまだ払ってもらってないが…」


「へへっすまんこって!ってそれどころじゃねーでさ。

 悪魔族が現れたんでさ」


「悪魔族?なんだそれは?」

「悪魔族ってのは古より伝わる伝説のモンスターでさ。

 そいつが50階層のボスとして出てきたもんで大慌て。

 俺の仲間たちはそいつに殺されたんだ」


「そうか…つえーのかそいつは?」

「つえーなんてもんじゃねーでさ。

 そもそも当たった時間が悪かったでさ」


「時間?」

「悪魔族ってのは余りの強さの割に体力がなく、夜は力を使い切ってるから倒せると言われてるでさ。

 俺たちはとんとん拍子にこの階まできたもんでそのまま突撃したら壊滅しちまったんだ」


「俺らって…あのまま行ってたら…」

「ああ、間違いない判断だったようだな」


すると女子側のテントからカナが顔を出す。


「なに〜?ブツブツと…」

「ありゃーめんこい女子もいるじゃねーか?でへへへへへっ!」


「こいつ大丈夫か?」

「ダメだな外に出すぞブライアン!」

「待ってくれ待って!すまん!」


会話にカナが加わる。

「ベーと言う冒険者だ。50階層ボスにやられたらしい残りのメンバーのようだ」

「あんたはどうやって出てきたの?」


「50階層は全メンバーが入ると一度扉が閉まるんでさ。

 それで戦闘が始まるんだが、戦闘中は扉開けようと思えば開けることもできるもんで開けて出てきたのさ」


「仲間を見捨てて?」

「俺だって逃げたくなかった!だが俺は斥候だ。

 見張りや罠抜けは得意だが戦闘はからっきしなんだ。

 一緒にいた奴らは第一級ばかりでそいつらがやられちまったら仕方ねーだろ!」

「まぁそうね」


「お願いだ。出来れば奴を倒して魔術陣に乗せてくれれば後は自分でなんとかする。頼む」


「何点かいいかな?その悪魔族とやらは何時から何時まで弱体化するんだ?」

「知らねーよそんなこと!伝説のモンスターだぞ!噂くらいしか聞いたことねーよ!」


「悪魔族とやらはお前が逃げたのは知ってるのか?」

「わからねー。ただ扉出るのは普通に出れたな」


「追ってくるってことはないのか?」

「普通ダンジョンボスはあそこの部屋からは出ないのが常識なんだ。でも悪魔族に関しては伝説のモンスターだろうからわからなねー」


「最後にお前を送ることでの俺らのメリットは?」

「奴の情報はここ、頭ん中にに入ってる。

 弱体化したから攻撃方法は変わるもんじゃねーだろ!

 だから倒してくれれば先に進めるぞ!」


「どうだごんぞう」

「ああ、こいつは普段適当な男だがここぞという話に嘘はなかった。それは俺やビビ、ブライアンが知ってる」


「悪魔族が果たして本当に弱体化するかどうかだな」

「そうだな。していなかったら全滅だ」


「でもその悪魔族ってやつはレアボスってことなのか?

 ベー、どうなんだ?」

「ああ、いつもはレッドオーガがいるはずでさ」


 いづれにしろ誰かが倒さないと前には進めない。

 他が25階層のレアボスも倒せない奴らだからな。


「今何時くらいだろうか?」

「0時くらいだな。早めに寝て少し経ってるから」


 このベーという冒険者の話を聞けば今から向かって弱体化してる悪魔族というボスを倒せれば先に進める。

 ただ本当に弱体化するもんなのか?

 こんな初めて会ったような男の話を鵜呑みにしていいものだろうか?


 悩んでいるとベーが動き出す。

 片手に短剣を持ち振りかぶる。

 そしてそのまま自らの左手を突き刺した。


「何してんだ!」

「いいか、仲間を見捨てたと言われればその通りだろう。尻尾巻いて逃げてきたと言われればそうなんだろう。


 ただな、俺は俺なりに斥候の仕事を考えてここまでやってきた。俺の出来ることはお前らを決断させるのみだ。


 戦力にはなれねぇ!だからこの手の傷を持って信じて欲しい!俺は嘘を言ってねー!」


 シンと鎮まりかえる。

 誰1人として喋る人がいない中ビビが話しだす。


「タケル?私も斥候だからわかるです。

 この人嘘言ってないです。


 斥候の仕事は索敵と警戒。あと生き残ることと習ったです。


 もしパーティが全滅することがあっても次に繋ぐことができるのであれば逃げろと習ったです。

 だからこの人は間違ってないです」


「そうか…わかった。


 悪魔族を討伐するぞ」


「「「おおぅ!」」」


 そうして深夜帯のこの時間に動き出す。この決断は吉と出るか凶と出るかはわからない。


 ただ、動くからには必ず成し遂げなければならない。


 俺たちの明日がかかっているのだから…

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