2週間
部屋に戻りつつ今日受けた訓練の復習をする。命に関わる内容だから慎重にいきたいと思うからだ。
途中城壁の上から見る景色を思い出し綺麗だったなと思い窓の外を眺める。街の明かりは柔らかく光を漏らし酒場とか行けば楽しいのかなと思い、日本での生活を懐かしく感じた。
ふとすると外の鐘が鳴り夕食の時間となった。今日からは王様は同席せず、召喚組のみの食事となるようだ。
集まってみるとブライアンは当然いなかったが店長も席にはついていなかった。周りに店長のことを聞くが誰も知らないとの回答であった。具合が悪いのかなと思いそっとしておくことにした。
夕食はメインのお肉とサラダ、副菜もついていて味は絶品とは言わないまでも美味しくいただくことができた。パンも固かったが朝ほどではなく美味しくいただくことが出来た。
アヤと訓練の話をすると爺さんの声がハキハキとしていてあの年代であんなにはっきり話す人始めてみたと言っていた。俺らのときごにょごにょ言ってたな。やっぱ女の子だと気合いが違うんだなと思うことになった。
食事を終え部屋に戻り風呂で汗を流すと疲れがドッと出てしまい自らの疲れを自覚する。布団にパタリと横になるとすぐ寝れそうと思い目を閉じかけたところで扉をノックされる。
気だるい身体を持ち上げ扉までいくと鍵を開ける。そこにはごんぞうが立っていた。
少し話しようぜと招き入れると机から椅子を引き出して背もたれに顎を乗せる感じで座った。そこでの話はたわいもない話ばかりだったがとても楽しく、ごんぞうと友達で本当に良かったと感じ夜は更けていくのだった。
翌朝から2週間同様の生活が続く。
まずブライアンはこの前言っていた騎士の領地であるクラータル領の冒険者として向かうことになったようだ。訓練の休憩時間に寄ってきて話をされた。
モンスターが多く騎士たちは疲弊してるそうで助けてほしいと頭を下げられたそうだ。あと妹さんとの婚姻の話も消えてはなかったようで色々含み移動することになったようだ。
少し寂しそうではあるものの悪くはないと思っているようでがんばってくださいと労いの言葉を掛けまた会いましょうと伝えて別れることとなった。
4日目以降パンが異常に柔らかくなった。最初食べた時柔らか過ぎて涙が薄ら出てしまうほど感動し、厨房にお礼を言いにいくとそこには店長がいた。
実は初日の朝食以降は店長が食事を作っており、思えば初日の夕食の肉が柔らかくて美味しかったのを思い出した。この世界の食事は不味すぎる。最低限皆が美味しい飯が作れるようになるまで頑張るといい大きく笑った。元気になってくれて何よりだな。
カナは初日の機嫌悪い以降会話をしていなかったがバイト先で見せていたようなテンションには戻らず黙々と魔術の訓練に参加していた。
すれ違う時カナに大丈夫か?と聞くと大丈夫と言われたが、その返しが来る時は大概何かしらかかえていることが多いのでアヤにフォローして欲しいと伝えるも、私はやめた方が良いと言われた。
訓練中もブツブツ自分の殻に閉じこもっているようで、ハルク爺さんも困った様子で見ていると言った。
流石にこのままだとよろしくないなと夕食が終わり、風呂に入り汗を流すとカナの部屋に行く。
カナの部屋の前に立ち扉をノックすると、はい?と聞こえた。
タケルだけどと伝える。30秒ほど待っただろうか、鍵開ける音がし扉が薄ら開いた。
なに?とぶっきらぼうに言われ、最近カナと会話してなかったからさと伝える。
カナは少し考えてから扉を開き部屋に招き入れられる。念のため扉半解放にしておく。
机の椅子に手を向けどうぞと言われ椅子に座った。
あれ?この子こんなに小さかったか?と思って不思議に感じた。
「こんな夜中になんですか?こんな時間に女子の部屋に来るって何言われてもおかしくないですよ」
「悪い悪い、なんか今声掛けないと後悔しそうだったからさ。まぁ自己満足だよ。最近暗いから何かあったのかなとな」
別に…と答えはしたがそこから無言となる。ここは喋らない方がいいなと黙っていると
「実は私ってあそこのガス爆発で死んでて、これって死んだ後の世界なんじゃないかと思ってる」
と話し始めた。
「こんなの現実じゃない。手が光ったり相手が強くなったり意味がわからない。色々疑ってると前みたいに笑えない自分がいる。店長も私がいなきゃダメだとか琢磨先輩もこうゆう大人になっちゃダメだとか思っていたけど2人ともちゃんと自分の居場所見つけて動いている。じゃあたしは?3人みたいに戦い出来るわけではないし、能力も大したことがない。1番下じゃん。こんなの中学の時と同じ。もう嫌なの。せっかく高校に入って、変わらなきゃって同じ中学出身者のいない自宅から離れた高校に通って明るく振る舞って、結局苦しむくらいなら何もしない方が良かったんじゃないかと…そう思うんだ」
そうか、この子あまり中学では充実してなかったのか…確かに名前に付随する能力が低かったから気にはなったけど・・・。色々無理して笑顔でバイトにきてたんだな。辛い気持ちを持って話そうとする相手がアヤしかいない。
原因が彼女だから言うことも出来ず抱えていたんだ。
事情を知ってみるとバイト先のカナは虚勢を張っていたんだなと思い、とても可愛い女の子じゃんって見方を変えることとなった。
一時考えて俺は話す。
「まずさ、俺らは死んでない。確証があるかと問われると証明は出来ないが死んでるのに景色を見て感動するとかは出来ないよ。すべて現実だ。
俺も劣等感っていうのかな?あいつには出来てなんで俺出来ないんだとか言う気持ちは持っているよ。でも俺は俺だし、あいつはあいつなんだよ。あいつにも劣等感がありもやもやしてることもあるんだろうと思うようにしている。
要は平等なんだよ、日本の世界もこの世界も。死んでるかもしれないから何もしないってそれこそ死んでるのと一緒じゃん。俺らは努力が出来る、成長が出来る。だから俺らは生きてる!ではダメなのか?」
カナを見ると涙交じりの顔でこちらを見ている。
「俺らは回復特性はない、誰かのために魔術は使えない。それはカナしか出来ないことじゃん。じゃ回復出来ないから俺何もしなーいって言ったらどうする?」
とカナはフフッと少し笑った。
「だろ。ダメなんだよ。みんな力を合わせないとあちらには戻ることは出来ない。俺は訓練してカナに魔術を使わせないように努力する。カナはそれでも傷つけられた俺らを癒す。俺らの行き着く先はカナなんだ。んーっそれは言い過ぎか笑」
アハハっとカナは笑う。
「なぁ昼間に手首を木刀で打たれて青あざになってるんだ。本当は耐久力つかないから自然治癒にしろって言われてるんだけど治してくれない?痛くて痛くて」
「えっあたしまだ回復魔術人に使ったことなくて…」
「大丈夫!最悪治らなくてもいいし、気軽な気持ちでやってみて」と笑顔で伝える。
「んっ、わかった」と言われ腕を捲り上げると明らかに色が変わっている場所を確認した。
カナは手をかざす、15秒ほどすると弱々しくも手が光始める。顔を見ると真剣な顔付きで患部を見ている姿を見て、あーカナは大丈夫そうだなと感じた。
そのうち手が強く光り始めて温かい魔力が手首を覆う。同時に光は弱まっていき光が収まる。
どう?と言われ手首を曲げたりグッパーしたり腕を回したりすると難なく動くことがわかった。
「凄いよ!完璧に治ってる!凄い、凄い!」と言うとカナは良かったぁ〜と安堵した。
「ヤバイ初めてで成功しちゃったんだけど〜!あたし回復の天才じゃん!」
「そうだよ!カナは聖女じゃん!すげーすげー」
って言い合ってるとあくびを殺したような顔をカナがした。
「長居して申し訳なかったな」
「ううん、そんなことない。正直悩んでたから、なんていうか…あ、ありがと・・・」
パッと顔を見るとパッと下を向いたのでどういたしましてと伝えた。おやすみと言い廊下に出て扉を閉める。
一度首うんと下げ良かったなと歩き出そうとしたらごんぞうがいた。
うわっと思ったが声を出すとマズいと思って口を抑える。
そして2人で歩き出した。
そうするとごんぞうはボソッと話し出す。
「タケルってすげーな、俺カナのこと全然気づかなかったよ」
「あれ?そういえばなんでカナの部屋の前にいたんだ?」
「タケルがカナの部屋に入る背中が見えたから一応近くまで行くと扉が開いてたから聞いてた」
「えっ、聞いてたのか?どこから?」
「まぁ自己満足だよらへんから…」それを聞くとほぼ全部やんと思い
「お前恥ずかしいこと平気で言うなと思ってた」あーーもーーっこいつはいつもいつもと思いつつ
声掛けろよ!と怒り気味に言うといやこの前のことあったから自重した。
なら聞くなよとは思ったがごんぞうなりに気を遣った結果と思いわかったと伝えた。
そしてこの夜は更けていき翌朝、眠気まなこで食堂に向かって歩くと後ろからパシーンと頭を叩かれ
「おはよう!タケル!」とカナに言われた。この野郎とは思ったがバイト先にいた時のような笑顔で言われたためよく寝れたんだなと思いおはようと返しておいた。
すると後ろからアヤがあんたたちってそんな仲良かった?と話しかけてこられ驚いたが、いや…と答え無言で通り過ぎるのだった。
そんなこんなで2週間が過ぎていく。




