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プリンス オブ ザ フォールンキングダム  作者: 伊勢屋新十郎
02 新米聖女は道を見出す
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44 宿にて 03 目覚め

 ホリーとシャルリーヌは同時に目覚め、ベッドの上で上体を起こす。二人は目を合わせ、確信する。自分たちは同じ夢を見たのだと。あれはただの夢ではないのだと。



「お嬢さん。シャルリーヌ。起きたのならば、どいてほしいのだが」



 そこに彼女らに声をかける者がいた。一緒のベッドに入っていた彼女らの間には、体を寝かせたバートがいる。いつもの無表情で淡々とした声。その声を聞いた時、二人は衝動に駆られる。



「ふふふ」


「ふふふ」



 二人は思わず笑ってしまった。バートは無表情のまま、彼女らが何がおかしいのかわからない様子だ。

 ホリーに膝枕をされたまま眠ってしまったバートを見るホリーとシャルリーヌに、酔ったリンジーが提案したのだ。そのまま彼女らで添い寝してやったらどうかと。自分はヘクターと添い寝するからと。

 その言葉に、彼女らも気分が高揚していたのか、恥ずかしいという思いを乗り越えて乗ってしまった。愛しい人相手にそうするという感覚ではなく、ホリーの膝で安らかに眠るバートがかわいく思えて、奇妙な言い方にはなるがまるで幼子(おさなご)にそうする感覚で。広いとは言えないベッドに三人入るのは少々窮屈(きゅうくつ)で、バートに両側から抱きつくようにベッドに入ったのだけれど。

 バートが起きた時、目の前にホリーの顔があって、何があったのか理解できなかった。逆側からベッドを降りようと思ったら、そちらにはシャルリーヌがいた。そのままこの男は事情がわからないなりに二人を起こしてしまわないようにしていたのだ。どうやら自分はホリーに膝枕されたまま眠ってしまったらしいとは理解したが、なぜ二人が自分と同じベッドに入っているのか理解できなかった。

 そしてホリーとシャルリーヌは目を合わせ、同時にうなずく。彼女らはお互いに何を考えたのかわかった。夢のことはまだバートには話さず、秘密にしておこうと。彼女たち自身、まだ考えがまとまっていなかった。

 隣のベッドでは、ヘクターに添い寝していたリンジーが目を覚まして飛び起きた。



「ヘクター!? なんであんたがここにいるんだい!?」


「リンジー。覚えてないのか? お前が俺と添い寝すると言って譲らなかったんだけどさ」


「あ……そういえば……」


「一応言っておくけど、手は出していないぞ。できるだけ触らないようにもした。俺が寝ていた間はさすがにわからないけど」


「あ、当たり前だよ! それは……もっと心を(かよ)わせてからじゃないと……」



 リンジーはヘクターの言葉に赤面している。彼女も昨夜のことを思い出した。彼女も酒に酔って大胆になっていたのであろう。添い寝してそのまま眠ってしまったのだが。

 彼女は気の強さと荒っぽい言葉遣いに似合わず、男女関係については純情だ。精悍(せいかん)偉丈夫(いじょうぶ)のヘクターと、勝ち気な美女のリンジーが恋人同士になると、お似合いではあろうが。



「お嬢さん。シャルリーヌ。状況はわからないが、どいてくれなければ私が起きられないのだが」



 そのバートの言葉に、ホリーとシャルリーヌが顔を見合わせる。



「ふふふ」


「ふふふ」



 彼女らはおかしくてたまらない。この人は先に目を覚ましていたのに、ホリーとシャルリーヌを起こさないように律儀(りちぎ)に動かないでいたのだろう。無表情なりに少し困ったようにしているこの人が彼女らにはとてもおかしく、そしてかわいい人に見えている。バートはなぜ二人が笑っているのか理解できないが。

 そして二人は同時に決意した。この人をアルスナムの聖者にはさせないと。この人を一人にはさせないと。この人と敵対するなど、考えたくなかった。

 二人はそれぞれ態勢を変えて、彼女らがどいてくれると思ったのか上体を起こしたバートの手を取る。



「バートさん。私はあなたと共に行きます」


「バート。あなたを一人にはさせないわ」



 バートは戸惑(とまど)っている。なぜ急にこんなことを言われたのかと。

 ヘクターとリンジーも不思議そうな顔をしている。

 ホリーとシャルリーヌは決めた。どんなことがあろうと、この人と一緒にいようと。どこまでもこの人について行こうと。たとえその先にどんな苦難があろうと。


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