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プリンス オブ ザ フォールンキングダム  作者: 伊勢屋新十郎
01 元王子は新米聖女と出会う
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21 妖魔の大群討滅戦 08 青年は人間を信じない

 バートたち冒険者集団は妖魔共に(おびや)かされていた村の前まで来ている。村人たちもあの光景を遠目に見ていた。だが本当に自分たちは救われたのかと半信半疑で、急造した(さく)の中で警戒していた。

 バートが村の代表の老人に話しかける。



「この村の近くに布陣(ふじん)した妖魔共は全滅させた。だがあの場を離れていた妖魔がいないとは限らない。臨戦態勢は解いてもいいかもしれないが、警戒は続けるように」


「感謝いたします。あなた方はここに留まって村を守ってくださるのでしょうか?」


「それはできない。この地域全体で妖魔共があのような動きを見せている。我々はそれらの撃破を任務としている」


「ならば、幾人か村に残って守ってくださいませぬか?」


「それもできない。村ごとに我々の人数を減らしていけば、こちらの戦力が足りなくなる」


「……わかりました」


「まあでもこの辺りの妖魔共はあらかた排除できたと思うぜ。この村が近いうちに襲われる可能性は低いと思う」


「……はい」



 不安に駆られている村人の言葉を、バートはにべもなく切り捨てる。だがそれもバートたちからすれば仕方の無いことだ。彼らの任務は地域一帯で蠢動(しゅんどう)する妖魔共の討伐であって、一つの村の防衛ではない。ホリーもそれは理解できたから、ヘクターのフォローにもまだ不安そうな村人たちの力になりたいとは思っても、口を出すことはできなかった。



「この村は食料などの物資の備蓄は十分だろうか?」


「は、はい。いくらか妖魔共に略奪されましたが、村の者たちが生活するには十分な蓄えがあります。周囲から逃げ込んできた者たちの分もなんとかなります」


「そうか。エルムステルの商人のマルコム氏と彼の仲間の商人たちが、妖魔共の襲撃で窮乏(きゅうぼう)している街や村があれば物資を割安価格で供給しようとしている。彼らは物資に余裕がある街や村からは適正価格で物資の仕入れもしたいと言っていたが、物資を売る余裕はあるか?」


「は、はい。あまり大量に売ることはできませぬが」


「承知した。マルコム氏に伝えておこう。あと妖魔共の陣地に村から略奪したとおぼしき食料などがあったが、あれはどうする?」


「妖魔共に一度奪われた食料を口にするのは……」


「承知した。我々で持って行ける分は持ち出していいか? 持って行けない分は焼き捨てるとして」


「はい。お願いします」



 バートが妖魔共の陣地に残された物資の始末を村人たちに任せずに自分たちで処理すると申し出たのも理由がある。そうしなければ、村人たちは回収した食料を自分たちでは食べずに商人に売るのではないかと疑っていた。それほどに彼は人間というものを疑っている。

 もちろん妖魔共が自分たちが食うために奪った食料に何かを仕掛けているはずがない。だがそれを口にするのをためらう人間がいるのは当然だ。冒険者にもそれをためらう者はいるだろう。それでも彼が物資を全て焼き捨てずに回収すると申し出たのは、この先彼らが十分な物資を補給できるか不明であるためだ。冒険者たちも飢えたまま戦うことはできないのだから。

 妖魔共から回収した物資を食べるのは後回しにはなるであろうし、魔法を使って毒などが仕込まれていないかチェックもしておくことになる。穀物類はともかく、肉類は何の肉か知れたものではないから、バートも焼き捨てていくつもりではあるが。


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