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プリンス オブ ザ フォールンキングダム  作者: 伊勢屋新十郎
01 元王子は新米聖女と出会う
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18 妖魔の大群討滅戦 05 魔族は待機する

 旧王国領西部の廃村に建てられた小屋。オーガのゲオルクは彼の義兄弟の一人、グンターから報告を受けている。彼はグンターに人間たちの大きな街複数に潜入させている密偵たちの管理を任せている。



「兄者。エルムステルから妖魔討伐軍が進発したようだ。まずは冒険者たちの集団が進発して、正規の騎士団が進発するのはもう二、三日かかるようだ」


「遅いな」


「この辺りの領主共は旧王国時代の無能共が居座ってるようだしな。他の街でも一部を除いてまだ討伐軍は進発していないようだ」


「そうか。報告ご苦労」


「おう」



 ゲオルクは思う。旧王国領東部に拠点を置いているフィリップ第二皇子がこの地方にいたら、とっくに正規の騎士団を出撃させていただろう。そもそも妖魔共が大規模な行動に出る前に、普段の治安維持で妖魔共の数を十分に減らしていたであろう。だがこの辺りの領主たちは一部を除いてそのどちらもできない低能だった。

 彼らからすればそんな無能共が統治者の地位にあることも理解しがたい。魔族の社会ならばそんな(やから)がいたとしても、早々にその地位を追われるであろうのに。



「あとエルムステルの密偵から面白い情報が入っているぜ」


「ふむ?」


「エルムステルを進発した冒険者集団の指揮を()るのは静かなる聖者だってよ。鉄騎(てっき)もいるようだぜ」


「ほう」



 ゲオルクが楽しげに口角を上げる。

 彼らは情報の意味と重要性を知っている。人間たちのことも(あなど)らず、情報収集をしている。



「あと騎士団が遅れそうというのも、エルムステルの領主が密偵に言ったことだそうだから間違いないと思うぜ」


「そうか。招き入れた者を魔族ではないと確かめもしないとは無能もいいところだが」



 エルムステルの領主には密偵が愛人として近づくことに成功している。ただそれは意図して領主に近づいたのではなく、街の酒場で働いて噂を集めようと人間の少女に化けてこの街に入ろうとしたら、領主からお呼びがかかったとのことである。



「やっぱり、静かなる聖者と鉄騎(てっき)は戦いがいがありそうかね」


「どうであろうな」



 『静かなる聖者』バートと『鉄騎』ヘクターの名は彼らも知っている。旧王国領でも注意が必要な人物は魔王軍でもリストアップされているが、強力な冒険者もそこに名を(つら)ねている。その二人組の冒険者はリストでもかなり上位に記載されている人物だ。

 冒険者も魔族たちにとってなかなかに厄介(やっかい)な存在だ。強力な冒険者が人類側の軍勢に加わった場合強敵になることはもちろんだが、それよりもゲリラ戦を展開されることが厄介だ。補給隊が襲われて物資の輸送が(とどこお)ったり、部隊の指揮官が急襲されて指揮不全になったりして、魔王軍の軍勢が敗退した例はいくらでもある。人類側の街に侵入させた密偵が冒険者に見抜かれて討伐されることもある。魔族たちは冒険者たちのことも軽視してはいない。



「どうする? 出向いて静かなる聖者たちと戦うか?」


「残念だが、今は軍師殿の策を実行しなければならぬ。それが終われば戦いを挑むとしよう。その時までに彼らが健在ならばだが」


「おう! 楽しみだなぁ、兄者!」


「うむ」



 ゲオルクと彼の義兄弟たちは戦いを求めている。強者との戦いを。バートとヘクターが彼らの期待に応えられるかはわからないが、期待くらいはしてもよかろう。


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