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プリンス オブ ザ フォールンキングダム  作者: 伊勢屋新十郎
04 新米聖女は一歩を踏み出す
126/133

123 皇子と皇女 07 いずれ神に至る人

 ホリーからはまだ伝えないといけないことがある。



「そして私とバートさんとシャルリーヌさんは、ソル・ゼルム様から、神になって人類と魔族の戦いを調停できる存在になってくれないかとも言われています。人類と魔族の対立構造にとらわれない神も必要だろうと。私は人々に善なる心を広めるためにも神への一歩を踏み出しました」


「……女神デルフィーヌのように、あなたも神になるのですか?」



 女神デルフィーヌは、神になる前はエルフの聖女だったとされている。聖女には神への(きざはし)を上る可能性を与えられるとは、よく知られている伝説だ。その実例として知られているのは女神デルフィーヌだけなのだが。

 セルマは思案する。この少女が神に至るならば、この少女の重要性はさらに上がる。帝国としても全面的に支援し、そして協力を求めることが必要だ。



「はい。ソル・ゼルム様たちも人間たちに善なる心を広げようとしてきたようです。ですが(いま)()()げられていません。なら私も人間として生きる時間だけでそれを成し遂げられるとは思えません」


「……」


「今の私たちはまだ神になっていませんし、老化も止まっていなくて、死なないわけでもないそうです」


「……」


「神になってから活動するにも、神としての力を振るってはいけないでしょう。他の神々が動いて、世界が破滅してしまう恐れがあるのですから」



 その論理はセルマも理解できる。だが彼女には他にも気になることがある。



「ですがアルバート様とシャルリーヌさんもとは?」


「私とホリーがバートと添い寝した時、私もソル・ゼルム様とお会いしたのです。最初の時は私はお酒に酔った勢いだったのですが。その時に私も見込まれてしまったようです」


「……アルバート様も善神ソル・ゼルムとお会いしたのですか?」


「いえ。私は何も覚えておりません。ですが、私自身にもお嬢さんとシャルリーヌにも、以前には感じられなかった存在感の強さを感じられることは事実です」


「……」


「善神がその気になれば、『人』を神に引き上げるきっかけを与えることができるそうです。女神デルフィーヌもその一つの例であると」



 バートは自分が善神と悪神の偉大なる二柱(ふたはしら)の神と対面していることに気づいていない。そのことに気づいたら、この人はアルスナムの聖者として目覚めてしまうかもしれないとシャルリーヌたちは危惧している。この人の心の絶望はまだ晴れていない。そのこの人がアルスナムの聖者として目覚めれば、人間種族と敵対する存在になってしまう恐れがある。

 セルマとしては、想い人が善神に認められるとは誇らしいという思いもある。そして誘惑にも駆られる。自分も神に引き上げられてアルバートと永遠に一緒にいられないかと。それも神々からすると唾棄(だき)すべき欲望なのかもしれないとも思う。だが自分も神になれれば、帝国の民のためにも人類のためにもより大きなことができるだろうとも思うのだ。彼女は神として永遠に帝国に君臨するつもりはないが。



「ホリーさん。私もアルバート様とあなたと添い寝すれば、善神にお目にかかることができるのでしょうか?」



 セルマはホリーが語った真実が本当なのか確かめたいとも思った。彼女もホリーを疑っているわけではない。だがただ言われたことを信じるのも難しい。これほどの真実となればなおさらだ。そしてあわよくばアルバート王子と永遠に一緒にいる資格を得たいという思いもあることは否定はできない。



「わかりません。シャルリーヌさんがソル・ゼルム様とお会いできたのは、シャルリーヌさんが私と相性が良くて、そしてシャルリーヌさんも聖女になりうる人だからということもあるそうですから」


「……シャルリーヌさんも聖女になりうるとは?」



 次々に飛び出す信じがたい言葉に、セルマといえども混乱しそうになる。だが事実は事実と受け入れる必要がある。おそらくこの少女たちは本当のことを言っている。

 その疑問にシャルリーヌが答える。



「聖女になる資格は、私が思っていたほど厳しくはないようです。ソル・ゼルム様が無闇に聖女を選びたくないと思って選んでいないだけで。私も聖女にしようかと言われたのですが、私は聖女としてふさわしいとは思えませんので断りました」


「……」


「それに一カ所に聖女が二人いたら、人間たちがどう動くかわかりません」


「……その危惧は認めましょう」



 シャルリーヌからすれば、自分にも聖女の資格があるというのだから、この皇女にもその資格はありそうだとも思う。善神は第一皇女も見込みがあると認めているのであるし。

 セルマもシャルリーヌの危惧も正当なものであると認めるしかない。聖女が二人いれば帝国としては戦略的な選択肢を広げることができるのも事実ではある。だが帝国にも信頼できない有力者はいる。聖女が二人いるとなれば、その者たちが蠢動(しゅんどう)を始めるかもしれない。



「私が善神にお目にかかるのは望み薄かもしれません。ですが私もアルバート様とホリーさんと添い寝してみる価値はあると考えます」


「セルマ。お前は今日中に帝都に帰らねばならんのだろう? 試している時間はないぞ」


「それに万が一私と添い寝したなどと露見(ろけん)すれば、セルマ殿下の名誉が傷つきます」


「……」



 水を差したフィリップとバートを、セルマは恨めしげに見る。彼女は善神にお目にかかることだけではなく、バートと添い寝したかったのだ。ホリーとシャルリーヌがバートと添い寝していることを知って、やきもちを焼いてしまったのである。フィリップからすれば、いつも冷静な妹にそんな目で見られて、内心(あわ)てているが。



「ま、まあアルバートとお嬢さんたちは帝都に向かって旅をするのだから、帝都に着いてからにすればいいだろう。その時ならなんとでもなる」


「……はい」


「……」



 フィリップは逃げを打った。セルマも渋々受け入れる。バートからすれば見捨てられた気分だ。だがバートもこの皇女も決して嫌いではないのだ。愛していると言うほどではないのではあるが。

 セルマがバートにすねたような表情を向ける。



「……アルバート様」


「はい」


「頭をなでてください。今回はそれで許して差し上げます」


「……はい」



 そうしてバートとセルマは椅子から立ち上がって近づき、バートは不器用にセルマの頭をなでる。セルマは本当に幸せそうな顔をする。アルバート王子が帝都にいた頃、アミーリアがアルバート王子に頭をなでられているのを見て、自分もなでてほしいと言ってなでてもらったこともあるのだ。こうしてなでてもらうのは本当に久しぶりだ。だけどあの頃のように幸せな気分になれる。許されることならばずっとこうしてもらいたい。

 ホリーとシャルリーヌは思う。自分たちも宿でバートに頭をなでてもらおう。自分たちが頼んだら、バートは困った様子でなでてくれるのだろう。そんな彼もとてもかわいいのだ。もう少し積極的になってほしいとも思うのだけれど。

 そして一通りなでてもらったセルマがホリーを見る。彼女には気になっていることがあった。



「善神ソル・ゼルムは人間の姿をしていると聞きます。それ(ゆえ)に人間種族は善神の寵愛(ちょうあい)を受けている種族だとされています」



 それは特に人間種族の間では広く支持されている説だ。善神が人に啓示(けいじ)を与える時、その姿は人間の男性の姿なのだから、人間は善神に愛されているのだと。



「ですがあなたの言葉からすると、善神は必ずしも人間種族を肯定しているわけではないという印象を受けます」


「ソル・ゼルム様は人間種族を含む『人』を愛していらっしゃいます。ですが、人間種族を他の種族より優先しているわけではないようです」


『そうだね。私はどんな姿にもなれるんだけど、人間の姿をしていることには大きな意味はない。人間たちに教え(さと)すにはこの姿の方が好都合だという意味はあるけれどね。人間たちは、自分たちと違う姿の相手を受け入れない者も多いからね』


「……ソル・ゼルム様のお言葉がありました。ソル・ゼルム様はどんな姿にもなれるけれど、人間の姿をしていることに大きな意味はないそうです。ただ人間たちに教え諭すには人間の姿の方が好都合だからと。人間には、自分たちと違う姿の相手を受け入れない人も多いからと」


「承知しました。善神は人間種族を教え諭す必要がある未熟な種族と思っているということですね?」


『そうだね』


「……そのようです」



 セルマにしてもフィリップにしても恥じ入るしかないという思いだ。善神からすれば人間種族は神が導く必要がある未熟な種族だと思っているのに、人間たちはそれを神の寵愛(ちょうあい)を受けていると誤解して、傲慢(ごうまん)に振る舞っているのだから。

 そしてセルマは意を決したような様子になる。



「偉大なる善神ソル・ゼルムよ。あなたがこの会話を見ていらっしゃるなら、お答えをお願いいたしたいです。私にも聖女の資格はありますでしょうか?」



 フィリップはぎょっとした様子で妹を見る。彼は聖女の伝説は悲劇で終わることを知っている。

 だがセルマには臆する様子はない。聖女が二人いれば、帝国としても戦略的な選択肢が増えるのだから。そして聖女の資格が考えられているほど厳しくはないのなら、自分にもその資格はあるかもしれないと思った。こんな大それたことを善神に聞くのは彼女にとっても勇気が必要なことではあったが。



『この子にも聖女の資格はあるよ。この子はそれに値する心の清い子だ。でもこの子を聖女にしても、統治者として非情な決断をする必要もあるだろうこの子が、いつまで聖女の資格を維持できるかはわからないね』


「……ソル・ゼルム様のお言葉がありました。セルマ殿下にも聖女の資格はあるそうです。それに値する心の清い方だと。ですが殿下が聖女になっても、統治者として非情な決断をする必要もあるだろう殿下が、いつまで聖女の資格を維持できるかはわからないそうです」


「……承知しました。偉大なる善神ソル・ゼルムよ。ホリーさん。お答えいただきありがとうございます」


「いえ。私はソル・ゼルム様のお言葉をお伝えしただけですから」



 ホリーからすれば、自分はついでとはいえ皇女からこんな言葉をかけられるのは(おそ)れ多い。セルマからすればホリーは存在としては自分よりも格上だと思っているのであるが。

 セルマもホリーを通して伝えられた善神の言葉に納得した。確かに彼女は立場上非情な決断をすることもありうる。その自分が聖女にふさわしいかと問われれば、否定するしかない。だがそれなら自分がアルバート王子とホリーと添い寝すれば、善神にお目にかかることは期待できる。そしてそれは自分がアルバート王子と添い寝する正当な理由になることに喜びも感じた。

 セルマはアルバート王子にそっと抱きつく。まだ自分はしばらく我慢しないといけない。だからせめて今はこの人のぬくもりを感じたかった。王子は鎧姿だから、鎧越しなのは残念だけれど。



『ホリー。ちょっとこの子たちに伝えてもらいたいことがある。教王国についてなんだけどね』


「……ソル・ゼルム様からお言葉があるそうです。教王国についてだそうです」



 ホリーとシャルリーヌも、以前善神が旧王国領と隣接する聖アルバス教王国について問題にしていることは聞いていた。教王国では、善神を唯一絶対の神として信仰し、他の神の存在は否定されている。そして唯一絶対神教徒たちは他の神を信仰する者に対して異常に攻撃的なことでも知られている。だが数多(あまた)の神が実在するこの世界において、それは異常な信仰だと言うしかない。しかも善神が人間の男性の姿をしていることから、唯一絶対神教徒たちはこの世界は人間種族のためのものだと信じているのだ。だが善神にはそんな気などなく、人間種族も他の種族と同様愛してはいるものの、特別扱いなどしていない。教え(さと)す必要がある未熟な種族と考えているという意味では、決していい意味ではなく特別扱いしているとも言えるが。

 セルマもバートに抱きつく腕を緩め、彼の隣に寄り添ってホリーを見る。



『私は教王国の民を魔族の侵攻から守るために、これまで教王国の者たちを見捨てることができずにいた。だけど教王国の者たちは旧王国領とそのさらに先を狙っている。彼らの暴虐(ぼうぎゃく)は、私ももう見逃せる限界を超えている』


「……ソル・ゼルム様は、教王国の人たちを魔族の侵攻から守るために、これまで教王国の人たちを見捨てることができずにいたそうです。ですが教王国の人たちは旧王国領とそのさらに先を狙っているそうです。教王国の人たちの暴虐は、ソル・ゼルム様ももう見逃せる限界を超えているそうです」


「……承知しました」


『唯一絶対神教徒たちは、私が力を貸していることを私の絶対的な加護を受けているのだと増長し、魔族にも他の人類側の者たちにも到底容認できない非道を行っている。もはや私は彼らを見捨てるしかないと思っている。だけど何も対策をせずに私が彼らを見捨てたら、教王国の人間たちは罪のない者たちも含めて魔族たちによって皆殺しにされてしまうだろう。だから罪のない者たちまでは極力犠牲にならないように、帝国の協力を得たい』


「……唯一絶対神教徒たちは、ソル・ゼルム様が力を貸していることをソル・ゼルム様の絶対的な加護を受けているのだと増長して、魔族にも他の人類側の人たちにも非道を行っているそうです。ソル・ゼルム様はもはや唯一絶対神教徒たちを見捨てるしかないとお考えです。ですが何も対策をせずにソル・ゼルム様が見捨てたら、教王国の人間種族の人たちは罪のない人たちも含めて魔族たちによって皆殺しにされてしまうだろうということを、ソル・ゼルム様はご心配なさっています。ですから罪のない人たちまでは極力犠牲にならないように、帝国の協力を得たいそうです」


「……承知しました。私たちに何ができるかまでは、お話をうかがうまではお答えできかねますが」



 教王国が周辺国に対して野心を持っていることは、セルマやフィリップからすれば周知のことだ。教王国は善神ソル・ゼルムを唯一絶対の神とし、他の神の存在を否定する信仰を広めようとしている。それは信仰をもって教王国の勢力を拡大しようとしているのは明白だった。そして唯一絶対神を信仰する者たちは、他の神を信仰する者たちに対して、しばしば暴力行為や破壊行為、殺戮(さつりく)などの非道を行う。特にエルフやドワーフは唯一絶対神の教えを否定することから、近年の教王国では虐殺されるようになっており、その蛮行を否定する者たちの助けを借りて逃げてくる者たちもいるとも聞く。そして旧王国領でも唯一絶対神教に改宗(かいしゅう)した貴族の領地ではそのような蛮行が行われている場所もあり、フィリップはそれらの貴族を取り潰す準備をしている。しかも唯一絶対神教徒たちは、その非道を正義を()していると信じているのだ。だが善神がそんな非道を容認するはずがない。



『教王国の選定聖女は私が選んだ聖女ではないけど、見込みのある子だ。その選定聖女に啓示(けいじ)を与えて、教王国の者たちに()い改めるように(うなが)すつもりだ。だけど、彼らが悔い改めることは期待できないだろう』


「……教王国の選定聖女様はソル・ゼルム様が選んだ聖女ではないそうですけど、見込みのある方だそうです。ソル・ゼルム様は選定聖女様に啓示を与えて、教王国の人たちに悔い改めるように促すつもりだそうです。ですが期待はできないとお考えのようです」


「やはり教王国の選定聖女は本物の聖女ではないか」


今代(こんだい)の選定聖女には聖女の資格はあるんだけど、私があの子を聖女として認めれば、教王国の者たちはさらに増長するのが目に見えているからね』


「……今代の選定聖女様には聖女の資格はあるそうです。ですがソル・ゼルム様が聖女として認めれば、教王国の人たちはさらに増長するのが目に見えているそうです」



 教王国には代々聖女がいると言われている。だが周囲の国では、それは善神ではなく人間が選んだ聖女、選定聖女と呼ばれている。当然選定聖女に聖女としての力などない。教王国だけではなく他国にも、選定聖女を本物の聖女だと信じている民も大勢いるのだが、疑わしいと思っている者も多い。それは選定聖女が魔族との戦いに(おもむ)くことはまずないからだからというのは、皮肉な話ではあるのだが。



『そこで帝国に教王国を制圧してもらって、帝国に教王国の民を守ってもらいたい。侵攻する準備ができる頃に、私は教王国の神官の大部分を見放そうと思う』


「……ソル・ゼルム様は、教王国の神官のほとんどを見放すお考えのようです。ですが教王国の民を見放すおつもりはないようです。帝国に教王国を制圧してもらって、その民を守ってほしいと。侵攻する準備ができる頃に、教王国の神官の多くを見放すとおっしゃっています」


「……承知しました。教王国は、帝国からしても無視はできません。そしてソル・ゼルム様が教王国をお見捨てになって、その領土が魔王軍に占領されれば、旧王国領、ひいては帝国の危機になることもありえます。このことは父上に進言しますが、確約はできかねることはお許しください」


『構わないと伝えてほしい。無理を押しつけるのはすまないとも』


「……構わないそうです。無理を押しつけるのはすまないともおっしゃっています」



 教王国の軍勢は粘り強い戦いに定評がある。それは他国の騎士団に比べて神聖魔法を使える者の比率がかなり高く、負傷者もすぐに()やされるからこそだ。それがなくなれば、教王国の軍勢は一気に脆弱(ぜいじゃく)になる。そもそも善神に絶対的な信仰を(ささ)げる教王国の者共が、よりによって善神から見捨てられたら、その士気は崩壊するだろう。

 ホリーは悲しかった。善神の善なる教えを曲解して支配の道具に、そして非道を働く口実に(おとし)めている者共がいることが。その者共がついに善神から見捨てられようとしていることが。善神は教王国の民までは見捨てるつもりはないことは、せめてもの救いだけれど。



『そして選定聖女には、第二皇子の元に脱出するように啓示(けいじ)を与えるつもりだ。そうすれば戦後統治もやりやすくなるだろう』


「……ソル・ゼルム様は選定聖女様に、フィリップ殿下の元に脱出するように啓示を与えるおつもりだそうです。そうすれば教王国の戦後統治もやりやすくなるだろうと」


「承知しました。確かに選定聖女が帝国に(くだ)って協力するならば、戦後統治は相当に容易になると思われます」


『ただ、選定聖女が教王国を脱出できるかはわからない。過剰な期待はしないでほしい』


「……選定聖女様が教王国を脱出できるかはわからないそうです。過剰な期待はしないでほしいと」


「承知しました」



 セルマからすれば、選定聖女が本当に脱出して帝国に協力するならば、相当にやりやすくなるのは本音だ。善神から見捨てられて士気が崩壊したところに選定聖女が呼びかければ、降伏する者も多いだろう。そして選定聖女を戦後統治の象徴(しょうちょう)に祭り上げて、帝国による統治をやりやすくする手札を手に入れられる可能性もある。

 セルマたちには帝国の領土をさらに拡大したいという野心はない。教王国制圧のプランを考えるのも、あくまで帝国を守るため、そして教王国の民を見捨てないためなのだ。だからこそ、善神は皇帝家の者たちを見込んでいる。

 バートの目を通してこの光景を見ている悪神からすれば、加護を与えるに値しない者共を見捨てるのはいいとして、善神がここまで口出しするのは、神としては明らかに出過ぎの行動なのであるが。


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