1/4
夢を見失った女優、桜庭莉緒と夢を追いかける如月優斗の初々しい恋のお話
20XX年 4月13日
一面を満開の桜が咲き乱れる校門を、桜庭莉緒は一人でくぐっていた。入学式は3日前に行われていたが仕事の関係で出席出来なかったため今日が初登校だ。
普通の学生なら新生活が始まるというこの季節は胸がわくわくしてたまらないのだろうが桜庭は違った。幼い頃から芸能活動してるためか自分が普通の学生として同学年や先生たちから接してくれないことに仕方ないと理解しているつもりだが心の内では寂しく、どこに行っても芸能人というレッテルのついた桜庭凜桜でしか見てくれないことにうんざりしているからである。
そう考えているうちに自分の席に辿り着くや否や
「おい、本物だぞ!」
「桜庭さんと友達になったら一生自慢できるわ〜」
「もしかしたら他の芸能人とも繋がれるチャンスじゃん」
小声で話している会話も、クラス中が囁けば自然と私の耳に入る。ああ、ここもか。本当の友達も出来ずに、私はここでも一人ぼっちだ。わずか数秒で、憧れている普通の女の子として高校生活を過ごす夢が一瞬に崩れ落ちたのであった。