7話 お買い物(超高額)
おはようございます。今日も頑張っていきましょう!
結構疲れているようだったので、美嘉とのレベリングを一時中断する。
そして、美嘉はダンジョンに潜るために会社を辞めるらしく、2日ほどしてからこっちに来るらしい。
俺がこの2日で何をするか……ダンジョンはもちろん1人で行っても意味がないし、ただぼーっとしておくのはいつものニート生活と変わらない。
しばらく考えて、俺は装備を充実させることにした。もしもの時の保険が、今の俺たちにはあまりにも少ない。少なくとも時間を稼げるようなトラップなどの非常用の装備は整えておきたいところだ。
それにしても、俺はなんて無計画にダンジョンに潜ってたんだろう。考えるとゾッとする。
持ち金はおよそ2000万。多いって?そりゃそうだ、ニートをやっていた俺の全資産だからな。そこそこ持ってないとニートなんかできるわけない。
とりあえず、まずは盾。2人とも持っているのが望ましいが、身長の低い美嘉が重い盾を持つのは得策じゃないだろう、となれば俺しかない。とはいえ俺もそんなに力は強くない。
調べてみると、ダンジョンのせいか、売り切れ続出だった。
とりあえず、高くて誰も手が出なかったと思われる、カーボン?何かよく分からない片手盾を1つ購入しておく。
50万。高い買い物だが、命の対価と思えばむしろ安い。
次に武器。刀や剣はちゃんとした人が使わないとすぐに刃こぼれするから論外として、今の鉄パイプじゃいささか心許ないし、何か打撃系で、あまり重くないものが欲しい。リーチはそこそこがいい。長すぎても使いにくい。
警察やSPが使う特殊警棒を購入しようかとも思ったが、よく調べると特殊警棒も中が空洞で鉄パイプと変わらないらしいので、鉄パイプにコンクリートを詰めて強化することにする。
そんなわけでコンクリートを購入。
装備は美嘉から一任されているから俺がキチンと考えて選ばねばならない。
次に服。これはサイズもわからないし、後回しにしておく。一応アラミド繊維?のやつ(20万)をとりあえず自分のサイズだけカートに入れておいた。
ダンジョンに潜らない2日間で、俺は精神力も体力も完全に回復して、まさに万全という感じだった。頼んでおいた盾やら何やらももう届いている。
そしてドアチャイムが鳴る。どうやら美嘉がやってきたらしい。
「せんぱーい、今日は美嘉のことを指名してくれてありがとうございます」
「キャバクラかよ!」
いつもの美嘉がやって来た。
「あれ、その大量の荷物……まさか美嘉という彼女がいるのにエッチなビデオ買ったんですか?それもこんなにたくさん」
「ただの装備だ。ダンジョン用のな」
とりあえず買っておいた装備を見せる。
「盾ですか……ステータス上がった今なら使えますかね」
「いや、これはどっちかと言うと俺が使おうと思って買ったんだ」
「なるほど。せんぱいなら持ち運ばなくても異空間作成で危なくなったら使うとかできますもんね」
あぁ、その発想はなかった、と思っていたら美嘉にジト目で睨まれた。
「あぁそうだ、スキル、スキルを取らないと」
「……ふふっ、せんぱい絶対異空間作成のこと考えてませんでしたよね」
話題を逸らしたが、見事にバレた。やっぱり美嘉には一生隠し事ができない気がする。
「それでスキルですか。とりあえず身体強化と鑑定は取ってありますけど」
「じゃあ索敵も取っておいてくれ。索敵できる人は多いに越したことはないだろ」
「あと、せんぱいは何のスキルを取るんですか?」
言われて、俺は自分のことを全く考えていなかったことに気づく。慌てて鑑定してみる。
【ステータス】
名前 近藤隼人
レベル 8
ランク 1
攻撃力 42
防御力 21
スタミナ 23
速さ 56
魔力 40
称号 ゴブリンの天敵
スキル アクティブ 身体強化
鑑定
異空間作成
パッシブ 索敵
SP 13
「取得可能スキルは、アイテムボックスが10ポイントで、身体強化2が5ポイント、あと
武器スキル装備枠1つが7ポイントかな」
「武器スキル装備枠ってなんですか?」
「うーんと、武器スキルは、装備している武器に応じて、その武器を用いた任意の行動を強化するスキルで、枠はそのスキルをセットできる枠みたいだな」
「つまり、スラッシュ!みたいなことができるって感じでいいんですか?」
右手を、せいって感じで斜めに振る仕草が結構可愛かった。
「ああ、それで大体合ってる」
「せんぱい、それ絶対取りましょう!スラッシュですよスラッシュ!マザーズ□ザリオは無理でも、バーティカルスクヱアくらいならできるかも知れませんよ!」
珍しく美嘉は目をキラキラさせている。何を隠そうこいつは、SA○なるアニメの重度なファンなのだ。
「それにそういう戦闘スキルって戦い慣れてない私たちには結構大切だったりしませんか?」
一応スキルを取るちゃんとしたメリットも無いわけではないようなので、アイテムボックスを除いた2つを取ることにした。
念のために美嘉にも確認する。
「取るのは身体強化2と武器スキル装備枠でいいか?」
「うーん……せんぱいが取りたいならいいですけど、身体強化2って、使えない身体強化を強くして意味あるんですかね?」
思ってもなかった美嘉の答えに俺はしばらく考え込む。
確かに身体強化は使えないから3ポイント無駄にしたと思って切るのも1つありだと思う。だが、こうしてレベルが8まで上がれば普通に取ることができるスキルである以上、必須スキルであるという説も捨てきれない。
「……3までとって効果がなければ諦める」
「おー、せんぱい、ギャンブラーですね」
「ギャンブラーはそっちじゃないか?必須スキルって可能性もあるんだぞ」
ゲームだったら攻略できなくなったらスキルを取りなおしてやりなおせばいいが、現実はそこで「詰み」だ。
だからこそ、俺はできるだけリスクを避ける選択をしたいのだ。
「確かに、ゲームみたいに思ってちょっと現実を舐めてたかもしれませんね。気づかせてくれてありがとうございます、せんぱい」
美嘉は賢いからすぐに間違いに気づいて改められるが、俺はそんなに器用な人間じゃない。
だから……だからこそ、間違わないように注意深く考えなければいけいない