5話 美嘉とダンジョン
トイレでの爆発物処理を終えて、美嘉がいる部屋に戻る。
下ネタの1つでも言われるかと思ったが、やけに静かだ。まさか、見つかったか?
ふすまを開けたらそのまさか、美嘉が押入れの戸を開けて固まっていた。
美嘉は俺が入ってきた音を聞いてこちらを向く……ヤバい、目が笑っていない。
「説明してください。先輩」
「あっ、ああ。あれは、ちょうどダンジョンが見つかった時のことなんだが……」
俺は美嘉に全てを話した。美嘉はじっと止まったまま動かない。果たして俺は許されるのか?じっと美嘉の動向を伺う。
確かに美嘉は子供っぽいところもあるが、ちゃんとやるべきことはやる大人だ。ダンジョンを見つけたのが美嘉だったら俺みたいに隠したりなんかしないだろう。
「……しょうがないですね、せんぱいは」
意外にも、美嘉は怒らなかった。さすがに俺も、なぜ?と問うような馬鹿なことはしない。ていうかやぶへびが怖い。
「せんぱいよく言ってましたもんね。収入的にも、俺とお前は釣り合わないって。もっといい人を探してくれって……」
美嘉の表情は見えないが、肩が震えていた。
「だから、お金になりそうなダンジョンを見つけたら、せんぱいが隠しちゃうのも仕方ないですよね」
美嘉が顔を上げた。その瞳に映るのは紛れもない喜悦。頬は赤く染まっている。
「仕方ないです。本当に」
美嘉は勘違いしている。俺はそんなに高尚な人間じゃない。そう思ったけれど、口から出たのは全く別の言葉だった。
「それで、これからどうしたらいいと思う、美嘉」
少し考えてから、美嘉は答えた。
「毒をくらわば皿までです。なっちゃいましょう、探索者……いや、冒険者ですか?……とにかく、一緒にダンジョンに潜って、強くなりましょう!」
俺は……俺は
答えが出なかった。今更美嘉に本当のことは言えない。でも誤魔化したまま美嘉に手を出すなんて許されないことだ。
「ああ、一緒に頑張ろう」
今は卑怯者の俺はこうして誤魔化すことしかできない。でも、いつか、美嘉に本当のことを明かすことが怖くなくなったとき……そのときは……
美嘉がこれから検証が必要なことや、確認しておきたいことを紙に書いてくれた。
1異空間の収納機能
2魔石の用途
3経験値の共有化(具体的に言えばパーティ制度について)
4日本のダンジョンに対する動き
「まず1は今確認できますね。せんぱい、このお菓子のゴミを収納してみてください」
言われたとおりに異空間を出現させて収納し、手のひらの上に出してみる。
「すごいですね。容量や取り出しができる範囲は分かりますか?」
「ああ、容量は俺の魔力量20かける立方メートル。取り出しは半径50メートルだ」
「となれば、荷物は自由に取り出せそうですね。あと、異空間のなかの時間の経過はどうなってるんでしょうね。当然通じないと思いますが、電波が通るかどうかも一応確認しておきましょうか」
美嘉は俺と違って大学も出ているし、頭も良い。このくらいの確認ならすぐに終わることだろう
「2と4は今は無理じゃないか?」
「そうですね。もう少し情報が集まってから考えましょう。3は……そうですね、しらみつぶしにやってみるしかなさそうです。試しにせんぱい、パーティーって言ってみてください」
「パーティー」
俺が唱えると、半透明のウィンドウが表示されて、工藤美嘉をパーティーに加えますか?と表示された。俺は即座に加えたいと心の中で答える。
「えっ、せんぱいからパーティー申請が届いたって表示されているんですが、まさか、うまくいったんですか?」
「ああ、上手くいったみたいだな」
「それじゃあ、ひと狩り行きませんか?」
俺は美嘉の求めに従ってダンジョンに行くことにした。
ちょっと大事な部分なので短めに