16話 朝倉さんはじめてのバトル
ガァアアア
俺の目の前には身長の1.5倍の大きさのオーク。
基本的に背丈の高い相手と戦うときは、低い自分が圧倒的不利になる。ボクシングの重量制限もそういうところから来てたりする。
しかし、その差をステータスの差が覆す。
「せいっ」
俺はオークが振り下した棍棒を余裕をもって避ける。
棍棒は地面に当たり、地面が軽く揺れる。
まずは腕
俺は棍棒を持ち上げようとするオークの腕を鉄パイプで殴りつけた。
大人と子供のような体格差なのに、その一撃で、オークの腕が変な方向に曲がる。
ギャッ
右腕をだらんとさせて、棍棒を捨てて跳びのくオーク。
しかし、俺の方が速い。
俺はオークに追いすがり、頭に鉄パイプを叩き込む。
グシャッという音がして、オークはすぐに光の粒子に変わる。
俺は今、22層でオークと戦っていた。
この階層を敬遠していたのは、ひとえに体格差に不安があったからに他ならない。
自分より大きい相手と戦う本能的な恐怖、それを突きつけられながらでは、ミスをする可能性も自然に大きくなる。
だからこそ、レベルが45を越えるまでは安全マージンをとって戦わなかった。
「いけるか?美嘉」
「……すいません。無理そうです」
美嘉は体格が大きい男にトラウマがあるから、オークを見ると足がすくんで動けなくなるらしい。
俺とかある程度慣れた人は大丈夫なようだが。
「無理しなくていいよ」
「……ありがとうございます、せんぱい」
美嘉はいつも通りを装っているようだが。いつも美嘉といる俺が見れば一瞬でわかる。
この階層はもう出てしまおう。
そして、俺たちは1層にいた。
先頭は朝倉さん。武器はコンクリートなしの鉄パイプ。
目線の先には1匹のゴブリン。5メートルほどの距離で睨み合う。
先に動いたのはゴブリン。走って朝倉さんに近づく。
朝倉さんは間合いに入るないなや、鉄パイプで頭を殴りつける。
グシャッと音がして、ゴブリンが倒れる。
朝倉さんは、ゴブリンの残骸の光の粒子に包まれて、青い顔をしていた。
「すいません」
ダンジョン探索の補佐に選ばれるくらいだから、何か武術はやっているのだろうが、やはり、人型のものを殺すのは初めての経験だろう。
俺も美嘉も、現代っ子の弊害か全く動揺しなかったので、完全に考えていなかった。
とりあえず、青い顔の朝倉さんとダンジョンから帰る。
その後1日は、朝倉さんの精神の安定のため探索を休んだ。
そして、10日の後、やっとレベルが目標に達した。
俺たちはステータスを紙に記して確認し合う。
【ステータス】
名前 近藤隼人
レベル 51
ランク 1
攻撃力 1523
防御力 511
スタミナ 842
速さ 1785
魔力 1750
称号 ゴブリンの天敵
コボルトの天敵
オークの天敵
ジャイアントキリング
大番狂わせ
千人斬り
スキル アクティブ 身体強化3
鑑定
異空間作成
武器スキル装備枠
武器スキル装備枠
風魔法3
生命維持
パッシブ 索敵
SP 58
【ステータス】
名前 工藤美嘉
レベル 51
ランク 2
攻撃力 625
防御力 417
スタミナ 763
速さ 2032
魔力 2500
称号 ゴブリンの天敵
コボルトの天敵
オークの天敵
ジャイアントキリング
大番狂わせ
千人斬り
スキル アクティブ 身体強化3
鑑定
火魔法5
水魔法5
生命維持
パッシブ 索敵
SP 68
【ステータス】
名前 朝倉摩耶
レベル 34
ランク 3
攻撃力 523
防御力 641
スタミナ 613
速さ 325
魔力 450
称号 オークの天敵
ジャイアントキリング
大番狂わせ
千人斬り
スキル アクティブ 身体強化3
鑑定
武器スキル装備枠
パッシブ 索敵4
SP 132
朝倉さんは、多分タンクタイプというべきステータスなので、魔法系のスキルはあまり取らないでもらった。
そして、俺と美嘉が取った生命維持というスキル。その効果は、周りの環境に関わらず意識と生命を維持することができる。というものだ。
つまり、それを持っていれば、マグマのなかでも、それどころか宇宙でも活動できるのだ。
もちろん、その分スキルポイントも60と高額だった。
だが、それだけの価値はある。
俺たちは明日から、はじめて別のダンジョンに潜る。準備は万全だ。
全員無事で戻ろう。
改めて決意を新たにするのだった。
今回の件で皆様の通知欄を騒がせてしまい、すいませんでした。今後絶対にこのようなことが無いようにします。