悪魔に魅入られた者、異世界へ進出す
気が向いたら連載版書きます
死んだ
そのはずだった。だが、実際はどうだろうか?
意識があり、自我も残っている。そして記憶まである。
何故未だに意識があるのだろうか。
私は【天国と地獄】というものを信じていなかったが、【輪廻】というものはかなり小さい頃から何となくだが信じていた。
「リサイクルと同じでエコだ」とか割とテキトーな理由だった気がするが。
そして1番ありそうだと思っていたのが自我も記憶も何もかもが霧散してしまうという考えなのだが。
実際に体験している事は色々と予想外だし、分からない事だらけだ。
辺りを見回すが、一寸先は闇だ(物理的に)
……光は物理学だったか?まぁいい。そんな事よりも現状を把握したい。
・真っ暗で何も見えない。
・身体の感覚がない。(死んだから?)
・動く事は出来るようだ?(暗くて分からない)
……よもや地獄ではあるまいな?
とりあえず、変化が欲しい。
ずっと進んで行けば何か変わるだろうか。
とにかく進む事にする。
しばらく進むと、光が見えて来た。
よかった。
進んでも進んでも変化が無いから来た道を戻ろうかと考え始めた所だった。
…まぁ、戻りたくても戻る方向がわからないんだが。
光が見えて来たからか心做しか暖かい気がする。
そうこうしてるうちにやっと光の元へ辿り着いた。
ここまで長かった。フルマラソンよりも距離があるのではなかろうか。
身体の感覚がないからか、肉体的な疲労は感じないが。
延々と暗闇を進み続けるのは精神的にキツい。いやほんとに。
光の元には1人の女性が居た。
「綺麗だ。」
思わず賛辞の言葉が口に出る。
自慢では無いが、私は審美眼に定評がある。
例えば人の顔を見るとミリ単位で左右の違いや全体のバランスが分かる。
よく「俺カッコイイ」と言う輩を
「いや、お前は全体的に格好良いのかも知れないが、少し鼻が潰れた印象を受ける事と顎が太いせいでハンパな印象を受ける。パーツは良いが画竜点睛と言う言葉がお似合いだ。いや、例えるならいい写真が撮れたのに額縁が致命的な物だった感じだろうか」
と言うように訥々と否定的な返しをし、相手を凹ませるか怒らせるかしていた。
そのせいで友達と呼べるものがおらず、悪友からは「会話のキャッチボールでトゲ付鉄球をなげてくる莫迦」などと評されていたのだ。
……本当に自慢では無い。
だが、それ故に信頼出来るとも評価されていた。
そんな私が一言の文句も無く綺麗だと口にした事に自分自身で驚愕する。だがしかし、改めて見ても目の前の存在は全く非の打ち所がない。
彫刻の如く美しい肢体、白魚のような白く透き通った肌、髪の毛一本から脚の先に至るまで極限の芸術であるかのような印象を受ける。
直感で理解する。アレは人では無い。
瞬時に警戒するが……少し考えて警戒を解く。
そもそも私は死んでいるのだから警戒も何もあったものでは無いのだ。
何も失う物など無いのに何を恐れているのか。
勇気をだして話しかけてみよう。
……関係ない(あるかも知れない)が、これはもしや"ナンパ"とか言うやつでは?いかん、変に意識して緊張して来た。
生前はどうしていたか。……交友関係すら築けないのに異性との関係など作れているわけもないな。
男女関係なく等しく話すことは出来ても、特別親しくなる事など1度もなかった。
「あの〜」
!!! びっくりした。ごちゃごちゃと考えている間に件の女性が近くに来ていたようだ。しかしあちらの方から話しかけてくれた。どう話しかけようか困っていたのだ。都合がいいのでそのまま会話を試みよう。
「どうも初めまして、私は…」
...ん?おかしい名前が思い出せない。何故だ?他に何か忘れて居るだろうか…うん、くだらない雑学から、役に立つ豆知識まで思いだせる。
…どうやら思い出せないのは名前だけのようだな。ほかはありありと覚えている。まぁいい死んだ時に記憶が破損したとかそんなんだろ。
「あの〜大丈夫ですか〜?」
……今更だが、放置していたのを忘れていた
「すみません、あまりに綺麗だったので見蕩れてしまいました」
無理矢理感が否めないが、とりあえずは会話になって居るはずだ。
「え〜?本当ですか〜?大分変な顔をしていましたよ〜?」
やっぱりダメだった。
「ま、まぁ気にしないで下さい。それよりも、聞きたい事があるのですが、貴方の知り得る限りでいいので教えていただきたいです。宜しいでしょうか」
自身の直感を信じるならこの女性は神かそれに準ずる存在だろう
「ん〜……はい、良いですよ」
…何か、雰囲気が?まぁ、答えてくれるうちに出来るだけ聞き出そう。
「えと、まず私は死亡したと思うのですが、このあとどうなるんでしょうか。」
「順を追って説明致します。まずお察しの通り、貴方は死にました。この後についてですが…」
死亡したという事は自覚出来ていたし覚えている為、今更ショックを受ける事は無いが、今後どうなるのか…出来れば穏やかな気持ちの今、安らかに眠りたい。
「記憶を保持した状態で転生する事が出来ます」
「……なんですって?」
「記憶を保持した状態で転生する事が出来ます」
「詳しくお聞かせ願えますか」(キメ顔)
いやいや、仕方がないのだ。
選択肢は無く、道は一つしかないのだから受け入れる他あるまい。
決して、ロマンある話に心をわしづかみにされた訳では無い。
「はい、まず私は転生を司る神の一柱です」
やはり神の類いだったか。ヒトではありえないくらいに綺麗だからな。うんうん。
「ご丁寧にどうも」
「早速ですが転生についてです。異世界への転生です」
「ッ!!!」
ぃよっしゃぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!
ふぅ、落ち着け。まだだ、まだハズレの可能性がある。定番は剣と魔法の世界だが、魔法がしょぼい可能性やホラー系、ゾンビパンデミック的な世界だったら、即死確定だ。逃げるだけならいいが、闘うならスキルの補助の様なものが無ければド素人の私は直ぐに死ぬ。おつちけ異世界についてちゃんと聞かねば、今、最も大事なのは情報だ。
「具体的に聞いても宜しいでしょうか」
「はい、どちらについてお聞きになります?」
「ん?どういう事ですか?」
どちら?まさかとは思うが……
「貴方が転生出来る世界は複数あります。選択肢があるという事ですね」
「 」
「大丈夫ですか?」
「………………はい、大丈夫です。」
どうやら私は相当に恵まれているようだ。
「…簡単でいいので説明をお願いします」
「はい、大まかに3つの種類があります」
・機械が反逆し支配された世界
・ウィルスによるパンデミックで人類が滅亡し、新たな生物が誕生した世界
・剣と魔法の王道ファンタジー
「こんな感じですね」
…言っちゃ悪いが選択肢があってないようなものだと思う。
期待しすぎたか?……いや、わかりやすくて良いか。
「剣と魔法のファンタジーについて説明をお願いします」
「はい、これに関しては2つ該当する世界があります。こちらは詳しく説明致しますね」
・職業を決めることにより系統に対応するスキルを習得&ステータスが上昇する世界。
ただし一人4種類の職業、そして相性の悪い職業同士は取得出来ない縛りがある。
職業事に強力な固有スキルがある
・レベル、スキル、ステータスがある世界
ステータスは鍛えた分だけ上昇するが老衰で減少する、スキルの数に制限は無いがデメリットスキルが存在する。
身体レベルとスキルレベルがある。
職業は自由に変えられるが、職業の固有スキルは無い。
「こんな感じですね」
「ふむ。……決めました。後者でお願いします」
「はい、了解しました」
ふぅ、やっと一息つけるな。まぁ、テンション上がって勝手に舞い上がってただけなのだが。女神様もほわほわした感じの雰囲気に戻っている。
「ところでココは居心地が良いですね」
「!」
ピクリと女神が反応する
「何だか落ち着く感じと言うか癒される感じと言うか」
「やはり、気になりますよね」
また雰囲気が変わった?何故
「えと、どうしたんですか?」
女神様が頭を下げる
「申し訳ございません」
「…まず頭を上げてください、そして説明をして頂けますか?謝罪の意味もわからず受ける訳にはいきません」
「分かりました、説明をさせて頂きます」
女神様は終始申し訳無さそうにしていて要点を言う毎に謝罪をして来た。
女神様の話を要点だけに絞ると
・死後、魂は下級神(付喪神など)に導かれて転生の神の元へ行く
・私は見落とされており下級神がついていなかった
・私は悪魔に好かれて居るらしい
・記憶が一部弄られているらしい
・光が見えて来た時に暖かい気がしたのは悪魔が離れていったかららしい
・長い間憑かれていた割に精神が保たれているのは異常であるらしい
・落ち着くのも癒される感じがするのも悪魔が居ないからであるらしい
・地球で転生するとまた悪魔に憑かれるだろうとの事
・異世界を勧められたのは二度と問題が起きないように悪魔の居ない世界に送るためらしい
・私の生前のデータを見たが……過去、類を見ないほどに酷かったらしい。
ほとんどがらしいとなっているのは身に覚えが無いからである。
記憶は覚えている範囲でおかしい物は無いように思えるが、まぁ神の言うことだから本当なのだろう。知らんが。
それで、早期発見出来なかったのは自分たちの責任だと思って居るらしい。
責任感が強過ぎて引くレベルである。
テンプレで神様が失態をしてチート貰える流れかなとかちょっと思った私、クズか……。
思った事を正直に話し、「こちらこそすみません」と素直に謝る。
すると、女神様曰く…自己中心的な考え方も悪魔の影響だ。との事……おい悪魔コノヤロー!!!(全力で擦り付け)
ちなみにチートはくれるらしい。
罪悪感が湧いてくるが…命には替えられん。
貰えるものは貰う。
「女神様、ありがとうございました」
せめてきちんと感謝の意を示そう。
深々と頭を下げる。
「いえいえ〜、では〜ご武運を〜」
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