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戦いを成すモノ ~リヴェルナ共和国戦記~  作者: 緋那真意
序章 僕は、思い出す……
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第3話

 WPの操縦者は当初他機種のパイロットから転換させていたらしいのであるが、WPが戦場の主役になるにつれて優秀な人材をWPに奪われてしまうのを恐れた各部署が人材を出し渋るようになったのだという。また、逆にWPの操縦者から他機種のパイロットに転出するケースも多く見られるようになり、WPの操縦者は慢性的に人手不足の状態なのだという。

 結論から言えば、僕は当時の上官の誘いに二つ返事で応じた。別にWP操縦者に強い憧れがあったわけではない。ただ、WP操縦者になれば単純な後方勤務よりは給料も上がるし、そこで実績を積めば昇進も早くなり、その分だけ家族に楽をさせることもできる。当時の僕の認識はその程度のものだった。



 WPの適性検査はそれほど特殊なものではなかった。学力、健康、体力の各分野の検査の他、空間把握能力と銃火器取扱技能の実技審査が別枠で設けられていた。

 WPは遠隔操縦が基本であるため、離れた場所から内蔵カメラの映像を頼りに状況を把握しWPを動かす必要があるため、離れた場所にあっても適切に現場の状態を認識し行動を指示する能力は必須であると言えた。また、WPの性質上銃火器での射撃戦が主な役割となるため、銃火器の取扱に関わる技能に習熟していることも求められた。



 この二つの検査のうち、空間把握能力の検査についてはあっさり通過できた。あとで当時の上官から聞いた話によると、僕の空間把握能力は図抜けて優秀であると審査で評判だったらしいが、僕自身としては特に変わったことをしたわけではない。ただ周りに迷惑にならないように、多少遅くなってもいいから正確な操作を心掛けていただけであったのだが、分かっていてもそれが出来ない人間というのもいるようで、これがこなせずに落選してしまう人物が毎回出ているらしかった。

 一方、銃火器取扱技能の審査についてはかなりギリギリであったそうだ。もっとも僕は士官学校を出て軍に入隊したわけでもないし、銃火器の取り扱いについては入隊してから初めて本格的に学び始めたわけだから、そうそう急に覚えられるものでもない。それでもどうにか通過できたのはあるいは上官による口添えもあったのかもしれない、と今では思っている。



 ともあれ、僕は無事に審査を通過してWPの操縦者として選抜され、審査の翌月にそれまで居た陸軍の部隊から、WPの操縦訓練を行っている部隊に配置転換されることとなった。

 この頃、僕は一度休暇で家に戻っている。母は既に病院を退院していて自宅で療養に入っていたものの、それまでに無理を重ねたことが祟ってほとんど寝たきりの状態であった。僕が元気そうにしていることは喜んでくれたものの、それでもなるべく早く軍を退役してより安全な職業に就くようにと懇願した。

 母の気持ちは僕にも痛いほど理解できたけれど、ちょうど配属替えの直前でもあり、僕は母を傷つけないように「期待に添えられるように頑張るよ」と言葉を返した。


 しかし、母はその言葉を聞いて寂しげに微笑んだだけだった。

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