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第2話 力の発現

第2話投稿です。

新型コロナウイルス等あり、予定投稿日よりも1週間ほど遅れました…。

皆さんもコロナにはお気をつけて、外出自粛はストレスが溜まるとは思いますが、こういうときこそ堪えてください。

乗り越えられれば、必ず救われるはずです…!

~病院近くの路地~

 テツヒロはベイルに此処ここ何処どこなのか、自分が何故なぜ生きているのか、これから自分達は何をすればいいか等を問いただした。

「此処か…。此処はな「裏の世界」と呼ばれている…、言ってしまえば…そうだな、坊主達…テツ達が住んでいたのが所謂いわゆる「表の世界」だ。その表の世界の真逆の時空間軸にある世界だと思ってもらえりゃいい。」

「時空間軸の…真逆?」

「そうだ、普通の人間の力じゃあ到底とうてい関わることが出来ないと考えてもらっていい。」

「待ってくれよベイル!それだったら何で俺は今、この世界に居るんだ!?関わることが出来ないなら俺が此処にいることと矛盾するぞ!?」

 叫ぶテツヒロの頭をベイルは人差し指で軽く押さえつけ、黙らせた。

「「普通の人間の力じゃあ」だと言ったろう…?テツの質問その2に答えることになるが、此処には「能力スキル」を持つ奴等が居る。」

能力スキル…!」

 ベイルは力強くうなずく。

「そうだ、能力の中にもピンからキリまであってなぁ。ピンレベルの人間は他の世界に干渉出来るようになるんだよ。」

 哲博は飛行機の中で外から聞こえた会話を思い出した。「時空固定オーバークロック」。つまりはそれが能力だということに気づくのにそう時間はかからなかった。

「能力には2つの種類…というか、分類があってな?特定の薬を飲むことによって強制的に発現させる「能力スキル」とこの世界に来たときにその環境に適応するために進化発現する「環境能力フィールドスキル」がある。環境能力フィールドスキル能力スキルに強くてな。上位互換…っつうわけでも無いんだが、封印系能力が効かないばかりか反射系能力での反射も出来ない。」

 テツヒロは絶句した。この世界は平等だとベイルから聞いたが、能力にいての平等は無いようだと思ったからだ。

「テツよ、俺が何を言いたいか分かるか?」

 思考停止していたテツヒロはベイルに突然話しかけられビクッと身体をふるわせながら首を振った。

「テツ達を助けたのはその「環境能力者フィールドワーカー」だ。名を虎根友トラネトモと言う。俺達は英雄トモとも呼んでいるがね。」

「トラネ…トモ…!」

 テツヒロには飛行機での光景が目の前に広がっていた。あのときのフードをかぶった紫髪の少年の姿を。その少年の目に写ったかなしげな光を。

「あの人は色々と謎に包まれていてな、名前と姿、性別以外はほとんど何もわかっちゃいない。」

「それは…、「環境能力フィールドスキル」もか。」

「…ああ、7年ほど前にひょっこりと現れたんだがな。そのときの裏は荒れていたが、あの人がやって来てここ暫くは大規模な事件を見ていない。それと、序列を決める大会があるんだが、出場した記録が無いのに序列1位なんだ。」

「色々謎だな、確かに。じゃあ、俺達が生きていたのはその一位(英雄)さんに助けられていたってことなのか。それで?生き残った俺達は何をすればいいんだ?」

「…自分で決めるといい。表に帰ることは不可能だが、それ以外のことは大概出来るぞ。英雄も一般人もスパイも…ましてや犯罪者もな。」

 そのままベイルは立ち上がり、テツヒロに背を向けた。軽く欠伸あくびと伸びをして、空に叫んだ。

「お前達は自由だ!自らの運命さだめは自らで決めろ!ここは裏の世界!犯罪紛はんざいまがいのことには手を出すなよ、自らの運命さだめを決めたくなければな!「七人の天災(カタストロフィ)」が天罰を降す!さあ行け!テツよ、また何処かで会おうぜ!ガハハハハ…!」

 ベイルは一度も振り向かず、その場から立ち去っていった。その背中が何やら悲しそうだったのはテツヒロの気のせいだったのだろうか。言葉の乱射に気圧けおされたテツヒロは暫くの間、その場から動くことが出来なかった。

「ベイル?って、あ!ベイルに抱えられてここに来たから道が分からねえ!何処だ此処!?」

 テツヒロの悲痛な叫びが路地裏に木霊こだました。





 数時間後、クタクタに疲れて帰ってきたテツヒロを見て、マユは肩をすくめてあきれたような顔をした。彼は待合室にあるソファーに倒れるように飛び込んだ。しばらくソファーにした後、身体を起こし、周りの様子を確認した。裏世界に連れてこられた者は全員起きており、マユから現在の状況を聞いた彼等はこれからの自分達の動向について友人達と話し合っていた。テツヒロは少し考え込んだ後、マユを部屋のすみに呼び、お互いのこれまでの出来事を話した。

「その環境能力フィールドスキル?は私達の誰も発現していないみたいよ?私達も早く力を貰わないとこの世界で生きていける訳がないし…。」

「そうだよな…、でも、どうやったら力を貰えるんだ?そこまで…その…イズミって人と凍飛トウヒって人に聞いたのか?」

「当然でしょ?私、その辺りの情報収集は欠かさないわ。」

「いや、分かってたけどよ…、まさか本当に聞いてるとは思わなかったな…。」

 テツヒロはマユに背を向け、自分の病室へと歩き始めた。町中を駆け回っていたため、これ以上考えることが出来なくなってしまったようだ。大きな欠伸をして万結に声をかける。

「俺もう疲れててさ、詳しい話は明日でもいいか?今日が消費期限ですみたいな情報じゃないんだろ?」

「その独特な比喩表現はどうにかならないの…?確かに今日中に聞いてって話じゃないんだけど…。周りから遅れるけどいいの?」

「ああ、大丈夫…。じゃあ…おやす…み…。」

「限界なのね…。」

 マユはフラフラと廊下を歩く幼なじみの背中を見て、呆れながらクスクスと笑った。その夜、テツヒロを抜いたクラスメイト達の会議は夜通し続いた。





~次の日~

 テツヒロ達76人は教会に居た。教会で貰うカプセルに能力を発現させる効果があると、マユが聞いていたためである。教会というよりは大聖堂で東京タワー並みに高い建物が彼等を出迎えていた。中に入ると真ん中に通る道を挟んで両側に30人ずつ、耳栓をつけたシスターと真っ正面に優しそうな顔をした神父が出迎えた。そして、神父の手元には黒い箱が二つあった。

「迷える者達よ、どうぞいらっしゃいました。両側の席にそれぞれお着きなさい。」

 言われるがままに彼等は席に座り、神父の話を聞き始めた。聞き始めて1時間後、あまりの話の長さに半数以上の生徒達が寝息を立てていた。テツヒロやマユ、キョウジ達はその中に居なかったが。

「ホホホ、私の話を最後まで寝ることなく聞き続けることが出来たのは貴方あなた達で最多ですよ。ここで残った者達には、更なる力を授けましょう。」

 神父は口許くちもとを隠して笑い声を押し殺し、シスター達に指示を出した。その際、テツヒロ達を見る神父の眼は笑っておらず、忌々しいものでも見ているかのような様子であることに、テツヒロ達は気づいていた。彼は、隣に座っていたマユにこそりと耳打ちした。

「あの神父さん、なんか不気味じゃねえか?めちゃくちゃ怖い視線を感じるんだがよ…。」

「やっぱりそうだよね…?少なくとも、人間を見ているような視線は感じてなかった…。」

 こそこそ話を止め、、気づかれないようにサッと視線を前に向けると、神父はいつの間にか二人の目の前に来ており、不気味な笑顔を保ちながら二人の顔を覗き込んでいた。

「次は…貴方方が力を授かる番ですよ?ちゃあんと話を聞いてましたかな?」

 覗き込む顔が陰で暗くなり、更なる不気味さを醸し出していた。背筋が凍り付きそうになった二人は、慌ててに神父に説明の再確認をお願いした。正直なところ、二人はここで何かしらの嫌味を言われるものだと思っていたが、現実ではそうはならなかった。

「正直に言えてよろしい。楽しみなのは分かりますがね、やり方を間違えると命を落としかねないのですよ。」

「い…命って…!?」

「そうですよ、お嬢さん。折角せっかく拾ったその命、無駄にしたくはないでしょう?それと、私が今不機嫌な理由…、まあ、嬉しくもあるのですが、私の能力に関係するのです。私の能力は「睡話術(スリーピングスピーク)」というものでして。私の話を聞いた者を眠りにいざなうというものなのですよ…」

 起きていた17人は神父の話を集中して聞いていた。先程までの長い前置きよりも遥かにおもしろいからである。神父の話が行われている間もシスター達は忙しそうにバタバタと支度したくをしていた。ここで、テツヒロは、シスター達が耳栓をしている理由を悟った。神父の話によってシスター達が眠ってしまうのを防ぐためだったのである。

「まあ、何というかお恥ずかしい限りで…私の能力に抵抗レジスト出来る生身の人間が現れて嬉しいやら悲しいやら…。というわけです。不気味な視線を投げかけてしまい、本当に申し訳ありません…。」

 そう言うと神父はテツヒロ達、17人に向けて深々と頭を下げた。彼等は首を振り、慌てた。

「いえいえ、そんな!失礼なのは、僕達の方ですよ!!」

「そうですよ!?私達、神父さんの事情も知らないのに好き勝手言っちゃってましたし!」

 神父は、またもや口許を隠し、今度は愉快そうに笑った。

「ホホホホホ、いいのですよ。さて、少し話し過ぎてしまいましたが、シスター達の準備が整ったようです。それでは、皆様、今から配る「血魂の聖水(レッドアクエリアス)」をお飲みください。」

 17人に対して配られたそれは、上品なグラスに入っており、透明感のある液体ではあるものの、その匂いは露骨な血の鉄臭い匂いがした。少し赤みがかっており、サラサラはしているが非常に飲みにくいものだった。

「ちょっ…神父さん?質問いいですか?」

「ええ、何でしょうか?」

「これって…もしかしなくても血ですか?」

「さあ?おぼっちゃんの想像力にお任せしましょう。」

 テツヒロはしかめっ面をしながらグラスを覗き込んだ。覚悟した表情をし、周りの声も聞かず、勢いよくその液体を飲み干した。匂いの割には味はほとんどなく、ミネラルウォーターを飲んでいるような気になった彼は何もなかったと判断し、ほっと溜息をついた。彼の様子を見て安全だと感じたマユ達はそれぞれのタイミングで液体を飲み干した。だが、そのうちの一人、松中望愛マツナカノアだけは心臓、脳、神経に何かが侵食するような深い不快感を覚えた。侵食が完全に終わったと感じた途端、身体にあった肉体的・精神的疲労感が完全に無くなり、清々しい気分になっていることに気づいた。それは、周りの人間も同じようで張りつめた表情から一転、落ち着きのあるいつもの表情に戻っていた。ノアは不思議な感覚に不信感を覚えながら、神父の話によって眠ってしまっていた友達を起こしにかかった。



~10分後~

 76人全員が揃った後、神父は筆談で「血魂の聖水(レッドアクエリアス)を飲んだ者は「ONEワン」を、飲んでいない者は「THIRTYサーティ」を取る」ことを指示した。筆談なのは勿論、これ以上人が寝てしまうと話が進まないからである。

「俺はONEか。どんな能力が出るのか楽しみだぜ!」

「これを飲んだ1週間後に能力発現かぁ…。私はどんな能力が発現してほしいかなぁ…?」

 ただの一人を除き、全員が能力に希望を持っていた。これからの生活がどれだけ刺激的になるだろうかと心を弾ませながら。



76人の少年少女はその後、能力が発現する日まで自由行動となった。ノアは病院に外出届を提出後、初めて大聖堂に行った3日後にまた神父の元を訪れた。その顔は強張っていた。ノアは神父に聞く内容を頭の中で考えていたため、後ろから近づいてきた少女に気がつかなかった。

「ノアちゃん!何してるの?」

「うわぁっ!?ってあゆみんじゃないのよぉ…お、驚かさないで…。心臓が飛び出るかと思ったよぉ…!?」

 ノアの後ろから忍び寄り、思い切り背中を叩いたのは内川愛結実ウチカワアユミ。ノアよりも一回り小柄でたまに小学生と間違われることもある、ノアの親友だった。自分が小柄なのは仕方ないと割り切っており、小さいからこそ出来ることがあると思い、ボランティア部の部長にまでなった「小さな英雄」という二つ名がついていた。

「あはは、ゴメンゴメン…。重たい顔して病院を出ていくから何事かなぁって思っちゃって…。」

「あゆみんはさ、この生活に慣れた?私はまだなんだけれど…。」

「ノアちゃん、この生活に慣れはないよ、どれだけ適応出来るかの問題になってくると思う…。私も皆もノアちゃんだって、自分の家族や兄弟、後輩君達や他校の友達と引き離されていきなりこの生活慣れろって…言われてもね…。」

 ノアはアユミの言う通りだと思った。少しの沈黙を挟み、アユミはノアの頬を引っ張った。

「ひ…?ひたたたたた…!!は、はゆひちゃん!?」

「だからさ、私は笑おうって決めたの!折角拾ったこの命…、最期まで燃やし尽くすことを決めたの…!だから、ノアちゃんも笑おう?」

 ノアはアユミの心づもりを察した。アユミの手を取り、口角を上げてにっこりと笑った。

「そうね…、表に残った人達に申し訳ないわね…?でも…、ここの神父さんには一つ聞いておきたいことがあるのよ…。私達が飲んだあの薄く赤い液体…、あれは恐らく…能力者の…血!」

 ノアは歩を進めていく。その後ろからアユミもついていく。

「この裏の世界に隠された秘密を私は暴いていくわ…。アユミも…一緒に来る?」

「勿論だよ!ノアちゃんと一緒に居ると楽しいからね!」

 アユミは親指を立ててノアに自分の意思を伝える。二人は頷き合い、共に大聖堂の扉を開けた。

この辺りから中心人物達の立ち回りが変わってきます…。

純粋に裏を楽しむ者、裏で何かをやらかそうとする者、裏の闇を暴こうとする者…。

色んな人の視点を書いていこうと思っています。

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