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番外編 向日葵畑の日常③

今回で終わりの予定でしたが、想定していたよりも膨らんだため、次回まで書きます

 時間は進んで午後6時頃。エルドラとヒマワリはギルドの玄関口にいた。

「さ~て、皆ちゃんと帰ってくるかな~?」

「帰ってきてくれねえと色々困るがな。」

 玄関口の鍵は勿論開けてある。最悪、メンバーが怒りのままに突っ込んできた場合にドアの破損はそんを防ぐためだ。そうこうしているうちに、塔や洞窟にいったメンバー…、ではなく、日常依頼(デイリー)をこなし終わったメンバーが続々と門をくぐっていった。普段、自分たちが帰ってくる時間にギルドリーダーであるヒマワリやエルドラは、外出していたり、自室にこもっているため、2人から出迎でむかえがあることに不思議な感情をいだきつつ、自室や酒場に入っていく。その中に6人の姿はない。

「あれってBADEND行った時点で部屋に眠った状態で転送されんだっけ?」

「うんにゃ~?確かね、私達も夢の中に閉じ込められてる判定取るみたいだから、外側から誰かに干渉かんしょうされない限り、分からないんじゃない?」

「は~、もどかしい…。」

 そんなことを話しながら1時間が経った頃、ついにギルドホームのドアは勢いよくやぶられた。そこにはボロボロになり、土埃つちぼこりと血にまみれた6人が満面の笑みで立っていた。

「お、帰ってきたか。」

「『帰ってきたか。』じゃねえよエルドラ!」

 バタフライナイフを持ってエルドラに飛びかるソラ。首をるつもりで飛び掛かったのだが、エルドラの硬い皮膚ひふはばまれた。目を血走らせながらエルドラをにらみつけるソラの目ははたから見ると狂ってしまったかのようにも見えるほどにおそろしかった(実際、狂いそうにはなっていたため、あながち間違いでもない)。そんなソラの首を左手で引っつかみ、左側の壁(そこには腰の高さほどの靴箱がある)に思い切り叩きつけた。勿論、そんな反撃を食らうなど微塵みじんも思っていなかったソラは受け身を取ることすら許されず、靴箱に左腰を強打きょうだした。

「!?!?!?!?!?」

 自分に起こったことが理解できず、声にならない声をあげ、左腰を押さえ、うずくまってもだえ苦しむソラ。そんなじゃれ合い?を見たメンバー(残り5人)は我に返り、その場に倒れした。

「皆どうだった~?」

 ニコニコ笑いながら感想を聞いてくるヒマワリ。

「どうだったってことはやっぱりこれ依頼じゃないですよね。」

「うん!」

 素朴そぼくなクレイリーの質問に満面の笑みで返事をするヒマワリ。その笑顔の中で目だけは笑っていない。



 その後、8人で酒場から更に地下にくだり、例の『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』を見せた。

「じゃあ、これは実験台にされたって認識でいいのか?」

 左腰とその他諸々の処置をエルドラから受けながらソラが聞く。

「だから今からあの馬鹿ばか共シバキに行くんだよ。余裕があるなら来るか?」

 ソラの質問に返答しつつ、彼らの怒りの矛先を研究員達に向けようとするエルドラ(エルドラ達はそもそも何があろうと襲撃しに行く予定だった)。

「でも、分かってて強行きょうこうしたのは2人だろ?」

「「う…。」」

 ソラの言葉に対して気まずそうに目をそむける2人。罪悪感はしっかり感じているようである。

「…まあ、死にかけたし、こんな危険なことに説明もなしに追い出されたことは許さない。でも、2人が反省してる上、犯罪スレスレのこういった行為を二度としないとちかってくれるなら水に流します。他の人は知らんけど。」

「俺は後でケアしてくれ。2回死んだ(命の実という特殊な木の実で蘇生した)。それさえしてくれれば…、封印という形を取ってくれるなら…、忘れることはできないけど忘れてやる。」

「ワタシは…、怖カッタですケド…、皆ノ意見に合わせます!!!」

「僕は楽しかったし、最後スカッとしたからいいかな別に(影を剣技でワンパンした)。ただ、ある程度、腕のある人以外、例えば新人君達には絶対にすすめないこと。それを守って。」

「だってさ~、隊長。あ、私も皆に合わせる所存しょぞん~。」

「後で銃乱射させろ。」

 ソラ、クレイリー、ポッポ、トウヤ、ツボミ、リートの順に自分の思い思いの言葉を述べた。1人殺意が隠しきれていないが、ほぼ全員意見は一致しているようだ。全員の応急手当おうきゅうてあてを終えたエルドラとヒマワリの2人は軽く頭を下げた。

おんる。」

「危険なことに巻き込んでごめん!」

 2人の謝罪を聞いた6人は、コクコクとうなづきながら、それぞれ背伸びをしたり、前屈をしたりと、それぞれでストレッチを始めた。

「え?何してるの?」

「おい、巻いた包帯ほうたいほどけるし、傷も開くぞ…?」

「「「「「「シバキに行くんでしょ?」」」」」」

 6人でハモったことに彼らはクスクスと笑っていたが、残された2人はあまりにも切り替えが早い彼らを見て、苦笑くしょうしていた。





~その頃、研究所では…~

「おい!そっちの書類貸せ!」

 研究所内に怒号どごうが響く。出張で王都の外に出ていた人工能力制作研究室室長の桜吹雪サクラフブキ春生ハルキと副室長のスブラー・ウーバー(クレイリー・ウーバーの実弟じってい)が帰ってきていた。研究所地下に押し込んでいた『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』を誰かが持ち出し、他者に渡したという報告が帰ってきて早々、ハルキの耳に飛び込んできたためである。そもそも『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』は失敗作で、動かないように充電すらしていなかったにも関わらず、勝手に動かされたげ句、行方不明になったとのことなのでたまったものではない。

「室長!」

 研究所内に高い声が響く。その声の主はスブラーだ。

「どうした!」

「研究所地下に侵入した人物のデータ復元完了ふくげんかんりょうしました!」

 地下へ続く階段の監視かんしカメラは破壊ほうでんされており、使い物にならなかった。そして、IDを検知けんちする装置すらもデータを消去されていたため、犯人を特定するのが遅れていたのである。

「犯人は?」

「この研究所内の人物ではありません!王都のデータを参照さんしょうして特定します!」

 そんな会話の後、大きなれと共に、爆発音と何かが崩れる音が聞こえた。音は正面玄関方面から聞こえたようだ。

「何事だ!!!」

 ハルキは声を張り上げる。正面玄関では研究員達がパニックにおちいり、ああてふためいていることを察した。

「スブラー!少し任せる!」

「承知しました!お任せください!」

 スブラーにあとを任せ、データルームを飛び出すハルキ。土埃つちぼこりの向こう側から現れたのは、桃長向日葵率いる『向日葵畑』のメンバー8人であった。新たなさわぎの原因をしったハルキは舌打ちをしかけるもやめた。8人の口は笑っているが、目が笑っていない。嫌な予感を察したハルキは急いで8人の元へとけた。

「何やってる!」

 ハルキは、パニックになっている研究員達とエルドラ達の間に割り込むように入り込み、叫んだ。

「なんだ、桜吹雪の旦那だんなじゃねえか。声を荒げてどうした?」

「それはこっちの台詞セリフだ…。この忙しいときにやってきやがって…!あと、呼ぶなら下の名で呼べ、そっちは長いんだよ!」

 自分達も機嫌きげんが悪かったが、それ以上にハルキがイラついていたため、エルドラ達は先にハルキの話を聞くことにした。

「なんでそんなイラついてる?」

「お前達が忙しい中でもっと忙しくしてるからだ。」

「あ~、質問を変えよう。元からイラついてる理由は?」

「お前達に説明してこっちにメリットはあるのか…?」

「頭は働いてるらしいな。」

「黙れ!こっちは昨日までスブラーと一緒に王都の外で出張だったんだ!それで帰って来たら研究所内に侵入者!数人が重症、盗まれたものは危険だからと封印していた『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』という装置が1つ!しかもそれが行方が分からないという状況!帰ってきた俺らにとっては泣きっつらはちだ!」

 『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』。その単語を聞いたエルドラ達はまゆひそめた。

「『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』?」

「そうだ!試作品の段階で危険だからと地下室に保管していたヤバい代物しろものだ。最悪の場合、犯罪に手を出したことになる。」

「へえ、まあそんなものに興味ねえな。」

 エルドラの言葉に苛立いらだちを覚えたハルキはヒートアップしそうになっていた。だが、エルドラの言葉の後に彼が持っていた岩のようなものを目の前に置かれた途端とたん、ハルキは目を丸くした。

「じゃあ、()()を俺らに渡してきたのは、ここの研究所の白衣はくいを着ていた、その侵入者ってことで良いんだな?」

 エルドラが目の前に叩きつけたのは間違いなく『現実夢創作装置(ドリームメイカー)』である。後ろの研究員達も目を丸くしていた。

「なら、もうここに用はねえな。」

「待て待て待て待て…!」

 急いで引き留めるハルキ。折角せっかくの情報なのだ。このまま帰すわけにもいかないのだろう。

「ソイツの容姿は?背丈せたけは?種族とか、小さいことでもいい!関係しそうなこと全部教えてくれ!」

 急に態度を改めたハルキに驚きつつ、メンバーは客室へと案内された。その案内の最中、ヒマワリは1人の女研究員に大金を握らせた。

「これ、修理費しゅうりひ。突然ごめんね?」

 メンバーはそのまま客室へと消えていった。

今日からまたしばらくPCの不調で更新できません。

ご了承ください。

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