第14話 ルール説明
コロナ…、まだ猛威を振るいますね…。
ちょいちょい体調崩すので正直ビクビクしながら過ごしてる今日この頃。
ようやく解放されたテツヒロは髪はボサボサ、着ていた服はよれよれになっていた。
「ちょっ…、着替えてくる…。」
「おやおやおやぁ?「ふにゃ~ん」会議はおわりましたかぁ?」
テツヒロが扉を開けると、スーツ姿で眼鏡をかけ、眠そうに欠伸をする虹色の猫を肩に乗せた凛々(りり)しい女性が目の前に立っていた。
「あら、社長じゃないの。」
「「「社長!?」」」
テツヒロ、マユ、キョウジの声がシンクロした。
「はい!屋良樫商業代表取締役兼社長、屋良樫キララです!今日からこのチームの手助けをさせていただきます!よろしくお願いいたします!」
3人は名前に驚き、少し引いた。
「大丈夫よ、名前はこれでも今まで文字通りやらかしたことなんて無いし、品質は最上級、どんな我が儘な注文でも漏らしたことがない会社の若社長よ。信用するに値する人間なの。」
「チーム結成してから即勝負を申し込まれるなんて歴代初ですね、一先ず、皆さんの武器をこちらで用意させてもらいますので1人ずつ質問に答えてもらえますか?」
テツヒロは服を着替えるため、一度その場を離れる。自分が外に出ていた間に部屋の場所は決められていたので、段ボールに詰められていた自分の服を適当に引っ張り出す。
(これから先、俺はリーダーとしてちゃんとやっていけるのかな…。)
そんなことを一瞬考えてしまった自分の両頬をぴしぴしと叩く。
(そんな弱気でどうする!プレッシャーに負けんじゃねえよ!もう二度とあの時みたいなことは…!)
気合いを入れ直すため、自分の右頬を一発、殴りつけ、手が爆発した。
(よし、俺の能力のことはだいぶ分かってきた…。今回は勝てなくてもいい…。遺恨が残らなければそれで…いい!)
「壁が防音でよかった…、マユに「五月蝿い!」とか言われそうだしな。」
そんなことを思いつつ、自室を出、会議室に入るテツヒロ。部屋で色々考えていた間に全員の質問は終わっていたらしく、扉を開けた瞬間にキララが飛び出してきた。
「テツヒロリーダー!質問しますね!貴方の身長は?体重は?握力は?その他生前の身体測定の結果を!」
テンション高く、やや食い気味にテツヒロに質問を投げかけるキララ。
「俺は武器は要りません。素手で殴り合います。」
キララは石のように固まり、テツヒロはその横を通り過ぎていく。次にキララが動いたのは愛猫が「ふにゃ~お!」と大きな声で鳴いたときだった。虹色の猫は会議室の上の壁に念力でモニターを取り付けており、作業が終わったので主人を呼んだのであった。
「からにゃ~ん!ありがと~!私の癒し~!」
キララはスライディングで猫に抱きつき、頬ずりする。猫の方は大きく欠伸をして主人の腕の中で丸くなり、寝息を立て始める。
「よいしょっと…。」
丸くなった愛猫を肩に乗せ、立ち上がるキララ。スーツが雑巾のようになったらしく、少々埃がくっついていた。
「一応、終わりましたね。では、間に合うよう手配致します。」
軽く頭を下げ、一度会議室を出て行くキララ。その間にテツヒロは、メンバー全員の能力の確認をし始めた。約10分後、笑顔で戻ってきたキララを確認したテツヒロは、一旦確認を中断したが、それに気づいた彼女が資料を下手に指差す。
「いいですよ、確認されてても。私達の出番はあと少しなので。」
促されたテツヒロは、軽く礼をして資料を読み直し始める。丁度読み終わったタイミングでモニターに映像が映った。映った映像にはたくさんの人々がコロシアムのような場所でワイワイ騒いでいた。しかし、中心には闘技場らしきものはなく、360度方向に映し出されたモニターが何処かの街中を映し出しており、その下に1つの人影があった。そして、マユはその人影に見覚えがあった。
「トウヒちゃん!?」
マユが言った通り、人影の正体は冷座凍飛、現序列9位の裏の人間である。トウヒはマイクを持ち、スポットライトを浴びながら、観客に手を振っていた。
『レディース&ジェントルマン!やって来ました!三つ巴の~?大戦争~!今回の解説は私!冷座凍飛!そして実況は?』
トウヒが手を上に掲げると、手をあげた方から別の人影が降りてきた。その人物はサングラスをかけ、首からヘッドホンを提げ、キャップを被って、CDが乗った台と同一化していた。黄金の逆ピラミッドと人間の上半身が融合した姿はまさに異形。その異形の塊はゆっくりとモニター下のステージに降り立ち、ポーズを決めた。
『SO!KOん回(今回)も実況は俺様、DJマグナムがお送りするんだYO!』
途端にコロシアムがマグナムコールで埋め尽くされた。マグナムは暫く耳を欹てその歓声にうっとりとした表情を向けていた。ある程度、時間が経った後、人差し指をチッチッチッと振り、コロシアムを静かにさせた。
『皆さん、ありがTO!KOん回(今回)、新しき仲間が増えたのは皆、知っているYOな?SОNO新入り達とKO参(古参)であるあるチームに喧嘩WO売った奴らがいる…!SОNOチームKOSОがKOん回(今回)NO主役TO言ってMO過GOん(過言)じゃナイ!SО!チーム「向日葵畑」!』
モニターに向日葵、その後ろに赤い剣と黒い大鎌が交差しているエンブレムが映し出された。観客の歓声がまたもや上がり、マグナムが人差し指を口に当て、黙らせる。
(あの「マグナム」ってやつ、鬱陶しい喋り方するな…。)
これは「三つ巴の拳聖」全員がマグナムに抱いた第一印象である。そう思うのも仕方ない。何せ母音が「お」になるところのみ、巻き舌で喋っているため、正直なところ、「五月蝿い」のである。唯一、「お」だけは巻き舌で喋っていないため、母音が「お」全てで巻き舌であるわけではないのだが、それでも五月蝿いことに変わりはない。さらにハイテンションなのでますます五月蝿く感じるのである。
『喧嘩WO売られたKO参(古参)チームはKOいつらだ!チーム「主役の中の主役」!!!』
モニターにピストルとそこから撃ち出される様々な色の紙テープ、ピストルが黒い軍帽と爆弾に支えられたエンブレムがモニターに映し出される。
『まだエンブレムKOSOないMONONO!期待NO新生&ダークホース!チーム「三つ巴の拳聖」!!以ZYO(以上)!3チームNO対決だ!』
『私からルール説明をさせていただきます!』
巻き舌でギャンギャン喚くDJマグナムを尻目にトウヒが手をあげ、手元にある資料を読み始める。ルールはこうだ。
ルール1:参加メンバーは10人。能力保持・能力未保持の関係は無い。参加メンバー以外は住人全員が集まっているコロシアム若しくはギルドホームにて見守ることとする(時空間を歪めた別次元で戦うため)。
ルール2:使用武器は何でもよい。勿論、素手でもOK。暗器も使用可。
ルール3:チーム戦のため、基本的に全滅、又は降参でのみ勝敗を決める。専門家もいるため、殺害もOKとする(万が一の場合は蘇生・身体の一部修復可能)。
ルール4:建築物は基本的に破壊可能。
ルール5:3つのチーム以外にもう1つ、第4陣営「障害物」がある。「障害物」の人間は他の全ての陣営に対して敵意がある。今回に限り、運営側にて「障害物」の人間を決定。後々紹介。
『と、まあ、こういった感じになります!次に参加するメンバーについてですが、新生の方々がいらっしゃるため、ハンデとして敵陣営全員の名前・容姿・能力、その全てをお伝えします!』
トウヒは続けて説明を始める。
『先ずは「向日葵畑」から!両手に連射型の拳銃を持ち、軍服に身を包んだチームのブレーキ役!拳銃の弾切れを起こさないという言わばチート級の能力を持ったヒマラヤンの猫妖精族の王の末裔!「引き連れる弾丸」!リート・マスージ三世!現在の序列は80位!』
会場(特に女性)からの歓声が舞う。モニターに映し出されたのは、大聖堂にてノア、アユミのことを助けたあの少女だった。思わず2人は息を呑む。
『次!こちらも両手に武器!自身で打った槍で敵を突き刺し、戦う女鍛冶!トリケラトプスの竜神族!希平和!現在の序列は23位!』
次に映し出されたのは頭に2本の角を生やし、白い歯を見せて可笑しそうに笑う女性。
『まだまだ行くよ!伝説の生物である不死鳥の獣族!「超新星」という自身・仲間の限界を突破させる補助型の能力だが、その戦闘能力すら未知数!ヒー・バント!序列は35位!』
真っ赤なドレスに身を包み、燃える王冠を被った心配そうな表情をしたテツヒロ達よりも年下に見える少女。
『氷属性の魔法族…、なのに基本は氷で殴る脳筋少女!?氷結の魔戦士…?キナ・エルファーゼ!序列は60位!』
蒼い装束に身を包み、石製の杖を胸に抱えた不機嫌そうな顔をした少女。
「イズミ。」
「向日葵畑」の参加メンバー4人を確認したテツヒロはイズミに話しかけた。
「ん?何かしら?」
「ライオンガールズってことは女しか居ないチームってことなのか…?参加者も女性しか出てないしさ。」
「おいおいおいおいおいおいおい、リーダーよぉ!相手はこの道のプロだろ?んな引け腰でどうすんだよ。」
話を聞いていた元クラスメイトの碕廼俊が強制的に肩を組み、体重を乗せてきた。その口調は半ば煽っていた。
「仕方ないだろ!突然、女の子に手をあげろって方がイカレてるだろ!」
「そう怒鳴らなくても皆一緒だよ。俺は命乞いなんざ絶対しないがな。」
「うっ…!」
「お前もだろ?テツ、だからこそ聞いたんだろが。で、イズミさん、うちのリーダーの疑問に対するレスポンスってあります?」
テツヒロは自分の顔の横にある友の顔を見た。シュンは一度目が合うと屈託なく笑い返した。どうやら心の中を見抜かれていたようでテツヒロは苦笑いで返した。イズミはその話がひと段落着いたと判断したのか、返答した。
「私が今、知っている中で男幹部は3人かな。因みにその3人とリートの4人で「光炎の四天王」と呼ばれているわ。」
「公園?」
「光炎よ。光る炎。恐らくは向日葵とかけてあるんだと思うわ。」
その話の途中、ノアがスッと手を挙げた。何か思うところがあるようだ。
「もしかしてなんだけどさ…、その3人の中に…エルドラって名前のやつ…いる?」
勿論、イズミからの返答はこうであった。
「ええ、貴方達を襲ったアイツは向日葵畑の問題児だからね。」
DJマグナム「おい!俺様NOセリフがTO中からないじゃんかYO!一体全体DOしたってんだYO!」
分かってくれ…、次話の時の紹介はお前にさせっから…。
DJマグナム「分かったぜ!絶対だぜ?OH!YEAH!」
ヤバイキャラ出てきちまった…。