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第11話 真夜中の奇襲

今回から第2章「三つ巴の大戦」編となります。

 深夜、11時半頃、エルドラはタクミを彼のギルドホームに送っていた。

「すまねえな、送ってもらって!」

「付き合ってもらったんだ。当然だろ。」

 道行く途中、エルドラはポケットから何かを取り出し、タクミに手渡す。それはノアに渡したのと同じような真っ白いハンカチだった。

「カッ…ハハハハハ!こいつはよ…?」

「そういうことだ。さっきの見てたなら分かんだろ?あの新人達にも情報通がいるらしいんで俺の行動の意味、察してくれるとありがたいんだけどね。まあ、もし分かってなかったら改めて宣戦布告をさせてもらうだけだ…。」

「お前んとこのリーダーはチャレンジャーというかアグレッシブというか…。いつか足元(すく)われても知らねえぞって伝言頼めるか?」

「ああ、伝えとくよ。」

 そう言いつつ、エルドラは夜空をあおぎ、溜息ためいきく。




 それは3日前、訓練場での出来事。

「ちょっと待ってくれ…、ヒマワリ姉さん、今何つった?」

 訓練場にてお菓子を食べながらくつろぐエルドラ、クレイリー、ヒマワリの3人。ヒマワリの()()()()に2人は目を見開き、食いついていた。

「エル兄がいつもやってること、盛大にやっていいよって言ったよ?」

「「新人潰し(ルーキーキラー)」をか!?俺的にゃあ嬉しいことこの上ないが、その代わりに俺に何をさせる気だ?」

「やって欲しいことは1つだけなの。貴方あなたとリーちゃん、2人の能力を彼ら…しくは彼女らに見せてほしいのよ。で、この…。」

 そう言ってヒマワリは白いハンカチを2枚、エルドラに手渡す。エルドラが受け取り、ハンカチを広げるとメモ用紙が1枚、ひらりと落ちた。メモ用紙には「新人ルーキーである少年少女に1枚、「主役の中の主役(デモンズヒーローズ)」のタクミに1枚渡す」と書いてあった。それらを確認したのち、エルドラはキャンデーを袋ごと、それも10個ほど一度に口の中に放り込んだ。

「姉さんが俺に何をさせたいのか…全部理解した。」

「本当!よかった!」

「ちゃんとリート姉をこっちに寄越よこしてくださいよ?」

 どういう動きをするかの話し合いをした後、その場は解散・酒場「サンライト」にて時間を潰すことにしたのだった。




(俺がタク兄とつるむのも頭に入れてたってわけか…。かなわないな、姉さんには。)

 数時間後には大変なことになっているなど想像もつかぬまま、タクミとエルドラは静まり返る夜の街を、ただただ静かに歩みを進めていく。






 借りている宿に帰ってきたテツヒロ達3人は宿がもぬけの殻になっていることに驚くが、食堂の机の上にあったメモを見つけ、そのメモの場所に行く。街の中心地近くのしるされた場所に行くと4階建ての巨大なコテージと玄関に全員分の靴・日用品にちようひん等の荷物が置いてあり、さらにその奥の広間にテツヒロ達以外の71人全員がたむろっていた。

「あ!3人とも!こっちこっち!」

 3人に一番最初に気づき、大きく体を動かして気さくに笑いかけるのは元・副生徒会長、マユの右腕とも言われる存在、綿辺遊華(ワタベユウカ)である。

「3人、ごめん、メモ、置いてた、気づいた?」

 ユウカの隣で彼女が振る腕に当たらないようにかわしながら片言で暗く話しかけるのは永森稜介(ナガモリリョウスケ)。昼はお喋り、夜は片言の変人である(特に意味はないらしい)。

「これで全員、ね。」

 そこにはもう1人、彼らが、特にマユがよく知る人物が居た。マユがここに来て一番最初に言葉を交わした人物、イズミである。

「やっほー、マユ。元気そうね。良かった良かった。」

「イズミン!どうしてここに!?」

「簡単に言えば、戦力外通告…かな。正直なことを言うと、代わりが見つかるまでの世話係。貴方達、こっちに詳しい人が居ても、しきたり・事情・礼儀・事象その他諸々(もろもろ)について、全部が全部知っているわけじゃないでしょう?それを教えるための世話係ってわけ。勿論、「別の」裏の人間が来れば私は元のチームに戻るのだけれど。」

 テツヒロ達3人には「別の」の意味を悟っていた。トモとクリスから頼まれていた依頼。ニャビスとベイル。2人の勧誘、否、勧誘というよりも強制でチームに入れろということだろうか。そういったことを考えていたテツヒロは上の空になってしまっていたため、呼ばれていることに気づかなかった。

「…ヒロ、…ヒロ!テツヒロ!」

「ふぁっ!?ふぁい!」

 話を聞いていなかったテツヒロは突然名前を呼ばれたことに驚き、可笑おかしな返事をしてしまい、それを聞いていたメンバーがケラケラと笑う。

「まったく…、ちゃんと話を聞いておきなさいよ。今からこのチームの()()()()になる男でしょう。」

「すみません、イズミさ…ん?今、なんて…。」

 イズミは明らかに今、テツヒロを()()()()と言ったのだ。テツヒロがその意味を理解するまでに数秒をついやした。

「俺…が、リーダー…?イズミさん…何の冗談ですか…!」

「テツ、悪いが冗談じゃないぞ。俺やマユはちゃんとお前に票を入れたんだからな。」

「イズミンがさっき票数を言っていたけど、てっちゃんときょーさんにしか票が入ってなかったんのよね。」

「それなら、キョウジが適任だr…!」

「きょーさんには貴方1人しか入れてないのよ、てっちゃん。初日に貴方が疲れたって言って先に寝ちゃった時があったでしょ?あの時にもう私達がチームを作ることは決定してたの。勿論、リーダーもね。」

 テツヒロは頭の中がこんがらがり、声を絞り出し、出てきた言葉がこれだった。

「何で…俺なんだよ…!」

 周りの人間からの視線が身体中に突き刺さり、不安を覚えたテツヒロは入り口近くに居たキョウジ、マユの間をすり抜け、外へと駆け出し、そのままコテージから遠く離れて行ってしまい、影も形も見えなくなった。テツヒロを追いかけようとマユが振り向くが、その腕をイズミに掴まれた。

「イズミン、行かせてよ!」

「大丈夫よ、()()()()()()()()()()()()()()みたいだから。あの人に任せてくれればいいわ。それ以外にもすることはあるのよ、チーム名決め・役職配分・部屋の割振わりふりエトセトラ。彼が戻ってくるまでに…、覚悟を決めて戻ってくる前に終わらせておきましょ。貴女あなたとキョウジ君は彼のフォローをするんでしょ?」

「…うん。」

 マユはイズミに優しく手を引かれ、話し合いを再開した。




 テツヒロはベイルと会い、言葉を交わした路地裏まで走ってきていた。告げられた言葉を認められないテツヒロはイラつきながら近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばした。その瞬間、蹴り飛ばされたゴミ箱が爆発した。

「うわっ!?」

 テツヒロは思わず尻餅をつき、吹き飛ばされたゴミ箱がガランガランと音を立て、黒焦げになって転がる。

「なんだこれ…なんだこれ…。」

 身体の震えが止まらずに怯え続け、後ろから近づいてくる多数の人影に気づくのが遅れてしまった。気づいた瞬間に、右脇腹みぎわきばら辺りを蹴られ、受け身を取る間もなく、壁に激突した。ゴミ箱から出てきたゴミ袋によって激突の衝撃は抑えられたものの、脇腹にある鈍痛どんつうに耐えながら自身がさっきまで居た場所に目を向けると、そこには柄の悪そうな男達が5人居た。身体中の刺青タトゥーをしっかりとさらし、耳にはピアスの穴、3人は煙草たばこを吸いながらテツヒロを身の毛もよだつ恐ろしい眼で睨みつけていた。そのうちのテツヒロを蹴り飛ばしたリーダー格の男が口を開いた。

「時間分かって能力スキル使ってんのかぁ?おい、餓鬼ガキ!近所迷惑なんだよ。だからよぉ、死んで償ってくれやぁ、ひゃははははは!」

 リーダー格が指をさすと後ろに居た筋肉質でスキンヘッドの男がテツヒロに向かって突っ込んできた。スキンヘッドはテツヒロの目の前に立つと、こぶしを振り上げ、その拳を真下に居るテツヒロ目掛け、振り下ろした。テツヒロは間一髪かんいっぱつ脱兎だっとのごとく回避かいひした。テツヒロが居たところの地面は粉々に砕け、避けるときに頬をかすっていたらしく、頬から鋭い痛みと共に真紅しんくに輝く液体が流れ出ていた。

「マジ…かよ…!いってぇ…!」

 ほっとしてスキンヘッドの後ろから様子をうかがっていたテツヒロの背後から殺気さっきと奇声と共に長髪の男がナイフを2本構えて飛び掛かってきた。口からは泡を吹き、白目をいている。その様子にひるんだテツヒロはスキンヘッドに両肩を掴まれ、逃げられなくなってしまっていた。

「うわっ!?いいのかよ、俺を掴んでて…!あの男、正気を失って…!?」

 テツヒロはスキンヘッドの顔を見て震えた。スキンヘッドも長髪と同じように口から泡を吹き、眉間みけん青筋あおすじめぐらせてテツヒロを見ていたのだ。

餓鬼ガキ、安心していいぜ。てめえの死体も俺が有効活用してやるからよぉ!ひゃははははは!暴虐死霊(ネクロロンド)!俺や俺の眷属ペットが殺した奴は俺の眷属ペットになれるってぇ能力スキルだぁぜぇ!こき使ってやるから安心して死ねぇ!」

(ダメだ、避けられねぇ!畜生ちくしょう…!)

 長髪がテツヒロにおおいかぶさり、スキンヘッドごと後ろに倒れた。地面には真っ赤な血が広がっていく。

「スキン!チョー!餓鬼をこっちに連れて来い!早くしろ!餓鬼の死んだときの顔を見せろ!」

 リーダー格が何度も2人に命令めいれいするが、2人の、否、2つの死体は身動みじろぎ1つしない。リーダー格が死体を見に行くと、そこには死後硬直しごこうちょくが終わった2つの死体しかなく、テツヒロの姿は何処にもなかった。

「ああ!?餓鬼は?何故俺に従わねえ!動きやがれ、この肉壁にくかべにしか使えねえゴミ部下共が!有効活用してやってんだから死んでも働きやがれ!」

「とんだ悪党あくとうも居たもんだ。」

 リーダー格が声の聞こえた方、つまり、上を見上げるとテツヒロをしっかりと左腕で抱え、背中にはまるで血で染めたかのような真紅デッドレッドの翼・黒い髑髏どくろのレリーフが掘られた大鎌ギガントシックルを右腕一本で持った青年が月の光を逆光にして屋根の上に立っていた。その姿を見たリーダー格は腰を抜かし、冷や汗をかき始めたことにテツヒロは消えそうな意識の中、気づいていた。

「は…!?何故なぜあん…あなたがここにいらっしゃるのです!?俺はそこの餓鬼に、あ、いや、ぼっちゃんにしつけをですな…?」

「見苦しい言い訳はいいから俺と戦ってくれ。そして、()()()()。」

 この発言にテツヒロはおろか、リーダー格の男もあんぐりと大きく口を開き、固まっていた。

「もう一度言おうか。それとも、お前は()()()()()()()クチか?」

 テツヒロは思った。ヤバイ奴らと関わってしまったと。

「出来ればたくさんの人に見てもらいたい…!そうすれば、俺は死ねる…!」


どれだけ自殺願望激しいんだよ…?

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